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BU・SI・N・SYO  作者: イ-401号
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【灼熱の紅傭兵】その名は

ここはまだ、安楽な生活を送る時代とは正反対の世界。

力がなければ、己の守りたいものも守れず滅びるのみ。

剣と剣がぶつかりあい、大陸中の国が虎視眈々と他国を侵略して国力を増そうと狙う暴力と破壊の世。


まだ、神と人間 魔物と魔法、精霊と異界が身の回りにあり、身近い存在であった時代である。


その時代を大きく変えた、歴史に名を残すことになった一人の男の物語である。



挿絵(By みてみん)

「やばいぞ!」


体格が大きく、不揃いの鎧にかなり使い古した剣を持った、ひげずらのいかにも傭兵といった男が叫んだ。


そう ここは剣と剣、槍と槍が激しくぶつかりあう


戦場の真っただ中だ。


(ほこり)と砂塵が巻き上がり、死と血を求めるようにさまよい漂う。


使い慣れた大剣を持ち、髭面(ひげづら)の大男の隣には燃えるような長身で赤髪の強面顏だが、なんとも憎めない愛嬌(あいきょう)と不敵さと獰猛(どうもう)さを兼ね備えた男が、豪胆(ごうたん)に笑っていた。


身長195センチ、長身の引き締まった体躯に強烈な印象を持つそう双眼が印象的な若者は年の頃は22歳。


間違いなく、実年齢より上に見られ事が多そうな、不敵な態度と実戦をこなしてきた経験が歴戦の最強戦士のように見せる。


「こりゃいい稼ぎになるな」


双方の赤くぎらついた狂暴そうな目で粗々(あらあら)しく笑った。


俺だ。


名前は嵐・守護(らん・がーど)


人は俺の事を【灼熱の紅傭兵】なんて呼びやがる。


味方傭兵隊3千に対し敵方5千。


数で負けてる上、敵は大陸東端にあるルミニア王国の正規王国軍。


見方は寄せ集めの傭兵隊。


この国の地方領主様が自治領内で銀が発掘され、これ幸いと自国ルミニア王国からの独立戦争を起こしたのだ。


そして、そのバカ領主様に金で雇われたのが俺達、命を懸けて戦い稼ぐ


しょうもない職業軍人の傭兵部隊だ。


俺は6歳から戦場で戦っている。

戦った(いくさ)の数なんて覚えちゃいないが、今よりも不利な状況の戦は何度も経験している。


俺は負ける気が全くしなかった。非日常な連続経験の為せる技か、はたまた常軌を逸した野生のカンとでも言えばいいのだろうか


【灼熱の紅傭兵】は獰猛な目つきで笑った。


そう 笑ったのだ。


そして俺は周囲にいるガラの悪い傭兵どもに、大声で叫んだ


「てめぇら!!死にたくなかったら、俺の指示に従え」


敵が。


ルミニア正規軍がゆっくりと動き出した。


こちらが数で負けてる上、有象無象(うぞうむぞう)の傭兵隊の集まりなのが敵に完全に見破られたのだ。


数で優っているうえ、非力な寄せ集めとなれば、血に飢えた狼の如く剣と槍と盾をかざして、血と勝利を求めて押し寄せてくる。


敵は(やじり)のような形の突撃陣形を取って槍を前面に押し出して歩み寄ってくる。


歩兵隊は目をぎらつかせながら、狩りやすい獲物を見つけた狩猟者のように、ずん・ずん・ずん・こちらに向かってくる。


【灼熱の紅傭兵】がスラリとした長身を生かして、頭上から聞こえるように大声で再度叫ぶ。


「死にてぇのか、てめぇら!!」


髭面(ひげづら)の大男が、答えた。


「おめぇの指示に従えばこの状況をなんとかできるのかよ!」


「応!俺に任せりゃこの戦に生き残り、勝ちをもぎ取れるぜ!」


髭面(ひげづら)の大男が顔中に汗をかきながら答えた


「俺は、【灼熱の紅傭兵】にかけるぜ」


この髭面(ひげづら)の大男、傭兵の世界では相当顔が利くらしい。清潔感は全くと言ってないが、、、


あちらこちらで髭面(ひげづら)の大男に賛同する声が上がる。


敵ルミニア王国軍の先方が間近に迫ってくる。

ぎらついた目が笑いながら、剣と槍を前に押し出して俺たちに襲い掛かろうとしている。


傭兵全員にひきつった緊張感と絶望感が生まれる。


どどどど、、、


敵はもう目の前、こちらは陣形もへったくれもない有象無象だ。


その時


俺は叫んだ


「全員ちりじりになって全速で逃げろ!!」


傭兵隊の全員が一瞬何を言われた理解できず、固まった。


再度俺は叫ぶ

「早くしろ、とっと逃げろ!!って言ってんだよ。」


横にいた、髭面(ひげづら)の大男のケツを蹴り飛ばした。

「いけっ!!」


「う、うわぁ~」


「逃げろ、逃げろ」


「走れ、走れ」


有象無象の3千の傭兵がばらばらに戦場を逃げ出す。

見栄も誇りもへったくれもない


逃走なんてオシャレなものじゃない


剣を鎧を盾を投げ捨て、少しでも身軽になってちりじりに駆けだす。


それを見ていたルミニア王国軍兵士が笑い出した。


「剣も(ほこ)も交えず、なりふり構わず逃げ出すとはあきれはてたものよ」


「わっはははは」


「がははははは」


「金で雇われた傭兵なんぞ所詮、こんなものよな」


突然、ルミニア王国軍の進軍が止まった。


一人、ルミニア王国軍の前で待ち構える男がいた。


赤髪の長身嵐・守護(らん・がーど)である。幅広の大剣を抜き肩に担ぐように5千の正規軍人の前に一人立ちはだかる。


堂々と。


(らん)に気づいた王国軍の兵士が声をかける


「おまえは逃げないのか?今なら見逃してやるぜ」


(らん)は無視して言い放った


「この軍の隊長に伝えろ」


「今、降伏するなら、命だけは助けてやる」


ルミニア王国軍の兵士達が下卑(げび)た声で笑いだす。


「この小僧一人で、我ルミニア王国正規軍5千と戦う気らしいぞ」


「悪いことは言わん、家に帰ってミルクでも飲んでな」


「ここで逃げても誰もお前のことは悪く言わねえよ」


ゲラゲラ

下卑た笑い声が続く


【灼熱の紅傭兵】|嵐・守護《らん・がーど》が口元に獰猛で残酷そうなアルカイックな笑みを浮かべて言う


「残念ながら、交渉決裂だな」


その瞬間だった。


目前で起こった現実だが、とてもじゃないが信じられない客観的現象がルミニア戦士の前で、具象化される。



嵐・守護(らん・がーど)の全身から真っ赤な炎が沸き上がった。


ボウゥ!!


ルミニア王国軍の前衛にいた者達は何が起こったか理解できず、茫然としていた。


そして次の瞬間に現実とは思えない異常現象を起こし、(らん)は炎と共に消えた・・・



場所は代わりルミニア王国正規軍中央、この軍団の指揮を取る幕僚達が詰める指揮指令所。


この隊のいわば頭脳であり中心だ。


指揮官は40代半ばの恰幅(かっぷく)のある男だった。


「副官、現状を報告せよ」


「はっ、敵は武具を放り出しちりじりに敗走しました。」


「よしでは、このまま逆賊領主を成敗に進軍するぞ」


まさに、その時だった。


ルミニア王国正規軍の真っただ中、指揮官の目の前で驚愕な現象が起こった。


空中に赤い炎が【ボッ】といきなり燃え上がったのだ!!


そしてすぐにその炎は人の形に変化する。


敵の陣地真っただ中に突如、炎とともに現れたのは嵐・守護(らん・がーど)だった。


驚く指揮官をよそに、すぐさま(らん)は肩に担いだ剣を力任せに横になぎる。


BUUUUU~N!!


ルミニア王国軍指揮官の首を一刀のもとにはねる。


赤髪の火炎戦士は一言。


「勧告はしたぜ」


ルミニア王国正規軍の幕僚(ばくりょう)たちが、ありえない現実を目の当たりにして色めき立つ


「た、隊長!!」

「き、きさま何処から湧いて出た」


ルミニア王国正規軍幕僚達が剣を抜き放ちながら迫りくる。


(らん)は幕僚共をギラついた野獣の目で睨みつけた。

(らん)の大剣が赤く熱され、いきなり剣から炎がほとばしり、剣が豪炎を(まと)う。


豪・豪・豪


一瞬にしてルミニア王国軍幕僚達を灰塵(かいじん)と化し焼き払う。


そして現れた時と同じように一瞬で炎と化し、その場からかき消えた。


残されたのはルミニア王国軍指揮官の頭のない胴体のみであった。


指揮官と幕僚達を失った、ルミニア王国正規軍は統制が取れずバラバラな動きを始めた。


逃げ散った傭兵の中で、(らん)の隣にいた髭面(ひげづら)な大男の近くに突然、嵐・守護(らん・がーど)は現れた。


敵、ルミニア王国軍の指揮官の首を持って


「ルミニア王国軍はこのままほっといてもバラバラになるだろうが、金を稼ぎたいなら今だぜ」


髭面(ひげづら)大男は(らん)の持っているルミニア王国軍指揮官の首を見て、驚きを隠すこともせずに驚愕の目で俺を見つめる。


まっ、よくあることだ。


「お、おめぇ、それは敵の指揮官の首か!」


「ど、どうやって、打ち取ったんだ?」


無視して、俺はもう一度言う

「金が欲しいなら、今がチャンスだぞ」


大男も歴戦の傭兵だった。

くどくど聞かずすぐに行動に出た。


大声で周囲の仲間の傭兵に向かって(げき)を飛ばす。


「敵指揮官は打ち取った!!」


「敵軍に反撃をかますぞ」


逃げまどっていた、傭兵が一斉に逃走から逆撃に移った。

投げ捨てた、剣や槍を拾い、四方八方からルミニア王国正規軍を攻撃し始めた。


指揮官と幕僚を一瞬で失った、軍隊ほどもろいものはない。


ある一隊は前進しようとして、傭兵達に攻撃され逃げまどう一隊とぶつかりあい戦う前に混乱でパニックになる。


指揮するものがいないから、状況がわからない。

逃げるのか、進むのか分隊規模で分隊長が判断して動く。


ある分隊長は撤退しようとし、ある分隊長はどうしていいかわからず指示もできず、また違う分隊長は攻撃を命ずる。


混乱は増すばかりであった。


傭兵稼業を長くしているものほど勝どきに敏感な者はいないだろう。


先ほどまで形振り(なりふり)かまわず逃げまどっていた、傭兵達はまさに今、攻めの時と悟り、ルミニア王国軍に対して獰猛に牙をむいた。


それほどの時間もかからずルミニア王国軍はほぼ壊滅し、逃走を始めた。


傭兵どもが歓喜と勝利と血に酔いしれている。


はじめは軍隊とも呼べない、指揮官もいない金の為だけに集まった傭兵達は今、勝どきを挙げている。


すべて、燃えるような赤髪のまだ若い、しなるような長身を持った嵐・守護(らん・がーど)ただ一人の成果であった。


そして彼を皆、こう呼ぶ。


【灼熱の紅傭兵】と


俺は特別なことなど、何もしていない。


まったくいつもと変わらない、いつもの戦いだ。


俺のこの不思議な体のおかげで、この年まで生き延びている。


そしてこの不敵な青年が、いずれこの大陸の英雄となり救世主として統一して世界を変えていくのだった。


己の【正義】と【平和】を貫き通して、、、


今はまだ、一介の不思議な能力を持った、一人の青年で傭兵だった。

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