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BU・SI・N・SYO  作者: イ-401号
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神々の舞踏曲

黒曜天宮【謁見の間】は、驚愕が続きその場にいる全員が、不安を感じ始めた頃、、、


金髪の美貌を誇る、金獅子近衛騎士団団長 レィリア・アストネージュ武神将が、よく通る透き通った声で、号令をかける様にその場にいる全員に対して、激励する。


「このめでたき日に、一曲ご披露したく存じますが、如何でありましょうか!!」


レィリアなりの心使いだ。


この高潔な淑女が、自ら剣を振るう事はあっても、自ら歌を披露することなど、今まで一度しか聞いたことはない。


それは西海白竜王にして、ベルフェムがバングル文明王国の歌手ベルファム・ソーンとしてこの謁見の間に現れた時の事だ。


その後、ヴァルゴ古代興業国、ゼレイア黒魔術王国 連合国戦争、異界戦役があり、大勢の仲間を失った。


大陸では、大きな犠牲が出た戦後も、小競り合いが続き、ランガードはその都度、自ら最前線へと出陣し ひとつの国 丸ごと正義の王国へと次々と、変革し続けた。


そして、先だっての堕天使ルシフェル一党と【西方天使教団】との戦いでの勝利だ。


1人の戦士としての成果としては、とてつもなく巨大すぎる。


その実績、信頼を一瞬で、自分の息子に譲り渡し、愛する妻と旅行に行くというのだから、各国の代表はもちろん、アースウェイグ帝国始め、【火の民】、大炎元郷に住まうそれぞれの関係者の驚きを想像しただけで、恐ろしい、、、


その意気消沈しそうな、雰囲気を少しでも和らげようと、愁眉で金麗な最強女性騎士は、歌を披露するという。


すると、それに賛同する者が現れた。


今まで、何処にいたのか全く分からず気配を消していた、西海白竜王ベルフェムが、男性にしては極端に高い声で


「レィリア殿、よろしければ私もご一緒してもよろしいだろうか?」


レィリアは白く透き通るような、見た目には男か女かわからない、水龍の最強の使い手に微笑み


「よろこんで」


と言い、壇上に上がる。


すかさず、俺の愛する妻も


「旦那様、、、」


俺は愛する妻が、何をしようとしているか直ぐに気付き


「ああ、構わねぇよ」


シュスは、自らのスカートのすそを両手で持ち、両足を交差させて優雅にお辞儀する。


「ありがとうございます。」


謁見の間の壇上には、ベルフェムとレィリアが並んで立ち、壇上下には、リューイが手配した【火の民】と不死鳥騎士団騎士たちが、広く場所を作り上げた。


その広場に一人、シュシィス・スセイン氷結の女王は、優雅にお辞儀して、座り込む。

そう、愛する夫の為に【舞】を披露するために


間を置かずに、アースウェイグ帝国88代皇帝リスティアード・ローベルム・アルヴェス・アースウェイグ

が声を張リ上げる。


「ランガードの正義と平和を象徴する、歌と舞を御披露いたします。各国の皆様、どうぞ御照覧下さい。」



レィリアが凛と張った、腹に響く声で号令をする。


「全帝国騎士ならび、大炎元郷全ての戦士に告げる。」


「紅蓮の爆王ランガード王に対し敬礼!!」


ザッ!!


カツン!!


その場にいる、全ての帝国騎士は両足の(かかと)を付けて右腕を折り左胸にあてる。帝国騎士の敬礼だ。


大炎元郷に所属する、紅蓮の戦士も、両足をそろえて全員姿勢を正し、大炎元郷という特殊な環境と多種多様な部族の集合体の為、敬礼の仕方も様々である。

【火の民】は熱く燃える、右こぶしを左胸に当て、燃えるような真っ赤な髪を逆立てる。

一方、砂漠の民は独自の文化で、敬礼という作法は存在しない為、全員がその場に片膝をつき、首を垂れる。

【火の民】と同じく火の真甦を持ち、戦闘部族である彼らにとって、敬礼とは服従を意味する。

誇り高く、独自の文化でのみ生きる彼らには、戦わぬ(あかし)こそ最も尊い、敬礼なのだ。


また、エルフ族を代表するエーリア・ティンクル女王

はその荘厳な容姿と神聖な身をもって、右手を左胸に掌をあて、優雅に膝まづく。


レィリアの号令は誰の一言より、迫力と魂がこもった、命令する事に慣れた言葉は、一瞬でその場の雰囲気を変えた。


戦う事を職業とし、誇りの為に命を懸ける彼らにとって、尊敬する上官の命令に従い剣を振るう事がまた、誇りでもある。


また、強気で一途なレィリアが始めて、ランガードを正義の偉大なる王として認め、全員に周知するよう また心に刻むように、最敬礼するよう号令をかける。


一番驚いたのは、当の本人である、ランガード・スセイン伯爵にして正義の国王にして、【火の民】族長。


(あの、レィリアが俺を褒めたぞ、、、なんか後がこぇえ~なぁ~)


等と、不届きな事を考える、爆熱強炎の覇者だ。


レィリアは、そんな本人の考えとは別に、堂々と


「金獅子騎士団全軍 抜剣(ばっけん)、グエン様とフェリア様に剣捧げ!!」


シャン!!


【謁見の間】を守護する、近衛騎士全軍5千名が、その場で金色の大盾を左手に持ち、右手で黄金の剣を抜き放ち、天井に向け胸の前で捧げ持つ。


神に対する、捧げられる金色の剣の無数の剣旗。


荘厳で、華麗な雰囲気を瞬く間に、作り上げる。


すると、帝国騎士の中から 自然と生まれる、地鳴りのような地響き。


帝国騎士の中では、恒例となっている金獅子騎士団団長が、号令を発し、歌を披露する時の暗黙の行動。


固いブーツを謁見の間の地面を叩きつける。

そして、騎士が作る地鳴りはやがて、リズムを刻んでいく。


アースウェイグ帝国軍に古くから伝承される 進軍歌として、、、


軍靴で、叩く地鳴りの音楽をバックに、レィリア・アストネージュ武神将は


『全軍進軍開始!!』


と、脳天から腹の底に迄 響く声で歌いだす。


女性とは、思えない声量と腹に響く綺麗なドスの利いた声が【謁見の間】を埋め尽くす。


レィリアが歌いだすと同時に、しゃがみ込んでいた、シュシィス・スセイン王妃は、パッと跳ね上がり 軍歌に相応しく激しく 熱く【舞】を踊る。


長身でスタイル抜群。小顔で手足が長く、舞 飛び跳ねる都度に、長く真っすぐ伸びた、見事な銀髪が空気を引き裂き銀色に空間を染める。


そして、西海白竜王が軍歌にはない、優しさや(はかな)さと言った部分を、高く透き通るような声でハモリ、隙間を綺麗に涼やかに埋めていく。


そのバックには、何千という数の軍靴の地鳴りが続く。


それは、見事というだけでは収まり切れないほど、神々に捧げる歌。


もしくは、神々の唄う歌の様な、神秘的で威風堂々とした雰囲気と歌唱力であった。


各国の代表たちは、余りの神々しさに心が奪われ、声を出す者など一人もおらず。感動という波に心を溺れさせていた。

それは、自然な形として現れて、【謁見の間】に集う諸外国の高位高官たちは、双方の目より涙を流していた。


理由は、ただひたすら心が震えるせいだ。


その波にもまれる様に頬を大粒の涙が流れる。


感動が、ランガードの正義に賛同する大陸中から集まった、諸外国の代表たちを一つの統一された、【正義と平和】を心にしみ込ませる。


迫力と感動と神聖さを表現した、レィリアとベルフェム、そしてシュシィス・スセイン氷結女王の舞は、静かに終了を迎えた。



しばらく、そこに集う者たちは、心が空虚なカラとなっていた。


そして、ふと自分を取り戻すと、一斉に大讃美!!


白熱と感動と情熱がこもった、喝采だ。


うゎあああああー


謁見の間が、感激に揺れる。


巨大で豪壮な黒曜天宮が、地鳴りを唸り上げる。


元アースウェイグ帝国第87代皇帝ルグナス・ハルスト・アルヴェス・アースウェイグとアルフィス・アソルト・アグシス国務長官も壇上の袖より、この舞踏曲を近くで聞き、顔中   尊き涙に顔中濡らしていた。


俺は、長身で大股に愛する妻の元まで、歩いていき


舞を終え、しゃがみ込んだまま賛辞を受けるシュスに向かって、右手を差し出し


「見事だったぞ」


と言い、シュスは俺の手を取り音もなく立ち上がり、一言


「旦那様に褒められることは、どんな賛辞よりも嬉しゅうございます。」


俺は妻を連れ、壇上にいる二人にも声をかける。


「俺にゃ、歌とか舞踏の良し悪しは分からねぇが、二人ともありがとな」


それぞれに、右手を出し握手をする。


レィリアは「奥方様をどうぞ大切に」と言い。


ベルフェムは「お主と一緒にいると、楽しい人生だな」と高く響くソプラノで答える。


俺は隻眼の目で、挨拶をかわすだけで 大将の元へ行く。


「大将、此処にいる皆と一緒に酒でも飲まねぇか?」


とんでもない事を言い出す。紅蓮の覇者だが


その言葉に直ぐに頷き答える、四海聖竜王にしてアースウェイグ帝国皇帝だ。


「これより、この場にてランガードの正義と平和結成を祝して、酒宴を開きたいと思うが、皆様は如何かな?」


「「「「うぉおおおおー!!」」」」


声にならない唸り声が、賛成を表して波動となり会場を震わす。


直ぐに、黒曜天宮に給仕する全ての人間に、指令が飛び 酒杯と簡単なつまみを用意する。


約2万人の、酒杯を用意するだけでも、かなり大変な出来事だ。


しかし黒曜天宮に給仕する、執事やメイド 果ては近衛騎士団から警備兵士まですべて動員できるものは、手伝い 短時間の内に全員の手に酒杯のグラスが配られる。


壇上には、リスティアード皇帝陛下と俺とその家族、ベルフェムにレィリアとアルセイスが並び立つ。


リューイとイグシアは、壇上下で警備に目を光らせている。


キルヘッシュ・アクティア総統は、壇上脇から自分の娘の見事な姿を見て、感慨にふけっていた。


リアードが、俺に向かって


「ランガード、君の国王としての最後の仕事だよ」


と言って、全員の乾杯の音頭を俺にさせようとする。

妻のシュスがそっと、俺の背中に手を当てて安心させてくれる。


俺は、こう言う事が一番の苦手だ。

しかし、俺のわがままを聞き入れてくれた、皆の気持ちに答える為に勇気を奮う。


高級グラスに注がれた、高価な発砲白葡萄酒を揺らしながら、目線より高く掲げる。


「俺の正義と平和に賛同してくれた、ここに集う各諸国代表の皆には、心より感謝する!!」


「だが、これは終わりじゃない。これが始まりだ!!誤ったことをしたら俺が焼く!容赦しねぇから肝っ玉据えて、気合入れて、自国の民を幸福にするんだぞ!!」


「わかったか!!」


「「「「「はい!!」」」」」


2万人の熱のこもった返事に、本日何度目かの謁見の間が震える。


「そんじゃ、俺の正義と平和に乾杯だ!!」


俺はグラスを更に高く掲げる。


ガシャン!!


2万人のグラスとグラスをぶつけ合い響く、心地よい大音響。


ここに、ランガードが誕生した時より、抱いてきたランガードの正義と平和は、この(・・)大陸において達成した。

ランガードの勝手な感情的な、定義も規則も無い


あくまで、ランガード個人の感覚による規則が、正義と平和という単純だが、解釈することにとても苦労する一つの大きな法則により、大陸を支配した。


あくまで、ランガード・スセイン個人の戦闘能力による、恐怖政治にもなりかねない、規則だが ぶれない男【ランガード】という人柄によって、それは達成されたのだ。



謁見の間では、俺と乾杯したい者が次から次へと、やってくる。


リューイと【火の民】、不死鳥騎士団が、それを整理する。


紅蓮のランガード正義王国【騎士の序列】について、自国がもっと順位が上であると主張する 輩が居たり、ランガードの正義について定義を求めて来るものや、息子グエンが子供であることに対して、不安がる代表が声高々に俺に注文を付けるが、俺は面倒くさくて、聞いていられなくなってしまい。


爆発する。


「うるせぇ!!」


無色の白煙の波動が、謁見の間に流れる。


ランガードにしては、ほんのちょっと力を解放しただけだが、、、効果は滅茶苦茶凄かった。


2万人いた、高官たちは吹き飛ばされ、壁や床に叩きつけられる。


もちろん、近衛騎士始め帝国騎士が、出来るだけショックを緩和して各国使節団の代表を受け止めたので、死者はいないが、改めてランガードを怒らせてはいけないという事を身に染みた、各国代表である。


隣で赤葡萄酒を飲んでいた、ベルフェムが一言


「これは、やりすぎではないかな?」


俺は口を尖がらせて「だってよぅ、余りにごちゃごちゃうるせいからよ~」


ベルフェムも負けていない「うるさいからと言って、いちいち吹き飛ばされていたら、たまったものでは無いのだな」


「正義と平和の象徴ではなく、破壊と殺戮の象徴 爆熱の暴君として、名が残ってしまいかねないのであるな」


「まぁまぁ、二人ともその辺にしてよ」


2メートルを超す、長身のイケメン皇帝陛下が割って入る


「アグシス国務長官、ランガードの正義と平和について、具体的な法律を制定してください。自国の民から取る税についても上限を設け、ランガードの正義と平和を守るためには、国境は存在しないことも含めて原案をお願いします。」


アグシス国務長官は、低く渋い声で


「畏まりました」


と言うが、実はほとんどを彼の右腕である、ツバァイス・カーゼナル卿に丸投げしようと考えていたのだった。


そして、夜は更け酒宴も終わりをつげ、それぞれ当てが割れた、部屋に戻り黒曜天宮は、静寂を取り戻す。


俺達(・・)は皇帝私室に集まり、最後に個人的な会話を楽しんでいた。


側にいるメンツは、リスティアード皇帝始め、レィリア、アルセイス、俺とシュス、ベルフェム、リューイにイグシア鷹王にキルヘッシュの旦那の9人だ。


この大陸最強のメンバーが、今ここにいる。


そして、この世界の未来について、最も重大な話し合いが行われようとしていた。


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