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衝撃を超えた衝撃に、唖然とする他無い。


「んぅ……」


むにゃむにゃと腹部の口がミハルの手を甘噛する。規模や状況は大違いだが、ひょっとしたら赤ん坊が親指をしゃぶるようなものなのかもしれない。


「いや、いやいやいや。おい、おい。ムーシャ、ムーシャ」


冷静になり、頬を叩いてムーシャを起こす。

三度頬を叩いたところでムーシャはむにゃむにゃと(今度は上の方の口で)言いながら、ぼんやりと目を覚ました。


「……あぁー、ミハルさん……いらっしゃいませぇ……」

「ちょっと、ムーシャ、聞きたいことがあるんだけど」

「えぇー……明日にしましょうよぉ……今、夜ですよぉ……」


そう言って、何事もなかったかのように目を閉じる。

だが、それだけで「はい分かりました」と流せる衝撃ではない。


「ムーシャ、なんだこれ。どうなってんの、これ!」

「んん……あ、ごめんなひゃい……ぺぇっ」


ぺぇっという声と一緒に、口(下の方)からミハルの手を吐き出す。

そしてまたすやすやと寝息を立て始めた。

あまりに当たり前のことのような対応で、夢でも見ているのではないかという錯覚に陥る。

だが、寝間着の裾から覗くムーシャのお腹には、いまだ消えない大きな口が、ミハルを見つめ返すようにそこにあった。


先ほどとは違った意味で、恐る恐る触ってみる。

唇の縁をなぞるように指を這わせてみれば、少しくすぐったそうに唇を震わせた。


「ふふ、ふふふふふ……やめてぇ、やめてくださいぃ……ふふふ」


合わせてムーシャが笑う。

本物だった。


「なに乳繰り合ってんだぁ?」


声。見上げればそこにはガルグが立っていた。

ムーシャのような寝間着姿ではないが、アジトで見た時と同じ、かなりの軽装だ。

また、寝起きのようで緋色の髪はいつもより乱れている。自然体の寝起き姿。ある意味では艶めかしいのかも知れない。


「ガルグ、これ」

「……ん、ああ。なんか付いてるよな。オレもさっき手ぇ舐められたわ」

「反応薄くないか……?」

「驚いたけど……まぁ、このもちもちだしな」


「まぁムーシャだし」の一言で流せるものではないはずだが、ガルグは特に興味がなさそうだった。

ミハルとムーシャを確認すると、ガルグはのそのそと寝起きの熊みたいな動きで自分のベッドに戻り、再び眠りについた。

こうなってしまっては、ムーシャが起きるまではこの件は片付かないだろう。


ぱくりと再びミハルの手がムーシャに咥えられる。当然腹部の口だ。

ゆっくり引き抜いて別のベッドへ移る。

腹部の口は当然だが、寝ぼけたムーシャと一緒のベッドで寝るというのも気が引ける。

そういう意味合いは一切ないが、ミハルの中の何かがそれを許さなかったのだ。


目が冴えてしまったせいで眠れず、ただ横になったまま過ごしていると、またもぞもぞとミハルのベッドに潜り込むものがあった。

当然、ムーシャだった。


「ベッド間違えてるぞ」

「……お昼の後の夜は、寒いので……」


謎掛けのようなことを言いながら再び寝につくムーシャ。

ガルグのベッドに入れたりもしたが、ガルグが追い出すらしく、ムーシャは必ずミハルのベッドへと戻ってきた。

仕方なく、そのまま夜を越すことにする。

途中までは抵抗していたが、何度引き抜いても必ず手を口(下)でしゃぶられるため、最後は手を抜くことも諦め、ただされるがままに、ガルグが起きるのを待ち続けた。


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