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BU・SI・N・SYO  作者: イ-401号
148/173

爆熱のグエン

それは、突然で突飛な、そして驚愕的現象だった。


モリビス大森林西側に開かれた大地に、展開するランガード軍団の猛者(もさ)たち。


その目の前に驚く事に、大地を埋め尽くすほどの7万もの悪しきエルフを連れた、東海白竜王ベルフェムと南海紅龍王ランガードが、出現したのである。


出現と同時にベルフェムは、力を全て使い果たしその場に倒れこむ。


当然、悪しきエルフを閉じ込めていた、水龍の結界は解かれる。


すぐさまランガードが吠える!!


「旦那~!!頼む!!」


あまりの悪しきエルフの数の多さに皆が、驚愕し動けないでいる所で、やはりこの男は別格である。


「一族全員に命じる。7万の悪しきエルフを拘束せよ!!」


妖精王である、キルヘッシュが命じる。


「「「「はっ!!」」」」


150名の妖精族が、すぐに己が細剣を抜き放ち、地面に突き刺す。


ザザザザザザー


すると、水龍で捕縛されていた悪しきエルフの周囲に、地面より無数の木々が、凄い勢いで生えてきて、あっという間に悪しきエルフ達を木々で出来た、とてつもなく大きなドーム状に閉じ込めてしまう。


妖精族の大地の精霊を全員で使役した結果だ。


モリビス大森林の様な自然がふんだんにある場所には、強気精霊(つよきせいれい)が数多く存在する。


それら、精霊を妖精族は使役し、木々で悪しきエルフ達を閉じ込めてしまう。



治癒部隊隊長のメイラが、ベルフェムの所に駆け寄る。


「ベルフェム様」


っと叫び、両の(てのひら)を倒れ意識がないベルフェムの胸に向け温かい治癒を始める。

治癒と言っても、白き竜王は真甦の使い過ぎによる意識の失墜なので、メイラは自分の真甦を優しく優しく補充する。



ランガードは、片膝をつき息を切らしながらも立ち上がる。


ランガードとて、7万人もの悪しきエルフを瞬間移動させたのである。


真甦が空になっているはずである。

到底立ち上がることすら敵わずはずなのに、魔鉄大剣を杖代(つえが)わりに立ち上がる。


「リューイ、今行くぜ」


事態を察ししたキルヘッシュが、無情な様に言う。


「無理であ~るよ、今 王が行かれても共に死ぬだけであ~る」


キルヘッシュ妖精王が、敵地に残った、リューイとイグシアを助けに戻ろうとする、ランガードを止める。


ランガードの両目が異常なくらい、燃え上がる。


「うるせぇ!!」


フラフラしながらも立ち上がり、魔鉄大剣を体の支えにしてリューイを助けに行こうとするランガードの前に突如、現れたのは、、、




-場所は変わり、リューイ達がいる漆黒の暗黒空間ー


リューイ准将とイグシア鷹王は、二人背中を付けあい、悪鬼血族5人を相手に死闘を繰り返していた。


悪鬼血族3強鬼族豪(きょうきぞくごう)3席に座す。


ル・シュペインは飄々(ひょうひょう)


「吾輩の計画が、失敗するとは、、、お主らも中々やりおるな」


仲間が死のうが、計画が失敗しようが何の痛覚も無いように喋る、ル・シュペインに対しリューイとイグシアは、警戒を強める。


(この男は、つ・よ・い、、、)


リューイは、2人対5人で戦う不利に加えて、ル・シュペインの比類なき実力を感じ取っていた。


当然、二人とも死ぬ気など毛頭も無かった。

敬愛する主君であるランガードが助けに来てくれるまでの時間稼ぎ。


それが、残った二人の共通の目標であった。


自然に、リューイとイグシアは背中合わせになり、守りを固め後背からの攻撃をさせないために2人固まる。


分断されたが最後、各個撃破されそこには死しか残っていないであろう。


唯一、有利な点はリューイ、イグシア共に悪鬼血族の天敵である【炎の真甦】紅蓮の戦士であったと言う事だろう。


苛烈で激しい、戦いの始まりである。


悪鬼血族10席に連なる者でも3強鬼族豪以外は、リューイやイグシアと比べると同等かやや弱い感じがする。


しかし3席の座にいる。


ル・シュペインの強さは、別格だ。


ランガードと対等に戦い、余裕すら感じさせる不気味さ。


左方向から、悪鬼血族4人が一斉に襲い掛かってくる。


イグシアが、全身を業火に包み込み燃え上がる愛剣の曲刀を上から下に思い切り振りきる。


っと、同時に大量の炎がドラゴンの形を(かたど)り、向かい打つ。


悪鬼血族4人の内、一人がイグシアの攻撃をまともに受け、全身を焼かれ、燃えながら地面に落ち灰となる。


仲間を殺されても、他の悪鬼血族は全く攻撃の手を緩めずに


「流石は砂漠の民 イグシア鷹王だな、3年前より強くなっているのではないのかな」


ル・シュペインが、世間話をするように話しかけながら、厚き漆黒の刃を双刀の剣より、湧き出しイグシアめがけて放つ。


シュン!!


リューイが、イグシアと共に超神速で、その場から消える。


しかし、暗黒空間の黒き闇結界は更に濃くなっており、リューイの力では、脱出できなかった。


そこへ、ル・シュペインがアルカイックに笑いながら左右の手に持つ剣を振り上げ襲い掛かる。


「逃げられないよ、君の力ではね」


イグシアとリューイ二人の燃え盛る剣で、ル・シュペインの2本の剣を受ける。


ガン!!


衝撃で2人が、地面に向かって吹き飛ぶ。


暗黒の地面に、全身を強く打ち付け口から血を吐く。


「ぐっ!」


すかさず、襲い掛かる悪鬼血族の者たち


ル・シュペインは、興味が無くなったようにそれ以上の攻撃は仕掛けてこなかった。


まるで、(もてあそ)ぶように、実力の差を見せつけ(とど)めを刺さない。


後は、次席の悪鬼血族に任すよとばかりに、悠然と空中に浮きながら下を見下ろしている。


2対4の、剣戟(けんげき)の戦いは熾烈(しれつ)を極めた。


実力は、同等。


数は、こちらの倍。


こちらは、ル・シュペインの攻撃で手負いになっている。


イグシアは、治癒能力もあるので、戦いながらも自らの傷を治していたが、リューイはそういう訳にはいかなかった。


超神速による、素早い攻撃で互角に戦ってはいるが、敵の剣による擦傷が増えていく。


右手を切られ、鮮血が飛ぶ。


左足を闇の刃が切り裂く。


血と共に真甦も流れ出し、時間と共にリューイは弱っていくのが、目に取るように分かった。


それは、隣で戦うイグシアが一番、感じていただろう。


しかし、リューイを庇う迄には、手が回らない。


自分の前にいる敵を相手するだけで手いっぱいなのだ。


悪鬼血族が、弱ったリューイめがけて


「【火の民】一匹取ったり!!」


暗黒の剣をリューイめがけてまっすぐ(つらぬ)くように、素早い動作で突き出す。


リューイは自分で、避けられないと実感した。


死を覚悟した。


紅蓮の戦士の長である、リューイは戦いで死ぬことなど恐れない。


ただ、愛するリンの顔が浮かんだ。


「リン、ごめん、、、」


刹那!!


悪鬼血族の漆黒剣は、イグシア鷹王の右胸を貫いていた。


「イグシア様!!」


リューイが口から全身から血を流しながら、叫ぶ。


「ゴホッ!!」


イグシアの口から大量の血が噴き出る。


リューイがやられる寸前、イグシアは態勢を入れ替え、リューイと自分の場所を変えたのだ。


リューイが、血を吐き横に倒れる、イグシアを抱き起しながら


「な、なぜ、、、」


「ゴホ、ラ、ランガード王には俺よりリューイ殿の方が、重要だ。」


「ただ、それだけだ」


イグシアは、血を吐き地面に崩れ落ち、意識を失う。


リューイが両目を轟々(ごうごう)と真っ赤に燃え上げ


「許さないぞ!絶対にお前たち、悪鬼血族をルシフェルを滅許さない!!」


ル・シュペインは上空から、冷たく笑い眺めていた。



地上では


ランガードが、赤髪を逆立てて、立ち上がると前方に不思議なことが起こった。


「今、行ったらオヤジ死ぬよ」


炎で出来た、少年?


目は轟々と燃え上がり、表情など全くわからない、炎で出来た人型らしき少年が、ランガードの前に突然出現した。


「お、おまえ、、グエンか?」


「母様と約束したんでね、オヤジの命を守るってね」


流石のキルヘッシュ・アクティア妖精王も驚きを隠せずに呟く


「な、なんと神々しく、圧倒的な力であるな、、、これがグエン様、、、」


ランガードは、深く考えなかった。

彼の本性だ、考えるより先に体が動く。


ランガードの右手が、グエンの炎で出来た少年の体の中に入る。


瞬間


グエンが思わず、吐き捨てる


「おわっ」

「このくそオヤジ、僕から真甦を大量に奪い取りやがった。」


「ふん、自分の息子のもんは親のもんだ。」


ランガードは、すくっと立ち上がり、炎竜帝の強炎翼を広げ両目を白き炎に燃やし、すぐさま燃えあがり掻き消える。


「くそオヤジが、無茶苦茶しやがる」


グエンの少年体もランガードを追うように、その場から掻き消える。


残った、ランガード軍団たちは、皆


「・・・・・・」



キルヘッシュが気を取り直し、全員に命令を下す。


「全軍、戦闘準備であ~る」


「決戦になるであ~るよ、治癒部隊は前線に、護衛は不死鳥騎士団、エーリア・ティンクル女王は悪しきエルフ復活後の支援を頼むであ~る」


「妖精族は、戦いに参加せずに悪しきエルフを閉じ込める事に専念するであ~るよ」


「第一軍団、第二軍団は敵の襲撃に備え、前面に陣を張るであ~るよ」


岩・破砕(がん・くらっしゅ)とギリガース軍団長が声をそろえて、動き出す。


「「了解!!」」


一気に、騒がしくなるモリビス大森林前である。



暗黒地下空洞では、イグシアがリューイの代わりに悪鬼血族の刃に倒れ、リューイが怒りに真甦を暴走させようとしていたところだった。


漆黒で暗黒の闇の空間に、また突如として大異変が起こった。


暗黒の空洞、空間の中央に50メートルは優に超える、爆発的な炎が突如湧き上がり、火炎をまき散らし出現してきたのは、、、、


強炎の覇王にして、紅蓮のランガード王だ!


ランガードは、すぐにリューイとイグシアを発見した。


リューイは重傷だが、生きている、、、


イグシアは、、、


ランガードの爆炎がさらに加熱さを増し、リューイの所まで瞬間移動して


リューイが、思わず叫ぶ


「イグシア様が、僕の代わりに、、、」


「わかった、二人とも地上に送る、後は任せろ」


「族長、、、」


リューイは最後まで言葉を発することが出来なかった。


ランガードに肩を触れられ、その場から消える。


次にイグシアが倒れている場所まで行き、片膝をつく。


ランガードは優しくイグシアの肩をそっと、触れる。


途端にイグシアもその場から掻き消える。


イグシアを地上に瞬間移動させたランガードだが、リューイでも突破不可能だった、漆黒暗黒結界をいとも簡単に打ち破って来たのだ。


そしてゆっくりと立ち上がる、ランガードはこれ以上ない程の【怒り】を撒き散らしていた。


強炎翼を大きく広げ、全身を空間を焼き尽くすほどの、爆発業火で見たし、優雅ともいえるような仕草で、3強鬼族豪ル・シュペインを睨み付ける。


「おめぇが、イグシアをやったのか?」


睨まれた、ル・シュペインが始めて、味わうほどの怯え、恐怖を体験する。


「あ、悪鬼血族よ、全員で仕掛けるのだ、、、」


仲間の死を見ても、平然としていたル・シュペインがランガードの【怒り】にたじろぐ。


っと、そこに暗黒空間に太陽のような、(まばゆ)いばかり、燃え盛る炎の少年が、何の前触れもなく突然出現した。


そう、グエンだ。


二人の炎によって、漆黒で暗黒であった空間は、太陽よりも(まばゆ)く、明るく熱い空間に成り代わっていた。


「手ぇ出すんじゃねぇぞ、クソガキ」


「品の無さも、呆れるばかりだね。良く母様もこんな粗暴な男を好きになったもんだよ」


「うるせぇ、今俺はえれぇ腹が立ってんだ。ゴチャゴチャ言ってッと、おめぇも焼き入れんぞ!」


「まったく、どうぞご自由に暴れて下さいな。」


俺は何も言わずに、ル・シュペインめがけて魔鉄大剣を抜き放ち、爆炎のまま襲い掛かる。


ル・シュペインに少し前までの余裕は、全くなかった。


「そ、そいつをこ、殺せ!!」


「うるせぇんだよ」


問答無用の一方的攻撃だ。


轟々と燃え盛る、魔鉄大剣を大降りに振りかぶりル・シュペインめがけて振り下ろす。


ル・シュペインも双刀の剣で、漆黒の闇を張り防御する。


ランガードの猛攻撃は、一切の抵抗を許さなかった。


全てを焼き尽くし、ル・シュペインが持つ2本の剣をも焼き払い、ル・シュペインを頭から一刀両断に縦割りに切り裂き焼き尽くす。


悲鳴を上げることもできずに、3強鬼族豪の参の席、ル・シュペインは永遠の眠りについた。


「ふぅ」


ランガードが一息つくと、上空背後から残った悪鬼血族4人が同時に襲い掛かってきた。


ランガードは、攻撃を感じていたが何もしない。


次の瞬間、【天の真甦】が放つような(まばゆ)い光の炎が、ランガードの背後に迫る悪鬼血族を全てを一瞬で消し去る。


灰も残さずに、消滅する。


グエンの爆炎高熱攻撃だ。


次の瞬間、ランガードは暗黒の空間より、炎となって掻き消える。


「まったく、落ち着きがないっての」


生まれてまだ1年も経たない、グエンは炎の体で一人ぼやく。


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