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BU・SI・N・SYO  作者: イ-401号
167/173

酒・酒・酒

とんでもない発表が、あった翌日。


俺達一行は、、、、


酒を飲んでいた。


三日丸々と酒を飲み続けていることになる。


(なんだこりゃ~)


流石の酒豪の俺でも呆れてしまう。


リスティアード元皇帝陛下は当然、いつの間にか戻ってきたアルセイスとレィリアにキルヘッシュの旦那、イグシアにベルフェム、リューイ、シュス、エルフ族エーリア・ティンクル女王を中心に、謁見の間で酒宴が果てることなく続いていた。


女性のレィリア・アストネージュ新皇后陛下に俺の妻であるシュシィス・スセイン王妃は男性陣よりもこう言ったことには、タフなようだ。


全く疲れも見せないし、その美しさに陰りが見える事もない。


エルフの女王エーリアに関しては、キルヘッシュの旦那同様に酔う事すらあるのかと思う程、酒に強い。


(もう三日も続いているんだぜ、このバカげた酒宴もそろそろ止めてさぁ~ 寝ない?)


俺は疲れているわけではもちろんないが、呆れるやら何やらで、早く眠りたかった。


もちろん戦場では、1週間でも寝ずに戦い続けることもある。


だが、この時間が俺には無駄無用無意味に感じるのだ。


この集まりに何の意味があるんだ?


俺がひそかに考えていると、心を見透かされた様に俺の親友であり有能な副官リューイと最愛のシュスがそっと寄り添い声をかけてくれる。


「責任を僕たちに押し付けて、自由に生きるための代償と考えて、我慢してくださいね」


(そんな言い方しなくても、良いじゃない、、、)


「旦那様、私は嬉しゅうございます。旦那様がヴァルゴ太古兵器興業国との戦争に赴かれる時、わたくしがどんな思いで炎元郷に残った事か、、、」


「あんな、辛い思いはもう嫌でございます。私も戦士です。戦うならば、旦那様の隣で剣を振るういとうございます。」


頬が(ほの)かにアルコールで朱に染まり、艶めかしく美しい。


(俺に気を使って話題を変えようとしてくれてんのかな?それとも本音か?どちらしても俺を気遣っての言葉だな)


そこにアルセイスとレィリアが、俺達の話題に加わる。


「ランガード、あなたに言わなければならない言葉があります。」


優雅な容姿とは裏腹にいつもらしくない金獅子騎士団団長であった。


「レィリア、なんか悪いもんでも食ったのか?」


「ぐっ!!」


レィリアが右拳をぎゅうッと、音が聞こえなそうに指に力を込め握り怒りという感情を彼女なりに我慢する。


「こ、こ、これまでのあなたに対する ひ、非礼な態度に対して、しゃ、しゃ、謝罪します、、、!!」


「おいおいどうした?マジで熱でもあんじゃね?」


次の瞬間、こらえきれずにレィリアのこれまで生きてきた人生の中で最高の速度と角度で、右足の蹴りが誰にも見えない速度で飛んできた。


俺は何も感じないで、勝手に体が動く、、、動かない。


アルセイスが、俺の背後から俺を羽交い絞めしてきた。


次の瞬間、レィリアの超神速な蹴りが俺の(あご)に見事にクリーンヒットする。


「ぐわっ!!」


俺は5メートル以上吹き飛び4回転地面を転げまわって、壁に激突して止まった。


それでも、俺は意識があり頭を左右に振りぼやく


「いきなり、何すんだよ。俺じゃなかったら間違いなく死んでんぞ」


黒き騎士が倒れた俺の前に立ちはだかり


「今のは、妻の謝罪を受け入れぬ、貴様が悪い。」


低く腹に響く声で、胸を張って威厳と無敵さを誇って屹立する。


俺の中にいる炎竜帝の魂が、叫ぶ。


【相棒よ、今のはお主が悪いぞ】


聖剣誉武号牙炎(よぶごうがえん)も叫ぶ。


【猛省せよ】


(何だよ、俺なんか悪いことしたか?)


そこに優しく膝をつき屈みこみ、俺を快方してくれる、愛する妻。シュシィス・スセインが俺の耳にささやくように言葉をかける。


「彼女の言葉は本気です。本気の気持ちを茶化してはなりません。」


「それは、誇りを傷つけるに等しいことかと」


「旦那様のその天然なところが私は大好きですが、他人にはそれぞれ【生き方】と言うものがございます。」


「それを無視なさるのは、旦那様にはお立場がございます故、学ぶところは素直に学ぶのがよろしいかと存じます。」


(・・・・・・・)


「そうか、皆に気を使わせてしまってすまねぇな」


(俺は今まで力を求めて、ただひたすら力を求めてここまで来た。)


(今度は、力ではなく心を鍛えろってことか?)


(他人の気持ちを感じ、他人に優しく、他人を思いやるそういう気持ちを持てという事か?)


俺は立ちあがり、体中に着いた(ほこり)を払うと、レィリアの元まで堂々と闊歩(かっぽ)して目前まで行く。


一呼吸おいて、真っすぐに相手の目を見て


「すまん。俺が悪かった、お前の謝罪を受け入れる。」


腰を90度曲げて、お辞儀する。

身長190センチの強面の赤髪短髪の偉丈夫の俺が、アースウェイグ帝国新皇后であるレィリア・アストネージュに詫びを入れる。


「わ、わかってくれれば、い、いいのよ。元々謝るのこっちだし、、、」


「いやぁ~、良かったね。これでランガードとレィリアも仲良しってことだね」


2メートルの長身小顔イケメン金髪元皇帝陛下は、にこやかに両手で拍手しながら、にへらにへらしながらにやついて、寄ってくる。


俺はリアードの方を向き


「言っとくがな、俺は一度だってレィリアの事を嫌いに思ったりしたこたぁねぇよ。」


「おりゃ、基本つえぇ奴は大好きだ。男も女も関係なくな」


「それに誇りを持ってる奴なら尚更だ。こいつの背骨は大将に対する絶対な忠誠心。伯爵令嬢として育ち武神将にまで登り詰めた陰には、相応の努力と厳しい鍛錬が必要だっただろう、俺みたいな人種とは他人から見たら、相容れぬものもあるのかもしれねぇが、、、」


「おりゃ、自分を磨き夢のために頑張る奴を(さげす)んだり嫌いになったりは絶対しない!!」


(随分長く話しますね、レィリア様にお気を使っているのかな?)

一番の親友は、俺の心の中を冷静に分析して楽しんでいた。


カツン!!


周囲に響き渡る、軍靴を床に叩きつけ気合の入った言葉と態度で、華麗な新皇后はランガードに敬礼する。


膝をつく主従の敬礼では無く、友として尊敬する仲間として敬意を払う敬礼をする。


両足の踵をピッタリ合わせて右手は右足ももにぴたりと付けて、左手は右胸にあてて、真っすぐにランガードを見る。


「レィリア・アストネージュはランガード正義の王国第1騎士の序列に従い、我が身を常に最前線に置きランガードの築いた【正義と平和】を守ることをここに誓う。」


赤髪の俺がちょっと、見下ろしながらにこやかに


「ああ、頼むぜ。親愛なる誇り高き友よ」


ガシッ!!


始めてこの二人は、熱く握手を交わしお互いの存在を認め合い更に深い親交を築いたのだった。


シュスはもちろんリアードもアルセイスもキルヘッシュの旦那も周囲にいる連中が、祝福の拍手をくれる。


パチパチパチパチ


リューイがそっと俺に近づき


「これでもう、蹴られて鼻血出さなくて済みますね」


シュスも話しかけてくる。


「旦那様のその素直な気持ちが、わたくしは大好きです!!」


(俺も変わらなくちゃならねぇってことだな、、、)



そして、酒宴はさらに盛り上がり4日目に突入する。


大将こと、元アースウェイグ帝国皇帝陛下のリスティアード・ローベルム・アルヴェス・アースウェイグが少しはしゃぎ気味に皆に叫ぶ。


「それでは、酒宴も盛り上がってきたことだし、此処でリューイ正義執行総司令長官と不死鳥騎士団リン准将の結婚式を執り行おう」


リューイは(また、無茶振りしますよね、、、竜王の一族の皆様は破天荒すぎですよ、、、)


そう思いながらも、刃向かう無駄を熟知している彼は言われるがまま、新郎として着飾られていく。


しかしリン准将のご両親が、この謁見の間に現れた時には流石のリューイも動揺した。


(お義父さんやお義母さんまで、引っ張り出して四海聖竜王様は、初めから僕らの結婚式やるって決めていたの?)


正装のリューイは、リンの両親が、謁見の間の端っこで自分たちが場違いに居る事に緊張しているのを見て取り、歩み寄り優しく話しかける。


「ご無理を言って、申し訳ありません。どうか僕らの結婚式をご覧下さい。娘さんは僕が必ず幸せにします。」


肝っ玉はお義母さんの方が、数倍父親よりあるようだ。


「よろしくお願いします。リューイさん。娘もあなたのような優しい方と結婚できて幸せです。」


「ありがとうございます。」


っと答えて、近くにいた


「ラウミ千竜騎士長!」


リンの親友で、不死鳥騎士団所属の【土の真甦】所有者の帝国騎士は、上官に対する敬礼で答える。


「はっ!!」


リューイはごく自然に話しているつもりだが、軍隊という縦社会と炎元郷でのリーダー的存在である彼は、命令する事に慣れている。


一般人からしたら、声も大きく命令という事に対して恐怖を感じ、驚くことかもしれないがリューイはその辺の武官とは違う優しく普通に話す。


「すまないが、リン准将のご両親のご面倒をみて下さい。」


ラウミ千竜騎士長も4日、寝ずにいるというのに元気よく


「畏まりました!!」


っと、元気よくハキハキと答える。


パンパカパ~ン!!


響き渡るラッパの金属音。


「新婦の登場だよ。」


リスティアード元皇帝陛下が、皆に聞こえる様に声を発する。


正面扉が大きくゆっくりと開きだす。


するとそこには、新婦の純白のドレスに着替えたリン准将が、俺の妻であるシュシィス・スセインに手を握られながらゆっくりと入場してきた。


レィリア様から頂いた、ティアラと白のベージュを被り現れた彼女は素直に


美しかった。


本来なら、新婦の入場には新婦の父親がエスコートするものだろうが、此処は黒曜天宮の中心【謁見の間】。


アースウェイグ帝国帝都アーセサスの中心。


一般臣民が入れる場所ではない。


まして、貴族でもなくほんの数日前まで、下町で食堂屋を営んできた、リンのご両親に配慮してシュスは着替えをすまして、父親代わりを買って出たのだろう。


という事は、リアードの企みを奥方様はご存じだったという事だ、、、


だが、その気遣いが素晴らしいと、重ねて何度も感じる。

大炎元郷を統べる、リューイ正義執行最高司令長官であった。


主役は新婦である、リン准将だがシュスの美しさは群をはるかに超えていた為に、新婦とは別の意味で目立っていたが、本人はいたって自分の子供が巣立つ親の気持ちで、静かに寄り添っていた。


4日間飲み続けている、武官、文官、貴族も酔っているにも関わらずにそっと、中央で待つリューイの所まで人垣が割れて道が作られる。


シュスがリンの右手を持ち、ゆっくりと人垣の中を優雅に歩く。


リューイが待つ謁見の間中央迄。


リューイは白い正装に、白い手袋をはめずに手に持って、愛する女性を堂々と待ち続ける。


人垣の人達は、酔いに任せてか疲れているのかよく分からないが、皆歓迎の言葉を大声で叫んでいた。


特に不死鳥騎士団の面々は物凄い盛り上がりようだ。


リンの両親が思わず、涙目になる。


父親が無言でそっと、母親にハンカチを渡す。

長く連れ添った、夫婦にしかわからない感情がそこにはあるのだろう、、、


まさか、自分の娘が帝国騎士の中でも、武神将を補佐する准将という将官に出世して、英雄ランガードの親友で大炎元郷の実際の責任者である。


【火の民】5柱が長。


リューイと結婚する日が来るとは、夢にも思わなかったに違いない。


その幸せそうな笑顔と美しい姿を見た途端に、両親は自然と涙が溢れてきたのだ。

小さい頃は、生意気ばかり言って男の子と一緒に遊びまわっていたあのおてんばが、武官とはいえこんな美しく誇り高い女性に成長するとは、両親にとっても感極まりない。


元をただせば、ランガードが彼女の能力を感じて、不死鳥気団に入団させたのが、始まりだ。


今のリンの幸福があるのは、ランガードのおかげであると言えなくもない。


だが、一番の理由は本人の努力と精神力の強さだ。

毎日毎晩、戦友が休んでいる時も自己鍛錬に(いそ)しみ、非常に貴重な【天の真甦】を磨き鍛え上げた結果である。


行く数多の戦いにも、自ら先陣を買って出て、仲間と共に戦い生き残ってきた証が結果がこの幸福を掴んだのだ。


リューイに限らず、ランガード一派に全員に共通する事は、ただ一つ。


力が無いものは、何も守れない!!


という事実だ。


故に、各々が鍛錬に励み自己をレベルアップさせることに妥協は無い。


中央で待つ、リューイがそっと左手を差し出す。


シュスは優しくリンの右手をリューイの手の所まで運ぶ。


「リューイ様、リンさんを幸福にしてあげて下さいね」


リューイは優しくリンの右手を持ちながら


「奥方様と族長の様に、仲良く明るい家庭を築きたいと思います。」


銀麗の女王は、にこりと笑い


「わたくしどもの家庭は、模範とは縁遠いと思いますよ」


リューイはリンの手を持ち、玉座で待つリスティアードと我が族長の所まで、向かおうと振り返りながら


「それでも僕の理想の家族像は、族長一家の様になりたいです。」


シュシィス・スセイン氷結の女王はクスリと笑い


「リューイ様もあの人に汚染された、お方ですのね」


リューイはリンを連れた、後ろ姿のまま


「腐れ縁って感じですね」


(まぁ~とても素晴らしいですわね)


ランガードの妻で、神の王であるグエンとフェリアの母君は誇り高く、気品と優雅、美しさを併せ持つ、素晴らしい女性なのだ。


ただ一つ、男を見る目は【変わっている】と言わずにはおけまい。

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