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プロローグ
2023/1/12 全文更新
気になる人がいる。
――そう言うと「好きな人でもできたか?」と冷やかされる。
違う。そうじゃない。
高校二年生になり、新しい教室でそいつは、いつも一人で座っていた。
みんな友だちを作っていく中、そいつだけは本を読んで一日を過ごしていた。
誰も、関わろうとしなかった。
みんな避けていた。
――原因は、何となくわかっていた。
クラスの連中は触れたくなくても、俺はあいつのことが気になって仕方がなかった。
本当は何度か話しかけてみようとした。
恥ずかしいことに、クラスメイトたちの目を気にしていつまでたっても行動に移せない俺であった。
「何で? もしかしたら、とてもステキな出会いが待っているかもしれないよ? それでも海斗は、他の子たちの目を気にするの?」
俺の恩師はそう言った。
ステキな出会い。
その響きがとても心地良かった。