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花祭り

町の大通りは一面造花で飾り付けられていた。

人々も身体のどこかに造花を飾り、露店や屋台、建物に楽しそうに巡っている。


数日前、少女から聞いた話を思い出す。

今年は例年よりも盛大に祭りをやる、と言っていたか。


「ああ、今日だったのか」

「んだこれ」

「何って、お祭りだよ」

「へぇー、オマツリ」


ガルグは興味深そうに周囲をキョロキョロと見回している。


「なんだなんだ、オレに内緒で、楽しそうなことしてんなぁ!

 おいミハル、アレなんだ!?」

「果実酒の量り売りかな」

「おっ、いいねぇ!! じゃあ、アレは!?」

「魔獣の丸焼きだな。小分けにしたあとで、こう、骨を持ってがぶりつくんだ」

「おっ、おっ、おぉ~~~~!!!」


ガルグは目を輝かせ、食べ物の屋台を巡る。

辛いもの、甘いもの、高いもの、安いもの、匂いが良いもの、見た目が良いもの、全てに目を奪われ、感嘆の声を上げている。

あれこれと見比べ、結局選んだのは魔獣焼きだった。

片手に魔獣の骨付き肉を持ち、かぶりつきながら祭りで華やぐ大通りを歩く。


食べ物だけではない。少し進んだ露店では手工芸や調度品なども売られている。

途中、町人の一人から造花をもらい、ガルグは肩に、ミハルは胸につけて町を練り歩く。


見るもの全てに感動しながら歩くガルグは、こう言ってはなんだが、年より随分若い少女のように見えた。


「町じゃあこんなこともやってんだな。山賊辞めて正解だ!」

「祭り、来たことなかったのか?」

「糞親父の決めた掟でな。町にゃあ入ったこともない」


必要なものはリウミで手に入れ、町に下ることはまずなかったという。

まぁ、身分証を持たないということや、リウミの方がギルゲンゲの権力が通用するということからそれはギルゲンゲなりに合理的な決断だったのだろう。

だが、合理的ではない部分に、心を惹かれるのは仕方のないことだ。


「じゃあなんであの日町目掛けて来てたんだ?」

「昼が始まったからな。町のやつが寝る夜のうちにこっそり入って見てやろうと思ってたんだ。

 あとは、まぁ、強そうなのが居たら連れて帰ろうとも思ってたか」


ギルゲンゲへの反骨心があったとはいえ、悪ガキみたいなことをやる山賊姫だ。

町に対する敵意と感じたものは、ひょっとしたらガルグたちなりの未知への警戒心だったのかもしれない。

つくづく、巡り合わせとは数奇なものだ。


「あれは大正解だったな。おかげでミハルに会えた。オレぁ幸せだ」


肉を食い尽くし、もふもふと蒸し饅頭を食べながら何気なく口にする。

ガルグは一切隠すことなく好意を表す。聞いているこっちが少し気恥ずかしくなるくらいだ。


なんと答えるかを考えながら露店通りを抜けると、一人の少女と目があった。


「おおっ!」


目があった少女は、ガルグとミハルを見て声をあげた後、へなへなと崩れ落ちて地面にうずくまった。


「……」

「……」

「……」


人々が行き交う。

ガルグも、ミハルも、少女も、無言だった。


「行くか」

「おう」


ミハルは見ないふりをした。ガルグも同じ判断を下した。

いきなりうずくまった少女の傍を通り抜けると、少女はミハルたちの進路に回り込み、再びへなへなと崩れ落ちて地面にうずくまった。

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