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山賊姫の願い

ガルグが普段着という感じの軽装に着替え、目のやり場にも随分困らなくなったところで話し合い開始となった。

話題はわかりやすく、ミハルについてとガルグについての二点だ。


まずはミハルについて。

ガルグはミハルの素性や来歴、職種、能力、町との関係など気になることを次々に尋ねてきた。


ガルグの要求を信じてここまでついてきた以上、嘘を教えるという気持ちはさらさらない。

こればかりは、ガルグの人となりに対する直感が当たっていることを信じるばかりだ。


自身の職と、行える技についてをまず話し。

次に町との関係や、ガルグたち山賊チームと敵対した理由を話す。

そして最後に、ミハルの素性を話す。

ただ、流石に元勇者団という素性ばかりは話すわけにも行かないので、そこは「冒険団」(単なる冒険者の集団だ)に言い換えてあらましを語った。


リーダーとは幼い頃からの付き合いで、その縁で団の旗揚げ時に斥候兵として徴用されたこと。

団の増員に従い上位互換職の人物が雇用されたこと。

団を追放されたこと。


団に所属し駆けていた時はあれだけ長く感じた三年間も、かいつまんで語ればそれだけで済んだ。


「アンタのお仲間は見る目がないな。

 まぁ、そのおかげでオレがアンタを手に入れられたんだから、感謝しなきゃならないけどな」


寝床に座ってくつろぎながら話を聞いていたガルグは、ミハルのこれまでの物語を聞き終えた後にそう添えた。


「言うほどか?」

「言うほどさ。オレはアンタを見た時に感じたんだ。

 こいつと一緒なら、ようやくオレの夢を叶えられるってね」


森の中で聞いた言葉を思い出す。

ガルグの夢。

まったく予想していなかったが、なぜか信じられた言葉。

それを今、改めて聞き直す。


「なあ、ガルグ……もう一回確認するけど、ガルグの夢って」


ガルグは顔を寄せ、ミハル以外には聞こえないよう声を潜めて答える。


「言ったとおりさ。オレはこの山賊団相手に全面戦争を仕掛ける。

 そんで、山賊団をまるごと叩き潰して、山賊稼業から足を洗って旅に出る。

 ミハルにゃあ、オレの補佐役として、一緒に戦ってもらう」


改めて口にされたガルグの願い。

それは、山賊団を辞めるために山賊団を叩き潰すこと。

聞き間違いではなかった。


どういう意味かと重ねて尋ねる前に、山賊一味の一人が風呂が焚けたと伝えに来た。


「なんで山賊辞めるために戦争おっぱじめる必要があるかについては、心配しなくともすぐに分かるさ。

 風呂が終われば親父への報告だ。どうせそこで話になる」


そう言って、ガルグは手近な布を手に取り風呂の準備を始める。

ミハルは、ガルグの言葉の意味を考えながら椅子に深く背を預けた。


「あ、一緒に入るか?」

「やめとく」

「そうか……覗くなよ?」

「いいからさっさと行ってこい」

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