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BU・SI・N・SYO  作者: イ-401号
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新たな脅威

爆轟赤炎城【正義の間】での、騒動は収まり、結局 第3軍団【亜人族の戦士】はその特殊能力から、隠密、陽動、密偵と言った【戦い】に付く事が決まった。


軍団長である、メルビル獸も納得し、また自分よりも強い猛者がここ大炎元郷には,沢山いると言う事実を素直に受け止め、態度を改め、また自らも精進する事を密かに誓うのであった。


その晩は、遅くまで皆 飲み明かし、翌朝、まだ陽が昇るか上ら無い頃。


大炎元郷に新しく出来た、温泉に俺は()かりに、阿修羅丸をそっと連れ出し、(くつわ)を握りながら静かに爆轟赤炎城をでた。


「こんなに早くに、何処に行くのであ~るのかな?」


「おっ、旦那か、はえぇな。昨晩あんだけ遅くまで飲んでいたのによ」


「南海紅竜王よ、私にも声をかけてもらえないとは寂しいではないか」


俺は、早朝にも関わらず、隙の無い正装のキルヘッシュの旦那と女見てぇな、体形の白き竜王ベルフェムに向かって


「よく、俺が朝風呂に行くのがわかったな。」


キルヘッシュの旦那が、優雅にお辞儀して紳士として話す。


「我主君の行動は~私の目の届く範囲では~必ず見守っているのだ~よ」


俺は後ろを振り返り


「イグシア、おめぇもか?」


「御意」


いつもと同じく、多くを語らず、肯定のみ短く言葉を発す。


ベルフェムでさえ、気配を感じずにいた、イグシアの存在をランガードは気付いていたのだ。


キルヘッシュの旦那が、イグシアの存在に気付いていたかどうかはわからないが、おそらく気が付いていただろうが、あえて何も言葉にはしなかったのであろう。


そして、俺が何もない空間を見て


「リューイ、おめぇもかよ」


シュン!!


突然、炎と共に現われる、紅蓮の五柱が長。


「前にも言いましたけど、この炎元郷の中で僕に気が付かない事はありませんよ、それより族長、また進化しました?」


「ああん?そんな事ねぇんじゃね、俺は変わんねぇよ」


ランガードは、長身の短髪赤毛でラフな洋服を着てゆったりリラックスしている様子なのに、リューイが現われる前に、存在を察知した事や、真魂交信で繋がっている為、ランガードの真甦能力が、痛いほど伝わってくるのだ。


ベルフェムが、白鬼丸を連れ出しながら


「この男は、人間の域を既に遥かに超越(ちょうえつ)しているのだよ、いちいち驚いていては、疲れるだけであるよリューイ殿」


俺は阿修羅丸を連れながら、白き竜王に向かって、睨みを利かし


「ヒトを化け物扱いするのはやめろって、前にも言ったよな~」


東海白竜王は負けずに、高いソプラノの声で響き渡る様に


「確かその時にも申したはずであるがな、自覚が無い男に何を言っても無駄なのであるな」


キルヘッシュが、2人の真ん中を(さえぎ)る様に、悠然と歩きながら


「皆が起きだす前に~温泉に行こうではないかであ~るな」


大炎元郷の主力、紅蓮覇王ランガードの最も信頼する幕僚達が、呼びもしないのに、勝手に早朝から集まり温泉に行くと言う異常事態が、ごく自然な姿なのが、ここ大炎元郷の美点であり、今後の平和による大陸制覇の大事な定義となり、模範となる。



俺は仕方なく、阿修羅丸に騎乗し、高い位置から皆を見下ろし


「先に行ってんかんな」


ベルフェムもすぐさま白鬼丸に跨り、走り出す。


リューイも世話丸に乗る。


イグシアとキルヘッシュが取り残されるが、2人は全く焦らずにその場に立ち尽くす。


キルヘッシュがイグシアに向かって、優雅にかぶっていた帽子を脱ぎ、「竜騎馬とは勇ましい動物であ~るな。」


「お先に失礼するであ~るよ」


っと、イグシアに言うと自らの足元から、地面に埋まって消えていく、キルヘッシュ・アクティアである。


土の精霊の能力を使っているのだろう、、、


まだまだ、底が知れない妖精王である。


取り残された、イグシアは指を円くして指笛を鳴らす。


ピュゥウウウー


待つこと、数間。


空気が荒ぶれる。


風が暴力の様に舞う。


そして、、、


赤きドラゴンが、イグシアの前に着地する寸前、紅龍に飛び乗り、我主君の後を空より追いかける。


暴風と絶叫の轟音を伴いながら、無限なる空を大いなる翼と巨体で、紅龍は温泉がある火口部分まで強く、暴風を伴って羽ばたく。


大炎元郷に大改革された、元炎元郷は以前の姿とは全く別の町になっていた。


前の広さは火山の火口部の半分を削り取る形であったが、今では、噴火口を輪切りにし、火山の麓迄(ふもとまで)街を作り、火山丸ごと王都の中央として、作り変えていた。


爆轟赤炎城は、火山中腹部に建設され、総統府も爆轟赤炎城内に整備され、各軍団城は燃え続ける王城の下部周囲にそれぞれ建設され、住居、練兵場も兼ねて作られていた。


肝心の温泉は、頂上部にある為、ランガードとベルフェム、リューイは竜騎馬を疾走させ、駆けあがっていた。


温泉場も新しく、立派に作られ百人以上が一緒に入れるほどの規模を誇る、とても豪華な温泉というより、湯治場の様であった。


着替えをする、小屋も建てられ、男女別々の温泉場に滝湯(たきゆ)迄ある、至れり尽くせりの設備だ。


一番初めに着いたのは、馬力ならぬ竜騎馬力に勝る、阿修羅丸であった。


以外にも、続いて到着したのは、地面より湧き出て来た、キルヘッシュ・アクティア妖精王が、白い帽子を被り、杖を付き足を交差せて優雅に出現する。


ベルフェムとリューイが、到着するのと同じくして、大空を爆風が襲い、紅龍が飛び過ぎると、空よりイグシア鷹王が飛び降りてきた。


そして、華麗に音も無く着地する。


俺は、呆れてイグシアに向かって


「たかが、風呂入んのにドラゴン呼ぶ必要があんのか?」


イグシア鷹王は、全く表情を変えずにいつものように一言


「御意」


と答えるのみだ。


(はぁ~、まったくこいつの頑固さは筋金入りだな、、、)


キルヘッシュの旦那が、湯治場を見て、リューイに向かって賛辞(さんじ)を贈る


「実に立派な湯治場であ~るな、見事であ~るなリューイ殿」


褒められた事に、気分を良くしてリューイは誇らしげに


「ありがとうございます。族長始め、傷ついた戦士達の湯治にもなればと思い、大きめに花崗岩で、全て作り上げました。」


「何とも、良く出来た副官であるな、やはり南海紅竜王にはもったいないのであるな」


ベルフェムが、百鬼丸より降り、舞うように歩きながらランガードに毒を吐く。


続けざまに


「高潔なる奥方様といい、優秀な副官といい、最強なる忠臣といい、南海紅竜王は、分不相応に人材に恵まれていいるであるな」


俺は一言


「ふん」


と言い


「別に俺がついて来てくれと頼んだわけじゃねぇよ、皆勝手に、ついてくんだから仕方ねぇだろ」


これまた、いつもの様に


「朝から~些細な事で~言い争うのは見苦しいのであ~るよ」


キルヘッシュの旦那は、来ている正装の服をきちんとたたみ、裸で、湯治場に向かう。


実に見事な体型である。


手足は長く、スリムな体型に紳士としての佇まいは何も着ていなくても、自然と周りに溢れ出す。


リューイが「お先に失礼しますよ」と言い、裸になり温泉に向かう。


俺と東海白竜王は、これまたいつもの様に、睨み合いながらも、温泉の魅力に勝てずに、裸になり温泉場に向かう。


温泉の温度は、丁度良く調節されていて湯量も多く、広さも水泳が出来るほどであった。


湯船に、俺とベルフェム、旦那とリューイが入っていると最後に、褐色の肌に隆起した見事な筋肉を持った、イグシア鷹王が、裸で堂々と歩きながら入って来る。


『!!』


湯船につかっている全員が、イグシアを見る。

俺が、声を掛ける。


「イグシア、その胸と背中の傷はどうしたんだ?」


褐色の逞しい肌の、イグシアの発達した胸と、背筋には無惨な傷跡が大きく残っていた。

右胸から背中に向かって貫かれたような傷と、1メートルはある切傷痕。


これだけの傷だと、命を落としていてもおかしくないと、その場にいる連中は直ぐに、理解したのだ。


ランガード自身も無数の傷跡を持つが、これほどひどい傷は無い。


「主君に申し上げねばならぬことがあります。」


イグシアは、ゆっくりと湯船につかりながら、低く唸るように話をし始める。


湯船に入っている、全員がイグシアの話に耳を傾ける。


「砂漠王国は、大陸西部にあり、険しく(そび)え立つ岩山連山によってその向こう側とは、一切の交易、交流はありません。」


「それが20年ほど前、突然として【異能の敵】が現われました。以後、我砂漠の民は、数十年と戦ってまいりました。」


誰も何も言わない。


「3年前、敵の大侵攻を受け、大規模な戦闘が行われました。」


「我等は、ドラゴンの力も借り、何とか勝利する事が出来ましたが、損耗はとても大きく、10万人いた砂漠の戦士は、2万人まで減り、ドラゴンも半数ほどになってしまいました。」


「このからだの傷は、その時に負った傷です。以後、敵の侵略は無くなり、ランガード様との出会いもあり、故郷を後にしました。」


「しかし、また、いつ敵がこの大陸に侵攻してくるかはわかりませぬ」


珍しく、長く話し続ける、イグシア鷹王だが、それだけ真剣なのだろう。


俺が皆を代表して聞いてみる。


「その【異能の敵】ってのは、どんな奴なんだ?」


イグシアは変わらず低い声で、


「異能の能力を使い、巨人を操作し、高速で空を飛ぶ物体を操る、耳が尖って黒い肌をしていますが、見た目は人とそれほど変わりませんが、中身は全くの別物です。」


「それは~恐らく【悪なるエルフの一族】であーるな」


キルヘッシュが、初めて口をはさむ。


全員が、今度はキルヘッシュ・アクティア妖精王に目が向く。


「【エルフ族】にも~良いエルフもいるのですが~、おそらくその一族は~【悪なるエルフ】。人の血を食料として~魔法によって、あらゆる物を自在に操る事が出来るのであ~る。しかも~血を吸われた~人間は、悪なるエルフに変わってしまうのであ~る。神の時代には、よく戦いにもなったものであ~るよ」


「それでは、無限に増え続ける事が、可能であるという事ですか」


頭の回転が速い、リューイが驚きの顔で叫ぶ。


「そうであ~る。だから、大陸に侵攻しようとしているのであろうな~」


俺は黙って皆の話を聞きながら、深く沈考する。


白き竜王が、高いソプラノで宣言する。


「万一、大陸に侵攻された場合は、領民が敵になるという、最悪の物語になると言う事であるな」


「そ、それは考えたくもありませんね」超神速の紅蓮戦士は湯船で()いた汗とは全く別の汗を流しながら、苦しそうに言葉を吐き出す。


「噛まれた場合の、対策はあるのですか?」


「血が回らないうちに焼き払うか、切り落とすしかない。首をかまれたら、自害するしかない。」


褐色の砂漠王は、残酷な宣言を低く唸る様に発する。


「敵兵力は現在どのくらいあるか、おわかりですか?」


リューイが、状況を飲み込み、分析に入る。次は対応だが、それを決めるのは、我らが紅蓮の覇王ランガード国王である。


イグシア鷹王は、苦々しく「はっきりといった数字は、つかめていないが、3年前の大侵攻で奴等も相当数、兵力が減ったはずだが、あれから3年。現在どうなっているかは、全くわからないのが現状だ。」



俺が、湯船の中で立ち上がり、皆に向かって命令を下す。


「全部まとめて焼き払うしかねぇな!」


即座にリューイが反応する。


「それでは、直ちに偵察部隊を組織し、警戒に当たらせます。」


「ああ、頼む。それと主だった連中を【紅蓮の間】に集めてくれ」


ザバァ~


っと、湯船が(こぼ)れて、全員が意気揚々と立ち上がる。


皆裸だが、戦死としての鎧は既に着込んでいた。


心の中に。

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