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「きらきら玉」

日が消えて、夜が来る。

夜が来たのを見計らい、ミハルは一度ガルグ達とともに町のはずれまで来ていた

理由は単純に、持ち物を回収するためだ。

というのも、ミハルはガルグと出会う直前に、この町の見張り櫓の男に道具を一つ預けていたのだ。


渡していた道具は練技で磨いた小さなガラス玉だ。

「きらきら玉」と呼んでいるこの練技は、ガラスを磨き上げて輝きを極限まで上げた状態で維持することが出来るというだけの練技だ。

闇の中でもほんのり光って綺麗なくらいで、何の意味があるのかと思われてもしょうがない用途のあまりない練技だ。

とはいえ練技の性質を考えるとまんざら無駄でもない。

仮にミハルが練技を解くこと、あるいは練技を無理やり解かれることがあれば、このガラス玉は輝きを失う。

それを逆手に取り、ミハルの無事と、場合によっては危機の接近やミハルの死を知らせられるという寸法だ。


ミハルの出撃を唯一知っていた見張り櫓の男に無事を知らせると、男は柔らかく笑った。


「ともかく、何事もなくて良かったよ」


男の笑顔を見て、なぜだかとても救われた気持ちになった。

ミハルの戦いに意味があったかどうかはわからないが、ミハルを信じてくれている人が居たという事実が、ガルグの称賛と同じくらいにミハルの身に沁みた。


「これにそんな使い道がねぇ。練技ってなぁ、思ったよりも奥が深いんだな」

「良ければガルグが持っててくれるか?

 俺以外のやつが持ってないと意味がないもんだからさ」

「ん」


きらきら玉をしげしげと眺めたガルグは、小物入れの中に無造作に突っ込んだ。


「ミハルさん! ミハルさん!!」


ニコニコと両手を差し出すムーシャ。


「どうした?」

「私の分のきらきら玉をまだいただけてないので」

「……欲しいの?」

「すっごく!!」

「……あとで磨いておくよ」

「はい! お願いします!!」


暁の勇者団離脱の際に過去研磨したきらきら玉は全てただのガラス玉に戻したため、ムーシャに渡すものは新しく作る必要がある。

磨き上げるのには結構時間がかかるが、リウミまでの道中で夜警につくこともあるだろう。その間に磨いておこう。


そうこうしながら、あれこれ話して、三人ぶらりと歩いて宿屋にたどり着く。

勇者団で泊まった時と、一人で泊まった時と同じ、あの宿屋だ。

三度目ともなれば随分な顔なじみなので、煩わしい手続きもきっと少なく済む。


「おっ、兄ちゃん! なんだい、本当に来るもんだね!」


宿屋に帰ると主人は、思ってもみない反応で出迎えてきた。

何事かと面食らっていると、主人はカウンターの奥から一通の手紙を取り出し、ミハルに手渡してきた。

そして一言を添える。

勇者様からだ、と。

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