縁あって
○ミハル
不甲斐ないなぁ、と感じ入る。
山賊六人組のリーダー・ガルグがよくわからない野望を持っているから助かったが、本来ならば相打ちの状態に持ち込まれた時点でミハルの負けだ。
あくまで無力化を狙って遠距離戦を捨てていたと言い訳することも出来るが、他のメンバーなら格好良く山賊団を討伐していたんだろうな、なんて考えると、やはり少し気が沈む。
だが、沈んだ気をぐいぐいと引っ張り上げる者が居る。
他ならぬガルグだ。
ガルグは会話に差し支えない速度で帰路を進みながら、多少のことを尋ねてきた。
町との関係や、戦った理由なんかの、聞き流しても良いようなことだ。
そうして二人で時折休みを挟みながら進んでいると、夜が明けて鳥が鳴き始める頃には目的地にたどり着いた。
山中に隠れるように立てられている丸太の塀に大きな木製の門だ。
ガルグは口笛を三回吹き、二度木を叩き、また二回口笛を吹く。
すると大きな閂の抜ける音がして、扉がゆっくりと動き出した。
待てないとばかりにガルグは扉を蹴り飛ばし、向こうで扉を退いていた山賊の子分らしき人が地面を転がる。
「帰還だ! 他のは後から帰ってくる!
風呂を焚いてくれ! オレはそれまで少し休む!」
「親分代理、そっちの男は」
「今回のお宝さ!」
言い終わるが早いか、ガルグはミハルをひっ捕まえたまま飛ぶような速度で家の一つに飛び込んだ。
「悪いね、急がせて」
ガルグは装備を外しながら話す。すでにミハルに対して一切の警戒心がないようにすら見える。
それに対してミハルは装備を外さず手近な木製の椅子に腰掛けた。ガルグがどうあれ、町を襲おうとする山賊たちのアジトだ、気を抜かないに越したことはない。
「まあ、楽にしてくれ。いつまで使うかわからないが、アンタの家でもあるからな」
ガシャンガシャンと音を立てて様々な武器と防具が脱ぎ散らかされていく。
ついには肌着のみとなり、鎧の下に隠されていた肢体がさらけ出される。
「……ん、なんだ、顔そらして」
「いや、別に」
「……ははあん。そういうこと、ね」
ガルグはいたずらっぽくにやりと笑い、肌着のままでミハルに近づいてきた。
山賊稼業で随分絞り込まれており、余分な肉は一切乗っていない。
無数の武器を振るうために鍛え上げられた筋肉と、戦いの数を語るように刻まれた傷が目立つ身体だ。
だが、そんな山賊然とした身体以上に更に目を引くのが、その胸だ。
今までは胸部用の装備があったため意識していなかったが、肌着になるとその大きさや匂い立つような色気から嫌でも意識してしまう。
ひとまず目を閉じ、顔はユイの方が綺麗だから大丈夫、なんてよくわからない言葉を言い聞かせ雑念を消していたら、ガルグは声を上げて笑った。
「愛いねぇ! オレ相手にそんな様子とは、余程めぐり合わせに縁がなかったのかい?」
「縁くらいあったさ」
「縁のないやつは決まってそう言うんだ」
「……それより、話をするんだろ」
「へえへえ。そうだった、そうだった」
夜闇でもひと目で分かる長い緋色の髪や、整った顔立ちや、時折聞こえた叫び声からも察してはいたが。
まさか本当に女性だったとは。
世の中はまだまだ広い。
「ああ。そうだ。忠告しとくが、オレに手を出すなら命がけで来なよ」
「いかない」
「なんだぁ、張り合いがねぇ」
ガルグが着替え終われば、ようやく準備が整う。
アジトに来るまでの間での打ち合わせに従うなら、ここから先、風呂までの間が、ガルグがミハルに求めることの作戦会議となる。




