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身分詐称の辺境魔女殿  作者: 東堂 灯
辺境の魔女殿
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建国神話と統治法

※表現に違和感があったので、少々訂正致しました


何故、こんなに微妙な雰囲気になってしまったのか。

初歩だけしか使えないことにがっかりさせた?…ううん、魔法に関して、話を聞く限りでも先代より使える自信はあるわ。…試験に合格出来るお墨付きはもらったけど、合格してないのかって思われたのかしら…


「あの、私に魔法や知識を教えてくれた母はそれなりに優秀な魔女だと聞いたわ。ちゃんと正式な魔女だったらしいのよ?厳しい人だったから、娘だから採点を甘くした訳ではないと…思うのだけれど…」


そもそも、比較対象が居なかったし、私は確信してるけれど、母が正式な魔女って証明も出来ないのよね…


「あぁ、いや、ティナが優秀な魔女なのは聞いててて分かる。御母君もさぞ高名な魔女殿だったのだろう。…少々、こちらの魔法に対する無知さを考えるとな…」

「えぇ、私達は魔法に対して、何一つ対抗できない様ですから…」


あぁ、なるほど?そうね、そうよね。流石にここまで情報がないんじゃあね。


「まぁ、ある程度なら私だけで事足りると思うわよ?…それ以上になると、よっぽどだもの。諦めてちょうだい。」

「ティナは…潔いな…」


だって、私、知識だけならトップレベルな自信あるもの。それでも対応出来ない事態なんて、どうにもならないわよ。


「ギルバート王子?私、これでも優秀な魔女ですのよ。その私がギルバート様の護衛を任されておりますもの、そうならない様に努めますのでご安心下さいませ?」

「…それもそうだな…考えても仕方ないか…守ってくれよ?優秀な俺の魔女殿?」


にっこり笑ってあげれば、ちょっとは安心したみたいね。そうそう、諦めて吹っ切ってしまえ。


「それにしても…何故お母上は皇国へ戻られなかったのでしょうか?」


うん?


「あぁ、そうだな…正式な魔女だったんだろう?皇国では国王の代理も務められる程の魔女だったなら、帰国しないのは不自然じゃないか?」

「…母が皇国に入れなかったのは、私がいたからよ?黒髪黒目に対する拒絶は、今よりもっと酷かったらしいわ。」

「あの声明か…それでも、ある程度の権力があれば押し切れるんじゃないのか?…そうでなくとも、魔法も優秀なら、色変えの魔法を気付かれずに使うことも出来そうだが?」


あれ?何か勘違いしてる?


「ええと…そうね、まず、色変えの魔法だけれど、人相手ならば誤魔化しようはあるわ。でも、国境には特殊な結界があるのよ?そこで全て弾かれるわ。」

「人相手なら誤魔化せるのか…」


皇国の結界は…というより、国境にある結界は隠匿の強制解除が盛り込まれているのよね。強制自白でもあるらしいけれど。

人相手なら誤魔化せるのは当然じゃない。上位の魔女が本気で隠蔽する魔法に、下位の者が気付くのは、なかなか大変なのよ?


「つぎ。これについては、何か勘違いしている様だから説明するけれど…スピカに貴族制度はないわよ?だから権力で押し切るなんて無理ムリ。」

「は!?」

「え!?」

「貴族制度がないんですか!?」


やっぱり。

まぁ、貴族制度が当たり前だし、…スピカが特殊なのよねぇ。変則的に()()()()として存在するし…


「いや、待ってくれ。スピカには王族が居るだろう?」

「ええ。王族は王族として存在しているわよ。()()がいないだけ。…ちなみに、王族だって、権力はほとんどないに等しいのよ?」

「どういう事だ?それなら国として成り立たないだろう?」


うーん。


「ええと、なら、スピカの建国史から説明させてちょうだい。…そもそも、スピカの王は、王族の中で最も優秀な()()の呼称でもあるのよ。」


スピカの歴史は古く、それこそ神代から続くとれているのは知っているわよね?…建国史って言うより、もはや建国神話よ。要となるのは、〈神の泉伝説〉だもの。


元々、王族は神の泉を守護する一族だった。神は泉の守護者達へ、奇跡を起こす力を分け与えた。やがて神は去ったが、神の力は残り、魔法と呼ばれるようになった。その頃には、奇跡は薄まり、一族とも呼べないような血族の末端にも使える者が現れていた。

…魔法は神の奇跡の力。泉を守る為に賜った御力は、いつしか悪事にも使われるようになった。憂いた一族の長は、魔法を管理するべきと定め、散らばった血族を集めた。これがスピカ皇国の始まり。


「王族は、…そうね、神官みたいなものなのよ。だから、〈神と対話できる者〉として、力の強い者が長…王になるの。」


だからこそ、王族は()()として存在しなくてはならない。…ほら、神が存在するのに神官が居ないとか、色々と困るでしょう?


「あぁ、それは分かる。…だが、貴族が居ないと国としての統率がとれないだろう?」

「うーん…なんて言うか、感覚の違い、に近いのかしら。スピカの王は、最も力ある魔女なのよ。王族として存在している人々の魔法は、どういう訳か他と一線を画しているらしいから。…問題事は…大抵の事は、魔法で解決できるわ。」


それに、統率、統率って言うけれど、統率なんてとってないのよ、あの国。国って呼ぶのも烏滸がましい位にね!


「それに、国としての統率だけれど…そもそもが魔法の管理()()として建国された国なのよ。統率は魔法に関してだけ出来れば良いとも考えられているわ。…正直、貴族が貴族として存在する理由が、あの国にはないのよ。」

「貴族の存在理由…か。」


1つは、王の負担を分散し、軽減する事。本来、1人で出来ることは限られるもだから。…これは、魔法が介入した事でほとんど解決したの。そもそも国民がほとんど魔法を使えるのよ…?問題が起こっても対処できるし、原因のほとんどが人間関係だもの。王がする事なんて、それこそ国家事業並に力を使う時だけよ。


2つめ。人の欲ね。いい暮らしがしたい、楽がしたい、…そしてそれを、我が子へ、血族へ…と。考えてちょうだい?国民が総じて魔法を使えるのよ。暮らしなんて自分で改善できるし、そこまで大きな格差はないわ。そんな所へ貴族制度を入れたら、貴族として魔法を国の為に使わなきゃいけなくなる。…国の奴隷よ?義務になるのよ?皆こぞって反対するわね。少なくとも、私は反対するわ。

…ちなみに、魔力はある程度親の影響を受けるから、子が生活レベルを落とす事は少ないし。


そして最後に3つめ、統率力の強化。お互いにお互いを見張らせる役割、とも言えるわね。これは叛逆を起こさない為が大きいのじゃない?…王は最強の魔女よ?それも、ほとんど力技でねじ伏せるタイプの。叛逆なんて起こされる方が悪いじゃない。王の器ではなかったのよ。


もちろん、この3つだけで貴族制が成り立ってる訳ではないけれど、スピカで重要視されないって事は、なんとなくお分かりいただけるかしら?


「そんな訳で、貴族制度は定着しませんでした!ちなみに、1番重要な魔法の管理についてはさっきも言った通りよー。」

「納得できるような、出来ないような…」

「魔法って…武力…脳筋国家…?」


こら、小声で脳筋国家って言わないの!私もちょっと思ってるんだから…っ!


「他国では貴族制が当たり前だし、スピカから派遣される時は王の名代だものね。…魔法が使える、ってだけで、優遇されるから、わざわざ訂正もしなかったのではないかしら。」

「あー…確かに、わざわざ爵位を訊ねたりはしないな…魔法を使えるだけで上位者だ…」


総じて選民意識があるから、扱いに疑問も持たないのでしょ。


「それにね、あの国には色々と特殊な呪い(まじない)がかかっているから、王の仕事なんて他国との社交がほとんどよ。魔女達を統率なんて()()()()わ…」

「統率()()()()のか?」

「…魔法を使える人々はね、潜在的に属性の影響を受けるの。…良く言って自由人が多いのよ…」

「あー…あぁ、うん…なるほど。」


悪く言えば変人の集まり…自分も魔女なだけに、悲しい…


「王族に対しては、忠誠心…というか、反抗心があまり続かないらしいの。だから王からお願いされると、断り難いみたい。

…魔力の低い人間は、強い人間に対して反抗心を持ちにくいって研究もあったらしいから、単にそういう事じゃない?」

「それは…随分と羨ましいな…」

「本当にねぇ…まぁでも、それなりに王族間では色々あるらしいから。素直に羨めないわよ。…話を戻すけれど、スピカは皇国なんて呼ばれているけど、本質としては未だに村レベルの経営なのよ。王のお願いは断り難いから成り立っているだけ。」

「スピカ皇国は神秘の国とも…なんだか、夢を壊された気分なんだが…」


仕方ないじゃない、諦めてちょうだい…。


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