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目覚め

○ユイ


息苦しさで目を覚ます。

鼓動が速いのも、汗が酷いのも、息苦しさも、いつまで経っても慣れない。

最近はだいぶましになっていたのだが、戦闘の疲労と「魔王の牙」と対峙した緊張感から身体があの日のことを思い出してしまっていたのだろう。


呼吸と鼓動が整うまでゆったりと時間をかけてから身体を起こす。

ユイが起きたのを見て、傍に居たレジィが涙を浮かべながら駆け寄ってきた。

寝ずに面倒を見てくれていたようだ。白い肌に浮かぶ黒く深い隈が痛々しい。


「おはよう、レジィ」

「おはようございます、ユイ様!」


わんわん泣きながら抱きついてくるレジィを無理に振りほどくことはせず、落ち着くまでされるがままになった。

背くらい撫でてやりたいが、それも出来ない勇者の力が恨めしい。

すんすんと呼吸が落ち着いてきたところで皆に会いたいと言うと、レジィは甲斐甲斐しく肩を貸そうとしてくれた。

だが、勇者である自分の力を考えれば、そんなに長時間触れ合うことは出来ない。申し出を断り、並んで歩く。


部屋を出ればランドリューが壁にもたれかかって立っており、ユイを見ると「おお!」と唯一見える右目を大きく見開いた。


「流石は勇者殿、頑丈でござるなあ!」

「うん、まあね。ところで皆は?」

「呼んでくるでござるか?」

「ああ、お願い」


お願いした瞬間にランドリューの姿が消え、少しの間を置いて再びその場に現れた。

彼を追うように、様々な場所から人が集まってくる。

どくんと一度胸が鳴り、血に混じって「なにか」が喉の横を駆け上る。

ニイル、マルカ、サバラ、コマチ。それにレジィとランドリュー。

いつもならあるべきはずの姿がそこにない。いや、いつもならランドリューと同じように室外で待っているはずの人が居ないことがまず気になっていたのだ。

「なにか」はきっと不安だ。嫌な予感が胸を突き、頭をよぎったのだ。


「ユイ様、目が―――」

「ランドリュー、ミハルは?」


声をかけてくれようとしていたニイルの声を遮り、ランドリューに尋ねる。

斥候に出ているならいい。いや、良くない。ミハルの索敵能力の広さはユイもよく知っている。彼が出張るということは接敵は免れないということだ。

だというのに、全員武装を解除しているとなると、つじつまが合わない。


「ミハル殿でござるか? 彼なら一昨日もう発たれてるでござるよ」

「どこに?」

「さあ?」


二文字。まるで興味がないという言い方だった。

嫌な予感が大きくなる。鼓動が刻まれる音がどんどん大きくなる。


「さあ、って……ミハルに限って、行き先も言わずに出ていくはずが……」

「それについては俺から話させてください」


口を開いたのはニイルだ。胸を張ってこう言った。


「ミハルくんには、暁の勇者団から抜けてもらいました」


言葉の意味を理解するまでにかかった時間は、寝起きの悪さから立ち直るよりもずっと長かった。

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