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剣聖、拾われる

 「......知らない天井だ」


 そう思いながらあたりを見渡す。 俺はどうやら、ギルドの救護室のような場所で、ベッドの上に寝させられているらしい。 体を起こそうと思っても、ふらついてしまってうまく起きることができなく、試行錯誤していると、ふいに扉が開く。


「あ、起きたんですね。 おはようございます。 大丈夫ですか?」


 そういって、水色の髪の、美少女が近づいてくる。 服装を見た感じ、ギルドの職員のようだ。


「大丈夫なんですが、体が起きないんですよね」


 俺がそういうと、職員は少し驚いたような顔になった。


「それは当然ですよ。 あなたは今、ものすごくげっそりとした顔をしていますよ? ろくに食事をしていないでしょう? とりあえず、これを食べてください」


そういって、食事を渡されるが、腕が動かなかった。 どれだけ力を籠めても、動かなかった。 その様子をみて、ギルドの職員さんは「ふふっ」と 笑うと、スプーンのようなものを持ってきて、


「はい、あーんしてください」


 そういって、食事をすくって口元に運んできてくれた。 かなり恥ずかしいが、今は仕方がないので、あーんをして食べる。 それからしばらく繰り返して、食事を終えた。


「手間をかけさせてすいません。 レイといいます」


「レイさんですね。 私は、このギルドの職員をしている、リリスといいます。 よろしくお願いしますね。」


 そうやって、リリスさんはニコっと笑ってくる。


「それで何ですが、レイさんは、その状態で草むらに倒れているところを3日前に保護されました。 体に傷はありませんが、体はかなりげっそりとしています。取り合えず、覚えている範囲で何があったか話してもらえますか?」


 それに対し、俺は少し悩んで、


「話さないとダメなんでしょうか?」


「はい。 話さないと、これ以上ギルドで保護することはできませんね......。 今のレイさんはとてもひどい状況ですが、火種を抱えているかもしれませんし」


 そう言う彼女の目つきは、さっきと違って真剣だ。 俺は、別に隠すこともないだろうと思い、ありのままあったことを話すことにした。


「今はギルドカードをなくしてしまったもう持ってないが、俺は元SSランクパーティーのメンバーのレイだ。 役ただずだのなんだの言われていた奴だ。 俺は、パーティーで最難関ダンジョン《鬼の住処》を攻略中に、仲間に囮にされ、捨てられた。 そして………」


 ありのままあったことを話すと、リリスさんは同情してくれたのか、泣いてしまった。


「ぐすっ、大変だったんですね......事情はわかりました。 だから、もう大丈夫ですよ!」


 そういって、ムギューーっと抱きしめてくる。 今の俺の見た目はよほど酷いのだろう。

しかし、それより問題がある。


「リ、リリスさん! あ、当たってる! そ、その。 む、胸が!! ちょっ、やばい!!」


「あ、ごめんなさい!! 苦しかったですよね......」


 そういって彼女は赤面しながら離れてくれる。 俺はそれに対し、「大丈夫ですよ」と言っておいた。


「何はともあれ、色々大変なことがあったのは分かりました。 最難関ダンジョンを攻略したってのは少し信じ難いですか......」


 そう思うのは無理もないだろうと思い、宝箱に入っていたコートと剣を取り出す。


「そう思うのも無理はない。 これは迷宮でとれたものだ。 これを鑑定してもらいたい」


「ええ、分かりました。」


 そういって彼女は、剣とコートをもって退出していった。 ギルドには、職員に必ず鑑定士がいるので、近いうちに帰ってくるだろう。


 これからどうしようか、そう考えていると、リリスさんがものすごい形相をして戻ってくる。


「レ、レイさん!!!」

「は、はい!」


 何かあったのだろうか。 あまりの勢いに驚いて、少し改まってしまった。


「この2つ、とんでもないんですけど? まず、剣の方は、魔剣で、氷属性です。 そのうえ、自動修繕だったり、切れ味がSだったりと、規格外ですが、何より一番おかしいのが!!! この剣、破壊不能なんですけど!!」


 そうやって、迫られる。その上キャラが崩壊している 無自覚なんだろうが、勘違いしてしまいそうなのでやめてほしい。


「リ、リリスさん。 近いです、顔が」


 そういうと彼女は、「はっ、すいません!」といって赤面しながら落ち着く。 ちなみに、魔剣というのは、一見邪悪そうだが、そんなことはなく、魔法の属性が込められている剣だ。 魔法には、四元魔法と呼ばれる、火水土風の4つと、回復魔法の光。そして、その上に、派生魔法と呼ばれる、氷と雷がある。 他には支援魔法などがある。 魔剣は、魔力を流して切ると、その属性の特徴を出せる。 火だったら切られたところが燃え出す。


「大丈夫ですよ。 それより、コートの方はどうだったのか教えてほしい」


「はい、分かりました。 コートの方は、まず耐久性がSです。 それに加えて、自動修繕、状態異常無効化、そして、魔法反射がついています。 私はもう何も言いません」


「はい、もうおなかいっぱいです。 切っても切っても壊れない剣に、魔法でも状態異常でもなんでも無効化しちゃうコート。 ハハハ....」


 予想以上にとんでもないものだった。 これらに加えて、今の俺のステータスと、剣聖の剣技に、剣術lv.10の剣術。 なんにでも勝てる気がするな。


「とりあえず、とんでもないことですが、これでダンジョンを攻略したことは証明されました。 入手場所が《無限》と書いてあったそうです。 そして、これからなんですが、何か考えはありますか?」


 そう聞かれると、何もなかった。 今までパーティーの雑用をしたりして、他のことを考える余裕がなかったからだ。 ちなみに、ここの人たちは、そのパーティーのことぐらいは知っているが、実態は知らなかったらしい。


「何もないですね。 第一、ここがどこなのかもわかりませんし。」


「そうですか。 ここは、アーノルド帝国の、リティアという街ですよ。」


 《無限》があったのもアーノルド帝国だ。 ということは、あまり遠くには飛ばされてなさそうだ


「何も行く当てがないのなら、ここで働きませんか?」


「それはつまり、ここの専属の冒険者になるってことですか?」


「はい、そうです。」


 専属冒険者、それは、言葉通り、そのギルド専属の冒険者になるということだ。 普通の冒険者より、依頼を達成したときの料金が増える。


「私たちとしては、レイさんのような戦力を手放したくないです。 もちろんなってくれるなら、治るまでここにいてもらっても構いません」


 普通なら断ることが多い話だが、今の俺にはあまり欲求がない。 SSランクパーティーの雑用として生きてきたから、あまりやりたいことがないのだ。


「わかりました。 やりますよ」


「本当ですか!??」


「ええ、他に特にやりたいこともないので」


「ありがとうございます!!」


 そういって90度に腰を曲げてくる。


「そんなにかしこまらないでください。 元々助けてもらったのが俺の方なんですから」


 そういうと、リリスさんは、にこっと笑って、


「ならそっちも無理して敬語を使わなくて大丈夫ですよ。 これからよろしくお願いしますね、レイさん」


「わかりました。 リリスさん」


 そういって握手を交わす。

 
















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