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BU・SI・N・SYO  作者: イ-401号
142/173

敵の暗躍

大陸西方の最果て


岩山に囲まれた、洞窟の中。


宮殿の様に、光り輝くわけではないが、荘厳さと恐怖を周囲に放っている玉座らしき、椅子に座るのは、妖精王キルヘッシュ・アクティアの実兄、堕天使ルシフェル。


その周りを囲むのは、悪鬼血族10席に選ばれし10人の人の形をした人ならぬ者たち。


人間の様に、正装した姿だが、(まと)う空気が違いすぎる。

暗黒に包まれた、漆黒の闇に眠る獰猛な化け物たち。


人との違いを見た目で判断することが唯一可能なのは、その口から生えた牙である。


人間でいうところの犬歯が、異常に長く邪悪に2本口から生えている。


その悪鬼血族10席の中から1人、前に進み出る。


「ルシフェル様、どうも岩山の東側が、騒がしくなってまいりました。」


他のルシフェルの周りに並ぶ、男が叫ぶ。


「ふん、人間はエサ。なにがあろうと我らに(かな)う者など()るまい」


「砂漠の戦士にあれだけ痛い目を見たことを忘れたか?」


「ふん、あれは【火の真甦】とドラゴンの火力によるもの、ヒトなど脅威にはならんよ」


「今、ちょろちょろ動いているのは、例の【火の民】らしいぞ」


「なに、それではランガードが係わっているのか!!」


「ランガードだけではない、妖精王キルヘッシュ・アクティア様はじめアースウェイグ帝国騎士達も動き出しているとの事です。」


コンコン


杖を突く音が響く


ルシフェルが、持つ杖を床につく音が響く。


悪鬼血族10席に座る全員が振り返る。


「実弟とはいえ、キルヘッシュに()など付けなくてよい。少し前まで我らと同じ境遇だったのに、【悪魔の因子】とやらを焼き払われただけで、正義面(せいぎづら)して気に食わぬ奴よ。」


「妖精王などと、(まつ)られいい気になりおりおってからに、その昔、我の覇業(はぎょう)を四海聖竜王と組んで邪魔した罪は未来永劫消えることはない。」


「皆に伝える、悪しきエルフに加えて、悪魔族、闇に住まう魔獣、野獣、全てかき集めよ。」


「悪鬼血族10席に選ばれし、そなたらがそれぞれ指揮し、ランガードもろとも四海聖竜王をも殲滅(せんめつ)せよ」


「アースウェイグ帝国軍の方はいかがいたしますか?」


「人間には、人間同士戦わせればよい。」


「はっ、かしこまりました。」




ーところ変わり、紅蓮のランガード王国軍ー


ランガードとエーリア・ティンクル女王の会談中である。

会談とはいえ、進軍中のランガード軍団が一時停止しての臨時の行軍中での話し合いである。


豪華な部屋の中でもなく、礼儀を重んじて話し合うような感じとは全く違った、場所と話し合うメンツであった。


ランガードが、話し始める。

「エルフの女王、何か訳がありそうだな、話してみろよ」


ランガードは王としての振る舞いに大きな問題を抱えながらも変えずに、エルフの女王エーリア・ティンクルに話しかける。


エーリア・ティンクルはゆっくりと軽やかに話し出す。


「我ら、エルフ族は元は妖精王キルヘッシュ・アクティア様の一族に連なる者でありました。」


「ご存じかと思いますが、キルヘッシュ様が、悪魔の因子を埋め込まれ闇に落ちた時、我らエルフ一族はキルヘッシュ様を何とか元に戻す方法はないかと、いろいろ調べて動いておりました。」


「その時、堕天使ルシフェルとその一党が、我らエルフ族に襲い掛かってまいりました。」


「当時エルフ族は、10万を超す人数がいましたが、ほとんどがルシフェルの部下に【悪しきエルフ】にされてしまい、今では残るのは我らのみです。」


「どうか、仲間の敵討(かたきう)ちをさせていただけませぬでしょうか」


リューイが話に入り込む


「今のお話だと、下手をするとあなた方エルフ族の方々も悪しきエルフ族になりうる可能性があるのではありませんか?」


エルフの女王は胸を張りとんがった耳の飾りの音を軽やかに震わせながら


「ここに残る、エルフ族は上級戦士のみ、万一悪しきエルフに噛まれたとしても、自ら命を絶つ覚悟はできている。」


「その点では、ランガード殿の兵士と何ら変わらないと思います。」


そこで、妖精王たるキルヘッシュ・アクティアが、白い甲冑姿なのに、悠然と優雅に竜騎馬【白金丸】の横に立ち、ランガードに声をかけてくる。


「エルフ一族が、こうなった原因は~私のせいでもあ~るのだよ、どうか仲間に入れてやってほしいのであ~るな」


「・・・・・・・いいだろう」


ランガードはしばし考え、王者の決定を下す。


「紅蓮の覇王ランガード殿に感謝を」


エルフのエーリア・ティンクル女王は、音も無く優雅に左胸に右手を当て、腰を折り 感謝の意を表す。


帝国騎士の略式の敬礼に似ているが、行う者が違うとこんなにも印象が違うのかというくらい、エーリア女王は荘厳で神秘に満ちていた。


そして、豪炎の覇王ランガード率いる軍団は、3万に2千を足す事となり、ランガード王の直営として最前線列に加えられた。


進軍は更に進み、陽が落ち暗くなる前に、ランガードは野営の準備をさせた。


取り仕切るのは、もちろんリューイ准将だ。


「周辺地域の哨戒に、注意するよう各部隊交代して、厳に警戒を厳しくして、見落としの無いように注意して下さい。」


「【火の民】は、周囲に松明(たいまつ)を燃やし、一晩中、暗くならぬように気を付けてください。」


「軍団警備警戒は、各軍団長と相談し、順番に行い少しでも、休息を取るようにしてください。」


俺は、軍団の中央にテントを張り、主だった幕僚が、集合して食事をとり、軍議に入っていた。


俺が始めにイグシアとエーリアと旦那に向かって、片目の目線を向け

「敵の情報が、足りないな。何か知ってることはないか?」


エーリアエルフの女王が、静かに話し始める。

「敵の総大将は、ご存じとは思いますが、堕天使ルシフェル。強大にして強力な力の持ち主です。」


「そして、奴の率いる【悪鬼血族】は、とてもずる賢く、魔獣や魔物を従えております。人では到底太刀打ち不可能かと存じます。」


戦時中の為、白く輝く甲冑を脱ごうともしないで、旦那はエーリアの言葉を続ける。


「そもそも~人やエルフを人ならざる者に変えてしまう力があるのは、悪鬼血族なのだよ~」


「悪なるエルフは~いわば、被害者といってもいいのであ~るな」


エーリアが悔しそうに、顔を(ゆが)めて

「悪鬼血族10席に連なる者だけは、断じて許す事は出来ません。」


「たとえ、我が一族が滅ぼうとも」


黙って、聞いていたランガードだが、発言したのは優秀なる副官であり、親友のリューイだった。


「悪しきエルフを元に戻す方法は、無いのですか?」


エーリア女王は、目を伏せて

「いろいろ、試してはみたのだが、一度悪しきエルフになった者が元に戻った事例は無いのです。」


俺は珍しく深く深く、思考していた、、、


そして軍議は深夜遅くまで続き、皆が就寝したのは、明け方になってからである。



そして、変わらずに陽はまた、東よりのぼり大地を山々を草原をこれから起こる、血生臭い戦いなど何の関与もしないと言うように明るく、空を照らす。


軍団は、モリビス大森林を迂回して大陸西方の元は砂漠王国のあった近くまで進軍してきた。


突然、リューイが叫ぶ


「哨戒に出ていた、初瀬・燕(はつせ・つばめ)より緊急連絡です。」


「敵軍らしき、魔獣の群れを発見との事です。」


「その数、およそ5万!!」


ランガードがすぐさま、反応する。


「全軍密集隊形、補給部隊、治癒部隊は下がり後方支援場所を確保しろ、護衛に【火の民】2千張り付け!」


リューイは直ぐに指示を出す。


「全軍密集隊形!補給部隊は火玄・暁(かげん・あかつき)に指揮させ紅蓮の戦士2千名を選抜!」


「攻撃力の高い、者を密集陣形外延部に配置!」


「敵軍を一掃します。」


敵軍は、魔獣の一団。

全て、歩兵だが、異様なのはその姿だ。

主戦力は、ゴブリンらしき小鬼が4万ほど、中には巨大魔獣グーガと呼ばれる3メートルを超し、手には鉄の棍棒のような物を持つ。攻撃力破壊力では人間の10倍以上はありそうなのが、3百ほど混じっていた。


後は、翼のある鬼であったり、四つ足のでかい(いのしし)に牙を生やし、獰猛な目つきで(よだれ)をたらしながら不快感と爆進力を伴ってかけてくる。


ランガード軍団との距離、およそ2キロメートル。


いよいよ、堕天使ルシフェル一党との戦いの幕が切って落とされようとしていた。


ランガード軍団の中から、一団が前へ突出してくる。


「先鋒は我らに、お任せ願うであ~る」


白い甲冑に金色の線で彩られた、荘厳な姿の一団。


妖精族が、ランガード軍の前方に進み出る。


わずか150名の戦力だが、全員が勇猛なる竜騎馬に跨り、金色に縁どられた、白銀の甲冑を(まと)い、神々しく密集隊形をとる、ランガード軍団の前に躍り出る。


迫りくる、嫌悪と恐怖と破壊を運ぶ魔獣の群れ。


魔獣の群れの先頭には、一人これまた異様な者が両腕を組み、魔獣に跨り突き進んでくる。


先頭の男が叫ぶ


「私は【悪鬼血族 (じゅう)の席】に座す、マグダラ・アウシュ!」


「愚かな、ヒトに味方する妖精族を血祭りにしてくれようぞ!!」


キルヘッシュの旦那は、優雅に腰に吊るした細剣を抜き放ち


「一族に告げる。あ奴は私が倒すのであ~る、皆は魔獣の群れを殲滅(せんめつ)するのであ~るよ」


「「「「はっ!!」」」」


静かだが、闘志に溢れた気合のこもった返事をし、妖精族は全員が細剣を抜き放つ。


ランガードは黙ったまま、まだ動かなかった。


絶対の信頼をおく、妖精王キルヘッシュ・アクティアに任せることにした。


「私は~妖精王にしてランガード軍団総統、キルヘッシュ・アクティアであ~る。悪鬼血族のマグダルとやら、我ら妖精族の力しかと眼に焼き付けるであ~る。」


悪鬼血族 (じゅう)の席に座る、ヒトらしき悪魔は吠える。


「ほざけ!裏切者がぁー!!」


魔獣一団の突進力と攻撃力、恐怖心は普通のヒトならば、見ただけでまともに戦えるものではないであろう。


異様にして、異種。悪臭を巻き放ち遅いかかる5万の兵力は、(あらが)えるものではないように思えた。


しかし、神の時代からずっと生き続ける妖精族の力も並外れた威力であった。


妖精族が抜き放つ細剣は、黄金に輝き襲い掛かる魔獣に対して、無敵の威力を誇った。

それは、【天の真甦】のような力であった。

妖精一族が振るう細剣より放たれる、黄金の剣風は消滅を伴い、魔獣一党に襲いかかる。


妖精一族戦士の細剣、一振りで何百という魔獣がこの場より消滅していった。


【天の真甦】と大きく違うところは、真甦の消耗量だろう。


天の真甦を使う騎士は、自らの中にある真甦を使う。

真甦が、無くなれば力を発揮できない。


しかし妖精族戦士たちは、天の真甦と同じ力を持つ、妖精を呼び出し使役する。

呼び出した、妖精の力が無くなれば別の妖精を呼び出し力を発揮する。


無限といえる、様々な力を発揮できる。


それが、現役神々の生き残り妖精一族の力である。


最強にして高潔、無限にして孤高の戦士たちである。


そして、キルヘッシュ・アクティアと悪鬼血族 拾の席に座すマグダラ・アウシュとの戦いが始まる。

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