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BU・SI・N・SYO  作者: イ-401号
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妖精エルフ族女王

早朝、大炎元郷大正門前は物凄い熱気で、大気が燃える様に鼓動していた。


大炎元郷主力軍団3万兵が、出陣準備を整え自らが主君の号令をただ待つのみだった。


今回の戦いは、未知の敵に未知の戦力、能力。


どんな戦いになるか想像もできない。


だが、負けるわけにはいかない。それだけは絶対できない。


どんな犠牲を払おうと、紅蓮の覇王がランガード王の【正義】を折らす事だけは絶対できない。


ここに集う、戦士全員に共通する意志であり覚悟だ。



俺は阿修羅丸に跨り、一番先頭に立ち。

横にいる、リューイに話しかける。


哨戒(しょうかい)にでた、初瀬・燕(はつせ・つばめ)からの報告はあるか?」


竜騎馬、世話丸に同じく跨り騎乗するリューイは、俺に向かって報告する。


「現在、哨戒部隊は砂漠王国周辺にて警戒に当たってますが、何の変化も今はまだ見られずとの事です。」


「わかった」


俺の右足元には、愛する銀麗の妻、シュシィス・スセイン王妃が愛娘フェリアを両腕に抱き、俺を見上げる。


「旦那様、ご武運を」


「ああ、炎元郷はよろしく頼むぞ」


「はい、こちらはご心配なく、業火で【悪なる者たち】をお滅ぼし下さい。」


シュスにとって、愛する夫を戦場に見送るのは、何度目の事だろうか、、、


誇り高き氷結の女王は、いつも凛として堂々としていた。


ランガードに全幅の信頼と愛情をもって、送り出すのだ。


後顧(こうこ)(うれ)いを断ち切らせる目に、安心して戦いに全力を出せるようにと、、、


(グエン、私の大切な旦那様をお守りくださいな。)


(お母様、安心して大丈夫だよ。僕とフェリアは特別だから。)


(お願いします。)


グエンと武照・爆弾(たけあかり・ぼん)はメイラの乗る治癒部隊の一番大きな竜騎馬が引く、竜車に乗せられていた。


今は亡き、紅蓮の5柱。界・爆弾(かい・ぼん)の妻であった女性の腕の中で、グエンは母と会話していた。


俺は隻眼の目で、西方を睨みリューイに命令を下す。


「全部隊に通達。全軍進撃開始だ。」


「はっ、全軍に通達!ランガード軍団進撃開始!!」


各軍団長が、命令に答える


「「「「全軍進撃!!」」」


ガッガッガッガ


ゆっくり動き出す、3万の軍勢。


シュスは3歩後ろに下がり、夫の軍団を見送る。


第3軍団や残留組の兵士達は、遠巻きに見送っていた。


リューイが、大声で叫ぶ。


「シュシィス・スセイン王妃に敬礼!!」


ランガード以外の全員が、シュスの前を通る時に右腕を左胸にあて敬礼していく。


大炎元郷の平和のシンボルとなる、赤の地に白く炎を(かたど)った、大きく風にたなびく国旗と【火の民】の深紅の旗や不死鳥騎士団の団旗が、風に吹かれ堂々と舞う。


そんな中、異様を放つのは、妖精王キルヘッシュ・アスティアが率いる、妖精一族150名である。


普段はお洒落な正装をしている、キルヘッシュの旦那は今日は、白い鎧に金の線で装飾された、荘厳ともいえる、鎧と盾、細剣を腰に吊るし、、、全員が竜騎馬に騎乗していた。


キルヘッシュが竜騎馬を勇猛なるパートナーとして、()めたた得ていたのは、皆良く聞いていた事だが。


出陣が決まり、ごった返す中で、妖精族150名全てに竜騎馬を選別させ、(いくさ)に出向かせるまでに訓練するのは、普通は無理な話だ。


リューイの協力も会ってだろうが、流石は現存する唯一の神々の一族であると言わずにはいられない。


キルヘッシュの愛騎の竜騎馬は白金丸(しろがねまる)と名付けられ、4本の足が他の竜騎馬より長く首もほっそりした感じだが、とても俊敏で早そうな竜騎馬であった。


キルヘッシュが、シュスの前を通過する時に騎乗したまま、愛剣の白く輝く細剣を抜き放ち、胸の中央に剣の柄をあて敬礼する。


妖精族全員が、キルヘッシュ・アクティア妖精王に習い、細剣を抜き放つ。


「ご安心されよ、国王は我が身命に変えてもお守りいたします。」


シュスに向かって、威厳と優しを持って妖精王は宣言する。


シュスは竜騎馬に跨る、キルヘッシュに向かい意外な言葉を語る。


「キルヘッシュ様、グエンの行動にご注意下さい。」


「・・・・・・」


「了解したであ~るよ」


真剣に話す時と、愛娘と話す時だけ普通に話す、変わり者の妖精王は、よく意味が解らなかったが、心に強く留めておくことにした。



その頃、大陸西方砂漠王国のあった、岩山連峰の更なる西。


未開の未知なる地。


一人の男が、岩山のくり抜かれた地下の部屋で、豪華な椅子に座り、まるで玉座にいる王の様に威厳を持って、座していた。


その男の名は、、、


リスティアード皇帝陛下が口にした、


【堕天使ルシフェル】本人であった。


妖精王キルヘッシュ・アクティアの実兄であり、天帝皇王に反逆した元神の一人。


容姿は、キルヘッシュに似ており、紳士然とした立ち居振る舞いだが、決定的に違うものがある。


それは、邪心なる覇気である。


ルシフェルが(まと)う、周囲の空気が物凄く強い邪気を放っている。


顔も端正で、キルヘッシュに似ているが、眼だけが漆黒に染められやはり悪なる気を貫いていた。


ルシフェルの周囲には、10人ほどの部下が屹立していた。


部下とは言え、邪悪なる強靭な強さを皆、撒き散らしていた。


アースウェイグ帝国軍帝国騎士の最強にして誇りである【武神将】と同程度の強さを身に秘めているのは、見るものが見ればすぐに感じ取れるほどの力であった。


部下の一人が、一歩前に進み出る。


「ルシフェル様、3年前に減らされました【悪しきエルフ】の準備は整いました。邪魔者であった【砂漠の民】もいません。今が好機かと存じます。」


「よかろう、我らがこの大陸の主人となる時が来た。人間はエサであり、家畜だ。」


「数千年に及ぶ、この(うら)み今こそ晴らしてくれようぞ。」


「悪鬼血族10席のそなたらの軍、全て投入し、全悪しきエルフにも、攻撃命令を出せ。今回は私も出る。」


「悪鬼血族10席そなたらの奮闘に期待するぞ。」


「「「「はっ!!」」」」



悪しき神による、悪しき企みはいよいよ実行されようとしていた。




その頃、ランガード軍団は、大炎元郷を出てモリビス大森林を迂回して、後、2日程で砂漠王国に到着する地点に迄、進軍していた。


先頭は、いつも紅蓮の覇王にして、業火のランガード国王だ。


その後ろを、幕僚である、リューイとイグシア、ベルフェム、キルヘッシュの旦那が続く。


普通、大軍の指揮官や本陣は大軍の中央や後方に置かれる事が多い。


それは、指揮官が死亡してしまっては、指揮する者がいなくなり、戦いに負けてしまうと言う理由を大義名分にした臆病な行為だとランガード自身は思っていた。


だから、ランガードはいつでも自分の身を最前線に置き。


皆の勇気を奮い立たせる軍神の如き、闘い振りを発揮する。


リューイといった、優秀な副官が指揮系統を統制しており、ランガードが直接に命令を下さなくても、きちんと戦闘が出来る組織を作り上げているおかげである事も大きな理由だ。



進軍を続ける、俺達の前に200名程の軍勢が、見えてきた。


俺が隻眼の目で睨み


「敵軍にしちゃ、規模が小さすぎねぇか?それに敵意を感じねぇぞ」


純白の鎧に、金の縁取りで装飾したキルヘッシュの旦那が進言する。


「あれは、おそらくエルフ族の女王であ~るな」


「エルフ族の女王?味方なのですか、キルヘッシュ様」


リューイが、直ぐにハキハキと質問する。


「前にも言ったであ~るが、エルフにも良いエルフがいるのであ~るよ、彼女はその女王であ~るな」


俺が、即断する


「こっちを待っているみてぇだし、会って話を聞いてみようや」


王者の決定と同時に、即動するランガード軍団。


「全軍一時停止!!全軍一時停止」


命令が連呼され、直ちに実行される。


3万の軍団がゆっくりと停止する。


前方にいた2千の部隊は、皆馬に乗っており部隊の中より、3騎こちらに向かって駆け出してきた。


先頭を走ってくるのは、見事な金髪を風に(たなび)かせ疾走してくる、女性であった。


ヒトとの違いは、一目でわかった。


耳の先が見事にとんがっているのである。それ以外は絶世の美女といても過言でない、美しさと威厳に満ちていた。


エルフの女王は俺の前まで、馬を疾駆させて来ると下馬して礼を取る。


俺は無礼なのか、礼儀作法も良く分からないが、相手が馬を降り、挨拶しようとしているのだからこちらも阿修羅丸から降りるべきだと、勝手に判断し、サッと降りる。


それに習い、幕僚全員竜騎馬より降りたつ。


近くで見ると、まさに美しい女性であった。

女性は、俺の顔を見ると、右膝を地面に付け頭を下げる。


「紅蓮の覇王ランガード殿にお願いの義があって、参りました。私は妖精エルフ族を統べるエーリア・ティンクルでございます。」


「久しぶりであ~るな、エーリア女王~何百年ぶりであ~るかな」


エルフの女王は、驚きの表情で


「キルヘッシュ・アクティア様、、、【悪魔の因子】は、、、」


「ランガード殿に焼いてもらったであ~るな」


「そ、それでは妖精族の復活でございますか?」


「今は~、ランガード殿と正義と平和のために、戦っているだ~ね」


エルフの女王は、己の思考の中に埋没する。


「・・・・・・・・」


そして、決断する。


「ランガード様、我らエルフ一族もこの戦いに参加させて下さいませ。」


俺は一言


「俺と話す時は、(ひざまず)かなくていい、立って話せ」


「はい畏まりました。」


エーリア女王は、優雅に音も無く立ち上がる。


初対面で普通あり得ない、言い様にも柔軟にすぐ対応する、この女性を俺は高く評価していた。


リューイは一言


「はぁ~」


っと、吐息を漏らす。

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