真甦《まそ》とは
強力な【炎の真甦】をもつ、嵐・守護、これからの生き方が明らかにさられる。
俺は丸一日眠っていたらしい。
気が付いたら、メイラが傍で眠っていた。
俺はメイラを起こさぬように、静かに起きだした。
そして部屋を出た。
まだ陽も登り切っていない、明け方だった。
嵐「この村は、人も良いし、暖かい。なんか神聖なもんも感じるな」
突然、後ろから声をかけられた
「この村は代々【治癒の女神アスラス】を祭っておる神聖な村じゃからな」
ダンディグス医師だった。
嵐がぶっきらぼうに「爺さんは早起きだな」
「ほっほっほっ、年を取ると早起きになるもんじゃい」
ダンディグス医師がじっと俺を見つめる。
「たった一日寝ただけであれだけの真甦量が回復しておる」
「桁外れに規格外な男じゃな、お主」
嵐が「傷を爺さんが治してくれて、メイラが治癒の魔法をかけてくれたおかげだろうよ」
ダンディグス医師は少し声を大きくして「いやいや、そんな簡単もんじゃないぞよ、お主の体は」
「わしの知っとることを話す約束じゃったな、ちょいと歩きながらわしに付き合え」
2人はゆっくりと村の東に向かって歩き出した。
ダンディグス医師がおっとりと言う「何から話したもんかな、、、」
「まずはお主の体の事から話そうかの」
「前から言っておるが、人の体は大きく分けると酸素と炭素でほとんどできておる。」
「っで、ごくまれに この炭素が真甦に変化することがあるんじゃ、これを神格化現象と言うんじゃな。ここまでは前に話したの」
「真甦には土・水・火・風・天・魔と大きく分けてこの6つがあるのじゃが」
「お主の真甦は【火】の中でもとても強い【炎の真甦】を大量に蓄えておる」
「始め、わしがお主を【火の民】と間違った原因じゃな
嵐は黙って聞いていた。
「お主はその強い【炎の真甦】でこれからどう生きていくのじゃ?何をしたいのじゃ?」
「この旅で分かったが、お主は悪い人間ではないようじゃでのう」
嵐は深く考え込んだ。
静かに語りだす。
「俺は親も知らねぇ、6歳まで娼館で育った、、、」
「今の世の中は、悪い奴がわんさかいやがる。国だってそうだ腐った王族様や、ろくでなしの貴族様なんざさんざん見てきた。」
「力がねぇと自分の正義も大切なもんも守れねぇ」
「だから俺はもっと強くなりてぇ」
「そして、この全世界とは言わねぇが、せめて俺の目の届く範囲では己の正義をつらぬきてぇんだ。」
「俺の大切な人間をこれ以上失うのはごめんだ!」
「だからもっともっと強くならなくちゃならねぇんだよ」
ダンディグス医師がうなずく。
「お主、顔に似合わず、相当いい奴じゃな」
嵐が嫌そうな顔をしながら「ほめたって、これ以上ボランティアはごめんだぜ」
嵐が話を変える。
「この村は、今まで俺が旅してきた村の中でも珍しいくらい村人も良い人たちだし、何よりも清浄な空気を感じるな。」
メイラが話に割って入る。
「それは、この村が代々治癒の神聖女神アスラス神を聖なる祠にて崇め奉っているからですよ」
嵐「起こしちまったか?」
「お前も、治癒の術や回復の術やら村人に施して、疲れているんじゃねぇのか?」
メイラは穏やかに「このメラの村にいる間は私はアスラス神と同じとまではいきませんが、かなり近い存在でいられるので、大丈夫ですよ」
ダンディグス医師が言う「メイラはアスラス神の聖なる巫女なのじゃよ」
「3年前、わしが偶然この村を通った時に出会い、医術と白魔術を学びたいとわしと行動を共にしていたのじゃ」
嵐「よく、普通の人間がこの村に入れたな」
ダンディグス医師はにこりとして
「ほっ、ほっ、ほっわしがと~ても優秀であったから、アスラス神が道をつないでくれたのじゃよ」
メイラ「お導きです。ごく稀れにこの村に来る人がいらっしゃいますが、皆全て意味のある方ばかりです。」
ダンディグス医師が話を戻して
「メイラと旅を続けていた折、丁度お主と出会った町でメラの村が魔物に襲われ毒に苦しんでると知り薬を届けようとしていた時にお主を見かけたのよ」
「これがえにしという奴かの」
嵐が嫌そうな顔をして「俺にははた迷惑な出会いとしか思えねぇけどな」
3人はメラの村東のはずれにある聖なる祠の前にいた。
メイラが説明する
「ここが、女神アスラス神を祭っている聖なる祠です。」
家2軒以上はある広さの大きな祠だった。
入り口にはとても太い柱が左右に二本ずつ建ち、細かい彫刻が無数にしてあった。
そして柱の中央にはアスラス神の姿を彫刻した大きな像が佇立していた。
小さくきれいな顔に冠のようなものを頭にはめ、右手には杖を左手には草をもち何よりも目を引くのは、背中から生えた大きな翼だろう。
まるで、天使のようだった。
メイラが話を続ける
「代々、村人の中から巫女が誕生して、アスラス神の加護を受けるんですよ。」
ダンディグス医師「代々の巫女の中でも、メイラはとても強い治癒力を授かっておるんじゃ」
嵐「だから俺の傷をすぐ治せたんだな」
嵐がその長身のため、下を見ながらメイラの頭をなでる。
メイラの頬がほのかに赤くなる。
「傷は治すことができても、真甦を補充する事はできません」
「真甦の使い手、特に戦士の方は自分の体の真甦量を大量に一機に使ってしまう方がおられます。」
「真甦を完全に使い切ると、その人は灰となり死んでしまいます。」
「大抵はそこまで真甦を使い切る方はいません。」
「普通の人間が疲れると休みたくなるのと一緒で、真甦を消費すると力が出なくなります。」
「だから、俺がこの村の魔物にとどめを刺したときに、すげぇ怒っていたのか」
嵐が笑いながら言う。
「あ、あの時は本当に心配したんですからね!!」
頬をプッと膨らませながらメイラが言う。
嵐がダンディグス医師に向かって言う
「その真甦とやらを持っているのはどのくらいの割合なんだ?」
ダンディグス医師「お主ほどの真甦量を持っている人間は、いても世界中で100人もいないじゃろな」
嵐「じゃ、そもそも真甦を持っている人間はどのくらいいるんだ?」
ダンディグス「真甦とはもともと持っている先天的なものと、修行や仕事をして後天的に表れるものがあるのじゃが、、、」
「大体は真甦を持っていても、自分で気づかないくらいじゃよ」
「真甦を具現化できる者は大変珍しいことじゃ」
「わしでも真甦を具現化できる人間に会うたのは、お前さんで15人もいないじゃろなぁ」
「その中でもお前さんは規格外じゃ、悪しき者だったなら毒でももって殺さなあかんレベルじゃな」
嵐「こえ~事を笑いながら言うんじゃねぇよ、爺さん。本当にやりそうだぜ」
ダンディグスがぼそりと言う「アースウェイグ帝国にはかなりの真甦を持つ者がおると聞いておるがの、、、」
嵐「アースウェイグ帝国、、、」
「じゃぁよ【火の民】ってのは何もんだ?」