表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BU・SI・N・SYO  作者: イ-401号
154/173

壮絶な戦いの果てに

「キルヘッシュ様!!」


傷だらけのリューイが、思わず叫んだ。


左腕を失い、右足を失い、右腕で持つ細剣と左足だけで、その場に立つキルヘッシュ妖精王には、普段の余裕も悠然とした態度も一切なかった。


切り落とされた、部分からは大量の血が流れ落ち、端正な顔も蒼白になりつつあった。


ザワザワザワ


堕天使ルシフェルが持つ【歪の剣】が生命ある生物の如き(うごめ)く。

しかしその動きは、吐き気を(もよお)す。

とても健康的な、生物ではなく邪悪と言うにも足りない。


異界異様異物な剣。


キルヘッシュ・アクティア妖精王としての能力を全て、無視して襲い掛かるそれは(・・・)この世の物ではあり得ない異物さだ。


ランガードが、妖精族が、復活した10万のエルフ族、全てのランガード軍団の者の目が激闘を続ける、キルヘッシュ・アクティア妖精王の無残な姿にくぎ付けになる。


邪悪な最強で卑怯な、堕天使ルシフェルが残忍に笑い


「ふん、貴様はここで死ぬのだな。」


ザザザザザー


異界異様の生きた歪な剣が、キルヘッシュ・アクティア妖精王めがけて襲い掛かる。


「安心するがよい、お主の主君とやらのランガードも後をすぐ追うでな」


キルヘッシュ・アクティア妖精王の両目が、光り輝く。


「それだけは、絶対に許さないのだよ。私の全てをかけて阻止する。」


息も絶え絶え、顔面蒼白、切断された部分から流れる血は全く止まらない。


それでも、キルヘッシュ・アクティア妖精王は【負けない】と断言する。


「死ね!!我が弟であった者よ。」


ルシフェルが叫び、【歪の剣】が襲い掛かる。


キルヘッシュ・アクティア妖精王は左足一本で、立ち、愛剣である細剣を地面より引き抜き、邪悪なる兄に向かってその剣先を向ける。


「兄者さらばであるよ」


それは唐突で絶対的な力であった。


傷つき、血だらけのキルヘッシュ・アクティアの剣先から大量の氷結が、吹きすさぶ。

今までの妖精の力とは、段違いの力と吹きすさぶ桁はずれの量の氷の嵐。


現存する、この世界全てを凍らせてしまう程の氷結が、キルヘッシュ・アクティア妖精王の愛剣から、ルシフェル目掛けて襲い掛かる。


「なっ!!」


ルシフェルは、絶対の勝利を確信していたところに、この様な凄まじい、氷結の嵐に見舞われるとは想像もしておらず思わず声が出る。


「これは!妖精の力ではない!!」


ルシフェルが叫ぶ。


【歪の剣】も凍るほどの、氷結!!


生きた異様なる剣は、生命があるように死ぬのを怖がるように、(うごめ)き、(ざわ)めき、(あらが)う。


だが、それは全て無駄であった。


絶対的な氷結の嵐。


絶対零度!!


全てを凍らせる、絶対なる力。


歪な剣は、動きを止め全身を氷結に固められる。


ルシフェルとて、無事では済まなかった。

なんとか、己の自然を操る能力を全力で、絶対氷結に対し空気中の水分を全て、凍らせて我が身を守る。


っが、それは絶対氷結の前では、無事では済まなかった。


ルシフェルの半身以上を凍らせ、かろうじて口が()ける程度だ。


ボロボロのキルヘッシュは、片足で立ちながら愛剣を更に、ルシフェル目掛けて一振りする。


キルヘッシュ・アクティア妖精王の次の攻撃は、誰も予想していなかった。


爆熱強炎のこの世界にある全てを焼き尽くすほどの爆熱が細剣より、放たれる。


絶対氷結により、凍った【歪な剣】は爆熱の攻撃を受けて、その異様な姿をこの世界から完全に灰となり消滅する。


半身を絶対氷結に固められていた、堕天使ルシフェルはキルヘッシュ・アクティア妖精王の次なる攻撃、爆熱強炎の炎を全身で受け、苦悶の表情をするが、次の瞬間には存在を完全に悲鳴も上げることが出来ずに、灰燼とかした。


ランガード軍団全員が見守る中、キルヘッシュ・アクティア妖精王は、堕天使ルシフェル。実の兄にして、逆族の神に勝利した。


うぉおおおおおおー!!


3度、湧き上がるランガード軍団、紅蓮の戦士。


とは、裏腹にキルヘッシュ・アクティア妖精王はその場に倒れる。


ガッ!!


それを抱きかかえたのは、他でもない主君にして王。


ランガード・スセインだ。


キルヘッシュ・アクティア妖精王は、蒼白の顔でランガードを見て


「華麗な勝利とはいかなかったであ~るな」


っと、言うがランガードは何も返さずに


そっと、優しくキルヘッシュ・アクティア妖精王を抱きかかえて、自軍迄歩き出す。


お姫様抱っこされて、キルヘッシュ・アクティアは一言


「次は奥方様に、されてみたいものであ~るな」


ランガードは優しい眼差しで、蒼白で血にまみれたキルヘッシュ・アクティアを見つめる。


直ぐに、治癒部隊がランガードとキルヘッシュ・アクティアの周囲に駆け寄ってくる。


ランガードはキルヘッシュを静かに地面に横にする。


キルヘッシュは、自分を治癒しようとする治癒部隊に声をかけ


「吾輩には無用であ~るよ」


切断された、左手と右足が次の瞬間。


生えてきた。


流石は数千年を生き残る、現存する神である。


唖然(あぜん)と見守る、治癒部隊だがランガードは驚きもせずに、始めてキルヘッシュ・アクティアに声をかける。


「お疲れ、旦那。」


「御意であ~るよ」


すると、キルヘッシュは蒼白な顔のまま起き上がる。


「大丈夫か?」思わず、声をかけるランガードだが


キルヘッシュは、生えてきた右足と左手は生身の肌をさらしながら「大丈夫であ~るよ」と答え、俺の家族の元にふら付きながらも歩き出す。


そして、炎身体のグエンと氷像のフェリアの前で膝まずき


「御身のお力を勝手に、使用した不敬をお許しくださいませ」


と言い、首をたれ謝罪する。


キルヘッシュ・アクティアが兄ルシフェルに対して使った、最後の力は、グエンとフェリアの能力だったのだ。

神々と同様以上の力を持つ、グエンとフェリアは妖精とのつながりもあり、神であり、妖精であり、人間でもある。


この世の(ことわり)を無視した、超越した存在なのだ。


よって、キルヘッシュがその力を使う事が可能であったのだ。

それに気付けたからこその勝利である。


もちろん、グエンとフェリアがその膨大なる力の使用を拒否すれば、キルヘッシュ・アクティアといえど、使う事はかなわぬ。


炎身体のグエンが、炎を揺らしながら


「見事な戦いでした。妖精王よ」


BOW!!


炎身体のグエンを業火が襲う


「俺のダチに偉そうにしてんじゃねぇぞクソガキ」


「まだ、それ続けるの?いい加減にしてくんないかな?」


また、不毛な会話が始まると思ったが、ここには誇り高い氷結の女王シュシィス・スセイン王妃がいる。

不毛な親子喧嘩を自然と、話を逸らす。


「フェリアは、この結果を予知していたのかしら?」


ぽつりと喋る、王妃の一言に周りの皆が関心を示す。

それはそうだ、未来を予知するフェリアが、居れば結果は分かっているのだから


氷像とかした、フェリアが幼い子供の声で話し始める。


「私の予知は、他人に話すと未来が、変わってしまうの。だから誰にも言えなくて、ごめんなさい。」


(やっぱ、可愛いなぁ~)


ランガードは、フェリアが話す内容とは見当違いな、感想を抱く。

頭で考えるより、感情、身体が勝手に動くランガードならではの感想だ。


そこにまた、頑固な奴がやってくる。

こいつも、変わんねぇぞ


などと思っていると、やはり創造通り


俺の前で膝まずく、エルフの女王エーリア・ティンクルだ。


「紅蓮のランガード正義の王とその戦士皆様に、エルフ族を代表して心より感謝申し上げます。」


「我らが一族を救っていただき、この様なことを申し上げるのも図々しいかもしれませぬが、我らが一族もランガード王と共に暮らしたいと願うものである。」


ランガードが、リューイの方を見て

(何とかなるの?)的に目配せする。


リューイは包帯だらけの身体で、コクリと首を頷く。

(本心とは別に、こうなってしまっては断っても無駄であろうから、、、)


俺は、また同じこと言う。何度目だこれ?


「エーリア・ティンクル女王、エルフ族全員を大炎元郷で暮らす事を許そう。」


「だが、いちいち俺の前で膝まづくのは許さねぇぞ」


エーリアは音もなく、スッと立ち上がりこれまた何度目かの返事を受ける。


「王の寛容さに感謝すれど、(ひざまず)くのは私の生き方であれば、変えられませぬ。ご容赦いただきたい」


(はぁ~)だよ。



しかし、ここに天帝皇王に刃向かい、逆族となった悪逆なる堕天使ルシフェル一党との激闘はランガード軍団の大勝利に終わりを告げた。


悩むのは、10万人ものエルフ族をどうやって生活させるか悩むリューイ准将だけであった。


俺は、急ぎリスティアード皇帝陛下に真魂交信で勝利を告げる。


(よくやったね、ランガード)


(かなり、苦戦したが皆が頑張ってくれたおかげだ)


(そう、こちらも君が【西方天使教団】の邪教を魔を滅する炎の波動で消し去ってくれたから、終結して戦後処理に追われているよ)


(そいつはよかったな、こっちも後片付けが済んだら、黒曜天宮に一度顔出すぜ)


(わかったよ、待ってるね)


真魂交信を切り、優秀な副官である包帯でグルグル巻きになっているリューイを見る。


「お前、意外にボロボロだな」


「今更ですよ、今回の戦いで損耗がこれだけで済んだのは奇跡に近いですよ、ホント。」


「ほとんど、グエン様とフェリア様のおかげですけどね」


っと、そこにメイラが駆け寄ってきた。


「イグシア様とベルフェム様がお気づきになられました。」


リューイが、すぐさま走り出す。

自身の命の恩人の元へ


意識が戻った、二人は横たわったまま、俺達を見渡す。


ベルフェムは一言俺を見て


「南海紅龍王とは、一緒に戦うのはもうこりごりであるよ」


イグシア鷹王はリューイの感謝の言葉に対しやはり一言。


「お気遣い無用。」


とだけ答える。


傷だらけの、リンや岩・破砕(がん・くらっしゅ)、キルヘッシュ・アクティア、悪しきエルフから戻った、まだ服もまともに来ていないエルフ族を見て、ランガードは笑いながら


「みんなボロボロだが、何とか勝ったな!」


勝鬨(かちどき)だ!!」


「「「「おおぅ!!」」」」


「「「「ランガード王万歳!!」」」」


「「「「ランガード王万歳!!」」」」


「「「「ランガード王万歳!!」」」」


大地が紅蓮の戦士の声で埋め尽くされる。


大陸に住まう人民を救うという、紅蓮ランガード正義王国、初めての戦いであったが、大勝利に終結した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ