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1対34

練技「罠師の腕」を使い、森中に無数の罠を仕掛けていく。

不用意に歩けば足を取られる草の罠。

足を絡めて引きずり倒したり釣り上げたりする蔦の罠。

水霊を用いることで一見普通の地面に深めのぬかるみを作る沼の罠。

一瞬動きを封じる足首程度の落とし穴に、その上に仕掛けた落とし穴作動と同時に降り注ぐ粉の罠。

粉の罠に使うのは森で取れる複数の花粉を調合した特製の粉で、猛烈に臭いだけだが臭すぎて意識が遠のくこともある。効果の程は実証済みだ。

木が倒れ込み罠のある場所へ避けるよう誘導する仕掛け。

茂みが揺れ、誰かがいるように錯覚させ、茂みに飛び込めば隠されていた蔦の縄に腰を縛り上げられる仕掛け。

わざとらしく積み上げられた石を避ければ沼にはまり、石を壊せば地面に隠されていた網が跳ね上がって生け捕りにする仕掛け。


勇者団所属時は斥候先はいつだって一番危険な最前線。どんな時でも全速で離脱が出来るよう、いつだって軽装での罠作成を生業としていた。

そのため、ミハルには用意に時間のかかる脱出できない深さの落とし穴や特別に器具を持ち運ぶ必要のあるトラバサミといった威力の高い罠の知識はほぼない。

だが、相手の体勢を崩し、精神を摩耗させ、立ち尽くさせて隙を作るタイプの罠ならばミハルの右に出るものはそうそう居ないと自負している。(罠にかかる相手にしか効かないが)

練技による補助もあり、簡単な罠ならば手を一度打ち鳴らすよりも早く仕掛けることが出来るほどだ。



無数の罠を仕掛けながらずんずんと森を進んでいけば、森のあちこちから悲鳴が上がりだす。

気にもとめずに罠を仕掛けていく。

その間も索敵は怠らず、山賊の誰かが近づくようならば即座に息を殺して影に潜む。


木の影で山賊が通り過ぎるのを待ちながら、随分と自身の感覚が冴えているのを感じた。

心のどこかが吹っ切れたのか、背負ったものの違いか。

罠を仕掛ける心に淀みがなく、心の余裕の現れか髪を梳くように罠を仕掛けられた。

そして、これだけの大人数を相手にしながらも、全ての動きを把握して罠へと誘導できている。


一人、また一人と罠にかかって身動きが取れなくなっていく。

警戒心の強い者にはわざとらしく火矢を放ち、こちらの存在に目を奪わせて死角に仕掛けた罠を踏ませる。


開幕の合図が鳴ってからどれくらいの時間が経ったか。

折る指は一本二本で足りるほどの時間で、ガルグの見立て通り、ミハルは34人の山賊を罠に絡め取っていた。


「踏破の脚」で森を駆け、身動きの取れない山賊を一人ずつ念入りに無力化していく。

粉の罠でおなじみの臭い粉をかがせて悶絶させて抵抗する気力を奪い、手足を頑丈に縛り上げる。


「……よし」


声に出して気合を入れ直す。

34人を無力化したあとに残っているのは、頭領ギルゲンゲ……つまり、ガルグの親父のみだ。

感じる限り、ギルゲンゲは最初の位置から動いていない。アジトの前に陣取って、こちらの到着を待っている。


気になる点は一つ。

感じる気配が、強さがどんどん増している。

作戦会議の段階で、ガルグ自身ギルゲンゲがどういう戦法を取るかは知らないと語っていた。

そもそも現場を離れて長く、高齢のため全盛期がいくら強かったとしても今は戦えるかどうかも怪しいと話していたが。


(先に、見ておくべき……か)


斥候兵として培った経験が警鐘を鳴らしている。

この戦力の増強が練技によるものだとするならば、ガルグと合流するまでにかかる時間で更に強くなる危険もある。

増力の秘密を探り、必要とあらば破壊工作や撹乱を行うこともミハルの本領と呼ぶべきだろう。


手近な木に登り、ガルグの方から見える空に向けて小さな袋を放り、火矢を放つ。

袋の中身は燃えると鮮やかな色で燃える粉(これは花粉ではなく霊素粉だ)だ。

一射目、青。子分の無力化が完了したことの合図。

二射目、赤。想定外の事態が発生したことの合図。

三射目、再度赤。合流せずに先に行くことの合図。


ガルグの居る方から青い光が見える。了承の意味だ。

ならば先に進もう。斥候兵の戦場は、いつだって交戦直前の最前線だ。


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