魔法少女=血風漂う戦場の覇者だった者のなれの果て
皆様、新春のお慶びを申し上げます。
今年もどうぞよろしくお願いいたします!
前話を読んでいない人の為の、ラッカ・セイ元将軍のキャラ紹介☆
コロポックルとして生まれ、コロポックル村で育ち、
……すくすく育ちすぎて身長2m越えの巨漢になってしまった。
そこでコロポックル村にはもういられないと、木刀一本を相棒に旅に出た。
巡り巡って魔王の軍に身を投じ、家臣としてめきめきと頭角を現してやがて四天王にまで上り詰め……
……そして今なぜか、ピンクのフリフリ☆ミニドレスを着用して武者修行と体当たり的人助けの日々。
主人公の父である先代魔王によって精神汚染系の呪いにかけられ、己を『魔法少女』だと思い込んでしまった歴戦の武者系元将軍ラッカ・セイ(妻子孫曾孫玄孫持ち)。
そしてラッカ・セイが蹂躙した森の広場のゴリラさん達の前で、対峙することとなった勇者一行。
この現場を、カオス以外の何という言葉で表現すれば良いのだろうか。
「お、お前がこの山の妖怪っそうだな!? そうに違いないな!?」
「一体何事を述べているのか存ぜぬが……この場に目的合って足を踏み入れたというのであれば、某とて容赦は出来ぬ。そなたらも諸共に、悪の手先に違いない。この『らぶりー☆すてっき』にて殲滅してくれよう!」
そう言って、ラブリー☆ステッキ改めどう見てもクレイモアを物凄い風圧を伴って振り上げるラッカ・セイ元将軍。
でっかい武骨な(※ただし現在はピンクのハートとリボン塗れな)剣を振り上げた姿がポーズ判定を受けたのか、周囲に飛び散るキラキラ☆ハートのエフェクトたち。
面妖な光景に、勇者達は息を呑んで怯むしかない。
色々な意味で精神的にクる敵の姿は、誰がどう見ても想定外の代物だ。
単純にミニスカートだけでも視界の暴力である。
身に纏ったドレスのデザインが愛らしいだけに威力は倍増だ。
王宮という深窓で育った現役王子様である勇者は、心情的にまさに『未知との遭遇』と言っていい。同じく丁重に育てられた高位貴族の他二名も同じく、魔法使いの少女だって知らない世界を垣間見たのか目を回し気味だ。健全な青年や少女たちの脳がえらいことになっている予感がする。
草陰で一部始終を傍観している魔女王様はどうしたものかと途方に暮れた。
こっちにとっても想定外。
そもそもなぜ、ラッカ・セイ元将軍改め自称『きゃらめる☆ぴ~なっつ』殿は森のゴリラたちを殲滅してしまったのだろうか。
その行動理由が読めずに困惑していると、ハコベの手に調査員の黒子から追加資料が送られてきた。
「なんと……陛下、ラッカ・セイ元将軍が何故あのゴリラどもを沈めたのかわかりました」
「え、理由がわかるのですか」
「はい、多分ですけど。セイ元将軍は、魔法少女の呪いを受けて国を出奔して以来、先代魔王を倒すべく武者修行に明け暮れていたようですけれど……それと同時に自分のような被害者を出さぬよう、魔王の関与が疑われる現場に居合わせる度、魔王の意図を受けているだろう魔国の者共を強制排除して魔国に叩き返していたようです。結果的に先代から他国への被害が激減して、国際問題が減ったのですから私達にしてみれば万々歳ですけれど。というか私達の知らないところで、あの野郎、方々に火種ばらまきすぎですわ。把握していなかった事案がリストにごろごろ乗っているのですけれど」
「それは……後でその報告書、詳しく見せてください。私も把握していませんでしたし、他国への賠償を少し考え直す必要が出てきそうですから」
「承りました」
ということは、である。
どうやら山の奥の怪しいゴリラの集団を、偶然見つけられて、である。
ネモフィラが新たに即位したことを知らないらしい魔法少女(爆)が、どうやら先代魔王の差し金と勘違いして殲滅したというのが事の真相のようだ。
そして物知り顔でそこに後からやってきた勇者一団が、どうやらラッカ・セイ元将軍に関係者と認知されてしまったような予感。
勇者一行は勇者一行で、騙されるがままここには人々を苦しめる妖怪がいると思い込んでいるので、さあ大変。
どうなる勇者一行。
戦闘経験知的にも実力的にも、そして気迫的な意味でも勇者一行が勝てる予感がしない。
勘違いと誤解から始まった、元魔王の四天王VS現役勇者一行の戦い――
――ああ、文字にすると字面だけならとっても精神衛生上まともに感じられるのに。
だというのに、現実は。
「ふんぬぉぉおおおおおおおおっ」
「ぐぅ……っ くそ、みんな下がれ! 今の俺じゃ、攻撃が重すぎて何度も耐えられない!」
「殿下、何とか凌いでください。今、物理耐性を上げる術をかけます!」
雄叫びを上げる、ピンクのふりふりミニスカート(筋骨隆々)。
呻きを漏らしながらも、クレイモアを何とか受け止めて苦しそうな顔をする勇者。
勇者の足元は圧と威力に押されてか、がりがりと地面を削って後ろへと強制的に下げられる。
怒涛の、と言えるほどの手数はない。
だが一撃一撃が信じられないほどの重みで、的確に勇者の力を削いでいく。
むしろ一度や二度でも受け止めることができ、それに耐えているだけ王子の能力は高い。
思ったよりも勇者は強いようだと、見ているだけのネモフィラは評価を上方修正した。
後ろに庇われる形になる、お供の三人――公爵子息と公爵令嬢と、魔法使い。
攻撃を受けるに必死で、膠着した勇者の状況。
それを見て取って、最初に動いたのは公爵令嬢だった。
「行きますわ!」
裂帛の気合。
そんなものはなかったはずなのに、彼女の宣言には同じだけの力が感じられた。
白いレースを風になびかせ、勇者の陰からデイドレスの公爵令嬢が飛び出していく。
「エーデルワイス! 待て、まだ術が……!」
「そんなものを待っていては機を逃します」
慌てる公爵子息の引き留める声など、意にも留めることなく。
公爵令嬢は、しっかりと地を踏みしめ、レースの手袋に包まれた手元を腰に引き付けて。
「はっ!」
ぼぐぅっと。
良い音を立てて、公爵令嬢の拳が魔法少女(爆)の左脇腹に叩き込まれていた。
「ふぉおおおおおおおっ!?」
そして横からの衝撃に、吹っ飛ぶピンクのふりふりミニスカートを纏った武人。
どうやら外見からしてどう考えても有り得ない、想像の埒外にあった公爵令嬢の腕力に、心と体の準備が出来てない状況でぶち当たってしまって踏ん張れなかったらしい。
だがそれにしても、あの筋肉の鎧に覆われた巨体が吹っ飛ぶとは。
予想外の後に訪れた予想外の光景に、ネモフィラとハコベの目が点になった。
「相変わらず馬鹿力だな、君は!」
「淑女に馬鹿力とは失礼でしてよ、ロニウス。それより貴方こそ、急ぎ回復と物理耐性をくださいませ。ああ、攻撃力上昇は要りませんわ。自前の腕力で十分ですもの」
エーデルワイス・グレイハウンド公爵令嬢
属性:怪力キャラ
つまりはそういうことである。
彼女の言動に時として極端に怯んだ顔を幼馴染であり親戚であり、一人に至っては許嫁でもあるはずの男たちが見せるのも、幼い頃から培われたものがそうさせるから。
貞淑そうな顔をした可憐な公爵令嬢による、身内以外には一切見せない腕力任せの無茶ぶりに散々振り回された結果なのである。
そして、残された面子の中。
「あ、あ、あ……っえ、ええと、つ、追撃!」
杖を振り上げる、小柄な魔術師クミン。
彼女の杖から、土属性の黄色い光が地に注ぐ。
……光が注いだ場所から、ぼごっと土を割って白いナニかが這い出してきた。
「へっふへぇぇぇええええええ!?」
怖気に塗れた、勇者の悲鳴が響く。
大地の下から出てきたのは、白い骨だけで構成された亡者の群れ。
四体ほどの白骨……骨格からして狐・狸・鼬・猫のアンデッド達が、我先にと吹っ飛んでいったピンクを追いかける。
場は一層の混沌に満ちつつあった。
「ど、土属性魔術師って話だったよな……っ死霊術師の間違いじゃなく!?」
「クミンの魔術は死霊術ではありませんわ。ただ『骨』を操っているだけで、死霊には干渉していない、という話ですもの」
「ち、違いがわからねぇぇええええっ!」
鳥肌が立ったらしい腕をさすりつつ、勇者の叫び。
そんな勇者の体を慰めるような、温かい金の光が降り注ぐ。
「お?」
「まあ、やっとですの? 遅くてよ、ロニウス」
「色々と突拍子のないことばかりされても困る。もっとこちらの準備も考えてくれ」
苦情に眉をしかめる、公爵子息ロニウス。
神職でもないのに、何故か回復魔法を使う男。
幼い頃から子守を押し付けられてきたガラム・マサラ王子様を殴る内に、流石に殴って怪我させて後から問題が出たら……と考えた結果、だったら殴って怪我をさせても即座に治せるようになれば問題はないはず!という極端な結論に至ってしまった公爵子息様である。ちなみにその結論に達した当時の御年、十一歳。
そこから真面目に王子様の付き人の片手間に回復魔法を勉強し、独学で身に着けてしまったのだから恐らく素質があったのだろう。ちなみに家庭学習で回復魔法を会得した者は、彼らの王国始まって以来と言われている。
補助魔法まで身に着けたようなので、おそらく神職関係者がいれば涙を流して惜しんだ人材に違いない。
そんな彼の才能の使い道が、王子をどついて怪我をしたら治すことなので色々と手遅れ感が半端ない。
「あら?」
「どうされましたか、陛下」
「いえ、見ていて思ったのですが、これはもしや、勇者一行の実力と傾向を測る絶好の機会なのでは……?」
「そういわれると……いえ、駄目ですね。先程は吹き飛ばされましたが、ラッカ・セイ元将軍がやられっぱなしとは思えません。十分に測る間もなく、潰されてしまうのでは?」
「それは困るわ。情報によると勇者一行は、王国の身分尊き者達なのでしょう? ここで潰されてしまえば国際問題……でもここはまだ王国内ですね? ここで潰されても、我が国に咎は及ばない……?」
「いえ、それも駄目でしょう。潰したのが我が国の籍にあるとバレたら、どのみち国際問題です」
「それもそうですね。でもこれ、どうやって止めましょう」
憂いを帯びた溜息が、ネモフィラの口から零れ落ちる。
どうしたものかと頭を悩ませる姿は、麗しい容姿の儚げな雰囲気を増して美しいの一言だが。
その憂いの原因が、半分はピンクのミニドレスを纏った武人に占められている時点で酷いとしか言いようがない。
「あの戦いを治めねばなりませんね。でも止めるにしても、どちらに干渉するべきなのかしら……?」
荒ぶる魔法少女(爆)を止めるか、勇者一行を止めるか。
強引な手段を使うにしても、今はまだ姿を見せたくない。
そんな状況で、そんじょそこらの相手では対応不可能な戦いに介入せねばならないのだ。
魔女王様の憂いは、深まっていく一方である。
「決めました。姿を見られるわけにはいかないから……私は、これで行きます」
「陛下、思い留まってください……!!」
悲壮な決意を固める、ネモフィラ。
必死に取りすがるハコベが、両手で押さえた白い手には……80デニールの、カラータイツ(辛子色)が握られていた。
果たしてネモフィラはカラータイツ(辛子色)を……?
a.被る
b.被らせる
c.投げつける
d.食べさせる
e.違うものを使う




