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BU・SI・N・SYO  作者: イ-401号
149/173

決戦

キルヘッシュは、どのような事にも対応できるように準備していた。


既に大地を埋め尽くすような、数の悪しきエルフ7万人が、ベルフェムと共に突如現れているのだから、次に何が起きてもいい様に心を引き締めていた。


相手の巨大さ手強さを熟知しているからこそ、(あなど)れない。


数千年に及ぶ、兄弟因縁のケジメをつける時である。


そして、恐らく【罠】に(はま)ったと思われる、ランガード王一行を悪しきエルフ救出のために、その場に残ったと思われるリューイ准将とイグシア鷹王の事を気に留めていた。


そして、二人を救出に向かった、ランガード王と嫡男グエン様がどのような事を起こそうとも対応できるようにと、、、、





そこに突如、ボロボロになり、多数の切傷痕と大量の血を流しながら、リューイ准将が突然出現する。


続けざま、右胸から血を流し横たわるイグシア鷹王が出現する。


リューイの姿に驚き、駆けよる恋人のリン千竜騎士長であるが、リューイは息も絶え絶えながら、無視して叫ぶ。


「メイラさん!!イグシア様を助けて下さい!!」


メイラは直ぐにイグシアが横たわる脇に駆け寄る。

心臓の鼓動を確認し、息をしているか確認すると、暖かな光を全身より掃き出し、イグシアにあてる。


両の(てのひら)は、右胸の傷口に当て傷を(ふさ)ぎ、これ以上血が流れるのを止める。


そして、後ろを振り向き大声で叫ぶ。


「【炎の真甦】をイグシア様に流し込んでください!」


「急いで!!」


直ぐに、部下であるギリガース軍団長と強き炎を持った者たちが、イグシアの周りに集まり、自らの真甦を流し込む。


イグシアはピクリとも動かない。


顔は死人の様に白く、手足はとても冷たくなっていた。


リューイは自らも瀕死(ひんし)の重症にもかかわらず、イグシアの元から離れない。


リンが後ろで、心配そうに「リューイ、、、」と呟く。


他の治癒部隊がメンバーが駆け寄り、リューイを治癒しようとする。


リューイは、優しく手で治癒部隊隊員たちを押しのけ、イグシアの手をしっかり握って離さない。


「イグシア様、どうか戻ってきてください。」


リューイの両目から溢れんばかりの涙が、(したた)り自分の膝の上に落ちる。


メイラの必死の治癒治療が続く、メイラの額から大粒の汗がしたたり落ちる。


(心の臓の鼓動が弱ってきている、、危険だ。)


メイラは残っている、自分の治癒能力全てを注ぎ込む。

しかし、イグシアの鼓動は今にも止まるほどに弱く、か細くなっていく。



そんな時に、ランガードとグエンが、爆発的な炎と共に現れる。


リューイが俺を見て、涙を流しながら訴える。


「イグシア様は、僕を庇って、、、」


ランガードは、グエンの方を見て


「おいクソガキ、おめぇなら何とかできんだろ」


「それが、人にものを頼む言い方かねぇ」


炎で出来た少年は、(のたま)いながらも、イグシアの元迄歩いていき


右手に拳大(こぶしだい)のオレンジと青で出来た炎の塊を作り出し、、、



思い切りイグシアの胸を殴りつける。


DONN!!


イグシアの体が、衝撃で浮き上がり、跳ね上がる。


「「「「!!」」」」


そこにいる、皆がグエンの有り得ない行動に驚愕する。



しかし、少しすると、確かに力強く、、、



トクン トクン トクン


イグシアの心臓が鼓動を強くする。


メイラが驚き、さらに治癒を続けるが、その顔には笑顔が浮かんでいた。


「傷はとても深く重症ですが、もう大丈夫です。命の危険は無くなりました。」


リューイが思わず、泣き崩れる。


「あ、ありがとうございます。」


っと、イグシアを助けてくれた、炎で出来た少年を見つめる。


しばし、時が止まったかのようにじっと見つめるリューイがやっと、言葉を発する。


有り得ないとばかりに


「グ、グエン様?」


「リューイさんも早く手当てした方がいいですよ」


炎身体のグエンは、優しく語り掛ける。


治癒部隊が、再びリューイの元に駆け付け、治癒し始める。

今度はリューイはおとなしく治療を受けた。


後ろではリンが、大粒の涙を流しながら「リューイ、、、」と泣き叫んでいた。


治療を受けながらも優しくリンに「心配かけてすまない、、、」と言い、横たわる。



俺は、そんな二人を残して、「旦那、悪しきエルフを早いとこ元に戻すぞ」


「7万人、一度に全部やるのであ~るか」


「ああ」


「クソガキ、俺と同体になれ」


「ああ、また~それが人にものを頼む時の態度ですか?」


「早くしろ、敵が攻めてきたら困るだろうがよ」


「わかりました。わかりましたよ。」


「クソガキ、返事は一度だ」


「は・い」


グエンは、生まれて1年足らずで、炎体としての体を作り出し、その炎の中に本体の自分の幼き体を収めているのだ。


幼きグエンを取り巻く炎は、無限にして強大。まさに神そのものであった。


自ら【特別な存在】と豪語することだけの事はある。



グエンの燃え盛る炎体が、ランガードの背中から()に入っていく。


ランガードとグエンの親子一心同体である。


ランガードの経験と破壊力にグエンの無尽蔵の真甦エネルギーが加わった、今のランガードとグエンに(あらが)える者は、この世界には い・な・い。


「来い牙炎」


(応!!)


グエンと合体しているせいか、聖剣誉武号牙炎(よぶごうがえん)の能力も格段に上がっているようだ。


(まばゆ)いばかりの聖剣は、轟々と爆炎を竜巻の様に(まと)わりつかせ、天空まで 爆発業火にて熱し赤々と照らす。


「旦那、結界を解除してくれ。」


「御意であ~る」


「皆の者、結界を解くであ~るよ」


悪しきエルフ7万人を木々で、ドーム状に閉じ込めていた木々がまるで、生命を持つ木々の様に一斉に地面に引き戻さられる。


ザザザザザザー


ランガードは、即座に炎竜巻を巻き起こす牙炎を地面に突き刺す。


唸りをあげる聖剣。


ランガード&グエンが吠える


「悪しき血を全て焼き尽くせ!!」


『応!!』


聖剣 誉武号牙炎(よぶごうがえん)は、これまで常識外れの能力を散々周囲に見せつけてきたが、今回の【力】は更に桁違いだった。


牙炎は、竜巻のような炎を【魔を滅する】透明な炎に変えて、地響きと空気を力付くで、抗えない暴力の様に、振動させて、地平線まで続くのではないかと思われるほどの7万人に及ぶ悪しきエルフに向けて豪快に放つ! 放つ! 放つ!


凄まじき、能力であり、その光は輝かしいまでに、透明なのに眩しかった。


悪しきエルフ達は、ランガードに近い者から順々に悪しき血を焼かれ、金髪で秀麗な元の姿に戻っていく。


それが、はるか地平線までも続くように延々と聖剣は光続ける。


20分は経ったであろうか、魔を滅する透明な炎を吐き出し続けていた、牙炎が突如としてその光を自らの中に収める。


残った者は、地平線まで続くと思われる、7万人の耳が尖った、秀麗なエルフ族たちである。


グエンの炎体が俺から離れる、、、


(ちょっと疲れたか、、、)


エーリア・ティンクル女王とエルフ族が、走り寄り自らの同胞たちを救助に当たる。


物凄い光景だ。


エルフ達で、大地が埋め尽くされたような情景である。

10万に及ぶ、エルフ族の金髪が風に吹かれ走り救出する姿は、壮麗であり見事の一言であった。


ランガードとグエンが、リューイの元まで歩いてくる。

グエンは、歩くと言うより宙を浮いて進んでいるようだ。


「すまなかったな、置いて行っちまって」


手当を受けるリューイに優しく語り掛ける。ランガード王だ。


リューイは首を左右にゆっくり降り、「あの場では僕でなくてもランガード軍団の戦士なら、誰でも同じことをしてました。特別なことをしたわけではありません。」


「ただ、僕はイグシア様に一生返しきれない恩を受けました。」


「イグシア様が、助かって、、、本当に良かったです、、、グエン様心より感謝いたします。」


グエンは炎を少しユラリと揺らして


「リューイさんは、クソオヤジと違って礼儀正しいですね。気にしなくて大丈夫ですよ、僕はグエン。ランガード・スセインの息子ですから」


ランガードが、炎体のグエンの腹に手を突っ込む。


「おわっ!!」


「このクソオヤジ、また僕の真甦を持っていきやがった」


ランガードは、「偉そうにしてんじゃねぇよ。ガキのくせに」と言い元気を取り戻し、深紅の外套(がいとう)を翻して、イグシアが寝ている所まで静かに歩いていく。


イグシアの意識は、まだ戻っていない。

ランガードは優しく、イグシアの肩に触れて小さな声で(ささや)く。


(リューイを助けてくれて、ありがとうな)



ー所、変わり大炎元郷ランガード王国王都ー


爆轟赤炎城ばくごうせきえんじょう、玉座【紅蓮の間】では、王妃シュシィス・スセインと王女フェリアが、紅蓮の5柱門・夷塚(もん・いづか)率いる紅蓮の戦士1千名に守られて、玉座の隣の贅を尽くした椅子に腰かけ、フェリアを抱いていた。


(母様、グエン兄さまが読んでますわ)


(えっ、グエンがあなたを戦場に呼んでいるの?)


(はい、すぐに来いと偉そうに言っておりますわ)


(・・・・・・・)



(では、私も同行してもいいですか?)


(ええ、構いません、お母様。)


シュシィス・スセインは大炎元郷の現在の指揮官紅蓮の5柱門・夷塚(もん・いづか)に向きを変えて、堂々と威厳を持って話しかける。


「後の指揮は、門様にお任せいたします。」


「は?」「どこか行かれるのですか?王妃様」


「ええ、ちょっと、娘と一緒に夫の所まで行ってまいります。」


「ちょ、ちょっとお待ちを、、、」


慌てる門・夷塚(もん・いづか)を無視して、玉座より掻き消える、シュシィス・スセインと王女フェリアであった。


男前で、紅蓮の5柱 門・夷塚(もん・いづか)


「・・・・・・・」


何もできなかった、、、、



場所は西方最果て、ランガード軍団の戦場である。


ランガードは、まず7万人に及ぶエルフ族の回収を第一に行動させて、モリビス大森林内に結界を張らせて、非難させていた。


自らは、軍団の先頭に立ち迎撃の準備をしていた。

ただ、腕を組んで立っているだけなのだが、その姿は炎軍神の如き、全軍に絶対の崇拝感と安心感を与えていた。


しかもその横には、王子グエン・スセインが炎体として並び立っているのだ。


紅蓮の戦士であれば、グエンが飛び抜けた能力の持ち主で、巨大で強力な真甦を肌でヒシヒシと感じていただろう。


そしてその横には、包帯姿のリューイ准将が【天の真甦】を持つ恋人のリンと立ち、横にはキルヘッシュ・アクティア妖精王、紅蓮の5柱岩・破砕(がん・くらっしゅ)、イグシア鷹王の腹心ギリガース軍団長、不死鳥騎士団千竜騎士長が立ち並ぶ。


その姿は、勇壮であり威風堂々としていた。



突然、ランガードの前に、何の前触れもなく空中に、二人の女性が出現する。


一人は当然、妻であるシュシィス・スセイン王妃だ。


もう一人は、氷結で出来た少女、、、


双方の目は、白銀に輝き氷結で出来た髪は腰まであり、可憐で透き通った氷像の様であった。


驚きもせずに、ランガード


「お前たちも来ちまったのか」


炎体の少年が答える

「僕が読んだんだよ、母様も来るとは思わなかったけどね」


氷結の少女が、始めて軽やかに透き通るような声で話す。


「グエン兄様に呼ばれましたのお父様、突然来てしまってごめんなさい」


(クソガキと違って、かわいいなぁ~)


愛する高潔なる、氷結の女王シュシィス・スセインはそっと俺に寄り添い

「フェリアだけで行かせるのは、心配だったもので付いてきてしまいました。申し訳ありません 旦那様。」


俺は愛する妻の方を見て、戦場でありながらもやはり美しいと思わずにはいられなかった。

子供を産んでも、全く崩れない体の線の細さと言い、整った顔の小ささと言い、何よりもその見事にまっすぐ伸びた腰まである銀髪は、エルフ族の金髪と並ぶほど美しく壮麗であり、戦場には似つかわしくなかった。


「ああ、かまわねぇよ。」


ランガードは、そっけなく答えるが、シュスはそっと自分の(ふところ)にしまってあった、焼かれて無くなっていた、黒い眼帯を俺の右目に優しく巻いてくれる。


こういう、ちょっとした気遣いが嬉しいものだ。


その姿を横で見ている、リンはうっとりあこがれるようにシュスと俺を見ていた。


炎体のグエンが、皆に向かって叫ぶ。


「オヤジを中心に、皆で手をつなぎ【西方天使教団】を大陸中から消してやるんだ!!」


氷結の少女が思わずつぶやく


「お兄さま、その為に私をお呼びになられたのですね」


「うん、流石に大陸中の200万人の人間の心を浄化するとなると、僕とオヤジだけではしんどいからね」


傷だらけの、リューイが思わず感心する。


「そんなことが可能なのですか?グエン様」


炎体の炎をユラリと揺らして、リューイの方を見て


「うん、オヤジの【魔を滅する炎】を僕とフェリアとみんなで、強化して大陸中に放射するんだ。」


「そりゃ、かまわねぇがクソガキが仕切るのはどうも気持ちよくウンと言えねぇな」


グエンの父親は、子供より子供っぽいことを口にする。

こういう時は、いつもの事だが、、、


「そういうくだらない話は、家族だけでして下さいね。族長、今は一刻も早く【西方天使教団】を浄化しなくてはいけません。」


「こうしている間にも、何人も死人が出ていますから」


傷だらけのリューイ准将は、体中に傷を負っても口に傷を負うことはなかった。

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