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激戦

すっかり目が覚め、痛みにもだんだん慣れてきた。

食事も終えると、次第に自分の格好が気になってくる。

戦った時のまま、泥まみれに調合花粉の臭いもじんわりついている。

どうしても気になったため、ガルグから入浴具を借り、子分の人たちの案内に従い風呂へ向かった。


風呂、と呼ばれているのは大きな水桶に火霊の瓶を漬けて適度に煮やしたものだった。

簡易ながら湯に浸かれて足まで伸ばせる。立派な風呂だった。


じわじわと湯に体を慣らしながら入り、身体を水に溶かすみたいに優しく伸ばす。

傷が痛むが、それでも湯の暖かさでこわばっていた心と体がほぐれていく。


「うーっす、入るぞー」


聞こえてはならないはずの声。慌てて振り返れば見えてはならないはずの裸体。

ガルグだった。

丸出しだった。

隠す気なんてさらさらない、堂々とした素っ裸だった。


「おら、つめろつめろ! オレも浸かるぞ!」

「いや出る! 出るから!! そこで待って! 入ってくんな!!」

「はぁ? んなの許すか! おら、すーわーれ!!」


立ち上がろうとした頭に腕を回され、がっちりと固定される。

頭の横に感じる、ミハルの頭と同じくらいの存在感のある柔らかな感触。

鍛えられた腕の硬さからは想像できない、沈むような柔らかさが、ミハルの頭を捕らえて離さない。

間違いなく、胸だった。


意識してしまえばもう止まらない。

肌と肌が触れ合う感触。同じ人間のものなのに、ガルグの肌の方がさらさらとしていて柔らかい。筋肉は硬いが、それを覆う肌は、女性のそれだった。

鼻孔をくすぐる匂い。汗かどうかもわからないガルグの匂いが、逃げ場を失ったミハルの呼吸に混じっていく。

限られた感覚、そこから感じる全てが……なんというか、いやらしかった。


先んじて湯に浸かり血の巡りが良くなっていたため、あられもないところに血が集まろうとする。

そうなればもう、大事件だ。

頭の中に描くのは、戦場で見たギルゲンゲの顔だ。粟立つように背中に血が渡り、ぎりぎりの均衡を生み出す。


ミハルの衝撃など気にした様子もなく、ガルグはミハルを捕まえたままそのまま湯に浸かる。

そして身体をのんびりと伸ばし、胸に抱き寄せたミハルに語りかける。


「気持ちいいだろ?」


元気よく「はい!」と答えそうになり、返答を飲み込む。

またからかわれているのか。それともひょっとして、「そういうこと」なのだろうか。

ドキドキと高鳴る鼓動は答えを探して、頭の中を駆け巡る。


「オレも好きなんだよ、風呂」

「ああ、風呂……」

「足が伸ばせるのがいいんだ。無理やり作らせてな」

「……そっか」


一言。

一気に張り詰めそうだった心から空気が抜けた。


「ん、どうした?」

「いや、なんだ……ちょっと、落ち着いた」

「へー。そうか」


ミハルが落ち着いた様子を見て、ガルグも腕の拘束を緩める。

完全に、風呂に入りに来ただけだったらしい。

なんというか、ミハルは、もう本当に、そういうもんかもしれないと思って一人で盛り上がりかけていたことが、恥ずかしかった。

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