火の民
己の素性がわかるかもしれないと、最悪の仕事を引き受ける嵐・守護、【火の民】とは?
どうも爺さんの話をまとめるこうらしい
この町から徒歩で、2日程にある、俺でも聞いたことが無いメラと言う村で、毒を吐く魔物が出現したらしい
村人たちはやっとの思いで、この魔物を退治したらしいが、魔物が吐いた毒が村中に蔓延しつつあり、死者が続出しているとの事だ。
それでこの爺さんが、なぜメラの村を助けに行こうとしているかというと、爺さん(ダンディグス医師)の連れの看護婦メイラはメラの村の村長の娘なのだそうだ。
うるんだ眼で俺を見るメイラ
(だからあんなに必死で俺に頼んできたのか、、、)
1日も早く解毒剤を届けたい爺さんは悪名高い山賊【髑髏の心臓】の縄張りを抜けて近道していきたいから、俺に警護を頼みたいという事らしい
っで、なんで俺なんだ?
ダンディグス医師は想像もしない一言で答えた。
「お主、【火の民】じゃろ」
「???」
嵐が不思議そうに尋ねる、
「なんだ?【火の民】ってのは?」
ダンディグス医師が小さい胸を張って
「お主知らないで、それだけの力を持っているのか?」
「火の民最強戦士5柱に匹敵する力じゃぞ」
嵐が納得できない顔で言う
「だからよ、なんでそんな事がわかんだよ」
ダンディグス医師は更に嬉しそうにちっちゃい胸を張って答える。
「わしゃ、これでも若い頃はパブロ聖王国の王国医師団長を務めていたんじゃよ」
「がっははははーすごいじゃろ」
パブロ聖王国とは、大陸中央よりやや西北にある、文化と芸術に秀でた、交易国家で文化の中心都市で、アースウェイグ帝国の兄弟国でもある。
嵐「・・・」
「ごほん、わしのような優秀な医者になるとじゃな、医術を極めると、白魔道も学ことになるのじゃがな」
「人の体は大体、酸素と炭素という物質でできておるのじゃが、まれにこの炭素が変化しておる人間がおるのじゃ」
「わし等の世界では神格化現象というんじゃ、その力の源を【真甦】というんじゃが」
「今までわしが知っている真甦は土・水・火・風・天・魔の6つじゃ。実際見たことがあるのは、その中でも土・水・火・風の4っつだけじゃな。」
「天と魔の真甦の所有者には会ったことはもちろん、聞いたことも無いが過去には間違いなくおったそうじゃ」
「お主はその中の【火】の中でも一番強い【炎の真甦】を体内に膨大な量を持っておる」
「これだけの炎の真甦を持つものは【火の民】以外いないと思い声をかけたんじゃ」
嵐は納得したようなしないような目で見つめながら
「なんで、見ただけでそんなことがわかるんだ?」
ダンディグス医師は何度もそのちっちゃい胸を誇らしく張り
「わしは優秀な医者じゃからなぁ、それくらい見ただけで分かるのよ、おほほほ」
「・・・」
嵐が初めて聞く単語が沢山出てきた内容を考え、何とかまとめて言う
「その【火の民】ってのはどこにいるんだ?」
ちっちゃなおっさんのダンディグス医師は、銀縁の眼鏡の奥の目をキラリと輝かして
「これ以上、聞きたかったらわしの仕事を引き受けたら教えてやる」
嵐が思わず笑いながら
「俺に命懸けのボランティアしろってか?」
ダンディグス医師は誇らしげに
「ふっふっふっ、お主自身の事がもっとわかるかもしれんぞよ」
「それだけの真甦量じゃ、思い当たる節もたくさんあるじゃろうて」
「わしの手助けしてくれれば、わしが知るすべてを教えてしんぜようぞ」
「何しろわしは、パブロ聖王国王室抱え医師団長をしておったのじゃからな」
嵐「・・・」
俺の体が爆発したり、炎を自由に扱えたり、自分の体を炎に変えて瞬間移動したり、他にもたくさん。
不思議に思っていたことはある。
生きていくことが先で傭兵をしながら、自己鍛錬にはげみ何度も何度も失敗を繰り返し、死にかけたことも何度もあった。
どうにか炎をかなり自由に扱えるようになっていったが、それがどうして出来るのかは全く分からなく不安に思っていたことも、、、、ある。
嵐(俺はなんで普通じゃねぇんだ?どうして火が出るんだ?)
常に心奥底に浮かぶ自然な疑問だった。
俺はくそじじぃに向かって吐き捨てた。
「最悪のボランティア活動、引き受けてやるよ」
「ありがとうございます!!」
看護師のメイラが、目を輝かせてとても嬉しそうに謝辞を述べる。
(まぁ~、田舎が毒にやられてるって聞いちゃなぁ~)
俺は自分でもホトホト呆れながら
(お人好しもここまでくれば、立派な正義になるんじゃね?)
未来の正義の覇者は、今はまだ一介のとても強い傭兵だった。