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BU・SI・N・SYO  作者: イ-401号
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最終対決

俺は、【大将】ことアースウェイグ帝国リスティアード皇帝陛下に真魂交信していた。


(大将、いいか?)


(ランガード、無事だったんだね。かなり無茶したって聞いていたから心配していたよ)


(すまねぇ、それより急ぎ、大陸中に散らばっている帝国騎士に伝えてほしいことがある。)


(どうしたの?)


(これから、【西方天使教団】の邪教に染まった信徒全てを浄化する。だから、これ以上の争いは無用だと伝えてほしい。)


(そんなことが可能なの?)


(詳しく説明してる暇はねぇが、これからすぐに取り掛かるから、一人でも多く殺さねぇようにしてほしい。)


(わかった。すぐ対応しよう、それに他国にも出来る限り連絡するよ)


(頼む。)


(ランガードも気を付けて)


(ああ、こっちが片付いたら黒曜天宮に一度顔を出すぜ。)


(うん、それじゃまた)



モリビス大森林西方に開けた大地に広がる、ランガード軍団と秀麗なエルフ族10万。


リューイは、全身包帯でグルグル巻きの重体だが、俺の後ろに立つ。


イグシアは、命の危険は去ったがまだ意識は回復しない。メイラが付き添い治癒を続行している。


東海白竜王ベルフェムも真甦を使い果たし、寝たきりのままだ。


俺の両脇には、家族たちが立ち並ぶ。


銀麗の氷結の女王シュシィス・スセイン。


俺の愛する誇り高く美しい妻だ。


その横には、同じく氷結の氷像のような可憐な少女。


未来を予知する、俺の娘フェリア・スセイン。


右には強い事は認めるが、すげぇ生意気なクソガキ


炎体の長男グエン・スセイン。


無限の真甦と、爆熱の使い手だ。


ただ、、、やっぱり何度も言うが、生意気だ。



ランガード家族を中心に、モリビス大森林西方大地に広がる丘の上に立つ、軍団戦士は全員手を(つな)ぎ、真横一列に繋がる。


俺を中心に


グエンが炎体の口から叫ぶ


「真甦をオヤジに、集中するんだよ!それを僕とフェリアが増幅する。」


「クソガキ、仕切ってんじゃねぇよ」


「あのさ、そのクソガキってのそろそろ止めてくんない?」



「いい加減になさいましな、二人とも言い争っている場合ではありませんよ、急いで準備に取り掛かりましょう。」


シュスが、間に入り仲を取り持つように、優しく語り掛ける。


「母様の様に、優しく上品な父親が僕は欲しかったな、、、でも父親は僕には選べないから仕方ないね」


「いちいちうるせぇんだよ、クソガキが」


「キリがありませんから、早く仕事にかかりましょう、族長。今も死んでいる人は、沢山いるんですよ。」


傷だらけの、ランガードの親友にして、優秀な副官がたまりかねて、不毛な会話を打ち切らせて、行動に移る。


「族長、聖剣をお願いします。」


「・・・・・来い牙炎、、、」


(応)


2メートルを超す、刃渡りは太陽光を(まぶ)しくはじき返し、光り輝きながらランガードの右手に突如出現する。


「ランガード軍団戦士!!全員集中して真甦を族長に流してください。」


「「「「おう!!」」」」


モリビス大森林が、揺れる。大気が震える。大地がうねる。


3万名の大量の真甦が、全てランガード国王に向かって流れていく、グエンとフェリアという人成らざる者を通す事で更に超巨大に増幅される超強力真甦。


ランガードは、聖剣誉武号牙炎(よぶごうがえん)を天に突き上げる様に上げる。


ランガードの右肩を炎体のグエンが、掴み。


左手はフェリアが、氷結の氷像の手をしっかりと握りしめる。


氷だが、温かく小さく柔らかかった。


(可愛いなぁ~)


こんな時だが偽ざる、ランガードの親としての純粋な感情の表れだ。

グエンとの対応の違いは、同性同士仕方ないことかもしれないが、その差がありすぎるのは(いな)めない。



「行くよ、オヤジ!!」


「フェリア準備して!」


「はい、お兄さま。」



ランガード軍団戦士の真甦が、グエンとフェリアによって超大幅に増幅され、ランガードに流れ込む。


うっかりしていたランガードは思わず、その膨大な真甦量に声をあげる。


「うおっ!!」


すぐさま、牙炎に膨大な真甦を流し込み始める。


赤髪が逆立ち、外套が風に強く(なび)き翻る。

ランガードの体全身が業火に包まれる。


天を仰ぐ、聖剣はこれまでない程の光をほとばしる。

太陽がそこに誕生したように、直視する事も叶わないほどに、眩く大気を唸り震わせてブルブル振動を始める。


ランガードが吠える


「牙炎!!大陸中の【西方天使教団】の邪心を焼き払え!!」


『応!!』


これまでにない程の心に響く、声で答える聖剣。



BUN!!


BUN!!


BUN!!


聖剣誉武号牙炎を中心に、透明の魔を滅する炎が、大きな波動となって、大陸中を響き渡る。


大気が、、、


空間が、、、


大地が、、、


心が、、、


震える。震える。震える。


波打つ。波打つ。波打つ。


ランガード軍団の戦士でさえ、その波動に気を失う者がいるほど、重く苛烈で強力な魔を滅する炎が、大気を揺らし大陸中に広がる。


GUWWWWWWW-!!


大陸西方大地より、大陸中にランガードの波動が広がる。



アースウェイグ帝国帝都アーセサスでは、、、


100万人の帝国臣民が、続々とランガードの波動を受けて気を失い、倒れていく。


黒曜天宮でも、同様だった。


それはとてつもなく、唐突で強烈な目に見えない大気を揺るがす炎だ。


思わず、リスティアード皇帝陛下も声を出す。


「うわっ!!」


「これが、ランガードの魔を滅する波動なの?」


「真甦を持たない人々は、皆 意識が飛んでしまう程の威力だね。」



アグシス国務長官が、リスティアード皇帝陛下の隣でふらつきながら


「こ、これがランガード殿のお力ですか、、、これはもう人の域を超えておりますな。」


こんな時も渋く低い声で答える。


リスティアード皇帝陛下は、すぐさま命令を下し、行動に移る。


「帝国騎士、真甦を持つ者、意識のある者は、全ての人をあらゆる被害から守るための最善の行動を取るように!!」


アグシス国務長官も立ち直り、命令を下す。


「各国に緊急支援体制を取ります。」


「国境を取り払い、ヒトを救います。人間救護の為であれば、越境を許可します。」


「一人でも多くの人間を救出するよう!!」


アグシス国務長官は、横を向き許可を取るように、リスティアード皇帝陛下の方を見る。


リスティアード皇帝陛下は、黙って頷く。


黒曜天宮内でも、真甦を持たない使用人や女中衆などは、皆意識を失って倒れていた。

意識のある、真甦を持つ者はまず初めに、調理場に行き火の始末を確認し、火事を防ぐ。


アーセサス帝都や他の都市や地域でも、火事による二次被害を抑える為、火の始末を徹底させて行わせた。


意識がない所で、火事が起こったりしたら全員丸焼きだ。


ヒトを救うために、行ったランガードの行為が、逆にヒトを殺しては本末転倒である。


大陸中に散らばっている、全ての帝国騎士に緊急命令が飛ぶ。


武神将から千竜騎士長へ、そして百竜騎士長から十竜騎士長、帝国騎士へと真魂交信で、即座に伝達される。


また、それぞれの真甦持ち者は、ヒトの救護にも良く役立た。


土の真甦を持つ者は、暴走した馬車や荷馬車を止める為、土の壁を作り、御者が意識を失った馬車を止める。


水の真甦持ち者は、火事になればすぐに消化し、それでも間に合わない場合は、近くの川から大量の水を引き込み村一つ丸ごと水浸しにして消化する。


火の真甦所有者は、【火の民】と【砂漠の民】しかいないので、大炎元郷以外では、ヒトを救うと言う役目は担えない。


大炎元郷は、真甦持ちがほとんどの多種多様国家なので、ランガードの波動を受け、衝撃はあったものの、被害は何もなかった。


亜人族も、当然健在だ。


他国では、国家丸ごと気を失う人で(あふ)れたり、国の中枢を担う行政機関の人々がすべて、気を失い指示を出す人がいなくなったため、混乱を極めた国もあった。


被害が全く無いと言うわけではなかったが、【西方天使教団】の壊滅は成功し、人々の命を失う確率は、最低限で済んだ。



ランガードがいる、モリビス大森林では


フェリアが突然、慌てた様子で、皆に大声を出す。


「皆さま!!凶悪な敵が参ります!!お気をつけて!」


ランガードとキルヘッシュが即座に、臨戦態勢を取る。


西方、岩山連山の方角から、3人の男がゆっくりと歩いてくる。


3人とも、黒き鎧を纏い強大で邪悪な力を感じた。

中央のひと際、目立つ漆黒の鎧を着た邪悪なる者は、黒き外套(がいとう)を翻し堂々とやってくる。


そうだ、敵の大将。


堕天使ルシフェルと3強鬼族豪 (いち)の席に座すガーベィ・ダグルスと()の席に座す、ダル・メッツだ。


既にルシフェル一党との戦いの決着はついている。


ランガード軍団の大勝利だ。


だが、敵の首魁はまだ生きて、目の前に佇んでいる。


敵意を双方の目に宿し、殺気を隠す事もせずにランガードめがけて、邪気を放つ。


邪気は、ランガードにとって、痛くも(かゆ)くもない。ちょっと、間際らしいなぁ~って感じだ。


もう勝負はついている。


ヒトの勝利だ。


何故、ルシフェルはここにいるのか?


なぜ逃げない?


リューイは、傷ついた身体だが、脳をフル回転させて敵の行動、思惑を予想した。

今回の敗戦を受け入れ、再起を図るか、、、?


いや、考えられることは、ひとつ。


ランガード一家の殺害だ。


邪悪なる3人は、ランガード軍団が布陣する目の前まで、悠然と歩いて来た。

近くで見ると、るその邪悪な中にも少しは、過去に神々であったという雰囲気を感じなくもない。


髪は全員、真っ黒で顔立ちは、邪悪さの中に気品さえ感じる。

ルシフェルにおいては、端正で品格あるキルヘッシュ妖精王の兄君(あにぎみ)であることを見た目だけなら、理解できる。


ただし、周囲に放つ雰囲気が重く邪悪すぎる。


それが、キルヘッシュ・アクティア妖精王との決定的な違いである。


先頭に屹立する、紅蓮の覇王ランガードが、隻眼深紅の目を燃え上がらせながら、獰猛に噛みつくように言葉を吐き出す。


「降伏に来たって、感じじゃねぇな」


漆黒の魔王は、口の端を吊り上げ、悪逆な表情で


「最後に正々堂々と決闘を申し込みに来たのだよ」


紅蓮の王は、鼻から火を噴きだし熾烈(しれつ)なことを言う。


「冗談なら、笑えねぇし。マジならもっと笑えねぇぞ」


「勝敗が決まっている、この戦いに何故俺達がお前らにつき合わなきゃならねぇんだ?このまま、全軍団でお前ら3人を焼いちまえば済む話だろ」


ルシフェルは、獰猛なランガードの吐き捨てるような言葉を聞いても、ビクともせず逆に笑いかけてきたのだ。


「お主は、そんな事はできまいよ」


「【正義の王】だからな」


「たった、3人相手に全軍で(なぶ)り殺しにする事は出来ないのだよ、正義の覇王ランガード・スセイン王よ」


そこで、今まで後ろで黙って聞いていた、この男がランガード王の横に来て、膝をつく。


キルヘッシュ・アクティア妖精王である。


「王にお願いの【義】があります。ルシフェルの始末を私にお任せ願えぬでありましょうか?」


兄弟の数千年の因縁、、、兄ルシフェルが天帝竜王様を裏切り、その座に就こうと逆族となった時に成敗したのが、四海聖竜王と弟のキルヘッシュ・アクティアである。


その結果はルシフェルを殺害までには至らず、暗黒の地底深く落とし封じ込めた、兄弟であった故の甘さか、、、命を奪う事は当時のキルヘッシュには出来なかった。


長きにわたる恨み、長きにわたる陰謀。


ルシフェルは、長きにわたり着々と陰謀を進め、仲間を増やし、封じ込められた地底空間より少しずつ、少しずつ地上制覇をもくろんでいたのである。


ランガードは、両腕を組み隻眼の目でじっと動かず考える。

そこにまたもや意外な人物が、ランガードの前で膝をつき、右手を曲げ左胸にあてる。

アースウェイグ帝国帝国騎士の最高礼式である。


「団長、どうか私も決闘に参加させていただきたくお願い申し上げます。」


傷だらけのリューイ准将が驚きの表情で叫ぶ

「リン!!」


そう、膝をついたのは不死鳥騎士団千竜騎士長にしてリューイの恋人【天の真甦】所有者のリンだ。


リューイの(かたき)を討とうとでもいうのか?

リンにこの敵は、強すぎる。


誰もが、そう思ったであろう。


しかしランガードは予想もしなかったことを言う。


「いいだろう」


「族長!!」


リューイが、思わず血走った目で敬愛する、上官を見つめる。


意外な展開は、さらに加速する。

巨体を揺らし、ランガードの横に膝まづくリンの横に膝をついたのは、紅蓮の5柱岩・破砕(がん・くらっしゅ)である。

子供と巨人程も対格差のある、リンと岩・破砕(がん・くらっしゅ)であったが、紅蓮の5柱は堂々とマグマを吐き出す様に我が主に低く思い声で嘆願する。


「族長、最後の一人には、私をお選びいただきたい」


全身をマグマの様に発熱させて、発言する様は他を圧倒的に圧倒する。


紅蓮の覇王は、一言


「いいだろう」


「この戦いの最後は、お前らで決着付けろ」


「御意」


「はっ!!」


「焼き払え!!」


こうして、ルシフェル一党との最後の決闘は始まる。 

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