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2023/1/12 全文改稿しました。
話しかけてみたいと言いつつも、いつまでもくすぶっていた俺だが、チャンスは突然訪れた。
掃除当番が一緒という大チャンス。
嫌でも会話をすることになるだろう。
それで少しでも親交を深めることができれば――
「ねーねー。荒波クンって色んな部活の助っ人やってるってマジ?」
同じ当番のギャルっぽい女子二人に捕まってしまった。
「え? ああ、うん。マジマジ」
蔑ろにできないので、とりあえず早く終われと祈りながら話を合わせる。
「それ超すごくない? てか運動部ばっか?」
「運動部のほうが多いけど、たまに文化系も」
「すごー! 何でもできるじゃん!」
女子に褒められて悪い気はしないが、今じゃない。
今俺にはやるべきことが……
「んなもん誰でもできるって」
別のやつが俺に対抗したいのか、話に割り込んでくる。
「はぁ〜? 帰宅部が何言ってんのぉ?」
矛先がそいつに向く。
今のうちに輪から抜けよう……としたところで、我がクラスの気弱な学級委員長が「み……みんな……掃除……」と、おどおどした様子で言っていることに気がついた。
――声が小さすぎて誰にも聞こえていない。
「あーごめんごめん、委員長。サボってるわけじゃないんだ」
俺はあえて大きな声で委員長に謝った。
他の連中もその声にハッと我に返り、慌てて手を動かし始める。
「荒波君、ありがとう」
「何が?」
俺はとぼけておいた。
――そんなことをしている間に、あいつが一人でゴミを捨てに行こうとしているではないか。
「ちょ……ちょっと待て! 俺も一緒に行くよ!」
慌てて追おうとするが、俺の声など無視してあいつは教室を出て行く。
無視すんなよ!
「ほっとけばいいじゃ〜ん」
ギャルの一人がだるそうに言った。
「行ってくれるって言うならお願いしちゃお?」
「いや……けど……」
ゴミ捨てがどうって言うより俺はただ……
「あんま関わんないほうがよくない? だってあいつ……魔女なんでしょ?」
「……」
魔女。
あいつが周りから距離を置かれているのはそれが理由だった。
――だから何だよ!
「あ、ちょっと! 荒波!?」
やつらの言葉は無視し、教室を飛び出してあいつの後を追った。
「玖雅! 待てよ! 俺も一緒に行く!」
両手にゴミ袋を持ち、廊下を歩くその背中に向かって叫ぶ。
魔女だから何だ。
俺はあいつと友だちに――
「――あ?」
友だちに……
「……えっ?」
「何だお前。馴れ馴れしいな。誰だよ」
「……」
友だちに……なれるのだろうか……果たして……