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BU・SI・N・SYO  作者: イ-401号
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解決方法

「ゼェ~ゼェ~、、、ゼェ~、、、」


イベリア海賊王国の巨大な国王は全身をランガードに焼かれずぶ濡れで、息も絶え絶えな様子だ。


「まだ、やるか?」


俺は両腕を組んだまま、一歩も動かずに話しかける。


「ゼェ~ゼェ~、おめぇはアースウェイグの人間だろうがよぅ~、、、この戦いには何の関係もねぇじゃねぇか~ゼェ~、、」


「まだ、焼き足りねぇようだな」

右腕を前に出し、指を鳴らす姿勢を取る。


明らかに、怖気づいてガジェッド・ゲンツ海賊王は叫ぶ。

「わかった。わかったから勘弁してくれ」


「そんじゃ、何故ジャシスに喧嘩を売った?理由を話せ。」

俺は再び腕を組み、堂々と起立し話す。


海賊の怪物は喋りだす。

「ジャシスの船が、俺らの縄張りを勝手に通るからよぅ~」


「違うな。」


俺は一言で、海賊王の言葉を一刀両断する。そして隻眼の片目で獰猛に睨みつける。


顔から汗をかく、デカブツの海賊王。


「前からよう、ジャシスとは何度も衝突していたんだ、今回はジャシスの船が俺達の船を攻撃してきたから報復してやったのよぅ~」


「それも違う。」


「次に本当のことを言わなきゃ、この船ごとお前を焼く。」


俺は、ぎらつく目で(にら)みつける。


ダラダラと汗を顔中にかく、下品ででかい怪物王は本気で怯えていた、、、


「・・・・・・・」


俺は腕を組んだまま、話し出すのを黙って待つ。


「お、俺達だって、海賊を喜んでやってるわけじゃねぇんだ、出来ればやりたくねぇ~」


「イベリア海賊王国は島全部、岩で出来てるからよぅ~、の、農作物なんざ取れねぇ~」


「だ、だから、最近では海賊をやらずに魚を取って暮らしていたんだが、あれ以来(・・・・)さっぱり魚が取れねぇ~」


あれ以来とは、異世界怪物が攻め込んで来た時にこの世界全てが暗黒の闇に包まれた事だ。


「た、民を食わせるためにゃ、し、仕方なくよぅ~奪い取るしか俺達には残っていなかったんだ。」


俺は動かずに、ガジェッド・ゲンツ海賊王の話を聞いていた。


「俺はアースウェイグ帝国軍のランガードだ。」


「そういう時は、まず俺に相談しろ。簡単に兵隊を動かし他国に攻め入るんじゃねぇ、自国の民は救えても他国の民は殺しても良いとでも思ってんのか?」


「わかったか!」


俺の恫喝(どうかつ)平伏(へいふく)して、答えるイベリア海賊王国王。


「わ、わかった、、、わかりました。」


「そ、それじゃ、俺達はどうしたら、、、」


俺はデカブツが、既に戦う気勢を失っているのを感じると、命じる。


「まず、この湾から全ての兵を撤退させろ!」


「早くしろ!!」


再度、俺は怒鳴る。


茶色い髪を腰辺りまで、無造作に伸ばした、あまりきれい好きには見えない海賊王は部下に命令した。


「全員、引き上げだぁ~。上陸してる奴等も直ぐに引き戻させろぅ~」


丁度、そこに水ダルマになって押し流されてくる、イベリア海賊王国上陸部隊とジャシス王国の湾岸警備兵が流れてきた。


肌が透き通る様に白く、女性の様な体形の東海白竜王と共に、、、


ベルフェムは、ナグル港迄上陸してきた海賊とジャシス警備兵諸共、粘着質な水に包み連れてきて、港上で解放した。


バシャ~ン!!


身体を拘束していた、粘着質な水が(はじ)け兵士達は全員、港の地面に流れ落ちる。


バラバラとずぶ濡れの状態で、両軍入り乱れて、水団子から吐き出される。


この異常な状態の為、さすがに海の戦士達でも戦意を失い、打ちひしがれていた。


ほとんどの者が、立つことさえ間々ならず戦闘は終着した。


百隻を超える船団は、上陸したボロボロの部隊をなんとか回収して180度回頭してイベリア海賊王国に戻りだす。


俺はガレリア級帆船、イベリア海賊王国旗艦に乗ったまま黙って、立っていた。


そこにベルフェムが【水の真甦】を使って、飛翔し優雅に舞い降りてくる。


俺は真魂交神していた。


(大将、今大丈夫か?)


(大丈夫だけど、どうしたの?)


事情を説明して、今後の対策を話す。


(ちょっと、まってて、今横にアグシス国務長官がいるから聞いてみるよ)


(よろしく頼む)


ベルフェムもリューイも俺が誰と真魂交神しているか、想像が付いているようで、何も話しかけてこない。


ガジェッド・ゲンツ海賊王はその大きすぎる体を小さく、ずぶ濡れのまま潮らしく座り込んでいる。


(ランガード、いいかい?)


(ああ)


(ツバァイス・カーゼナル上級官僚が、部下を連れて行く事になったよ)


(あいつ、上級官僚試験に受かっていたのかよ)


(彼はとても優秀だよ、今ではアグシス長官の右腕だよ)


(そうなのかそれじゃ、わりぃが大将よろしく頼む)


(わかったよ、護衛はいるかな?)


(【火の民】を付けるから、それは大丈夫だ)


(了解、それじゃね)


ツバィス・カーゼナルとは、ランガードにとって二人目の貴族の友人であり、【ランガードの熱いヤキ】を入れられた、ガラリと変貌したランガードの友人である。


俺はガジェッド・ゲンツ海賊王にゆっくりと歩み寄る。

後ろから、ベルフェムとリューイが付き従う。


「海賊王、おめぇの国は人口は何人いる?」


長身のランガードが座り込んだイベリア国王を立ったまま見下ろし話す。


「民全部で15万人ほどだがよぅ~」


俺は見下ろしたまま更に聞く

「島半分で暮らす事は可能か?」


「イベリア島は、以外にでっかい岩だらけの島だからよぅ~半分でも問題はねぇが~」


「わかった、現在人口は島のどちら側に集中している?」


海賊王は何を聞いているのか全く分からず、聞かれた事を素直に答えた。


「王宮が島の西側にあってよぅ~だから西側周辺にほとんどの民が暮らしているゼェ~」


リューイはこの会話で、自らの主君が何をしようとしているか理解した。

(また、とんでもないこと考えてますね、、、)


俺はガジェッド・ゲンツ海賊王を見下ろし

「この船が着いたら、島の東側半分に住む住人をすぐに全員避難させろ」


「な、何をするつもりだぁ~」


「いいから、黙って言う事を聞け」俺は冷たく命令する。


「わ、わかった、、、」デカブツ王は渋々俺の命令を素直に聞き入れる。


俺は後ろを振り返り、ベルフェムに声を掛ける。

「おめぇの力が必要だ。」


「貸してくれるか?」


透明な水龍の王は一言


「無論」


と答えただけだった。


海賊大艦隊は、イベリア島に全隻帰港した。

海賊王はランガードの命令通り、島の東側に住む住人を西側に避難させた。


島と言っても15万人もの人間が暮らし、島の半分はほとんど使われていないという、岩ばかりのかなり大きな島国だ。


島に上陸すると、水平線より先に地平線が見えるほどの大きさだ。


俺とベルフェムとリューイは、3人で島の東側に移動する。


ガジェッド・ゲンツ海賊王には、この国の重要人物を集めるように言っておいた。


「リューイ、一応誰も残っていないか、確認してくれ」


「わかりました」と言い、直ぐに消え去る神速の戦士。


程も無く、リューイは突然現れる


「大丈夫です。避難は完了しています。」


俺は(うなず)き、ベルフェムに向かって


「聖剣を出してくれるか?」


ベルフェムはごちゃごちゃ言わず

「承知」

っと、一言答える。


ベルフェムが聖剣に問う。

(参られるがよい【水碧宝龍号すいへきほうりゅうごう】)


(応)聖剣が答える。


すると、ベルフェムは両腕を天に向かって、真上に伸ばす。

真上に伸ばした両手の先に、大量の水が湧き出て龍の形になる。


よく見ると、水龍の中に細く長い剣が、光り輝いていた。


水龍の中の剣を握り、聖剣を構えるベルフェムであった。


ランガードも聖剣誉武号牙炎(よぶごうがえん)を呼び出した。

銀色に光り輝く、2メートルを超える両刃の長剣は、轟々と炎を(まと)っていた。


ベルフェムも自分のやるべき事を理解し、集中して真甦を高め練り上げる。


高める 高める 高める


ランガードも同じだ、誉武号牙炎の炎は青く白く燃え盛っていた。


「行くぞ。」


「いつでも」


ランガードが吠える。

誉武号牙炎をイベリア国の東側、岩ばかりの大地に突き刺す。


「燃やせ!牙炎」


聖剣を突き刺した岩肌の地面から一気に炎が噴き出し、大地が燃えていく、燃えていく、燃えていく。


轟 轟 轟 轟


岩肌が燃えて、灰になる。


そこに、ベルフェムの水竜が空をも覆う大量の水を天空から水を振らし、灰になって飛び散る岩盤を全て水で閉じ込めていく。


ランガードが岩の大地を燃やし灰にして、ベルフェムが大量の水で閉じ込め、岩の大地を土の大地に変えていく。


イベリア島の東側半分全てを一気に、燃やし、燃やし、燃やし。


水で閉じ込め、閉じ込め、閉じ込め、土に返す。


二人の竜王の共同作業である。


見事なまでの効率性と破壊力に、リューイは明らかに呆れていた。

(もう、何を見たって驚きませんから、、、僕は、、、)


ほんの数時で、イベリア島の東側半分は岩肌の大地から土の大地へと入れ替わった。


「よしっ、次だ。」


俺は、王宮に向けて歩き出す。

直ぐに付き従う、ベルフェムとリューイだ。


王宮では、イベリア海賊王国の主要な人間が、集められていた。

そこにいる全員が、たった今見た光景を驚愕の眼差しで見つめていた。


島の東半分に物凄く大きな火柱がいくつもたち、その後怪物の様な水龍が天を舞、雨を降らし火を消し止め岩肌の大地を土の大地に変える様を、、、


俺達は王宮広場の中央まで歩いて行き、全員に聞こえるように大きな声で話し始める。


王宮広場と言っても、真ん中が(くぼ)みになっていて、周囲に丸く階段の様に人が座るようにできた、石作りの会場のような物だ。


その中央に進み出て宣言する。


「俺は、アースウェイグ帝国軍のランガードだ」


「この島の東側半分の大地は、農作物を作る畑を作るんだ。下準備は終わったから、後は畑を作り耕し種をまけ」


「そして船で、航路を作り、貿易をするんだ。」


「お前たち程、この海域に詳しい奴はいない。航路の安全を保障し警護する事で、通行税を取れ」


「海賊稼業は今日限り廃止だ。」


「質問があれば、手を挙げろ」


イベリア海賊国には似つかわしくない、体の線が細く清潔感のある男が手を挙げる。


「話せ」


俺は手を挙げた、男に向かって言う。


「私は、この国の金庫番をしてますキッシュ・ベグと言います。」


「ランガード閣下にお尋ねします。」


「全く新しい事を始めるのは、苦痛も伴います。それに方法や手段もどうしていいか私達では全くわかりません。」


「具体的にお教えいただけますでしょうか?」


俺はキッシュ・ベグと名乗る青年の方を向き


「詳しい事は俺もわからん。」


(はい?)リューイが心の中で叫ぶ。


「だから、わかる奴をアースウェイグ帝国から呼ぶ。」

「ツバァイス・カーゼナルと言う奴が来るから、詳細はそいつの指示に従え。」

「そして、生活が安定するまで、俺が個人的に面倒見てやる。」


「それでいいか」


キッシュ・ベグはイベリア海賊王国においては大変珍しく頭の良い青年の様だ。すぐさま返答してくる。


「わかりました。ツバァィス・カーゼナル様のご指示に従うと言う事は承知しましたが」


「生活が安定するまで、ランガード閣下が面倒を見て下さると言う事はいったいどのような事でありますか?」


俺はいつもと変わらないように太々(ふてぶて)しく答える。


「そのまんまの意味だ。」


キッシュ・ベグは目を見開き

「15万人の我等イベリアの民を何の関係もない、ランガード閣下が個人的に援助していただけると言う事ですか?」


「そうだ。」めんどくせぇなぁっと、思いながら答える。


しばし、沈黙が続く。


「・・・・・・・」


キッシュ・ベグが話し始める。

両膝を付き、両腕を交差させ胸にあわせる。

最高の礼式ある態度を取って


「ランガード閣下に心より感謝申し上げます。」


周囲にいた、海賊王国の主要な人員も皆、キッシュ・ベグに習う。両膝を付く。


「「「「感謝いたします!」」」」


俺は更にめんどくせぇなぁ~と思いながら


「海賊は廃業だから、国の名前は変えろよ」


ガジェッド・ゲンツ海賊王が、大きな体を揺さぶり話す。


「ランガード公国で、いいんじゃねかのぅ~」


キッシュ・ベグが直ぐに相槌(あいづち)を打つ。


「名案です。国王様」


「・・・・・」海賊王は続けて話す。


「俺みたいな、乱暴もんは(あたま)張るのによぅ~似合わないからよぅ~」


「ランガード公国初代公主はよぅ~、キッシュ・ベグでいいんじゃねぇかのぅ~皆のもんよぅ~」


ランガードが割って入る

「勝手に人の名前使って、おめぇは国王を辞めるって言うのか?」


ガジェッド・ゲンツ海賊王はランガードを見つめ

「ちゃんとした国を作るならよぅ~、俺みたいんじゃだめだぜぇ~頭の切れる奴がやるべきだぁ~」


「おめぇはどうすんだ?」

ランガードが同情するように、優しく聞く。


「俺はよぅ~ランガード公国の軍隊長にでも、なるぜぇ~戦うしか能がねぇからよぅ~」


「・・・お前が自分で、そう言うんならそれもいいだろう」


驚きを隠せずワタワタしているのは、当のキッシュ・ベグだ。いきなり公国の公主になれと言われても、、、


今まで国王と(かしず)いていたガジェッド・ゲンツ海賊王を部下にしろと言うのである。

驚くのも当然、飲み込むのに時間もかかるだろう、、、


俺はそんな事は気にせず、リューイに向かって

「必要なもんは、手配してやってくれ」


「いらねぇと思うが、一応ツバァイスの護衛も頼むわ」


「わかりました。族長」即答する優秀な副官は頭の中ですでに動き始めている。


(しかし、、、ランガード公国って、それでいいの?)


とは少し思う。


ベルフェムが軽やかに宣言する


「炎元郷の様な場所をもっと作る事に賛同したのは、南海紅竜王である。」


「その第一歩であるな。」


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