目覚めた力、芽生えた友情
森の中で目覚めた。生い茂る草が背中にチクチクとあたる。目の前に広がる木々の隙間からは青い空とそこから漏れる光。穏やかで静かな場所だった。俺は昨日までの記憶を整理する。確か昨日、テイマーの中級クエストに参加して、その時に出てきたドラゴンスライムへの囮にされたのは覚えている。どうして生きているのか不思議で仕方ない。抵抗の甲斐も虚しく殺されたと思ったが…。昨日の騒動の原因のドラゴンスライムも今はどこかへ行ってくれたようだ。
取り敢えず俺は街へと帰ることにした。俺は上体を起こしてから背中の草木を手で払い、立ち上がった。その瞬間、
「ティロンッ」
と鐘のなる音みたいなのが聞こえた。何かと思うと目の前に光る板が現れた。何やら書いてある。
「んー?なんだ?テイマー‥チュート…リアル?初めにスキルが付与されます?なんだこりゃ」
危険な感じはしないが不気味だ。チュートリアルってことは、これから何か起こるのだろうか?俺はその光る板に恐る恐る手を触れる。
『テイマーの承認を確認。これよりスキル
《獣と人の友情契約》
を付与します。』
この文字が出終わると光る板から虹色の光が迸った。やがてその光は俺を包み込んで俺の中に入ってきた。その時、なんとも言えない気持ちよさと頼もしさに包まれた気がした。光が全て俺の中に入ると、
『スキルの定着を確認。称号
《下っ端テイマー》
を獲得しました。これよりチュートリアルの実践を開始します。』
と光る板が言ってきた。何やら低いランクの称号らしい。だが、今は称号よりこれから来る実践とやらに集中しなければ。
『スキルの使用法の説明、その後実践を開始します。パネルの(進む)をタッチして下さい。』
ふむ。この光る板はパネルと呼ぶらしい。俺は言われた通りに進むをタッチした。
『スキルの使用法。通常のテイムと同様の方法。但しモンスターの信頼度が高いほど成功率は上昇します。信頼度は触れ合いや餌、頼みごとを聞くなどして上昇させることができます。』
信頼度?初めて聞く。通常のテイマーは魔力によってモンスターの精神を操るが、違うのだろうか。とにかく、早速試してみることにした。適当なモンスターを探して、森を散策する。ある程度進むと、後方に気配を感じた。弱々しい気配。俺は向き直りその方向へ進み出す。するとそこには、頭に鉢巻きをした青いスライムがいた。怪我をしている。よし、こいつをテイムしてみよう。そう思い手を伸ばすと、後方に下がられてしまった。どうやら信頼度が足りてないらしい。悩んでいると、スライムの上にパネルが出てきた。
『ファイタースライム Lv1 信頼度2 難易度 普通』
と書かれている。どうやら本当に全く信頼されていないようだ。触れられないなら餌しかない。俺はポケットを弄る。幸いなことに携帯食がいくらか残っていた。俺はそのクラッカーというにはあまりにお粗末な携帯食を食べやすそうなサイズに砕いて葉っぱの上に乗せてスライムの前に出した。スライムは懐疑的な顔をしながら携帯食を食べ始めた。俺はその間にポケットにあったなけなしの薬草を貼り付ける。すると信頼度が33まで上がった。そのあと近くにあった池に連れて行き、水を飲ませてやった。信頼度は52になった。スライムは満腹になったようで気持ちよさそうに池のふちをコロコロ転がっている。その度に汚れている鉢巻きが気になった。俺はスライムを静止させ鉢巻きを取ろうとした。が、想像以上に激しく拒否されてしまった。取り上げられると思ったのだろう。俺は慌てて鉢巻きを洗いたい旨をジェスチャーした。それが伝わったのかスライムは寄ってきて鉢巻きをこちら側に近づけてくれた。それを丁寧に取って池の水で洗う。
「もうちょいでキレイになるからな」
池の水に、鉢巻きに染み付いた泥や埃が溶けていく。すると鉢巻きは間違えるほどキレイになった。水をよくきってスライムの頭に巻いてやる。キレイになった鉢巻きを見てスライムはピョンピョン飛び跳ねた。その時、パネルが現れた。
『信頼度が100に到達しました。テイム成功率は100%です。』
俺はスライムに触れ、テイムの魔法を発動した。
『テイムに成功成功しました。』
初めてのテイムに成功した。
「よし、お前の名前は、スラ吉だ。これからよろしくなスラ吉。」
スライムはウキューという声で答えてくれた。するとパネルが出てきて、
『このモンスターの信頼度はMAXです。バディにすることができます。バディにしますか?』
と聞いてきた。俺は「はい」と答える。
『バディを決定しました。以下の特典が付きます。
スライム語理解
同系統モンスターテイム成功率アップ
同系統モンスター信頼度上昇等アップ
バディモンスター成長速度アップ
バディモンスターへの無言使役能力 』
畳み掛けるように大量の情報を提示される。何やら今後スライムをテイムしやすくなったみたいだ。言語の理解とはいい能力を手に入れた。
「よろしくな。スラ吉」
俺が言うとスラ吉も
「よろしくね!」
元気よく返してくれた。俺はスラ吉を肩に乗せて、街へと向かう。まずは俺の生存の報告をしなくてはならない。街へと向かう道で、スラ吉は何度も俺の頬にすり寄ってきた。




