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BU・SI・N・SYO  作者: イ-401号
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若き戦士達の決闘

大炎元郷王都、赤々と決して消えない炎を(まと)った爆轟赤炎城ばくごうせきえんじょうの【正義の間】では、ランガード王国の仲間(・・)が、美食に満たされ、美酒に酔い、夢を語り合った。


キルヘッシュの旦那が、リューイに話しかけている。


「役目を引き受けた以上は~精一杯やるのであ~るのだがな~」


「リューイ殿~一つ聞いてもよいのであ~るかな~」


リューイは俺の隣で、麦酒を飲みながら顔をほんのり赤くしていたが、【火の民】もやはり戦闘部族で、紅蓮の戦士だ。


酒に弱い者、飲めない者もいるが、そう言った者は、戦死の(たしな)みとして、自らの酒量を(わきま)えている。


それ以外のほとんどの者は、酒に強い。


しかも、【火の民】が愛飲する酒は、アルコール度数の強い火酒(ひざけ)だ。


リューイが、旦那に向いて目線を合わせる。


「何でしょうか?」


キルヘッシュは、酒を飲んでも全く酔うと言う事が無い。

妖精族全員がそうらしいが、数千年を生きる彼らには、既に酔うと言う感覚がそもそも欠落しているらしい。


しかし、キルヘッシュが愛飲するのは、赤葡萄酒である。


その赤葡萄酒の入った大きめのグラスをくるくると回しながら話し始める。


「総統府の事は~人員もいるので~、まぁ~何とかなるであるだろうがな~」


「軍備にばらつきがある様なのではあ~るまいかな?」


リューイは酒が入っていても、ハキハキと語る。


「キルヘッシュ様が、お気にされている事は、第1軍団から第4軍団迄の戦力差がお気にかかると言う事でありますか?」


「そうであ~るな~、個々の戦力には、問題は感じていないのであ~るがな、数にも~能力にも~ばらつきが多すぎるのではないのであ~るかな~」


「そうですね、確かに第1軍団は【火の民】1万、第2軍団【砂漠の戦士】1万、第3軍団【亜人族の戦士】2千、第4軍団【不死鳥騎士団】は8千。」


「数にばらつきが目立つのはよくあませんね【火の民】【砂漠の戦士】【不死鳥騎士団】は実戦も、経験豊富で兵力も拮抗していますが、3軍の【亜人族の戦士】の兵数が足りてないのは(いな)めません」


(なにしろ、急に言われたものですから、、、)


とは、口には出さないリューイだ。


「おいおい兄ちゃん!」


メルビル獸が、大声を立てながら会話に無理やり入り込んでくる。


(にいちゃん?もしかして僕の事?)


またしても、リューイは一人悶々とする。


「何でしょうか?亜人族の若長殿」


声に出しては全く違う事を言う。


興奮しきった、メルビル獸は今にもリューイに飛びかからんばかりに、体を前のめりに乗り出して爪が異様に長い右手で拳を作りながら、眼をぎらつかせ物を言う。


「俺達、亜人族の戦力を馬鹿にしてんのか?兄ちゃん」


リューイは淡々と(何処にでもいるんですね、こう言うタイプ、、、)


「亜人族の個々の戦力に不安は全くありません。ただ、兵力数が足りないと申し上げてます。」


「それと、私はリューイ。【兄ちゃん】ではありません。」


メルビル獸は、鼻で「ふん」と鼻息を鳴らし、更に口をはさむ。


「見損なってもらっちゃ困るぜ」


「俺はこう見えて、ランガード王を倒した男だぞ!」


『えっ!!』


リューイと【火の民】紅蓮の戦士が、驚愕の事実に驚きの声をあげる。


「いや、待て待て、そりゃ事実だが、いろいろあんだよ」


紅蓮の覇王が、言い訳の様に手を振りまわしながら、釈明する。


また、ここで白き竜王ベルフェムが余計な一言を言う。


「事実である以上、言い訳は見苦しいのではあるまいか?南海紅竜王よ」


「ベルフェム、おめぇだってあの場にいただろ!わかんだろが、空気読めよ」


ランガードは口をとがらせながら、皆の前で力説の口上を発するが、現場(・・)にいた、イグシア、キルヘッシュの旦那たちからは、白い目で見られる。


リューイが、すくっと立ち上がり、メルビル獸に向かって、物申す。


「族長に勝ったと言う、実力見せて頂いてもいいですか?」


(兄ちゃん呼ばわりされてこいつ、怒ってんな、、、)


リューイはやや短めの愛刀を(さや)ごと右手で、持ち【正義の間】中央に向かう。


「おう、いいぜ、兄ちゃんよ!!」


答えるメルビル獸。


周囲では、なんだかんだ言って、面白半分に騒ぎ立てる。

【火の民】にとっては紅蓮の5柱が(おさ)、実力、剣技、攻撃力申し分のない存在だ。


一方、新参者の【亜人族】にとっては、初めての自由の地で、自分達の若きリーダーを応援し、亜人族の地位の確立を狙いたいところでもある。


お互い、初対面同士、やはり分かり合うには【矛を交える】のが一番手っ取り早い。


しかし、リューイがこれほど感情的になる事も珍しい、、、

リンの前で、【兄ちゃん】呼ばわりされた事が悔しいのかもしれない。


そんな感情も、リューイは持ち始めたのだと、密かにランガードは考える。


2人は、【正義の間】の中央に進み出る。


リューイは両刃の短めの愛刀を手で持ち、自然な姿で立っている。


それに比べ、メルビル獸は気合(こも)りまくりで、既に獣人化して、大きな二足歩行の蜥蜴に変身して、得意の武器、三又の槍を頭上でグルグルと回していた。


いつの間にか、二人の間にはキルヘッシュ・アクティアの旦那が、スラリとした紳士姿で帽子を被り、杖を付き両者に語り掛ける。


「吾輩が審判役であ~るよ」


「リューイ、そんな蜥蜴男やっつけちゃって!」


黄金の真甦を持つ、不死鳥騎士団千竜騎士長リンが叫ぶ。


リューイは声援に答える様にゆっくりと愛刀を鞘から抜き放つ。

リューイの双方の眼は既に、真っ赤に燃え上がり、愛刀は炎に包まれていた。


旦那が、中央に立ち


「よろしいであ~るか」


「はい」


「おうっ」


それぞれ、全く違うタイプの人物同志、剣をまじ合わせねばわからぬことは戦士には、沢山あるのだ。

まして、急増の大勢力であり、他種民族の大軍団である。


力関係、組織図を明確にするには、個人の実力を示す事が一番の近道だ。


キルヘッシュの旦那が、杖を振り上げそして、振り降ろす。


「はじめるがよ~い」


合図と共に、リューイは超神速を使って、その場より消え去る。

刹那!!


メルビル獸の目前に燃える愛剣を振りかざす、リューイである。


メルビル獸の反応はとても速く、人間離れしていた。

咄嗟に、体を反転させて、三又の槍をぐるりと回転させ、リューイの斬撃を弾き返すとともに、自らも透明になる。


目標を失った、リューイはむやみに動く事を止め、深く息を吐き出し、剣を鞘に戻し目を閉じる。


そこには、リューイの姿以外には、何も見えない。


メルビル獸の【大気の真甦】の能力による透明化だ。


メルビル獸は、透明なままリューイの周囲をゆっくりと気配を消し回りながら隙を探す。


っが、なかなかリューイに隙は無い。


リューイは、静かに目をつぶり、気配を察知する。

全神経を一太刀に込める為、集中力を極限まで上げる。

リューイも【火の民】なので、髪は赤い。


今は、逆立つように赤々と燃え上がっていた。


ここに居る全員が、並の戦士以上の強者である。

次の一瞬で、勝負が決まる事をしっかりと感じとる。


無音だが、張り詰めた緊張の空気が【正義の間】を埋め尽くす。


先に動いたのは、、、、



メルビル獸だ。


(若いな、、、)思わず俺は心の中で呟く。


リューイの背後より透明のまま、三又の得物で渾身の一撃をくらわす。


ガキィン!!


瞬間、リューイは愛剣を抜き放ち、メルビル獸の槍を打ち払う。


即座に、近距離超神速でメルビル獸の懐に飛び込む。


炎刀を下から上へ思いっきり振り上げる。


超神速からのこの斬撃にメルビル獸は、対応しきれない。


リューイの剣が、メルビル獸を切り裂くまさに、その瞬間。


超神速の斬撃を弾き飛ばした男がいた。


キルヘッシュ妖精王である。


審判役の妖精王は軽々と自らの杖で、リューイの燃え盛る超神速の剣を弾き飛ばしたのである。


ガキィン!!


「そこまでであ~る。リューイ殿の勝利であるな~」


ハエでもはたくように軽々とリューイの超神速の斬撃を弾き飛ばし、静かに悠々と紳士として立つ、妖精王は息も乱さずに圧倒的な力の違いを見せつけたのだ。


余裕で、息を切らせる2人を見て妖精王は語り掛ける。


「よい、戦いであ~たのであ~るな、言いたいことがあれば全部吐き出すであ~るよ」


始めにリューイが、話し始める。


「メルビル獸様にお詫びをしたいです。正直僕は、【亜人族】の皆様を(あなど)っていました。」


「これ程強いとは思っていませんでした。申し訳ありません。」


メルビル獸は、負けたのに謝られ、なんとも釈然としない顔だったが


「リューイさん(・・)の力の方が俺より強い。これからは俺も態度を改めるよ」


「よろしいのであ~る。これでこそこのランガード王国は良いのであ~るな」


最後にキルヘッシュ・アクティア妖精王が〆る。


っと、


以外にも、俺が全身から覇気を巻き上げながら、皆に向かって諭す様にしかし、熱く話し出す。


「リン!」


「メルビル獸に対して【蜥蜴男】という言葉は、仲間に向かって失礼だ!謝れ」


リンは、ハッと自分の立場に気付き、瞬時に猛省する。


右膝を地面に突き、若き亜人族の若き長に向かって、最高の礼を取る。


「はっ!!失礼しました。メルビル獸様にはご不快な思いをさせてしまい、大変申し訳ございません。お許しくださいませ」


メルビル獸は、半獣の姿に戻り、三又を地面に突き刺して


「事実だから、気にしちゃいねぇよ」


膝まづいたまま、リンは顔を下に向けて謝意を表す。


「ご寛容に感謝いたします。」


そこで、ランガードは更に話す。


「男、女、年寄り、子供、他国民族、他種種族、姿形にこだわらない、固定観念を外せ。【正義と平和】こそが唯一の同一観念であり、大炎元郷の存在意義だ。」


「それを忘れた時は、俺は仲間だろうと容赦なく【焼く】。よく覚えておけ」


「「「「焼き払え!!」」」」


「「「「おうっ!!」」」」


【正義の間】は、大歓声で包まれ、これからの活躍を期待に胸膨らます、大炎元郷ランガード軍団戦士達だ。



シュシィス・スセイン王妃が、そっとリン千竜騎士長に近づき、まだ膝まづいているリンの両肩を抱え上げ


「りんさん、これからですよ。」


「誰でも過ちは有ります。間違いをどう修正して成長に繋げる事が出来るか、それが大切ですよ。」


「奥方様、、、」


「あなたは【天の真甦】所有者ですよ、どんな時も胸を張りなさい。」


「そして、【正義と平和】の為に力を貸してくださいな」


「はっ!!身命に変えましても」


リンは再び、騎士の礼をシュスに取り誓約する。


そして、大炎元郷の定義はランガードを中心に広がっていくのである。


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