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BU・SI・N・SYO  作者: イ-401号
166/173

とんでもない発表

黒い鉄の大蛇、、、、


なんか、ひっかかるものを感じながら俺はガジェット・ゲンツ提督を送り出す。


「気を付けろよ。何かあったらすぐ俺を呼べよ。」


大きな巨体を揺らしながら


「正義の王様の出番はねぇよ~じゃぁあな」


最後まで、乱暴者で巨体の心優しい巨人はドスンドスンと地響きを立てながら、豪快に笑い歩き去っていく。


ランガードはなんか心にやはり引っかかるものを感じながらもそれが何かわからないために、その場は笑顔でかつての海賊王と別れた。



そして、その晩は武官文官、貴族、官僚をほぼ全員集めた大酒宴が黒曜天宮最大の広間【謁見の間】で行われた。


それは、とても重大で内容の濃い意味合いの祝賀会であった。


貴族たちは無論、着飾りこれでもかという贅を尽くした装飾品とドレスに身を包み。文官は最大級の正装で、武官も同じく正装の鎧を着こみ人数にして、約1万人余りが集まっていた。


それは、アースウェイグ帝国を支える主だった者たちは無論のこと、大炎元郷の高級幕僚達も参加していた。


ゴーン!!


大きな鐘の鳴る音が響き渡り、扉の前に立つ正装した高官風の執事が大声で告げる。


「アースウェイグ帝国第88代皇帝 リスティアード・ローベルム・アルヴェス・アースウェイグ陛下並びに紅蓮の正義王国ランガード・スセイン国王陛下のご入場です。」


1万余りの高級高官たちが、一斉に【謁見の間】の大きな扉に注目する。


ギギギギ~


ゆっくりと大きな扉は、開き


黄金と豪華と威厳に包まれた、リスティアード皇帝と深紅と灼熱、破壊のランガードが並んで入場してくる。


その姿は、まさに神々の入場と言っていい程、周囲の空気さえも変えてしまう程の威厳と威力を放っていた。


2メートル長身美貌のリスティアードが皇帝の正装に身を包んだ姿は、言葉に尽くせぬ雰囲気を醸し出していた。


また、横に並ぶ灼熱の爆王は全く違った意味で、人の目を引き付けずにはいられない、空気を纏って荒々しく並び入場してきた。


この二人の並んだ姿を見た、高級官僚たちは心打たれるように自然と跪く。


高級武官は己が主君の堂々たる偉容に感極まり、武官としての最高礼儀として、右膝をつき右手を左胸に当て心から二人に敬礼する。


異界戦役で戦没した6人の騎士団団長の後任も、既に決まっており12人の帝国騎士最強の【武神将】も正装で、皆の最前列で跪く。


その姿は、神々の大集会そのものであった。


神々しく、勇ましく、威厳に包まれた、空気の中。


リスティアードが、壇上の玉座の前に立ち皆の姿を見渡す。

その右横には、爆熱強王のランガードが真っ赤な短髪の髪を逆立て立つ。


ランガードの後ろには、妻であり氷結の女王シュシィス・スセインと息子グエンと娘フェリアが並び立つ。

その横には大炎元郷総統キルヘッシュ・アクティア妖精王が並ぶ。


また、その後方にはリューイとイグシアが、影の様にそっと護衛の様に静かに立つ。


リスティアードの左横には、アースウェイグ帝国国務長官であるアルフィス・アソルト・アグシス侯爵が漆黒の正装の上に国務長官を表す銀色のサッシュを右肩から左腰に垂らして無口で威厳の塊の帝国の要は、厳しい目つきで背筋をピンと張り佇む。


そしてその横には、息子のアルセイス帝国軍最高長官とレィリア・アストネージュ金獅子近衛騎士団団長が並ぶ。


レィリアは、武神将であり伯爵令嬢でもあるが、壇上に上がるのは不自然な立場であるが、その豪奢と抜きんでた美貌と雰囲気が、全く違和感を感じさせていなかった。


そんな雰囲気の中、リスティアードが声を発する。


「皆に告げる。」


ザザザー


一斉に首を垂れていた首が更に深く、下がる。


黄金と太陽の皇帝は話を続ける。


「紅蓮の正義王国ランガード国王は、本日よりランガード・スセインの息子グエン殿と娘フェリア殿がご就任される。」


これは、前日の祝賀会の時に、当のランガードの爆弾発言でほとんどの者が周知していたので何の問題も無かった。


だが、次の言葉に皆は驚愕した。


「そして、アルセイス・アスティア・アグシス帝国軍最高司令長官とレィリア・アストネージュ金獅子騎士団武神将の結婚をここに発表する。」


ザワザワザワ


その場にいる、1万の人間たちがさざめく。


(そりゃ~ま、そうなるよな、幾ら美男美女でも昨日決まって今日発表だかんな)等と、空気を読まない不届きの男は、1人考えていた。


リスティアードは構わずに話し続ける。


「そして、不死鳥騎士団武神将には、フーカ・セロ千竜騎士長が本日付で就任する。副団主には同じくリン千竜騎士長を任命する。」


この辞令は妥当なものだったので、それほど騒がれずに事が進んだ。


「ランガードの優秀な副官であった、リューイ元准将には大炎元郷より全大陸を【正義と平和】で維持する【ランガード正義執行管理司令長官】の任につくものとし、全大陸の悪と戦い、施政者の指導に当たるものとする。そしてアースウェイグ帝国軍はランガード第1の騎士の序列として、リューイ長官の下に配備される。」


「これは辞令とは無関係だが、リューイ正義執行管理司令長官と不死鳥騎士団副団主リン准将の結婚も発表させていただく。」


【謁見の間】に正装で並ぶ、不死鳥騎士団の副団長リンの頬が真っ赤になるのを周囲の不死鳥気団団員たちは、微笑み喜んでいた。


リンの親友で戦友のラウミ千竜騎士長が肩を抱きしめ語り掛ける。


「リン、おめでとう!!」


リンは顔を真っ赤にして、下を向いて小さな声で


「あ、ありがとう、、、」


リンの部下や同じ階級の千竜騎士長だった、不死鳥騎士団入団からの戦友たちが、皆が祝福してくれた。


リンの人柄はもちろん。リューイとランガードは彼らにとって特別すぎる存在で、そのリューイと自分たちの仲間が結婚することを喜ばない者は、不死鳥騎士団には一人もいなかった。


【火の民】であった、火玄・暁(かげん・あかつき)もヴァルゴ太古兵器興業国戦役で、リン千竜騎士長の副官となって以来、今では正式にリン准将の副官として任官しており。


父親の様な、歴戦の勇者である男の顔は、己の上官と【火の民】5柱の長の結婚を無言で心から喜んでいた。


そして、このお騒がせな美貌の皇帝陛下は最後にまた、とんでもない事を言い出す。


「最後に私事だが、アースウェイグ王朝は私の代で終わり、次の皇帝にはアルセイス卿がなるものとする。」


「引継ぎが終わり次第、私は皇帝の任を降りアースウェイグ帝国は【アグシス王朝】の始まりとなる。」


(おいおい大将、そりゃまた思い切ったな~)


また、他人事の様に思うが、ふと不安がよぎった、、、


(大将まさか、、、)


アースウェイグ帝国史でも、生きて(・・・)皇帝の座を退いた、最短記録を更新する常識と権力欲とは無縁の若き皇帝である。


リスティアードは場内が騒ぐのを無視して、話し続ける。


「これは、前皇帝陛下であられる、私の父上とも話し合った結果である。新しい時代を迎える今に、古い王朝は必要が無いと判断した結果である。」


「今まで、アースウェイグ王朝に尽力し、支えてくれた皆には、心より感謝申し上げる。」


そこで、ついに溜まりかねたこの女性が腹に響く大声で


「陛下!!そのような大事を勝手にお決めになるものではありません!!」


当然、レィリア・アストネージュ武神将だ。


(レィリアもこの話は聞いていなかったのか、、、)


「ごめんね、レィリア」


黄金の皇帝は、悲しそうに横を向き長いまつげを伏せる。


「ごめんではありません!!私は陛下の剣として今までずっと生きてきたのです。そ、それを、、、」


金麗の美女の言葉は最後まで言えずに、大粒の涙が言葉を塞ぐ。


「本当にすまない。」


ひたすら謝り続ける、美貌青年の皇帝陛下だが、いきなり若き皇帝の頬をパンっと響く音がする。


レィリアが、リスティアードの頬をはたいたのだ。


ざわつく場内。そりゃそうだ、辞めると言っても皇帝を臣下がその頬をはたくなど、考えられぬ出来事だ。


リスティアードが本気なら、簡単によける事も可能だったであろう


だが、リスティアードはあえて、レィリアのビンタを受けたのである。


「勝手がすぎます!!」


ダン!!


ついにレィリアは、壇上から走り去っていった。


リスティアードは赤く腫れた、頬を見せながら


「アルセイス、お願い。」


っとだけ言い。


アルセイスはただ一言


「御意」


っと、答え壇上を後にする。


きっと、幼いころから共に育ったこの3人には、他人にはわからない絆の様なものが存在するのだろう。


俺は横にいる、頬を赤く少し晴らした美男子でただ一人認める上官に小声で話しかける。


「大将まさか、俺達の旅行に付いてくるなんてことねぇよな」


リスティアードは、ニコッと微笑み


「そんなことある訳ないじゃない」


(絶対ついて来る気だ、、、)


俺は確信した。


(俺とシュスの新婚旅行に付いてくるために、皇帝の座を捨てるってのか!)


(まぁ~俺も人の事はとやかく言える筋合いじゃないな、、、)



場所は変わり黒曜天宮中庭である。


「待ってくれ、レィリア!!」


黒き剣聖である、アルセイスでさえも追いつけない速度で、レィリアは感情的に走り続けた。


広大な黒曜天宮内の中庭と言っても、【謁見の間】から普通に歩いてくれば30分以上かかるところを一瞬で駆け抜けてしまう


妖精女王だが、北海黒竜王にして【黒騎士】の異名を取るアルセイスとて尋常とは桁外れな、能力の持ち主だ。

それでも、妖精力を使ったレィリアに付いていくのがやっとであった。


そしてこの中庭で、ついに声をかける事が出来る距離に近づいたのだ。


急に立ち止まる金色の髪が見事な、麗しき伯爵令嬢だ。


レィリアは立ち止まったまま


「アルセイス!!なぜなの?どうしてリアードは皇帝を辞めるなんて言い出したの?」


「私たちは、ずっとリアードの剣として修業を続けてきたのに、そんな簡単に私たちの気持ちを切り捨てられるの?」


「!!」


「そうだわ、ランガードの赤猿が入れ知恵したに違いないわ!!」


「あの赤猿をとっちめれば、きっとリアードは私たちの所に戻ってきてくれる。」


パン!!


レィリアの頬をアルセイスの平手打ちが飛ぶ。


「ア、アルセイス、、、」


「私の親友をそのように言うのはやめてもらいたい」


レィリアの瞳から更に大粒の涙が、零れ落ちる。


「な、何故、、どうして皆、、昔は仲よくやっていたのに、、、」


アルセイスは、そっと近づきレィリアを抱きしめる。

優しく優しく、そして涙が零れ落ちるレィリアの小さく美しい唇に自分の唇を重ねる。


静かに時は止まったかのように、流れを止める。


とても長い時間が過ぎたように感じたが、実際には5分にも満たない時間であった。


アルセイスは、冷静になったレィリアを中庭の噴水の縁に座らせ、自分も横に腰かけゆっくりと話し出す。


「リアード陛下には、陛下の考えがあるのだ。」


「貴女には貴女の考えがあるようにな」


下を俯き、先ほどまでの怒気と覇気を失って、レイリアはうなだれる。


レィリアは小さな声で


「私、これからどうして生きて行けばいいの?」


黒き剣聖は、変わらず低い声で


「真甦に聞けばよかろう」


「真甦に、、、」


黒と金の二人はそのまま、【謁見の間】には戻らず、二人きりで過ごした。



謁見の間では、騒ぎが一通り済み食事会という名の酒宴が開かれようとしていた。


まだ、陽も高いし昨晩から徹夜で過ごしてきた、ランガード達にとってはごく普通の日常と何ら変わることは無いのだが、大事な時にはいつも酒が付いてくるのもらしいと言えばらしいのだが、、、


リューイなどからしたら、そこまで酒に拘らなくてもと思ってしまうのだ。


とはいえ、リューイも【火の民】だ。【火の民】は火酒を好む。アルコールには至って、免疫力があり趣向品であるのは間違いないのだが、リューイの性格上不謹慎に感じてしまうのかもしれない。


そこに俺達がいる所に、懐かしい顔ぶれが近づいてきた。


大炎元郷の北方警戒警備責任者のヴォルグス砦城主ロリーデ・ガルクス卿と先々代剣聖にして、アルセイスの師匠ビル・ヘイム卿だ。


俺は大手を振って再会を喜ぶ。

何しろ俺の真甦の使い方を教えてくれた師匠と帝国騎士と初めて戦い負けた相手だからだ。


二人は、近づくと揃って、右ひざを折り敬礼する。


(ビルのおっさんに、いちいち敬礼するななんて、怖くて言えねぇからな~)


ロリーデ・ガルクス城主が代表して、話をする。


「リスティアード陛下並びにランガード王陛下にご挨拶申し上げる。」


リスティアードは、レィリアに叩かれて頬が赤くなったことを気にもせずに


「久しぶりだね、ロリーデ卿にビル卿。元気でいたかい?」


「御意。おかげさまで、いまだ現役(・・)で頑張っております。」


リスティアードとロリーデ卿が挨拶を交している時、ビル・ヘイム卿はずっと、俺から視線を外さずにじっと見つめたままだった。


俺は不思議に思い、会話が途絶えた時に声をかけてみた。


「ビルさん、俺なんかワリィ事しました?」


ビルは俺に話しかけると、にこりと笑い相変わらず低い声で


「ランガード殿は人間の域を超えてお強くなられたようですな。」


隣の美しき元皇帝陛下は宣う。


「さすが、元剣聖のビル卿だね、ランガードの強さがわかるのかい?」


「御意、失礼ながら陛下と同等、、、もしくは、、、」


リアードは笑いながら


「僕に気を使わなくてもいいよ。今のランガードは間違いなく僕より強いよ。」


俺はこの二人の話に、加わることを辞めた。

二人とも俺の手におえる奴らじゃないからな、、、

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