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BU・SI・N・SYO  作者: イ-401号
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腕相撲の優勝者

アースウェイグ帝国 帝都アーセサス中心にある黒曜天宮内のランガード家族4人の為だけに用意された居城では、壮絶な戦いが終盤を迎えていた。


端正な横顔に切れ長のイケメン皇帝は、うっすらと額に汗を滲ませながら


「キルヘッシュ、手加減は無用だよ。全力をだして構わないんだよ」


「四海聖竜王殿こそ~、こんなものではないでしょうに~」


2人の近づく顏には、汗と熱気が握り交わされた拳を伝い、一粒一粒と滴り落ちていくが、力強く握られた両拳は全く中央より動くことなく、プルプルと微動するだけだ。


たかが、腕相撲と言えどされど勝負!


負けるわけにはいかない。


頑固で、負けず嫌いな人間は、神々も変わらない事なのか?


異常に白熱を続ける戦いは、静かに激しさを増していく。


周囲で見ている皆もその迫力に、押されて静かに緊張感を持って見守る。


かつて、天界の双璧と謳われた、暴れん坊の【竜王一族】を率いる四海聖竜王。

先代天帝皇王の力によって、人間の姿と神時代の能力と記憶をなくすことなく、現世に蘇った。

人類と言って良いかわからぬ、最強種族の長。


その、リスティアード四海聖竜王に対し


現存する、何千年と生き続ける本当の神【妖精王】にして妖精一族の王。


キルヘッシュ・アクティア。


一時は異世界王の邪悪なる能力により、悪魔一族始祖として地中深くに身を置いていたが、神々の大陸の爆炎覇王。


ランガード・スセインによって、異世界の王による悪なる魔の因子を焼き払われ、今では嘗ての天界の紳士然とし、常に冷静と気品、清潔感と品格を備え持つ。


娘のレィリア・アストネージュの美貌ぶりは、氷結の女王にして、高潔なるシュシィス・スセインに勝るとも劣らない。


アースウェイグ帝国貴族界では、最強にして最高の人気と美しさを合わせ持つ、金麗なる妖精女王を実の娘に持つ。


レィリア・アストネージュのこれまでのランガードに対する、一種 暴虐武人とした圧倒的、力の鼓舞は、見かけによらない父親譲りなところがあるのかもしない、、、


白熱する勝負とは別に、本来なら優勝候補に最も近い【火の民】岩・破砕(がん・くらっしゅ)は未だ傷が治らない為不出場となり、不死騎士団員は、団長であるフーカ・セロ武神将始め、早々に辞退または敗退していた。


このメンツでは、無敵を誇る不死鳥騎士団も気が引けるのは、致し方ないことでもある。


そして、長く続いていた天界の双璧の勝負は、リスティアード四海聖竜王が粘り勝ちで制した。


「やれ~やれ~、歳には勝てませんな~」


端正な額に、かなり汗を掻きながらも妖精王は、悔し紛れに言い訳を言う。


「いや、君の確実な負けだよ。キルヘッシュ。僕にはまだまだ敵わないという事だね」


こちらも身長2メートルを超し、小顔にイケメンなアースウェイグ帝国皇帝にして四海聖竜王は、立場とは逆に子供みたいに、キルヘッシュに対しマウントを取る。


「悔しい~であ~るな」


「ここは~負けを認めるであ~るよ」


「四海聖竜王には、過去に~借りもあるのでな~」


豪奢な金髪を揺らして、妖精王を睨み


「それは、負け惜しみっていうんだよ。キルヘッシュ()。」


天界の双璧の両目がバチバチと火花でも出しそうに、燃え滾る。


全く持って、大人げないと、、、


周囲の者たちは、心の中で思っていたが誰もそれを言葉にすることは無かった。


恐ろし過ぎて、、、、


そこに真っすぐに腰まで伸びた金髪を揺らしながら


「お父様、ご立派な戦いぶりでございました。」


愛娘のレィリア・アストネージュ武神将だ。


汗を脱ぐいながらも、爽やかさを巻き散らし


「ありがとうレィリア、君の主君に対して失礼の無いように負けてあげてよかったよ。」


実の娘と話す時は、全く普通に喋る妖精王は、未だ本心では負けを認めない。


一体いつまで、根に持つのやら、、、


「私たちに、大切なお役目を簡単に放り投げてしまう様な、男を私はもう主君とは思いませんは。お父様。」


「それは手厳しいな~」


ニヤリと笑って俺の方を見るイケメン 今はまだ皇帝陛下。


事実で、共に立場を放り投げたもの同士だから、俺は黙っていた。


責任、立場、役柄など関係なく、リスティアードは俺にとって【大将】であるのは、永遠に変わらないのだから



そして、次の準決勝が始まる頃


天帝皇王の片割れグエンは、黒曜天宮内のランガード専用居城の裏庭に、姉妹のフェリアと共に居た。


「お母さまのお気持ちを変えることは、無理なのかな?」


美しい氷結のような瞳を兄の深紅に燃える瞳を見て


「お母さまの矜持と誇りにかけて、私にご命令されましたので、お気持ちを蔑ろにすることはお母さまにとっては、裏切り行為になってしまいます。」


「そうか、、、、」


そう、二人の天帝皇王は先ほどのシュシィス・スセインとフェリアの話を聞いていた(・・・・・)、グエンが真っ赤な髪をかき上げて、物思いに耽っていた。


所変わり、大炎元郷を現在預かっている【火の民】5柱が一


門・夷塚(もん・いづか)代表代理にリューイが真魂交信(まだまこうしん)して、念話していた。


(門、今大丈夫?)


(はい、問題ありませんが、何かありましたか?)


(君と亜人族軍団団長のメルビル・(じゅう)を初瀬達、神速部隊にアーセサスまで運んでもらうように手配してくれる)


(わかりました。一つお聞きしてもよろしいですか?)


(真魂交信で繋がっているんだ、君の考えはわかるよ。そうこの命令は長くなると考えてくれ)


(喜んで)


恐妻家で知られる火の民随一の美男子は心から喜びを隠さずに返答してきた。


(ふふ、それではよろしくね)


燃え上がる、ランガード専用居城の居間では白熱した準決勝が行われていたが、リューイは部屋の隅で大炎元郷と真魂交信していたのだ。


その隣には、【天の真甦】所有者のリンが、常に横にいる。


それぞれが、それぞれの考えで動いている中、馬鹿げた勝負は白熱を通り越して、単なる腕相撲という喧嘩に代わっていた。


ランガードの大きな手の平が、アルセイスの細くて長い指を抑え込み、万力の如く自らの腕力を全て右腕に集中する。


細マッチョのアルセイスの右腕もランガードの狂暴なる腕力を平然と受け止めていた。


リスティアードvsキルヘッシュとの勝負同様、二つの拳は中央でプルプルと震えながらも左右どちらにも傾くことは無かった。


力勝負では全くの互角。


体型だけ見ると、ランガードの方が一回り大きく体積もある。

見た目だけなら、ランガード優勢の様に見えるが、剣聖にして北海黒竜王は幼き頃から、リスティアードの剣となる為だけに自己鍛錬をし続けてきた。


無駄を一切、省いたのが今の身体だ。


腕力でランガードに劣ることは全くなかった。


そうなると、今度は珍しく舌戦となっていく


「新婚旅行の花向けに負けてやってもいいのだがな」


「抜かせ、負けた時のこと考えて、勝負するなんざ卑怯者のすることだぜ」


「友人の言葉を捻じ曲げてしまうとは、心根同様腐りはてたやつだな」


「ざっけんじゃねぇよ!レィリアの前で負けんのが嫌なだけだろが」


プルプル震える、両手はがっしりと握られたまま、舌戦はさらに激しくなる。


周りの者の感情とはまた別に、、、、


「そもそも、シュス殿はお主にはもったいなさすぎる女性だぞ」


「ふん、見た目だけはおめえのカミさんだって、シュスとタメ張れるくらいだろ、中身はじゃじゃ馬だがよ」


「いくらお主でも私の婚約者を侮辱するのは許さないぞ」


プルプル腕は震え続ける


「侮辱じゃねぇよ、事実を言ってんだよ」


「貴様、絶対に許さん。無様に負けてレィリアに謝罪しろ」


「ふん、俺がおめぇみたいなやせっぽちに負ける訳ねぇだろうが!!」


「抜かせ、お主を完膚なきまでにやっつけて、シュス殿にも私の力を認めてもらうぞ」


「アホたれが、シュスは俺のこの世界でただ一人の愛する女なんだ、他の男なんざ見向きもしねぇんだよ」


「そうかな?シュス殿の曇った(まなこ)を私が晴らして進ぜよう」


プルプル言葉とは裏腹に全く、勝負はつかない。

無尽蔵とも思えるような、二人の体力に驚愕するばかりである。


「そもそも、レィリアを選んだのだって、シュスのアドバイスのおかげだろ。おめぇ~自分がモテるからってハーレムでも作る気か!!」


シュン


パキン


一瞬の出来事であった。


レィリアが俺の後頭部に、俊足の廻し蹴りを軽やかに跳ね上がりながら見事に決まる。


俺は4回転程して、壁に打ち付けられる。


普段なら、レィリアの攻撃がランガードに効くはずないのだが、今はアルセイスとの勝負と舌戦合戦に集中し過ぎていたため、諸に食らってしまった。


そしてアルセイスは、、、、



氷漬けにされ、氷像と化していた。


氷結の女王、シュシィス・スセインがアルセイスを冷凍した。


そして、レィリアとシュスが頬を赤くしながら


「全く馬鹿らしくて聞いている方が恥ずかしくなるわよ」


「恥ずかしいことを大声で、言わないでくださいましな」


北海黒竜王と南海紅竜王の準決勝は、お互いのパートナーによって、強制的に終了された。


そして、優勝者は繰り上がり、リスティアード四海聖竜王となる。


俺は壁に張り付いて、頭を床に付け鼻血を出しながら


「いくら何でもよ~こりゃ~俺じゃなけりゃ間違いなく死んでんぞ」


アルセイスは、氷結にされた身を【電解】してバチバチと体中に雷を放電させながら、氷結を払い落とす。


氷結の女王は武神将並みかそれ以上の力を有する。

そのシュスの氷結を喰らって、軽く電解する男も並々ならぬ型外れな能力の持ち主なのは、、、まぁ~皆知る所ではあるが間近で見ると、やはり驚きは隠せない。


「銀嶺なる高潔なシュセス・シュセイン殿。お見苦しい所をお見せしましたことお詫び申し上げる。」


黒騎士が右ひざを床に付き、右手を左胸にあて【謝意】を顕わにする。


直ぐにこういった紳士的行動に出れるのは、育ちの違いであろう


シュスは黒衣の最強騎士の右手を取り、アルセイス卿をそっと立たせて


「私もつい感情に任せて、大人気ございませんでした。アルセイス卿の謝意をお受けいたします。」


このド派手ではた迷惑 波乱万丈な腕相撲大会はこうして四海聖竜王リスティアードの勝利に終わったのだ。

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