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BU・SI・N・SYO  作者: イ-401号
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白鬼丸

炎元郷は今日も平和で温暖な気候で過ごしやすい。

活火山の噴火口で暮らしているのだから、一年中温かく温暖なのである。


元々、アースウェイグ帝国南部に位置し、温暖な気候の上活火山がいくつも(そび)え立ち、天然の要塞(ようさい)と化している。


リスティアード皇帝陛下がアースウェイグ帝国南部は、炎元郷があるから大丈夫と依然(いぜん)話していたのは、そう言った地形の理と、【火の民】の存在のおかげである。


火山の噴火も温度も【火の民】ならではの能力で、自由に調節可能なのだ。



「お、リューイが来たな」

隻眼の紅蓮の覇者、ランガード・スセイン伯爵は妻のシュシィス・スセインに向かって話しかけた。


っと、突然族長の玄関にリューイが現われる。


「奥方様、おはようございます。」


片膝を付き、礼をする超速の紅蓮の戦士である。


シュスは優雅に微笑みリューイの方を向き

「リューイさんも、温泉をご利用なさったのですね」


(ほの)かに漂う、温泉の硫黄(いおう)(にお)いをかぎ取り氷結の女王は優し気に小さな口で(ささや)く。


「炎元郷の内部では、僕に感じ取れない事はほとんどありません。」

「ベルフェム様と族長が、温泉に行かれたのを感じたのでご一緒させていただきました。」


「まぁ、ベルフェム様もご一緒だったのですね」


口元に手を当て「私も、この御腹でなければご一緒したいところですわ」微笑みながら言う。


俺が即座に「そりゃ、駄目だろ」


言い切る、俺にシュスとリューイが冷たい視線を送るが、駄目なもんは駄目だろと思う、、、シュスは誇らしくとても美しいが、男勝(おとこまさ)りの一面を(あわ)せ持つ。


混浴など気にしないのだ。


そこに女性の様な(たたず)まいの東海白竜王が優美に玄関に現れる。


「誇り高き、氷結の女王にして奥方様にご挨拶(あいさつ)申し上げる。」


優雅に腰を折り、高く美しい響く声で話すベルフェム。


こいつほど、炎元郷に似合わない奴はいないと思いながらも、本人は結構、、、というかとても気に入っているようだ。


そもそも【水の真甦】の竜王がなんで、炎元郷にいんだよ!


っと、ひそかに思うのは俺だけか?


「では、皆さまお(そろ)いになった事ですし、行きましょうか?」

リューイが俺の思惑など無視して、音頭を取る。


臨月を迎える、シュスが「皆さまで、どちらに行かれるのです?」と聞いてくる。


リューイがシュシィス・スセインに向かって

「ベルフェム様の竜騎馬を選別に行くのです。」


シュスはまた、ややこしい顔で私も連れてってください!の雰囲気を出すが、おめぇは臨月迎えた妊婦だろおとなしくしてろよとは言えず。


「すぐ戻るからよ」


ッと言い、家を出る。


3人は横に並び、竜騎馬の放牧場まで歩いて行った。

行く先々で、挨拶されまくり、茶を飲んで行けだの、取れたての果実を食べて行けだのと足止めされて、普通なら15分も掛からずに行ける放牧場迄1時間以上かかってしまった。


ベルフェムは笑いながら、取れたてのリンゴをかじり


「やはり、ここはとても良いな。」


リューイが自慢げに「【火の民】は財政的にも(うるお)っており、戦闘部族で勇敢です。」


「生活に困らない」


「他者から守る力がある」


「誇りを持って生きている」


「この三つがあるから、炎元郷を幸福と感じられるのではないでしょうか?」


西海白竜王はいかにもその通りだとばかりにリンゴを(かぶ)り付く姿も素敵に見える、【水龍の牙】である。


「南海紅竜王も同じく思うだろうが、()では、なかなかこの様な場所はない。」


「もっと、広げていけたらいいな、この様な場所を、、、」


(同感だと俺も思った、、、こいつと意見が合うのは不本意だが、、、)


などと、話していたら竜騎馬の放牧場にやっと着いた。


「意外と広いものなのだな」

っと、素直に感想を漏らすベルフェムだ。


それはそうだ、多い時で5000頭余りの竜騎馬を育てているのである。

炎元郷全体のの3分の1は、放牧場になっている。


真っ先に、【阿修羅丸】が俺を見つけてドカドカ地鳴りと共に走り寄ってくる。

やはり、こいつのでかさは群を抜いている。

勇猛さでも、並ぶ者はいない。


俺は阿修羅丸の顔を撫でてやり、首に手を乗せながら放牧場の中に入り歩き出す。


「そんじゃ、行くべ。っでリューイ、ベルフェムにピッタリの竜騎馬ってのはどいつなんだ?」


「いつもは、奥の方にいるんです。」

リューイも話しながら、放牧場の柵を越え西海白竜王にも入る様手を差し伸べ(うなが)す。


放牧場の一番奥の、隅にその竜騎馬はいた。


一目見ただけで分かった。


なるほどと、、、


大きさは標準の竜騎馬よりひと回り大きいくらいだが、その竜騎馬の特徴は何といってもひと眼で見てわかる。


【色】であった。


全身白色の、竜騎馬なのである。


いわゆる【白変種】と言う奴だ。

色が真っ白な竜騎馬だ。頭から勇猛に伸びる(つの)迄、白い。


リューイが驚かせないように小声で話す。


「白変種の竜騎馬は、大変珍しく、僕でもめったに目にしません。」


「白変種の竜騎馬は神聖な神の使いとして(あが)められ、ほとんどが主を決めません。」


ベルフェムが興奮したように一言


「素晴らしい。」


「名は何と言うのかな?リューイ殿」


白鬼丸(びゃっきまる)と言います。」


ベルフェムは一歩二歩と、白鬼丸に近づいていく。


自然に俺と阿修羅丸とリューイは後ろに下がる。


ベルフェム全身から、白い(もや)の様な物が現われ付近一帯を包み込んでしまう。


水の真甦を(まと)い、具現化したのだ。

さすがは、竜王。真甦の具現化の量が半端ない。


ベルフェム周辺、300メートル位は白い靄の様な水蒸気に包まれる。


当然、白鬼丸も中に包まれる。


真甦の具現化のせいで、ベルフェムと白鬼丸の姿は全く見えない。


5分たち、変化はない。


俺がリューイに向かって「決まったみたいだぞ」と声を掛ける。


水蒸気の中から、白鬼丸に(またが)ったベルフェムが笑いながら走ってきた。


「あははははー、この子は素晴らしい。」


「私にピッタリだ。」


凄く嬉しそうに叫ぶ西海白竜王ベルフェム。


(こいつ、こんな顔もできんのかと、密かに思う)


リューイが素直に感想を述べる


「ベルフェム様が白鬼丸に騎乗されるお姿は神がかってますね」


真っ白な竜騎馬に、白く透明な肌に白い髪を肩まで伸ばしたベルフェムが騎乗する、魅姿(みすがた)はリューイの言うように神々しいまでに幻想的で、得も言われぬ美しさであった。


俺は阿修羅丸に(またが)り、リューイは世話丸(せわまる)に騎乗し、3人で炎元郷の中を闊歩(かっぽ)する。


行きかう、炎元郷の民全員が驚きの目で、ベルフェムと白鬼丸を見る。


白変種の竜騎馬が主を選ぶことが無いのは、炎元郷では当たり前の事としてされている。


それが、西海白竜王ベルフェムを主としている事の驚きと、素晴らしき姿に目をくぎ付けにする。


長身赤髪の紅蓮の覇者【火の民】族長ランガードが黒く巨大な阿修羅丸に乗り、横には真っすぐ伸びた白く長い髪を揺らしながら、白変種の白き竜騎馬白鬼丸に騎乗し横に並び、堂々と歩く姿は黙っていても、存在感がありすぎる。


俺の家の前まで行くと、シュスが外に出てゆったりとした服で、椅子に腰かけ迎えてくれた。

「まぁ、なんと素晴らしいお姿でございましょう。」

小さな口を両手で押さえて、驚きを表現していた。


ベルフェムが、シュスの前で停止し、後ろを振り返り声を掛ける


「この子は、とても素晴らしい。賢く私の気持ちを良く分かってくれる。」


「竜騎馬とは皆この様な生き物なのか?」


リューイが答える。

「そうです。心が通じ合える唯一無二の相棒ですので、ベルフェム様も白鬼丸を愛してあげて下さい。」


「わかった、私の生涯の友とする事を誓おう」

宣言する高く響く声は、竜王たる者の誓いの言葉であった。


グルルっと、答える白鬼丸であった。



「どうした?初瀬・燕(はつせ・つばめ)

俺が、いきなり問いかける。


寸間の後に焦げ臭い臭いと共に、紅蓮の5柱初瀬・燕(はつせ・つばめ)が現われ、右膝をつく。


「ジャシス王国 軍務長官ボストゥル・メイザー卿が、アースウェイグ帝国国境にて、族長との緊急会談を望んでおられると連絡がありました。」


俺が不思議そうに「ジャシス王国、、、」今更なんだ?と思考する。


以前、アースウェイグ帝国元高弟と共に帝国に対し反逆を企てた為、ランガードによってとても痛い【ケジメ】を受けた国だ。


「リューイどう思う?」俺は隻眼の目を優秀なる副官に向ける。


「今の話だけでは、判断できませんが、おそらくジャシス王国にとって、大きな脅威が迫っているのでしょう」


「っでなければ、族長を頼ってくるなど出来るはずもありません、あの一件がありますから」


一瞬で、それだけの事を読み取り報告してくる。


しかも、俺と話をしたいと言うのは、ジャシス王国の軍務長官だと言うのだから余程困った事になっているのだろうと想像できる。


「よし、このまま国境まで飛ぶぞ」


紅蓮の覇者が決断を下す。


そこに白き竜王が、口をはさむ


「私も同行して構わぬであろうか?」


「付いてきたきゃ、好きにすりゃいいだろ」

言い放つ、俺は阿修羅丸から降りて、リューイの肩を掴む。


妻、シュシィス・スセインに向かって片目しかない目でウィンクして

「ちょっくら行ってくらぁ」

っと、散歩にでも出かけるかのように声を掛ける。


「お気を付け下さいませ」


っと、優雅に余計な事は何も言わず、送り出してくる俺の誇り高き女王。


リューイが西海白竜王ベルフェムの方を向き


「僕にお(つか)まり下さい、国境までなら数分で行けます。」


「わかった」と、ベルフェムは言い白鬼丸より降り、リューイの左肩をそっと手を置く。


リューイが「初瀬・燕(はつせ・つばめ)、竜騎馬を頼みます。」


「それでは行きます。」


シュン!!


3人は一瞬で、炎元郷から消えた。


飛んでる最中にベルフェムが白く長い髪を風に流されながら高い声で話しかけてくる。


「リューイ殿はこの様な速度で、飛べるのだな」


リューイは飛びながら


「四海聖竜王様の血を輸血していただき、能力が上がりましたので、今は全速です。」


「間も無く、国境に到着です。」


国境に忽然と現れる、一種異様な2人とリューイ。

驚いたのは、国境警備していた警備兵もそうだが、そこにはジャシス王国軍務長官にしてボストゥル・メイザー卿が驚きの眼差しで、俺達を見つめていた。


会談を申し込んで、数分で目の前に本人が、白き偉人と共に現れるのだから驚くのも無理ないだろうが、真甦の無い普通のヒトにとっては驚愕の現実である。


ボストゥル・メイザー卿は俺の顔を見るなり叫んだ


「ラ、ランガード殿、どうかお助け下さい!!」

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