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BU・SI・N・SYO  作者: イ-401号
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妖精王の真骨頂

ルシフェル一党との決闘に苦戦しながらも2連勝した、ランガード軍団の士気は高く、勢いよく盛り上がっていた。


それはそうだろう、悪鬼血族 最強 3強鬼族豪の弐の席に座す、ダル・メッツを不死鳥騎士団リン千竜騎士長が、大逆転勝利撃破して、壱の席に座すガーベィ・ダグルスをも【火の民】紅蓮の5柱岩・破砕(がん・くらっしゅ)が我が身を犠牲にして勝利をつかみ取ったのだ。


本来の実力であれば、双方とも勝利することは難しかったかもしれない。


敵の油断があったのは事実であろう。

数千年間、最強戦士として生きてきた、邪悪なる吸血鬼族だ。

たかが、人間どもに負ける事など、想像もしていなかったであろう。


だが、ランガード軍団紅蓮の戦士の【覚悟】が敵を勝ったのも事実だ。


後方待機していた、武照・爆弾(たけあかり・ぼん)が、前線迄来て岩・破砕(がん・くらっしゅ)の戦いをじっと見つめ心の中で必死に応援していた。


傷ついていく、岩・破砕(がん・くらっしゅ)に心を(さい)まれ自らも傷つくような辛い思いをしながらも、目を逸らさず、最後までしっかりと目線を外さず、見つめていた。


しかし、思いとは反対に傷が増え、血だらけになっていく岩・破砕(がん・くらっしゅ)を見ているのはとても辛かったが、最後までその勝利を疑わずに祈りながら見つめていた。


そして、岩・破砕(がん・くらっしゅ)は最強の敵を撃破したのだ!!


勝利を勝ち取り横たわる、岩・破砕(がん・くらっしゅ)の手を握り、優しく声をかける。


「よくやりましたね、岩・破砕(がん・くらっしゅ)


「あ、(あね)さん、、、(かい)の兄貴のくれたこの小刀のおかげで勝てました、、、界の兄貴が応援してくれたみてぇっすよ」


「あの人も、あなたの事を今頃は、誇りに感じているでしょう」


思わず、岩・破砕(がん・くらっしゅ)の血だらけの顔から涙が止まらずに溢れ出す。


思わず、事情を知る【火の民】紅蓮の戦士の中には、同じく涙を流す者が、数多くいた。


それだけ今は亡き紅蓮の5柱界・爆弾(かい・ぼん)の存在感は未だに【火の民】には、とてつもなく大きいものであったと言う証拠である。



リンと岩・破砕(がん・くらっしゅ)は、まだ意識の戻らない、東海白竜王ベルフェム、イグシア鷹王と共に後方治療所にて、並んで治癒を受けていた。



そして最前線には、既に3人だけしかいない。


敵の首魁堕天使ルシフェルと紅蓮ランガード正義王国国王と大炎元郷総統にして、キルヘッシュ・アクティア妖精王である。


グエンはじめ紅蓮の戦士は、全てをキルヘッシュ・アクティア妖精王に預けて、ただ見守ることしかできない。


紅蓮の覇王ランガードが、ルシフェルを見て


「もうおめぇ一人しかいねぇ、降伏するんなら受け入れてやんぞ」


「愚かでバカな、紅蓮の王だ。ここにきて我が降伏するとでも思うのか!!」


二人の会話を聞いて、キルヘッシュ・アクティア妖精王が我が主君に(こうべ)を垂れながら会話に加わる。


「王よ、私へのお気遣いは無用です。この男を今では兄とは思っておりません。今の私にとって、一番大切なものはあなたです。ランガード王よ」


「はっはっはっ、かつて我の弟と呼ばれていた、キルヘッシュも惰弱者になり果てたものよの」


「己が主君を持つ幸福感を知らぬ、お主に同情はするが、ここでお主の謀略は終わるのだよ」


ランガードは二人の気持ちを確認して、キルヘッシュの肩をポンと叩き、何も言わずに深紅の外套を翻して、自軍に戻っていく。


ランガードが、戦闘区域から離れたのを確認するとルシフェルはスラリと、とてつもない邪悪なる剣を抜いた。


ランガードが、、、、


リューイが、、、


異界侵略戦役を前線で戦った、【火の民】紅蓮の戦士たちは驚愕の目で、ルシフェルが抜いた剣を見つめて恐怖した。


それは【(いびつ)な剣】異界の王が、使っていた生きた(・・・)剣。


生命を持つように、(うごめ)き、敵を(むさぼ)る。


邪悪なる歪な剣。


何故、ルシフェルが所持している?

異界の王を討伐した時に、あの剣も一緒に滅んだのではなかったか!

ランガードもリューイも同じく考えた。


だがあの時、剣の事迄、確認できるような状況ではなかった。

ランガードは片目を失い、死に損なっていた。

リューイは、背中をあの歪な剣で切り裂かれ、今も背中には傷跡が歪に残っている。


どのようにかして、ルシフェルはあの【歪な剣】を手に入れたのだ。


その方法は、わからないが現実にルシフェルが今手にしている剣は、まごうことなきあの異界の王が持っていた歪な剣だ。


キルヘッシュ・アクティア妖精王は、異界侵略戦争の時は、悪魔族に落ちていて、その内容を知らぬ。


だが、この剣の異常さ、異質さを身体全てで、感じていた。

声に出しては、全く違う感想を述べる。


「お主には、似合いの剣であるな」


「ふん、お主をこの歪の剣で、血祭りにしランガードと家族諸共、地獄に送ってやるわ!!」


キルヘッシュ・アクティア妖精王が細剣を引き抜き、自分の顔の前で一直線に天に向け刃を掲げる。


シャン!!


「それだけは、我が命に代えても、許さぬよ!」


キルヘッシュ・アクティア妖精王の周囲から、風が吹き出し始めはそよ風のような風が次第に暴風となり、キルヘッシュを中心に竜巻を起こす。


「今更 名乗る必要はあるまいが、紅蓮のランガード正義王国総統キルヘッシュ・アクティア参るのである。」


暴風の音で、相手に聞こえたかは判らぬが、キルヘッシュの宣誓は、ランガードの心には響き渡った。


キルヘッシュ・アクティアとの付き合いは、リューイやシュス、リスティアード皇帝陛下などと比べると、まだまだ浅い時間しか共にいないが、ランガードの心の中では、絶対の信頼感と強さに関しては、自分と同等と評価している。


もし、キルヘッシュ・アクティアがこの戦いで万一にでも負けたのなら、自分でも勝てぬ相手としてルシフェルを認めるつもりだ。


所詮、それぞれの思いを貫くには、至って単純な自然の摂理である弱肉強食が各々の【正義】を決める。


だからこそ、負けてはいけないのだ!!


異世界侵略戦役の時も同じだ。


負ければ、蹂躙(じゅうりん)され征服される。


共存が不可能な相手には、大切なものを守るために、敵を滅ぼすしかないのである。


っで、無ければ己が滅ぶことになる。


それは、すなわち、己の正義を貫けぬことにつながる。


ランガードの存在意義は、初めから己の正義を通すために【力】を欲していた。


【力】を手に入れても尚、己の【正義】を変えぬ揺らぎない強き心が、これだけの人間に(した)われ、王として族長として、夫として、親友として、皆 ランガードに着いてきてくれるのだ。



ルシフェルとキルヘッシュの兄弟対決は、既に始まっていた。


キルヘッシュは、風の妖精を使役し竜巻を起こして、風刃を無数にルシフェル目掛けて、放つ!!放つ!!放つ!!


ルシフェルは、全く同様せずに左手で歪の剣を持ち、右手を真横に振り、無数の風刃を(ことごと)く、打ち消す。


キルヘッシュは、間を置かずに次の攻撃を仕掛ける。

水刃が沸き上がり、雷鳴が(とどろ)き、地面より無数の石で出来た槍が襲い掛かる。


一瞬にして、複数の妖精を使役し、最大攻撃をかける。

妖精王と呼ばれる、所以(ゆえん)である。


しかし、ルシフェルにはキルヘッシュの渾身(こんしん)の全ての攻撃が、一瞬で相殺される。


ルシフェルの能力とは、キルヘッシュと同じ自然界の力を自由に操ることが出来る事だ。


キルヘッシュとの違いは、キルヘッシュはそれぞれの妖精を呼び出し、使役するがルシフェルは、自然そのものを自由に扱える驚異的な能力なのだ。


天帝皇王様に反旗を翻すほどの、能力の持ち主。


それがルシフェルだ。


戦闘は次第に、激化を増していく。


キルヘッシュは、より強き妖精を次々と呼び出し使役する。


ルシフェルは笑いながら、その攻撃を自らの能力で、相殺しかわす。

余裕すら感じられる。


キルヘッシュ・アクティアの端正な頬に、汗が伝う。


この場が、モリビス大森林という大自然が近くにある為、キルヘッシュはルシフェルと互角に戦える。


自然が多くある所には、強き妖精が多くいる。


これが、都市部や人間が多く住まうところでは、それほど多くの妖精はいない。


大地が割れ、雷鳴が鳴り響き、水で出来た槍が無数に襲い掛かる。


端から見れば、天変地異の地獄絵図だ。

とても、人為的な戦いとは思えないほど、苛烈さを増していく。


だが、当事者であるキルヘッシュ・アクティアと堕天使ルシフェルに傷は一切つかない。


お互いの力が、均衡しているためだが、キルヘッシュ・アクティアには、焦りがあった。


能力が互角なら、ルシフェルにはあの【歪の剣】がある。

ランガードやリューイが、驚きの目で見つめていた、どんな力を発揮するかわからない武器を持つ。


激しい風と雷撃の超常現象の中、それは突然襲い掛かってきた!!


ビュン!!


荒れ狂う、空間の中を【歪の剣】が(うな)りをあげてキルヘッシュに襲い掛かる。

刹那、キルヘッシュの右足が切断され、大量の血を振りまき切断される。


「くっ!!」


キルヘッシュは、剣を地に突き立て左足片足で、何とか立っているが、【歪の剣】は更に無軌道に(うごめ)き襲い掛かる。


次の瞬間、キルヘッシュの左腕が、鮮血と共に吹き飛ぶ。


キルヘッシュは、かろうじてまだその場に立っていた。


大量の血を流し、激痛に耐えながら普段の紳士然とした、様子はそこには一切なかった。


ザワザワザワ


【歪の剣】から生えた、歪の小剣が生物の様に(うごめ)く。


ルシフェルが、残忍な笑みを浮かべ実の弟に最後の言葉をかける。


「無様よな、キルヘッシュよ。だが、安心するがよい、直ぐにランガード一家も同じように、細切れにして地獄に落としてやる」


「そうはいかぬよ、兄者よ」


キルヘッシュの最後の攻撃が、放たれようとしていた。


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