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BU・SI・N・SYO  作者: イ-401号
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正義のランガード紅蓮王国

俺は、もう駄目だぁ~


これ以上ここに居たら、おかしくなる、、、


こんな時、一番頼りになるこの男が助け舟を出す。


超神速の紅蓮の5柱、リューイ准将である。

フカフカの赤い絨毯(じゅうたん)に右膝を付きながら発現する。


「リスティアード皇帝陛下、ランガード武神将閣下もいきなりのこと故、少々、考えをまとめる、お時間を頂きとうございます。」


リスティアード皇帝陛下はにこやかに微笑み、リューイの方に向き「そうだね、部屋を用意するからみなで話あってもらえるかな?」


「はっ、ありがたく存じます。」

っと、リューイは頭を下げ、ランガードを抱えるように【謁見の間】より歩き去る。


右には氷結の女王、高潔なる妻が周りにいる各国代表に愛想を振り向きながらも、愛する夫を守りながらともに歩く。


ベルフェムとイグシアも後方より、主君を守る様に囲み退出する。


謁見の間では、ざわつきと喝采で、堆く(うずたかく)異様な空気が、積まれていった。

それは不穏(ふおん)な空気ではなく、新しく生まれ変わる為の痛みを伴うような、また、期待を込める様な新鮮な空気であることは間違いなかった。


退出して行く、ランガード一団に全員が熱い視線を浴びせ、見送る。各国のお歴々、、、



結局、ランガード一行は、戴冠式前に集まっていた【宝玉の間】へ戻ってきた。


グエンとフェリアが、ベッドで眠る中、護衛の金獅子近衛騎士は全員、退出した。


この一団を滅ぼせる、人間などこの世界にはいない。

世界で一番安全な場所なのだが、一人絶不調のこの男が、(のたま)う。


「なんだよ~話が違いすぎねぇか?大陸を統一するのは、グエンとフェリアが大人になってからって話だったろう!」


長身、短髪の赤髪をいつものように逆立て(いか)ついイメージの紅蓮王だが、今は口をとんがらして愚痴を言う子供の様な、仕草であった。


銀麗の妻が優しく語り掛ける。

「旦那様、フェリアが申しております。」


「ん?」


「四海聖竜王様は、炎竜帝様の魂をお持ちになられた、旦那様にこの大陸統一というお役目を与えたのだと、、、」


俺はキョトンとしながら、不思議そうに答える。

「竜一匹、心に入れたからってそう変わるもんじゃねぇだろ~」


「我主君へ不遜(ふそん)ながら、申し上げます。」

イグシア鷹王が、膝まずき、下を向き話し始める。


「炎竜帝様のお力の源である【御霊】を宿す、我主君のお力はもはや四海聖竜王様をも(しの)ぐものであります。」


俺は、イグシアの方を向き、「俺に注進する時は、いちいち(ひざまづ)かなくていい、立ったまま話せ。」


「御意」と言い、褐色黒髪黒瞳の王はスッと音も気配も無く立ち上がる。


俺の片方だけの目をしっかりと見つめて話し続ける。


「炎竜帝様のお力はこの大陸全てを焼き払う事が可能なお力。そのお力を我主君はお持ちになられたと言う事です。」


「聞き及びますに、主君は聖剣【誉武号牙炎(よぶごうがえん)】の主であられると、聞き及びますが、炎竜帝様の御霊のお力は聖剣を遥かに凌ぐ(しのぐ)お力です。」


リューイが驚く、それはそうだ!あのでたらめな聖剣の威力を目の前で何度も見て来たのだから、、、


それを遥かに凌ぐ力って、いったいどんなもんなの?


そこで、また、高潔なる美しい妻が静かに話す。


「グエンが申しております。【しっかりやれ】と、、、」


「なんだよ、0歳にしてもう反抗期か?」


「ちっ、てめぇのガキにまで言われたんじゃ、しょうがねぇな。」


偉丈夫の紅蓮の覇王の復活である。

堂々と、外套(がいとう)翻し(ひるがえし)歩き出す。


「【謁見の間】に戻るぞ!」


一斉に、皆が従う。


王者の決定は下された。


出て行く時とは、全く違ったオーラを纏い(まとい)業火の覇者ランガード・スセイン伯爵は、その場にいる全員の視線を堂々と受けながら、長い足で大股に玉座にいる、リスティアード皇帝陛下の元迄歩きよる。


リスティアード皇帝陛下は全くいつもと変わらずにこにこ微笑み、一行を迎え入れる。


「どう?気持ちは決まったかな?」


俺は火を吐き出すように、言葉を吐く。


「いいぜ!やってやる。」


「ただし、ひとつ条件がある。」


「なんだい?」優しく微笑みかける四海聖竜王。


「大将は、俺にとっていつまでも大将だ。俺が大陸を統一しようが、この世界を制覇しようが、それは変わらねぇ!」


「それだけは譲れねぇな!!」


【ぶれない】男の条件であった。

金や地位や名声では無く、ただ【スジ】を通す。


それが、ランガードという男の本質であった。


金髪の麗しき皇帝陛下は、数瞬思考に(ふけ)る。


「いいよ、その条件を飲もう。」


この男の性格を良く知る、リアードはここで逆らう無駄を理解したのだ。


ランガードは、胸を張り、そこにいる各国代表たちに【檄】を飛ばす。


「こんな、成り行きで俺は、これから平和で大陸統一を目指す代表とアースウェイグ帝国武神将として、2足の草鞋(わらじ)を履く事になるが、悪さをする奴は容赦しねぇ!もめ事起こしたら俺が焼き払う!」


「よく覚えておけ!」


「また、なんか困った事が起こったら、てめぇ達で動く前に俺に相談しろ!!金とか恩なんざ感じなくていいからよぅ、何でも言って来い!!」


とても、大陸統一国家を代表する国主の言葉とは思えぬ、品の無さだが、それぞれの心の中には深く大きく刻まれたであろう。


ベルフェムが、一言

「何とも、御仁らしき【ぶれない】言葉だ」


リューイはまた違った意味で、困惑(こんわく)していた。

(砂漠の民やドラゴンに大陸統一、、、って、もう僕一人じゃ絶対無理。)



その後、【謁見の間】では趣向をガラリと変更して、ざっくばらんにそれぞれ酒杯を傾けながら、【腹を割っての話し合い】の場と化した。


そこで大変な、迷惑を被った(こうむった)のは、金麗の彼女である。


金獅子近衛騎士団団長レィリア・アストネージュ武神将である。


通常の警護でも、目の回る忙しさなのに、いきなりほぼ大陸中の要人達が酒杯を傾け、ぶっちゃけ話を始めてしまったのである。


何時何処で、火種が上がるかしれぬ。


金獅子近衛騎士団は、謁見の間に常駐する騎士を5倍に増やし、各国代表通しが諍い(いさかい)を起こさない様、緊張する警備に、ピリピリとしていた。


しかし、レィリア・アストネージュ団長が心配するようなことは起こらず、ランガードとリスティアードを中心に時には談笑し、時には相談され、また時には「これはアースウェイグ帝国の侵略ではないかと」言わるが。


それをリスティアードとアグシス国務長官が誤解だと解いて回る。それでもアルコールの勢いでごちゃごちゃ言ってくる国についてはランガードが一言。


「なんなら、おめぇの国の名前変えちまうぞ!」


っと、力押しで稀代の英雄は業火と同じように、暴言を吐くが、勢いに負けて大抵はおとなしくなる。


これだけの国家代表が、集まり腹を割って談笑する事など、大陸の歴史を紐解い(ひもとい)ても、過去には無かった事である。


今、この瞬間、歴史は大きく動いたのである。


【平和】へと


【謁見の間】での談笑は、およそ3時間以上続いた。


陽も暮れ、各国代表たちも黒曜天宮に宿泊する者達は、そのまま談笑に耽っていたが、各国を代表する者はそれほど暇でも無い。

急いで、帰国の途につく者も多くいた。


最後まで、てんやわんやの忙しさだった、レィリア・アストネージュ武神将がやっと一息入れられたのは、その日も終わりを告げる頃合いであった。


俺達は、リスティアード皇帝陛下に退出の挨拶を交わし、不死鳥騎士団城に戻ってきた。


俺達にとって、実に久しぶりの帰還である。


夜も更け、次の日付に変わる頃だと言うのに、不死鳥騎士団城は活気に溢れ(あふれ)ていた。


留守役責任者を仰せつかった、フーカ・セロ千竜騎士長始め、ラウミ千竜騎士長、ホセ千竜騎士長、シュカ千竜騎士長が、団長と副団長と団長の妻であるシュシィス・スセインとの再会を喜んでいた。


グエンとフェリアは、もうぐっすりと眠りに付いていたので、【火の民】の女性に任せて、部屋で休ませた。一応護衛を付けて。


俺は、砂漠王国イグシア鷹王を皆に紹介し、今後は行動を共にする事が多くなる旨を伝えた。

すでに、黒曜天宮【謁見の間】での騒動については、流言飛語が飛び回っており


興奮した様にフーカ・セロが尋ねてくる

「大陸を平和で統一する、国王に選ばれたのは本当なんですか?」


俺はぶっきらぼうに「ああ」とだけ答える。


ラウミも興奮していた。

「不死鳥騎士団も平和のために働くのですね」


「そうだな」またもやぶっきらぼうに答える俺。


そこで、リューイ准将が入って来る。

「みんな、気持ちはわかるけど、団長も今日はお疲れです。明日にしましょうね」


っと、解散を宣言する。


直ぐに皆、従う不死鳥騎士団騎士達。さすが縦社会の模範である。


俺はリューイに向かって「わりぃ」と一言、言って自室に妻と一緒に戻る。


今日一日が、どんだけ長かった事か、、、

いろいろな事が、余りにも起きすぎて頭がパンク寸前だ、、、


闘う事に関しては、無尽蔵の力を発揮する紅蓮の王も、こういう行事には全く不向きで苦手である。


部屋に入ると、グエンとフェリアはぐっすりと寝ており、【火の民】の世話係兼警備の女性達も俺達が帰ってくると部屋を出て行った。


やっと、落ち着ける、、、


妻のシュシィス・スセインが、熱いワインを片手に持ち

「旦那様、お疲れさまでした」

と言い、ホットワインを手渡してくれる。


そして、俺の膝の上に腰かける。


俺はワインを飲み干すと、優しくシュスを抱き寄せる。

妻はされるがままに、俺の胸に抱き着く。

そっと、上を向き目を閉じる。


俺は優しく、愛する銀麗の美女に俺の唇を重ね合わせる。


シュスは「あっ」っと、小声で呻く。


子供を産んでも全く変わらない、その美しさに俺は見惚れながら、何度も何度も唇を重ね合わせる。


そして、唇から首筋、耳の裏と自分の唇を這わす。


シュスの吐息が段々熱く早くなる。


真っすぐ伸びた、銀髪がふり乱れる。


俺は、シュスを抱きかかえてそっと、ベッドに横にする。


久しぶりの愛情の交じり合いだ。


シュスはとても(なま)めかしく、色香に満ちていた。


細い体の線とは裏腹に、豊満な胸を俺は子供の様にむしゃぼり尽くす。


氷結の女王は、背骨を逸らせて歓喜に震える。


すべすべの白い肌を嘗め回し、手でその存在を確認するようにあらゆるところを触りまくる。


そして俺は、優しく優しく妻の中に入っていく。


シュスは、手で口を押えながら、声を押し殺す、、、


何度も何度も妻の中に入っていく俺は、やっと今日起きた事をすべて忘れていた。


そして、はてた後、俺は妻の横に倒れ込む。

シュスは優しく裸のまま、俺の赤髪に触れ、そして黒い眼帯に触れ、優しく吐息を吐き出すように


「旦那様には、私と子供たちが一生ついております。」


「ご安心くださいませ」


俺は心が震えた。


生まれてより、一人で生きて来た。それこそ人を殺して、殺して、、、自分が生き残るために、、、


だが、今では自分の大切な家族がここに居てくれる。


守るべき者達が、自分を理解してくれる家族と友人たちが、、、


この世界を広げて行こう、大陸中に、、、全世界中に、、、


俺の大切な者達の為に、、

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