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BU・SI・N・SYO  作者: イ-401号
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妖精王再誕

レィリア・アストネージュ武神将が、長く真っすぐ伸びた見事な金髪を床に垂らし、膝をつく。


「あ、悪魔が、父親、、、」


そっと優しく、シュシィス・スセインは金麗の友人を体で支えて、背中をそっと摩る(さする)


思わず俺が叫ぶ


「全然、似てねぇじゃねぇか!」


白き水龍王ベルフェムが高い声で涼やかに声を掛ける。


「そこは、着眼点が違うのではないかな?」


「性格は、似てなくもないか、、、」俺は最後まで言葉を発する事が出来なかった。


殺気!!


素早く鋭く華麗な蹴りが、飛んで来た。

俺は、バク転して避ける。


レィリア・アストネージュの妖精力を最大に出した攻撃である。


続けざまの瞬息は苛烈で激しいが、舞でも踊るような流麗な連続攻撃。


パン、パン、パン


俺は両手で、バックステップを踏みながら全ての攻撃を両手で払い去る。


以前の俺なら、レィリアの瞬息の攻撃などかわす事は不可能であったが、今ではかわすだけなら、なんともない。

本気になれば、レィリアを倒す事もできるだろうが、女子供には絶対手を挙げない、それがランガードの正義である。


レィリアも自分の感情をどうしていいか自分でも分からずに、ランガードに当たっているだけなのではあるが、始まった感情の吐きどころと勢いは止められない。


「避けるな!」


レィリア・アストネージュ武神将の心の叫びだ。


「おい、おい何で、俺に当たるんだよ!」


思わず、俺が叫ぶが次の瞬間、俺は背中から羽交い絞めで動きを止められた。


「た、大将!」


リスティアード皇帝陛下が、ランガードを羽交い絞めにして動けなくしたのだ。


「すまないね」


四海聖竜王が一言、俺の耳元で、優し気に囁く(ささやく)


そこに、レィリアの華麗な一撃が見事に決まる。


「ぐわっ!!」


俺は(あご)に蹴りの見本の様な見事な蹴り技をまともに受けて、195センチの巨体が宙を舞う。


横目で、銀麗の妻シュシィス・スセインが、片目をつぶり痛そうな顔をして、俺を見ているのが目に入った。


ドサッ!!


俺は【謁見の間】に大の字になって、倒れる。


レィリア・アストネージュは、珍しく肩で息をしながら


「ふん」


っと、一言捨て台詞の様に叫ぶと、謁見の間より出て行った。


アルセイス・アスティア・アグシス北海黒龍王が、床に這い蹲って(はいつくばって)いる俺に向かって、手を差し出してくる。


俺は、口から少しだけ血を出しながらアルセイスの右手を取り立ち上がり袖で口から出た血をふき取る。


アルセイスが俺にだけ聞こえるように囁く。


「あいつも、心の整理が付かないのだろう。」


「損な役目をさせて済まぬな」


俺は、言いたい事が山ほどあったが、アルセイスだけに聞こえる様に


「悪魔でも、親がいるだけましなんじゃねぇか、、、」


アルセイスは俺と目を合わせて小声で低い声で話す。


「確かにそうかも知れぬが、皆、お主ほど図太くは無いのだよ」


俺とアルセイスは、横に並びながらフッ飛ばされた位置から謁見の間の中央に膝をついている。

キルヘッシュ・フォン・DEATH・アクティアを通り過ぎ、玉座に戻っていたリスティアード皇帝陛下の横に戻る。


俺は小声で「大将、貸しだかんな」


リアードは俺に向けて優雅に微笑んだが、何も言葉はかけてこなかった。


リアードは上級悪魔族始祖に向かって宣言する。


「キルヘッシュ・フォン・DEATH・アクティア!」


膝を付き、騎士の礼を取る上級悪魔族の王は首を下に垂れる。


「一族全て、紅蓮のランガード王国に忠誠を誓うか?」


キルヘッシュ・フォン・DEATH・アクティアは首を下に向いたまま


「誓うのであ~る」


リアードは黄金の髪を揺らし、黄金に輝くリングを自らの頭上に両手を上げ出現させる。

黄金の光輝くリングをキルヘッシュ目掛けて放つ。


黄金のリングはキルヘッシュの頭に(かんむり)の様に嵌り(はまり)輝きを失い、形を失い、リングは消滅し何もついていないかの如く契約は完遂された。


四海聖竜王は、響き渡る声でキルヘッシュに命令する。


「汝ら一族を受け入れよう」


「一族全員を炎元郷にて、紅蓮のランガード王国の一員とし迎える。」


「もし、契約を破れば汝だけでなく、一族全てこの世界より消滅する事は、承知しているね」


キルヘッシュは膝まづいたまま、自らの頭にはまった、見えざる【誓約の輪】をあるがごとく、右手で頭を軽く触りながら


「わかっているのであ~る」


キルヘッシュはリスティアード皇帝陛下から視線を俺に移し


「紅蓮の覇王ランガード殿とご一族に忠誠を誓うのであ~る」


【誓約の輪】とは、神々同士で誓いを行った場合、その証として、自ら頭上に見えざる(かんむり)として嵌める(はめる)【聖なる冠】の事である。


当然だが、誓約を破れば誓約にのっとり、滅亡と消滅が実行される。

誓約の罰を防ぐ事は絶対不可能である。


漆黒の黒曜石で床一面、柱、壁まで埋め尽くされた、黒曜天宮【謁見の間】の玉座に立つリスティアード皇帝陛下の隣に立つ紅蓮の覇王ランガード、俺がキルヘッシュに向けて話しかける。


「おめぇの【闇の部分】を焼き払ってやる。いいか?」


キルヘッシュは膝をついたまま


「そんな事が可能であ~るのか?」


俺は短く「ああ」と答えて、膝まづくキルヘッシュに玉座から降りて近づいていく。


「立て」


キルヘッシュ・フォン・DEATH・アクティアは静かにその場で立ち上がる。


俺はキルヘッシュの右胸に俺の右手を当て、透明な魔を滅する炎風を手のひらより、瞬きするほどの間だけ吐き出す。


キルヘッシュの体が刹那、2重にダブって僅か(わずか)に後方に揺らぐ。


「くぉっ」


思わずキルヘッシュから、声が漏れる。


キルヘッシュの体から、闇の影が抜ける。

ダブる影。その後、漆黒の闇のキルヘッシュだけ消滅する。


「はぁ~はぁ~」


思わず、両手を床に突き四つん這いになって、肩で息をする。()上級悪魔族始祖、、、、


今まで纏っていた、漆黒の【冷酷】【残虐】【死】の闇が消え去り、【生命】【自然】【大地】の匂いを纏う、キルヘッシュであった。


謁見の間にいる、俺以外の全員(グエンとフェリアは除いて)が、瞠目(どうもく)し、俺とキルヘッシュを見つめる。


また、この男がチャチャを入れてくる。


西海白竜王ベルフェムだ。


「南海紅竜王は、悪魔をも更生できるのだな」


リスティアード皇帝陛下も驚いている。


「君は一体どこまで、進化していくんだい?」


俺は一切構わず、キルヘッシュに向けて


「お前ら一族、ここに連れてこい、全員闇を焼き払ってやる」


来てる服も顔も髪の色も変わらないが、今までとは全くの別人の様な雰囲気を持った、キルヘッシュが静かに俺に向け、帽子を左手で持ち右胸にあて優雅にお辞儀をする。


「心より感謝するであ~る。ランガード殿」


「我一族の呪われた、数千年が救われるであ~るな」




その昔、天帝皇王がこの世界を平和と愛で統べ、リスティアードが四海聖竜王として竜王一族を率いていた神々の時代。


第一次、異界よりの異様化物侵略戦争が起きた。

当然、天帝皇王は四海聖竜王と双璧をなす、妖精王率いる一族を迎撃にあたらせた。


一進一退を繰り返した、異界の化物との攻防の中で、妖精王キルヘッシュの愛する妻が、異界の王に攫われた(さらわれた)

キルヘッシュは、我を失い異界の王へ一族共々攻撃を仕掛けた。


制止する四海聖竜王の命令を無視して、、、


結果、キルヘッシュは異界の王の罠にはまり、愛する妻は殺され、一族全員【悪魔の因子】を埋め込まれ、地底深くに追いやられたのだ。


愛する妻との間にできた、幼き愛娘を一人を残し、、、


そして、数千年【悪魔の因子】は巨悪を体内に生み出し、地底深くより、虎視眈々(こしたんたん)と地上征服を企んでいたのである。


その為、此度の異界侵略戦役に参加しなかったのも、【悪魔因子】のせいなのである。


その【悪魔因子】をランガードは、焼き払ったのである。



俺は、炎竜帝の爆発業火を発しながら、20メートルある炎翼を大きく広げ


「おら、さっさと済ますぞ、とっと全員ここに呼べ!」


キルヘッシュは、顔から汗を流し肩で息をしながらも

「感謝するであ~る」と重ねて礼を言い。


双方の眼をつぶり何か呪文のようなものを小さな声で、唱える。


千人は収容できる、【謁見の間】に突如として、黒曜石で出来た床より、150体の上級悪魔が浮かび上がってくる。

漆黒の闇と、冷酷な空気を纏いながら


俺は20メートルを超える炎翼を大きく、広げ隻眼の眼は轟々と赤く燃え上がる。


俺の体から透明な魔を滅する、轟炎が爆発的に周囲にいる悪魔族150名全てに向かって吐き出される。


ボウッ!!


【謁見の間】に現れた死を司る、上級悪魔族150名全員から黒き(あやかし)の影が抜け落ち灰燼と化す。


悪魔族であった者達はその場で、倒れ込む。


バタバタバタ


自らもへばっているはずのキルヘッシュが、一人一人に駆け寄り声を掛け、意識を確認する。

一族の王として、この男は悪い王ではないようだ。



俺は、炎竜帝を心の中に収め込み玉座に向かって振り替えようとすると、銀麗の妻シュシィス・スセインが俺の前にいた。


「お見事でございます。旦那様。」


「惚れなおしました。」


頬を真っ赤にしながら、子供を産んでも全く女性らしさと美しさを失わない氷結の女王は恥じらいながら、俺に愛を告白する。


俺は戸惑いながらも、他に皆がいる事もあり


「ああ、ありがとうな」


とだけ答え、玉座に向かって歩き出す


アルセイス・アスティア・アグシスが、静かに声を低く話しかけてくる。


「見事だ。」


俺はいつもと変わらず、ぶっきらぼうに話す。


「ああ」


「俺とレィリアは生まれた時より、リスティアード皇帝陛下の一振りの剣となるべく、研磨研鑽(けんまけんさん)をずっと重ねて来た。」


「すべて、【リスティアード皇帝陛下の為に】。それが俺達の生き方だ。」


「そのリスティアード皇帝陛下がお主を選んだのなら、我等も従おう」


俺はチラッと、黒衣の【剣聖】アルセイスに隻眼の視線を向けて


「前に誰かにも言ったがよ、そう言うのは別にいらねぇよ」


「お前が以前、俺に言ったように、俺とお前は【ダチ】だ。それでいいじゃねぇか」


「お主の様に、全てを手に入れても、尚変わらぬ男は珍しいを通り越して言わば、【珍種】だな」


珍しく、多くを語る北海黒龍王【雷撃の竜王】である。


俺達二人の会話を、傍で聞きながらリスティアード皇帝陛下はニコニコ微笑んでいた。

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