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BU・SI・N・SYO  作者: イ-401号
140/173

軍議

大炎元郷 爆轟赤炎城 【紅蓮の間】


温泉で、ホカホカした体とは別に、心の中に緊張という闘志を燃やし、皆次から次へと集まってきた。


ランガード国王、キルヘッシュ・アクティア総統、東海白竜王ベルフェム、紅蓮の5柱長リューイ、近衛隊長イグシア、第1軍から4軍迄の軍団長とその幕僚、そこにはもちろんリン千竜騎士長始め、各千竜騎士長が集まっていた。


そして【火の民】火玄・暁(かげん・あかつき)始め、主だった顔ぶれ、ヴォルグス砦城主 北方面司令官ロリーデ・ガルクス閣下、先々代剣聖ビル・ヘイム卿が集まっていた。


そして、ランガード国王の横には王妃である、氷結の女王シュシィス・スセインが子供のグエンとフェリアを連れ集まっていた。


出入り口はじめ周囲は、【火の民】紅蓮の戦士が警備警戒に当たっていた。


そして、こういう時の司会進行に欠かせないのが、不死鳥騎士団副団首にして、紅蓮の5柱が長リューイ准将である。


「皆様、早朝からお集まりいただき、誠にありがとうございます。」


「既に、通達済みであると思いますが、イグシア様より進言されました、【悪しきエルフ族】討伐について軍議を開きたいと思います。」


紅蓮の5柱、初瀬・燕(はつせ・つばめ)率いる、神速部隊は既に、大陸西方に調査に出発しており軍議には参加していない。


「未知の敵であると言う事もありますが、こちらには唯一敵軍を退(しりぞ)けた経験をお持ちのイグシア鷹王様がおります。まずは、イグシア様に意見をお聞きしましょう」


イグシアが堂々と褐色の逞しい身体を音も無く【紅蓮の間】中央に歩み出る。


「奴らの厄介な点は二つ、一つは岩や土、草木、鉄などを自由に形を変え時には武器として、時には乗り物として自在にこなす特殊能力にある。」


「もう一つは、人間の血を吸って、仲間を増やすという点だ。」


ザワザワ


【紅蓮の間】に集う、皆が想像を超える未知の敵の能力にざわつく


「皆様お静かにお願いします。迅速に確実に動く必要性が生まれるかもしれません。慌てず、無駄に騒がず、方針を固めたいと思います。」


リューイは大声で、宣言し皆を黙らす。


「それでは、イグシア様具体的な対応策はどうしたらよいでしょうか?」


褐色肌の鷹王は、どんな時も変わらずに


「普通の人間では、絶対太刀打ちできない。逆に敵を増やす結果になる事が多い」


「強い真甦を持った、戦士とドラゴンでの攻撃が実用的と考える。特に【火の真甦】はとても有効だ。万一、奴らに手を噛まれたら、噛まれた手を切り落とし、首を噛まれたら自害する。」


「そう言う事が出来る、戦士達だけの一撃全滅戦を進言する。」


「そうすると~我らが妖精族は~全員参加した方が良いであ~るな」


「悪しきエルフとは~長年の宿敵でもあるのだ~ね」


紳士姿で正装した、妖精王は一番初めに決意表明し、参戦を宣言する。


第1軍団【火の民】紅蓮の5柱岩・破砕(がん・くらっしゅ)もその巨体を揺すぶって、大きく通る声で


「【火の民】も【火の真甦】は敵に有効との事であるので、参戦(つかま)ります。」


「私達、不死鳥騎士団も強き真甦の所有者の帝国騎士でもあります。参戦をお認め頂きとうございます。」


リン千竜騎士長が、両眼を黄金に輝かせながら、立派に発言する。


先だっての、メルビル獸に対する、失言を挽回する機会とも捉えているのかもしれないが、【黄金の真甦】はどんな敵にも非常に有効であるのは事実である。

そして、不死鳥騎士団の戦闘経験は、非常に有益であろう。


不死鳥騎士団は【火の民】3千名を岩・破砕(がん・くらっしゅ)が率いていたが、現状では【火の民】3千名は現存するが、各千竜騎士長の配下に分散されていた。


新たに第1軍団を岩・破砕(がん・くらっしゅ)が軍団長となり、【火の民】紅蓮の戦士1万を選抜したのだ。


戦闘部族として、長年生活してきた【火の民】の層の厚さを実感する事実である。


亜人族の若き長も、立ち上がる。


俺は立ち上がった、メルビル獸を睨み


「今回は、おめぇ等の出番はねぇぞ。」


「ぐっ、な、何でだよ!」


リューイが口をはさむ。


「第3軍団長、国王には敬語を使って下さい。」


亜人族の若き長は、グッと拳を付きりながらも


「し、失礼しました。」


俺は「お前たちの得意とする、隠密、密偵は今回は必要ねぇかんな、一撃全滅掃討戦だ。悪いが、今回はここで俺の家族を守っていてくれ」


メルビル獸は渋々だが「わかったぜ、国王の家族は俺達がぜってぇ守って見せるぜ」(こぶし)を突き上げ、戦闘意欲と一緒に突き上げる。



俺が、机から立ち上がり、その場にいる全員を見回す。


「こりゃ、【平和】だ【正義】だ言ってられる、戦いじゃねぇ!」


「滅ぼさねば、こっちが滅ぶ、人類の存続をかけた戦いだ。」


「敵の兵力も所在もまだ、わからねぇが、こっちの兵力は、俺が総大将となり、幕僚にリューイ、ベルフェム、イグシア。本陣直衛に旦那の妖精一族、先陣には【砂漠の民】と【火の民】が当たり、第二陣として不死鳥騎士団が付く。ドラゴンたちは遊撃隊としていつでも参戦できるようにしとけ」


総勢約3万の兵力である。


大炎元郷となって、初めての闘いでこの兵力はとても大規模な物である。


それだけ、相手がヤバいとランガードは感じているのだろう。


俺は愛する妻に向かって尋ねる。


「フェリアは、未来の予想を見えているのか?」


高潔なる銀髪のシュシィス・スセイン王妃は、愛する娘を抱きながら


「フェリアにも、この未来は見えないようです。」


「ただ、西から大いなる闇がやってくると申しております。」


俺はシュスの言葉を聞き、予感が実感に変わり、実働準備を命じる。


留守役の責任者には、紅蓮の5柱門・夷塚(もん・いづか)を選任し、ロリーデのおっさんとビル卿には北方の警護を厳重に依頼し、シュスには国王代理として、大炎元郷を任せた。


門・夷塚(もん・いづか)の特殊能力【透過】は、大変有用だ。


が、未知の敵に効くかどうかも判明しない為と、絶対攻撃力量に劣る、門・夷塚(もん・いづか)には、留守役を命じた。


そこで、リューイが俺に問いかけてくる。

「リスティアード皇帝陛下並びに、ランガード王国の騎士に序列されてる、各国に対してはどのようにしますか?」


「大将には、俺から伝えておく。仲間(・・)の国には、大将から連絡してもらおう。」


「わかりました。」


直ぐに、ハキハキ返事し、次の行動思案に入る優秀なる親友だ。


「旦那様、お話ししたき事が」


妻の銀麗王妃が、困った顔で、俺を下目使いに見る。

高潔の女王にしては、とても珍しい出来事だ。


「どうした?」


「はい、その、、、グエンが申しております。」


「なんて?」


「俺を連れて行けと」


「はぁ~?何言ってんだよ、0歳で戦場に行こうってのか、馬鹿言ってんじゃねぇよ」


「グエンが申しております、、、」


「そ、その馬鹿野郎は、オヤジの方だと、、、」


(グエン、訳すのに困る様な事は言わないで下さいな)


(お母様は、単細胞オヤジが死んでも良いの?)


(!!)


(あなたが、ランガードを守って下さると、、、)


(任せてよ、僕はこう見えて、親孝行なんだ。)


(わかまりました。私の愛する夫を守って下さい。)


シュシィス・スセイン王妃は凛と胸を張り、良く響く声で高らかに声明と覚悟を発言する。


「無理も無謀なのも、承知で申し上げます。」


「旦那様、どうかグエンを同行させて下さいまし。」


「な、何だって!!戦場で、誰が一体ガキの面倒を見るんだよ」


「それは、私が承ります。」


亡き紅蓮の5柱界・爆弾(かい・ぼん)の妻、武照・爆弾(たけあかり・ぼん)が、進み出る。


「私も、戦士の妻です。立派にお務めを果たしましょう。」


「おい、おい、無茶言うなよ。女子供を戦場に連れて行く訳にはいかねぇよ!」


正装した紳士、妖精王である、キルヘッシュ・アクティアが以外にも口をはさみ込む。


しかも、帽子を脱ぎ、杖を置き、右膝を床に付けて


「ランガード国王よ、王妃の言をお聞き入れください。」


(こいつ、普通に喋れんじゃねぇか、、、それだけ真剣なのか?)


リューイも言ってくる。


「王妃にキルヘッシュ様が、ここまで申すにはきっと、意味(・・)がおありと思われます。」


「今回は、お聞き入れてみてはどうでしょうか?」


「お前迄、そんなこと言うのかよ、、、」


「・・・・・・・・・」


「わかったよ、但し俺が危険と判断した時は、リューイおめぇが責任もって、2人を戦場から離脱させろよ」


「了解です。」


右手を左胸にあて、リューイは上官に対する、略式敬礼をする。


(全くとんでもない事になってきたもんだ、、、)



リューイは即座に、全員に指示を始める。


「それでは、各員速やかに行動に移って下さい!」


「糧食、医療品は、1ケ月分は用意して下さい。治癒部隊への同行を連絡通達して下さい」


「出撃予定時間は、明朝 陽が昇り次第出撃します。」


「族長、どうぞ」


リューイに促されて、俺は頭が混乱している中、皆にまたもやランガード(ぶし)を披露してしまう。


「やばい敵に、どうなるかわからねぇ戦いだが、ぜってぇ負けんじゃねぇぞ!」


「もし負けたら、全員焼いてやるからな!」


「負けても、焼かれたのでは勝つしかないのであるな」


白き竜王は平然と突っ込みを入れる。

ランガードを崇拝する連中の中にいて、リューイとベルフェムだけが、ランガードに突っ込みを入れられる唯一の存在なのかもしれない。


しかし言葉や行動とは裏腹に、2人は心の中では、ランガードの事を一番に思っているのである。




【紅蓮の間】は、一斉に動き出し、そこにいる全員が一切無駄な言葉を吐かず、的確な行動をする。


鍛えられた、戦士のみの集団だからこそできる、大掛かりな戦準備である。


俺は、一人壁に背中をもたれかせて、両腕を組んで隻眼の目をつぶる。


(大将、朝からすまねぇが、今いいか?)


(おはよう、ランガード随分早いね)


(ああ、何かとんでもねぇ事が起こっているみてぇだ)


(どうしたの?)


(大陸、西方から【悪しきエルフ族】って奴等が、この大陸に侵攻を企んでる可能性があるそうだ。)


(【悪しきエルフ】、、、たしか、キルヘッシュの一族だった者が、統制しているんだよね、、、)


(キルヘッシュの旦那の仲間だった奴が、、、)


(うん、そう、、、たしか、、、名前は【堕天使ルシフェル】。キルヘッシュと仲たがいして、悪に堕ちてね、どうやったかわからないけど、仲間を増やしたんだね。)


(だから、旦那はグエンを連れて行けと真剣に言っていたのか、、、)


(えっ、グエンもこの戦いに参加するの?)


(そうなんだよ、シュスやキルヘッシュやリューイからも言われちまってよ~)


(・・・・・・・)


(わかった、こちらの方は全部、僕に任してくれていいよ。その代わり、状況を逐一報告してね)


(ああ、わかった。偵察隊は既に先発していて、俺達は明朝3万で出撃する。)


(了解、気をつけて)


(ああ)


隻眼の眼を開けた時には、ランガードの目は赤々と燃え(たぎ)っていた。



中央付近で、指示を飛ばし続ける、キルヘッシュ・アクティア妖精王に俺はゆっくりと歩いて近づいていく。


キルヘッシュは、俺が話しかける前にこちらを向き話してきた。


「ルシフェルは、私の兄なのだよ~、天帝皇王様に変わり天界を支配しようと目論見、私が打ち倒したのであ~るよ。」


「とどめをさせなかったのが、吾輩の甘さであ~るな。そのツケが、ランガード国王に回ってしまったのであ~るのはとても不本意であ~るよ」


「実の兄貴を早々簡単に、殺せるもんじゃねぇだろ、俺には兄弟がいないんで、わからんが、、、、家族がもし、悪に手を染めたとしても簡単には焼けねぇよ。」


「気にする事じゃねぇよ、ただし今回は断ち切ってもらうぜ」


「御意であ~る」


「ふっ」っと、思わず笑みがこぼれてしまう、業火と正義を纏うランガード・スセイン国王にして、武神将、伯爵である。


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