表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
109/209

目覚めればまた

○ユイ



……



……



長い間、眠っていた気がする。

身体が重い。血が泥になってしまったようだ。

ゆっくりと瞼を開けば、なんだか丸っこい顔があった。


「お、目が覚めましたか!」

「……貴方は?」

「そうそう、ユイさんとは挨拶がまだでしたね。どうも、ムーシャ・モーシャです」


ユイの問いかけに答え、律儀に頭まで下げる少女。ふわふわな飴色の髪が揺れる。

色の見え方から光の色を知る。火霊のもたらす赤い光ではない、太陽のもたらす透き通った光だ。

昼。

どれくらい寝ていたかを考えようとして、全てを思い出した。

雲霞のごとく押し寄せる死体たち。

共に戦った禿頭の山賊。

力なく倒れた自分。

『魔王の翼』。

ヨミ。

『枯れ果てる時の大河』。

『唯牙抜剣』。

そして―――


「ミぃくんッ!?」


―――ユイを背負い、戦場を駆け抜けた幼馴染、ミハル。ずっと探していたその背中、そのぬくもり。

身体を跳ね起こし、ミハルの姿を探す。

部屋の中にはムーシャと名乗った少女と緋色の髪の女性しか居ない。

この二人には見覚えがある。ミハルに背負われ駆けた戦場で、共に戦っていた人々だ。

ミハルの新たな仲間。もしくはヨミ討伐に急遽加わった義勇兵。どちらでもいい。ユイはただ、ようやく再び出会えたミハルの面影に手を伸ばす。


「あの、ムーシャさん! ミぃくん……ミハルは!!」

「ミハルさんなら今魔おふがふがふが」

「寝起きから威勢がいいねぇ。疲れはとれたってか」


何かを語ろうとしたムーシャの口を、緋色の女性が抑え込む。荒々しさを感じる肉付きとは異なる、優しい手付きだった。


「オレはガルグ。ミハルの……『今の』ミハルの仲間だ。

 こっちの非常食も合わせてしばらく三人で旅してた」

「ほぉっほぉ?」


ガルグの瞳がぎらりと光る。警戒されている、そう感じた。

身構えようとして、理解する。今のユイは、敵意を向けられても仕方のない有様のはずだ。

だから、すぐに謝罪した。


「申し訳有りません」

「は?」

「その痛みは、私の練技のせいです。未熟さから、まだ抑え込むことができておらず……ですが、こちらに攻撃の意志はありません。

 私は、ユイと言います。ミハルの知り合いで……」


ユイの持つ『最善にして最良なる者』の力。感情の振れ幅に合わせて垂れ流される『聖なる力』。

目覚めて一発目に痛みを振りまかれれば警戒されても仕方ない。


「ぷへぇっ! ああ、はい、知ってますよ! 『最善良』のユイさんですよね!

 ミハルさんからお話は常々ふがふがふがふが」

「起き抜け一発目がそれたぁ、案外苦労してんだな。噂の勇者様も」


さして変わった様子はなく、ムーシャはにこにこと朗らかな表情のまま、ガルグは少しばかりの警戒心を瞳に宿したまま。


「ユイ……って、呼ばせてもらうぞ。

 ミハルに会う前に、ちょっとオレらと話をしようじゃないか」


嫌な予感がする。

粘つき淀んでいた血液は、胸の早鐘に従って体中を慌ただしく巡り始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ