真魂交神(まだまこうしん)
メラの村より旅立つ決心をする、嵐・守護だがメイラとの間に親密な出来事が起こる。
太陽は完全に登っていた。
空気はすがすがしく清浄だ。
メラの村、聖なる祠の前でダンディグス医師は言う
「【火の民】とはお主のような【火の真甦】を持つ一族のことじゃ」
「同じ真甦、種族で部族を築いているのは【火の民】だけじゃよ」
「一族の歴史はとても長く、同胞の絆が強くよそ者をなかなか受け入れないのじゃな」
「じゃから純粋な【火の真甦】を多くもつ者が大勢おるそうじゃ」
「【火の民】最強戦士、紅蓮の5柱なる者たちはお主に匹敵する力を持っておるそうじゃよ」
「今ではほとんど、部族の外には出てこないようじゃが、過去にはいろいろな戦場で見かけられておる」
「とくに有名なのは、もう300年も前になるような伝承じゃがな、今でこそ大陸最強国をほこるアースウェイグ帝国じゃが、300年前はまだちっぽけな王国じゃった」
「そのちっぽけな王国に危機が訪れるのじゃ、周り中の国や蛮族から侵略にあい、当時の王は【火の民】に助けを求めた。」
「アースウェイグ王国王は全ての民を自らの居城に避難させ籠城戦をした」
「しかし敵方の数が違いすぎる。」
「四方八方より攻められ、城も陥落寸前の所で敵をすべて追い払いアースウェイグ王国を救ったのが【火の民】であったといわれておる」
「アースウェイグ王は【火の民】に窮地を救ってもらった褒賞にアースウェイグ4聖剣の一つ【誉武号牙炎】をあたえ、王の一人娘を【火の民】の若長に嫁がせたのじゃ」
「じゃから、【火の民】はアースウェイグ帝国の血筋であるともいえるのじゃな」
嵐・守護が問う
「っで、その【火の民】ってのは今どこにあるんだ?」
「詳しい場所は誰も知らん」
「ただ、噂なら、、、」
嵐がいらいらしながら「じらすんじゃねぇよ早く話せやじじぃ!!」
ダンディグス医師は「せかすんじゃないぞよ、まったく今の若いもんは、、、」
嵐・守護が今にも火を噴きそうな目で睨んでいる
ダンディグス医師は少し脅えた様に「お前さんに睨まれると火傷しそうでシャレにならんて」
嵐「・・・・」
ダンディグス医師「噂じゃよ、その後アースウェイグ帝国領内の南方に部族の村を作り自治権を与えられておるそうじゃよ」
嵐・守護「アースウェイグ帝国、、、」
ダンディグス医師「前にも話したがの、アースウェイグ帝国には真甦を持つ騎士が多くおるそうじゃ」
「中でも、【帝国騎士】になると真甦を具現化することに長けていると聞く」
メイラが心配そうに
「嵐・さんは行かれてしまうのですか?」
嵐「・・・・」
決心して嵐がメイラに向かって諭す様に話しかける。
「俺は自分の事をもっと知りたい、そしてもっと強くなりたい」
「その両方がアースウェイグ帝国を指している」
「俺はアースウェイグ帝国に行く。」
悲しげな顔でメイラが言う
「止めても無駄ですね、、、、」
「わかりました」
「それでは、嵐さんにお願いがございます。」
嵐「なんだ?俺の持ってる物なら何でもやるぜ」
「嵐さんの【真魂】を下さい。」
嵐「は・い?」
「なんだよ、【真魂】って」
メイラは無視して言う。
「私の真似をして下さい」
メイラが自分の右手を左胸にそっとおく
嵐も同じように胸に手を置く
メイラが目を閉じて言う「自分の魂を真甦で具現化します。」
「同じように言霊を唱えて念じて下さい」
「我、真魂よ、ここに現れよ」
するとメイラの左胸にのせていた右手の掌に優しくまばゆく宝玉が現れた。
「これが、私の真魂です。」
嵐も同じようにすると右手の掌に赤く燃え盛る炎のような炎球が現れた。
メイラが言う
「激しく強いでもとても優しい真魂ですね」
「私の真魂を嵐さんに差し上げます。嵐さんの真魂を私に下さい。」
嵐不思議そうに尋ねる
「かまわねぇが、何が起こるんだ?」
メイラはそっと優しく答える
「真魂を交換した者同士は遠く離れていようと、お互いを感じることができます。」
「嵐さん位の真甦があれば会話したり強く念じてもらえれば、どこにでも私を召喚できます。」
「嵐さん自身が大怪我をおった時や大切な人が病で倒れてる時は遠慮なく呼んで下さい。」
嵐「そりゃ、便利だな」
メイラは変わらず「それでは私の真魂を嵐さんに差し上げますね。」
嵐の右胸にメイラの右掌にある真魂を持ってそっと触れる。
メイラの真魂が嵐に溶け込む。
嵐が微笑みながら
「あったけ~な」
嵐がメイラの右胸を自分の右掌で優しく触る。
真魂がメイラに溶け込んでいく。
メイラが両手を胸にかざして、瞳を閉じる。
「激しくて、熱くて、大きくて、でもとても優しい真魂ですね」
ダンディグス医師が「若いもん同士、仲良くしてるとこ悪いんじゃがな」
「それは、真魂交神と言うんじゃがな」
「嵐よ誰とでも真魂交神してはならぬぞよ」
「相手の真甦をもらい受ける代わりに自分の真甦も与えてしまうからの」
「お前さんの真甦力からすると相手は物凄く強力な力を手に入れることになるからの悪用されてはならんからな」
嵐が不思議そうに聞く
「そういうもんなのか?」
ダンディグス医師は諭す様に
「そうじゃ、本来は夫婦や家族、剣を捧げる君主、剣を並べて共に戦う信頼できる戦友等と行うものじゃ」
嵐が言う
「剣を捧げる君主なんざ、死ぬまでいるはずねぇから心配すんなよ」