旅立ち、いざアースウェイグ帝国へ
メラの村に滞在して1ケ月が過ぎようとしていた。そして嵐・守護旅たちの時を迎える。そんな嵐に思いもかけない贈り物が村人から渡される。
清浄なるメラの村
俺がこの村に来てから1ヶ月が過ぎていた。
村長メムラの家で皆集まっていた。
治癒の女神アスラス神の聖なる巫女メイラ
元パブロ王国王室医術団団長ダンディグス医師
そして、【灼熱の紅傭兵】嵐・守護
村人たちが大勢集まっていた。
メムラ村長が皆を代表して言う
「嵐・守護殿には感謝しても感謝しきれない恩をいただきました。メラの村を代表してお礼申し上げある」
嵐は照れながら
「い、いや。俺はこういうのどうも苦手でよ、、、」
「そんな大層なこともしてねぇし、こっちこそいろいろ知らなかった事を教えてもらえて助かったちゅうか、、、」
嵐は動揺して言う。
メイラが毅然と言う
「そんなことありません。嵐さんは何度も何度も私達の命をそれこそ命がけで守って下さいました。」
「もっと、堂々となさって良いんですよ」
メイラが誇らしげに叫ぶ
嵐は居心地悪そうに
「いやいや、、ははは、、、」
こんな素直にほめられたことがなかった事もあるが、この村の人は皆、良い人ばかりで、、、
嵐が歩いていると優しく話しかけてくれたり、お礼を言われたり、時には食事に誘われたり、とにかくいい人揃いだ。
散々、すさんだ世を見てきた俺にはちっと眩しすぎるように感じた。
だから、こんな場を設けられるととても居づらく感じてしまう。
そう、俺は今日これからアースウェイグ帝国南方にあるといわれる【火の民】の部族を探す旅に出るところだった。
メムラ村長が村人に目配せする
「嵐・守護殿にはお礼と言っては何ですが、こちらを是非お持ち下さい。」
村人が箱を持ってきた。
その箱を開けてみると、深紅に塗られた、一揃いの立派な鎧だった。
メムラ村長が話し続ける
「この鎧は、聖なる祠の中で獲れる聖鉄にアスラス神のご加護を練り込んだ物です。」
メイラ「嵐さん、付けてみて下さい。」
嵐・守護はその鎧を着てびっくりした
「こりゃ、ものすごく軽いな、付けてるのを全く感じないぞ」
メイラが嬉しそうに言う
「素敵です。お似合いですよ」
「軽いのはアスラス神の御力です。そしてその鎧のすごいのは剣や槍などでは全く嵐さんを傷つけることはできないのですよ。魔力さえもある程度ははじき返します。」
「それに、その鎧には嵐さんの真甦の形を刻み込んであるので、他の方がもし使おうとしてもただ重い甲冑にしかなりません。」
嵐がたまげながら
「こんなすげぇもんがあるなら、あの化け物にも楽に勝てたんじゃねぇのか?」
メイラが答える
「私達、アスラス神の信徒は必要以上の争いや武器は持ちません。」
「最低限、槍だけは備えとして用意してありますが、それ以上の武力を持つことはアスラス神の教えに反します。」
「この鎧はあくまで嵐・守護さんだけに村を救っていただいたお礼の為に作った特別製です。」
嵐が心配そうに
「でもよ、こんなすげぇ武器が作れるってわかったらよ、この村が強国や賊に狙われるんじゃねぇのか?」
メイラ「それは、大丈夫ですよ。」
嵐「どうしてだ?」
メイラが誇らしげに説明する
「この村にはアスラス神の加護で結界がはられていて、いわば村全体が幽世と現世の狭間にあるのです。
「普通の人では、この村に来れる人はいないでしょう」
嵐が不思議そうに尋ねる
「でもよ、俺たちは鏃峠を抜けて来れたじゃねぇか」
メイラがにっこり微笑みながら
「それは、私がいたからですよ」
「私が異界のこの村につながる、道をつなげたからです。」
「嵐さんがやっつけた、山賊【髑髏の心臓】もこの村のごく近い場所にいましたが、この村に来たことは一度もありません。」
「ダンディグス医師が3年前に村に来れたのも、ダンディグス医師が大変優秀な白魔術医師であったという事とアスラス神御自らが道をおつなげになられたのです。」
ダンディグス医師が誇らしげに言う「わしゃ、大変優秀な医者じゃからの、女神さまもわしを迎え入れてくれたのじゃ」
メムラ村長が話に入ってくる
「おそらく、聖なる巫女のメイラに白魔術と医術を取得させるため、アスラス神はダンディグス医師をお招きになったのだと思います。」
「だからといって、まったく危険がないとは言えないのですが、あの毒を吐く魔物のように人の世とこの異界の狭間にはまれにああいった魔物がおり、襲ってきます。」
嵐が驚いて
「あの魔物は、人の世の生きもんじゃねぇのか?」
メムラ村長が優しい笑顔で返す。
「そうです。魔界に住む魔物です。」
嵐が感心して言う。
「世の中にゃ、まだまだ知らねぇことがあるんだな」
メイラが真剣なまなざしで嵐を見る
「嵐さんの炎は清浄なる赤い炎と魔を滅する青い炎、そして神をも消滅させる白い炎をお持ちです。」
「現世では魔王にもなれるお力です。ご自分の心を強く持ち正しき事に使われますように」
「もし不安に思ったり、判断に迷ったりしたときは私を思い浮かべて下さい」
「私はいつでもどこでもあなたの近くにおります。」
ダンディグス医師がにやにやしながら
「それは愛の告白じゃな」
「ち、違いますよ!!」
慌てて否定するメイラがかわいかった。
「私はアスラス神の聖なる巫女、心も体も御神に奉げた身です。」
俺はメイラの事を念じてみた。
メイラはすぐ反応してくれた。
(ありがとうございます。私は共に行く事は叶いませんが、あなたの中に私はおります。)
(ああ、俺の中にもメイラを感じる。)
そして旅たちの時がきた。
ダンディグス医師が話しかけてきた。
「お主、メイラになんと念じたのじゃ?」
嵐が面倒くさそうに睨む
「なんだよ、プライベートまで入り込むんじゃねぇよ爺さん」
ダンディグス医師はにやにやしながら
「年寄の好奇心ってやつじゃ」
嵐があっけらかんと
「ただのスケベじじぃだろうが」
メラの村の出口ではメムラ村長達が馬を用意して待っていてくれた。
俺はメムラ村長に話しかけた。
「いろいろ世話になっちまったな村長。」
村長は恐縮して
「こちらこそ、このご恩は末代まで忘れないでしょう」
「また、いつでもメラの村にお越しください。」
嵐がちょっと驚いて
「えっ、でもここにはなかなか来れねぇんじゃ、、」
メムラ村長が優しく
「あの鎧をまといお越しください。道はつながります。」
嵐
「そうか、ありがとうよ 近くに来たら必ず寄らせてもらうぜ」
「爺さんはどうすんだ?」
ダンディグス医師は珍しく真面目そうに
「まだ、毒が治ってない者もおるでの、しばらくここで病人の面倒見ながらゆっくりさせてもらうよ」
嵐がきっぱりと
「そんじゃ、いくわ」
メムラ村長が用意してくれた馬にひらりとまたがり皆に聞こえるよう大声で言う
「皆、達者でな!!」
「嵐・守護さんもお元気で!!」
「助けていただいてありがとうございました!」
「お気をつけて!」
「旅の無事をお祈りしております。」
村人たちはそれぞれに別れを惜しむように大声で叫んでいた。
俺はゆっくり馬を進めながら
「ボランティアじゃなかったな、、、」