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BU・SI・N・SYO  作者: イ-401号
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爆熱闘 岩・破砕

モリビス大森林はランガード軍団で、大賑(おおにぎ)わいと大喝采(だいかっさい)に溢れかえっていた。


3強鬼族豪 《に》弐の席に座すダル・メッツを不死鳥騎士団 千竜騎士長のリンが、撃破した効果で紅蓮の戦士は興奮し、盛り上がっていた。


皆に囲まれ、傷の治療を受けながらも微笑むリンの姿を見て、後悔の念に(さいな)まれる、恋人でありランガードの優秀なる副官のリューイ准将であった。


ランガードの様に、自分の命を懸け信じてあげることが自分には出来なかった!!


後悔しきれない、悔やむ心を察してか、どうかわからぬが、ランガードは、リューイの横にやってきて


「お前のカミさんになるあいつは、間違いなくカカァ天下になるな。」


「あの、気の強さと努力は半端もんじゃできねぇよ。せいぜいお前も負けねぇように頑張れよ」


さっき自分が吐いた、暴言など無かったことの様に、気軽に話しかけてくれる、己が族長であり、親友であるランガードに改めて敬意を払いつつ、リューイは、グッと唇をかみしめて


「大丈夫です。僕も族長と同じくカミさんには頭が上がらない家族を築きますから」


「おいおい、おれんとこはカカァ天下じゃねぇよ」


「まさか亭主関白だとかいう訳じゃないでしょうね」


「何のお話でございますの?」


タイミングよすぎだろう、シュシィス・スセイン王妃が知ってか知らずか、二人に話しかけてくる。


(わざと今 来ただろう、、、)


愛する、氷結の女王シュシィス・スセインは澄まし顔で、微笑み俺たち二人を見つめてくる。

あえて、俺は不毛な会話をここで一度断ち切り、次なる決闘に注力する。


吸血鬼族最強戦士 3強鬼族豪 (いち)の席に座す、ガーベィ・ダグルスと紅蓮の5柱 高熱巨体の紅蓮の戦士岩・破砕(がん・くらっしゅ)との戦いである。


ガーベィ・ダグルスは、身長なら岩・破砕(がん・くらっしゅ)と変わらぬほどの高さだが、スリムな体型と残虐性の雰囲気は悪鬼血族全員にある、共通点だ。


ガーベィ・ダグルスの未知の能力と高熱マグマの紅蓮戦士岩・破砕(がん・くらっしゅ)がどう戦うかは、初めての対戦相手同士、正直、、、、


やってみなければわからない。


岩・破砕(がん・くらっしゅ)は、リンの戦いを見て、気合十分だ!!


巨体全身を真っ赤に燃やし、気負いを吐き出す。


岩・破砕(がん・くらっしゅ)の得意の獲物は、ぶっとく長く重い両刃の超大剣だ。

異世界侵略戦役でも、活躍した長年使い込んでいる愛剣である。


一方、ガーベィ・ダグルスの武器は、意外にもそのスリムな身体とは裏腹に、超巨大な曲がった戦斧だ。

しかも、刃の部分が異常に長く、曲線を描いている。


神話に出てくる死神が持つ、(かま)のようなイメージだ。


堕天使ルシフェルが、悪逆な表情で唯一の部下に命じる。


「ガーベィ・ダグルス、まさかお前迄も負ける事など、ないだろうな。」


ガーベィ・ダグルスは、残虐で陰湿な眼差(まなざ)しをルシフェルに向け、一言だけ低い声で答える。


「ありえませぬな。」


静かに、歩く姿は一切の無駄を省き、気品さえ感じる、歩き方だ。

歩く姿を見ただけでも、相当な鍛錬と強力無比なる巨悪な力を持つ者だと、感じる。


ランガードが、岩・破砕(がん・くらっしゅ)の横に並ぶ。


「思う存分、暴れて来い!!」


バン!!


岩・破砕(がん・くらっしゅ)の巨体の背中を自分の(てのひら)で叩く。


「焼き払え!!」


ガン!気合を込める為、自らの胸の鎧の部分に愛剣の平の部分をぶつける。


頼もしく、偉丈夫な姿だ。


岩・破砕(がん・くらっしゅ)が気合を込め、一歩前に進み出る。



ズン!!


巨体の右足を地面に、踏み込み気合万全な岩・破砕(がん・くらっしゅ)が、重く巨大な愛剣を鞘から抜き放つ。


「【火の民】紅蓮の5柱、岩・破砕(がん・くらっしゅ)いざ、参る。」


ガーベィ・ダグルスは、ゆる~りと歩きながら


「そんな気負っていては、勝てるものも勝てぬよ。」


「私はガーベィ・ダグルスお主を殺すものだ。」


ここにルシフェル一党との決闘第2戦が、暗黒と残虐な最強吸血鬼族対高熱巨体正義の戦士との間で始まる。


岩・破砕(がん・くらっしゅ)は、身体を全身マグマの様に赤黒く燃やし、大剣を中段に構える。


一方、ガーベィ・ダグルスは、相変わらずゆる~りと自然体で漆黒の大鎌(おおかま)を肩に乗せ、近づいてくる。


その悠然とした、態度こそ強者の証。ここ一番の命のやり取りである、決闘で無駄な力を込めず、リラックスしてる余裕こそ、ガーベィ・ダグルスの不気味さだろう。


先手は紅蓮の5柱岩・破砕(がん・くらっしゅ)だ。


大剣を中段から、上段に大きく振りかぶり、力の限り溶鉱炉と化した大剣を振り下ろす。

爆風と爆熱が空気を切り裂き、ガーベィ・ダグルスめがけて襲い掛かる。


ガーベィ・ダグルスは全く、応戦しようとしない。

得物である、大鎌も肩に担いだままだ。


ZUN!!


岩・破砕(がん・くらっしゅ)のマグマの大剣は、ガーベィ・ダグルスの頭を勝ち割るように真っすぐに振り下ろされた。


しかし岩・破砕(がん・くらっしゅ)は、手応えを感じない。


(おかしい!!)


ガーベィ・ダグルスは、変わらず優雅に正面に佇んでいる。


「うぉおおおおおおー!」


岩・破砕(がん・くらっしゅ)が吠え、再び燃え上がる大剣をガーベィ・ダグルスの頭、目がけて真上から唸りをあげる。


しかしまたもや、直撃したと思った瞬間、岩・破砕(がん・くらっしゅ)の剣は、ガーベィ・ダグルスをすり抜けて、地面に豪快な音と衝撃を伴ってまたもや突き刺ささったのだ。


「!!」


驚いたのは、岩・破砕(がん・くらっしゅ)だ。


一度ならず二度までも、間違いなく敵の頭を勝ち割り焼き尽くしたはずなのに、燃える剣は、なぜか地面に再び大穴を開けて、突き立っている。


驚いている間に、自分の背中に激痛を感じる。


岩・破砕(がん・くらっしゅ)の背中にガーベィ・ダグルスの大鎌の刃の部分が、突き立っていた。


「ぐっ!!」


すぐさま、地面に刺さった大剣を抜き、自分の後ろを振り返り大きく()ぐ!!


手応えを、、、


感じない。


背中の傷の痛みは、、、大量の流血と共に感じる。


(どこに行った?何が起きている?)


岩・破砕(がん・くらっしゅ)は冷静に思考する。


ガーベィ・ダグルスは岩・破砕(がん・くらっしゅ)の右横に大鎌を変わらず肩に担いだまま、変わらず気構えもせずに立っている。


岩・破砕(がん・くらっしゅ)はむやみに攻め込むのを止めて、相手の動きを探る。


ガーベィ・ダグルスは、残虐に笑いながら


「でかいガタイの割には、少しは頭が使えるんだね。」


「来ないなら、こちらから行くよ。」


大鎌を前方に持ち替え、低く早く岩・破砕(がん・くらっしゅ)目掛けて襲い掛かる。


岩・破砕(がん・くらっしゅ)は、溶岩大剣を隙なく構える。

ガーベィ・ダグルスは地を這うように、大鎌を構え、岩・破砕(がん・くらっしゅ)めがけて容赦なく振り切る。


岩・破砕(がん・くらっしゅ)は、大鎌に自らの大剣で受けた、、、、はず!!


っが、次の瞬間


大鎌は岩・破砕(がん・くらっしゅ)の脇腹に深く突き刺さっていた。


「ば、馬鹿な!!」


口から血を吐き出し、岩・破砕(がん・くらっしゅ)は巨体からまたもや血を流す。


紅蓮の戦士の判断は早かった。岩・破砕(がん・くらっしゅ)は身体を高熱に燃やし、近接戦闘を避け、遠距離攻撃に切り替える。


マグマ球の重量級爆熱攻撃だ。


直径5メートルを超す、爆炎球がガーベィ・ダグルスに向けて連続して放たれる。


放たれる。


放たれる。


ガーベィ・ダグルスは、全く変わらずにその場に佇んでいるだけだ。


岩・破砕(がん・くらっしゅ)の連続発射された、爆炎球は敵の最強吸血鬼族に向けて、轟々と音を鳴らし空気を焼き襲い掛かる。


しかし、岩・破砕(がん・くらっしゅ)の放った全ての爆炎球は全て、ガーベィ・ダグルスをすり抜けて、自軍であるランガード軍団に襲い掛かる。


即座にランガードとグエンが、動く。

岩・破砕(がん・くらっしゅ)の連射した爆炎球を全て(かざ)した手の平に全て、吸い取る。



そう、ガーベィ・ダグルスの能力とは、極限までに進化した【透過能力】だ。


どんな物でも、透過できる特殊能力だ。


東海白竜王ベルフェムや【火の民】紅蓮の5柱門・夷塚(もん・いづか)などが使う能力と同じだが、違うのはベルフェムなどの透過能力は、真甦量によって制限されると言う事だ。

ようは、自分より強い真甦を持つ者には、通用しないと言う事だ。


しかし、ガーベィ・ダグルスの【透過能力】は、真甦量に関係なく、自らの意思で何でも透過できるのだ。


決闘は続き、岩・破砕(がん・くらっしゅ)の傷は時間と正比例して、増えていく。


全身から血を流し、よく立っていられるものだと言わんばかりに、血だるまの様な有様だ。


息も大分、上がってきている。


ガーベィ・ダグルスが残忍そうに最終勧告を告げる。


「よくその傷で立っていられますね。そろそろ、お遊びも終わりです、次で最後にしますよ」


全身血だらけの岩・破砕(がん・くらっしゅ)だが、その眼はまだ死んでいない。


闘志満々に大剣を構える。

剣を握る手にも、大量の血が(したた)る。


低く、早く大鎌を構え襲い掛かるガーベィ・ダグルス。


先に攻撃を仕掛けたのは、傷だらけの岩・破砕(がん・くらっしゅ)だ。

しかし、またもや燃え盛る強剣は、悪鬼血族の身体をすり抜け、地面に突き刺さる。


次の瞬間、岩・破砕(がん・くらっしゅ)は剣から手を放し、左手を自分の顔の前に出す。


ガーベィ・ダグルスの漆黒の大鎌の刃が、岩・破砕(がん・くらっしゅ)の顔の前に出された、左腕に深く突き抜け刺さる。


岩・破砕(がん・くらっしゅ)は左腕に大鎌が突き刺さるのと同時に右手で、自分の腰に差してあった、小刀を自らの(こぶし)とマグマと共にガーベィ・ダグルスの眉間(みけん)めがけてぶちかます。


「うおおおおおー!」


岩・破砕(がん・くらっしゅ)が血だらけの顔で吠える。


ガーベィ・ダグルスの顔面に綺麗に小刀と(こぶし)がめり込む。


岩・破砕(がん・くらっしゅ)の渾身で華麗な一撃とは裏腹に無残にも顔半分以上が、潰され溶解する様は無残。


ガーベィ・ダグルス最後の声だ


「そ、そんな、馬鹿な、、、」


岩・破砕(がん・くらっしゅ)は右手に持った、小刀をそのまま溶解されたガーベィ・ダグルスの顔を首から切り飛ばす。


そして、自らの足で踏みつけ灰燼(かいじん)とする。


同時に、残った胴体も焼き尽くす。


ガーベィ・ダグルスの特殊能力【透過】も攻撃の時には、解除せねばならない。


岩・破砕(がん・くらっしゅ)はそれに気付き、自分の左腕と勝利を交換したのだ。


敵の急所が、首を()ねられる事だから相手は間違いなく自分の首を狙うはずと思い、左腕を顔面にさらしたのだ。


血だらけの巨体で真っ赤に染まった、顔でニヤリと笑い勝鬨(かちどき)をあげる。


界・爆弾(かい・ぼん)さん、勝ちましたよ!!」


異界侵略戦役で、岩・破砕(がん・くらっしゅ)を庇い、死んでいった、亡き兄貴分に勝利を伝えた。


最後に(とど)めを刺した、小刀は界・爆弾(かい・ぼん)から譲り受けた、形見であった。


常に肌身離さずに持っていた、岩・破砕(がん・くらっしゅ)にとっては、命より大切な品である。


【肉を切らせて骨を断つ!!】


言葉でいうのは簡単だが、実際にそれをやれる人間はそうはいないだろう。


運よく、岩・破砕(がん・くらっしゅ)の左腕は治癒可能らしい。


ぅおおおおおおおおー!!


一気に大逆転を果たした、岩・破砕(がん・くらっしゅ)の大勝利に沸き立つ、ランガード軍である。


リンの勝利に続き、2勝目である。


メイラ以外の治癒部隊が、全員岩・破砕(がん・くらっしゅ)の元に駆け寄り、全身傷だらけの巨体を治癒し始める。


正直、圧倒的不利な状況から、一転しての大勝利である。


ランガードが、治癒を受けている、岩・破砕(がん・くらっしゅ)に近づき、隻眼の目で優しくかけてやり


「よくやったな、岩・破砕(がん・くらっしゅ)


「族長、界・爆弾(かい・ぼん)さんのおかげです。」


「そうか、後はゆっくり休めよ」


血だらけの身体の肩に優しく触れる。


そのまま、岩・破砕(がん・くらっしゅ)は、横倒しになり、治癒を受ける。




ついに、たった一人になってしまった、堕天使ルシフェルが怒りを(あら)わにして


「どいつもこいつも、油断してやられおって!!」


「最後は、我が勝利して、ランガードの首をもらい受けようぞ」


「そうはいかぬよ、ルシフェル兄。」


勝利に沸く、ランガード軍団の中にあり、ただ一人次戦に備え、沸き立つ闘志を心に抑え込める。

キルヘッシュ・アクティア妖精王であった。


「キルヘッシュ!!貴様に兄呼ばわりされとうはないわ!!」


「私も本当は、呼びたくないんですけど、一応形式上兄弟なので一度は呼んでおこうと思いましてね」


「ほざけ!愚弟の分際でいい気になるなよ!!」


「そのまま、お言葉お返ししますよ」


キルヘッシュ・アクティア妖精王は、常日頃(つねひごろ)はおかしな癖のある喋り方をするのが癖なのだが、真剣な話をする時と肉親と会話する時だけは普通になるのが不思議だが、、、


今は真剣なのだ。


キルヘッシュ・アクティア妖精王の中では、ルシフェルは既に兄ではなく、強敵として認識されている。


ルシフェル一党との決闘最終戦は、2連勝のままルシフェル体キルヘッシュの戦いで終結となる。


もし、キルヘッシュに土がつい時には、ランガード軍団の敗北になることもあるのだ。


絶対負けられない、古より続く兄弟対決最終戦の始まりだ。

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