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BU・SI・N・SYO  作者: イ-401号
121/173

ランガード沿海州連合民主国設立

ベルフェムは軽やかに、右手にワインを持ち優雅に少しずつ口に含み、飲み干す。


ブレッツ王国の【真甦使い】戦士の内臓を水圧で押し潰し、水龍の牙で、首から胸、手足を食い千切り、最後は流れるどす黒い血とバラバラにされた、体のパーツとぐちゃぐちゃになった内臓を全て綺麗に水で流し、その後を軽やかにワイン片手に軽やかに鼻歌でも歌いそうな雰囲気で舞うように歩く。


東海白竜王ベルフェムである。


俺は密かに(こいつが一番エゲツねぇんじゃね)と思う。


その頃、王宮正門では何万という民衆が集まり、成り行きを見守っていた。

先頭にはシュベルク・セイムが、不安と期待を持った顔で立っていた。


俺達3人は、どんな障害にも一切止まる事無くブレッツ王国王宮玉座迄、大股に歩き進んだ。


玉座の入口扉の守備兵約100名をイグシアが、あっさりと焼き払い。

扉を蹴飛ばし、開ける。


ドン!!


刹那、不穏な暗黒の闇が玉座より溢れ出て、王宮全体を一瞬で包み込む。


ドヨ~ンドヨ~ン


イグシアが瞬時に警戒準備態勢に入り数間飛び下がる。


ベルフェムは、ワイングラスを床に置き、緩やかに自然体で真甦を練り上げる。


俺は全く変わらず、堂々と暗黒の玉座に足を踏み入れる。


カン高い笑い声が、響く


「英雄ランガード~、貴様の最後をわしが与えてしんぜようぞ~くわっははは~」


陰々と響く耳障りな、声。


俺は仔細構わず(しさいかまわず)に、大股で暗黒の中を歩き進む。


すると、暗黒で全く視界が無い中、無数の巨大な手だけが俺めがけて20本は掴みかかてきた。


1本の手の大きさだけで優に5メートルはある。

それが、20本全周囲、全方向より俺を破壊し、殺し、処分するために襲いかかってくる。


闇の中、何も見える筈が無く普通ならば、戦う手段などあろうはずもない。

それ故、イグシアもベルフェムも警戒態勢を取ったのだ。


しかし、俺は何もしない。普段通り短髪の赤髪が(なび)く。


見えざる巨大な手が、俺に襲いかかる。


凄い速度と力で、巨大な手は容赦なく俺をこの世界から無くす為に迫る。


ごおおおお!


ボンと俺は自分の右手で、左胸を叩く。


俺の全身から、青き【魔】を滅する炎が、轟炎業火となって暗黒の世界を一斉に照らし出す。


見えざる手が、【見えた!】


その手は、ブレッツ王国玉座に座す、ジベット・ヤン・グスタス国王の足元に描かれている、【魔法陣】より出でし悪しき魔族の背中より、生えて襲いかかってきた。


悪しき魔族は、暗黒の翼に真っ黒な影のような体に、ギラギラと双方の目だけが、生物らしさを醸し出していたが、到底人の世の生物とは思えぬ、雰囲気と凍るような悪しき暗黒の(ころも)をまとっていた。


俺の中の、炎竜帝が叫ぶ。


(任せられよ)


心で感じる。


刹那!!


俺の体が大爆発を起こす。


全てを焼き払う、爆炎。

今まで、ランガードの出す炎は時には烈火のごとく、また時には魔を滅する青き炎となって、敵を屠って(ほふって)きたが、炎竜帝が出す炎は、炎であって、炎ではない。


爆発、蒸発、気化に近い。


熱量と大きさと破壊力を備え持つ。


今まで、ランガードが纏ってきた炎とは桁が違う別次元の爆発炎だ。


咄嗟に、ベルフェムが、イグシアと王宮後方にいる民衆を守る為に、真甦を最大限最出力出して、水碧の防御を張る。


東海白竜王にして竜王が一人、ベルフェム最大限の防御力をもランガードと炎竜帝の炎は、焼き尽くす。


瞬時に、イグシアがベルフェムの背中に手を当て、自分の真甦を全てベルフェムに流し込む。


ベルフェムの水竜が咆哮する。


ランガードの出す、爆轟炎を水龍は身を持って、受け止め何とか耐える。

イグシアの力も借りて


ランガードを襲った、悪しき魔物の手は全て焼き尽くされ、灰にもならず、消滅した。


【魔法陣】より出でた、悪しき魔物が黒き禍々しい(まがまがしい)羽を広げ吠える。


グヮワアオオオオオー!!


俺は初めて、愛する妻より貰った深紅の輝かしき【魔鉄大剣】を(さや)より引き抜く。


大剣には、太陽の様なマグマと紅蓮の炎が二重にも三重にも纏わりつき、熱く眩しすぎ、そして荒々しく唸り(うなり)を上げ、ジベット・ヤン・グスタス国王を見る。


「ジベット、おめぇの悪行の根底にあるのが、そのこきたねぇ、【悪魔の力】故か!」


「さ~すがは、異界の王を倒した~ランガード殿であるな~」

更に甲高い声は、響き渡る。


「しか~し、我に逆らったのが、運のつきよの~」


「グダグダ、うるせぇんだよクソ豚野郎。」

俺は隻眼の目を深紅に燃やし、魔鉄大剣は轟炎を爆炎させながら右手に持ち、豪語を吐き出す。


「とっととかかってこい!」


【魔法陣】より更に3体の【悪魔】が怖気(おぞけ)を室内中に撒き散らしながら、出て来た。


それは【死】を具現化したものであった。


4体の悪魔はそれぞれ、形が細かい所で違っていた。


始めの1体は、巨大な手を焼く尽くされながらも、妖しく光る双方の目を不気味にランガードに向けて、【地獄】の様な濃く粘りのある闇を撒き散らしていた。


(つの)の様な物を頭に生やし、漆黒の【絶望】を纏い、手には(いびつ)(ほこ)の形をした武器を持っていた。


翼が、蝙蝠(こうもり)の様に薄く尖って(とがって)おり、翼の先には何十匹もの毒蛇が張り付いた【毒煙】を撒き散らし、うっすらと大きく割れた口がこの世ならざる者のように笑っていた。


最後は、とてつもなく巨大な暗黒大魔王如く、佇む(たたずむ)純粋な【暴虐】を体全体に張り付かせて、後方に立つ。足の甲だけで、有にランガードの5人分は有りそうな巨大さだ。


ジベット国王は変わらず、甲高い声で話し続ける。

「き~さま~を~殺せば~、我が~この大陸を~暗黒の闇で~支配して~やるのだ~」


ランガードの体が突然、火山の噴火の如く爆発し、マグマと爆轟、暴風炎、を吐きだす。


ベルフェムが防御水壁を張りながら、額から汗が流れる。


「すまぬが、イグシア殿、フーカ殿、お主らの全ての真甦を私に流してくれぬか」


「承知」


「わかりました。」


短く答える、イグシアの双方は【火の真甦】所有者特有に真っ赤に燃え上がっていた。


フーカ・セロは、極限まで高めた真甦を精一杯、ベルフェムに向けて流し込んだ。



ランガードは、最早今までのランガードではなかった、、、


背中からは、巨大な炎の翼、両翼合わせると20メートルは有りそうな炎翼を大きく早し、炎竜帝の轟炎の真っ赤に燃え盛る牙をはやした竜の顔がランガードの頭上に現れ、魔鉄大剣はこれまで以上に、激しく激しく燃え盛る。


隻眼だった、目は黒い眼帯を燃やし尽くし、双方の眼(・・・・)が、業火となり燃え上がっていた。


今、ランガードの中にあるのは、身勝手に魂を悪魔に売り渡し、私欲を貫くジベット・ヤン・グスタスに対する、純粋な【怒り】であった。


「てめぇみたいのがいるから、民衆は苦しめられる。」


「平和を私欲で乱すものは、俺がぜってぇ~」


『ゆるさねぇ!!』


ジベットが甲高く叫ぶ。


「そいつを~殺せ~」


3体の前にいた、悪魔が暗黒の【死】を撒き散らし飛び掛かってくる。


暗闇と死が、無情に近づく。


ランガードは、右上方から左斜め下に向けて、魔鉄大剣を全力で一振りする。


ブン!!


轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟 凄まじい、爆炎と清浄なる白き炎が、相まって魔鉄大剣から吐き出される。


3体の悪魔は、自ら死を纏い(まとい)暗黒の死の世界より出てきて、この世界より本当の死を知り。


灰となり、塵となり、この世界より消滅した。


一瞬の出来事であった。


ランガードの無敵で巨大な力は、悪意ある生物は何もする事が出来ずに、無情に無謀に焼き払う。


人にとってみれば、脅威で恐怖の対象である悪魔もランガードに掛かれば一瞬で消し炭となる。


残るは巨大な、悪魔一匹。


俺は魔鉄大剣を鞘に戻し、念じる


(来い牙炎)


(応)


即座に答えがあり、俺の右手には2メートルの超々剣の聖剣誉武号牙炎(よぶごうがえん)が重さを全く感じさせずに現われる。


聖剣は、現われると同時に業火と爆炎をその身に宿す。


俺は、最後に残った、身の丈10メートル以上ある悪魔とその向こう側にいる、ジベットに向かって、轟炎を溢れ出す聖剣を真っすぐに突き出す。


ぐぉおおおおおおおおおおおーーーーー!!!


真っ赤に燃え上がる【聖なる死】を纏って炎と衝撃波は一瞬で、巨大な悪魔と玉座に座す、ジベットと王宮半分とその向こうに聳え立つ(そびえたつ)山々全てを巨大な炎と圧倒的な衝撃破で無情に圧倒的力で薙ぎ払う(なぎはらう)


ジベット・ヤン・グスタス国王は、我身に起こった事も理解できずに、この世界より消滅する。


地平線の形が歪に変形している。

山々が削られ、大地は抉られ(えぐられ)、地平線までその破壊力は続いていた。


俺は、思わず吐き捨てる。


「くそが!」


(戻れ牙炎)


(応)


すぐさま、消えて無くなる超長剣。


俺は息を吐き出し、後ろを振りかえる。


東海白竜王たる、ベルフェムが、白き輝く髪を額に張り付かせて、珍しく大きく息を吸っては吐き出し、肩で息しながら片膝を地面に付けて何とか立っている状況だった。


「ハァ、ハァ、ハァ~」


イグシア鷹王とフーカ・セロは、ベルフェムにもたれかかるように気を失って倒れ込んでいた。


俺が驚いて

「どうした?やられたのか?」


と言い、駆け付けると


ベルフェムは何とか声を出し


「お主に喧嘩は、売らぬよう心得よう」


と呟く、、、



その後ろには、驚き興奮し、歓声を上げるブレッツ王国の民が10万近く集まっていた。


ベルフェムとイグシア、フーカ・セロは、身を持ってこの民を守る為に必死でランガードの暴力的な火炎地獄の余波を防いでいたのだ。


民衆は熱狂していた。


「ランガード、ランガード、ランガード、ランガード」


拳を天に突き上げ、連呼するブレッツ王国民衆。


その先頭には、この国の民を救ってくれと俺に嘆願したシュベルク・セイムの姿があった。


俺は、歓喜の歓声には答えず、何故か(・・・)弱り切ってるベルフェムに後を頼むと、その場から炎と共に消滅した。



ブレッツ王国軍と戦闘中である、ボフタス国の戦場に突然轟炎を纏い出現した。


即座に、両の手を両軍入り乱れる陣営に向ける。


手の平より爆発が起きて、両軍の指揮所目掛けて苛烈を極める炎を撒き散らす。


俺は声を張り上げ叫ぶ


「ブレッツ国王、ジベット・ヤン・グスタスは俺が焼き払った。」


「この戦には、もう何も意味はねぇ!直ぐに戦いを止めろ!」


「これ以上戦うってんなら、俺が」


「ランガードが相手になるぜ!!」


ブレッツ王国軍の戦士も、ボフタス国の戦士も【ランガード】という名前と、ジベット・ヤン・グスタス国王の死を知り、徐々に戦意を喪失し、戦いを集結していった。


俺はブレッツ王国軍の指揮官に、手短に話を説明すると、指揮官は、喜んで戦闘中止命令を出し、撤退を命令した。


ジベットが国王として、施政者として人徳の無さを表す行動であった。

全て、【悪魔】による、恐怖政治であり、兵士も民衆もジベットの個人的な支配力の犠牲者になったに過ぎない。


俺は指揮官に、直ちに兵をまとめブレッツ王国王都に帰還するよう命じた。


指揮官は、喜びと期待を胸に、俺の命令を受諾してくれた。


次に俺はブレッツ王国占領下にある、ベッシュ国とバーグル国に向かいそれぞれ、同じ事を言って回った。


残念な事だが、ベッシュ国とバーグル国の国王一族は全て惨殺されていた。

死体も無く、おそらくあの悪魔たちの(えさ)にされたのだろう、、、


非道に怒りを更に感じながらも、死んだ者は戻らない。

嫌というほど、その現実を肌で知っているランガードは迷うことなく次に行った。


続き、ビクターン国とボルビル国に向かい、状況を説明して回る。


そして、今後の事もあるのでビクターン国王とボルビル国王を俺は無理やり拉致して、俺と一緒にブレッツ王国の俺が焼き払った、王都に飛んで来た。


途中、ボフタス国王も拉致してきた。


この焼き払われた、ブレッツ王国の王宮後に、生き残った3人の王と、ブレッツ王国国民10万人が集った。


現状を目の当たりにした、3人の国王はかなりの衝撃を受け、茫然自失になっていた、、、


戦闘中であった、ボフタス国王が一番早く現実を把握して言葉を吐き出す。


「ジベット・ヤン・グスタスを討伐されたのが、ランガード殿で、この状況がその証拠と言う事でよろしいのですかな?」


俺は長身を翻し(ひるがえし)、ボスタス国王に目を向ける。

「そうだ、奴が飼っていた【悪魔】も全て焼き払った」


「これからは、沿海州連合は【平和】で統一される。」


「異論がある奴は、俺が焼き払う。」


「なんか、文句のあるやつはいるか?」


拉致されてきた、3人の国王は目を合わせて頷き(うなずき)あう。


3人の国王は、俺の前で膝を付き


「紅蓮の覇王ランガード殿に従いましょう」


と、声を揃えて(こうべ)を下げる。


「よし、そんじゃ後は、シュベルク・セイム!お前が取りまとめろ」


「!!」


いきなり指名された本人が一番驚き、目を大きく開け、俺を見る。

「む、無理ですよ、、、ぼ、僕にはそんな力はありません」


俺はシュベルクの言葉を無視して、勝手に宣言する。


「平和で統一される沿海州連合の始めの責任者はシュベルク・セイムが執り行う。」


「必要な、物資、金、食料、軍隊、行政全部、アースウェイグ帝国が用意する。文句のある奴は今ここで言え!」


「後で、グダグダ抜かしたらマジで焼くぞ」


3人の国王は、その場で平伏する。


「ランガード殿の仰られる(おっしゃられる)ようにいたします。」


俺はシュベルク・セイムに向き直り


「足りない事は、全部面倒見てやる。お前が始めた革命だ。お前が責任取れ。」


シュベルク・セイム「・・・・・」


しばし、思考に耽り(ふけり)間が開く、、、


決意を持った、目をランガードに向けシュベルク・セイムは俺に向かって、話し始める。


「わかりました。お引き受けいたします。」


「一つだけお願いがございます。」


俺はぶっきらぼうに「なんだ?」という。


「沿海州連合の名前を【ランガード沿海州民主国家連合】に変更してもよろしいでしょうか?」


俺は、チラッとベルフェムを見て嫌そうな顔をするが


ベルフェムは疲れた体にムチを打ち一言


「それは当然であるな」


っと、高らかに宣言する。

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