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第五話 さあ水浴びです

 

 森には馬車が通れるほどには整備された道があった。すなわちその道に従えば迷うことなく森の外に出られるということだ。


 だというのに、アリアは道の外に突き進んでいった。森の中へと足を踏み入れたのだ。


「あっあれ、どこいくの!?」


「街に行くにしても、ほら、この通り血塗れだと色々問題ですからね。どうもこの先に水場がありそうな音が聞こえますし、洗い流しにいくですよ」


「音? 何も聞こえないじゃん」


「では賭けるですよ。この先に水場があれば私の勝ち、なければちっこいのの勝ちということで。私が勝ったらなんでも一つ言うことを聞いてもらうですよ」


「むっ、だったらあたしが勝ったらそのちっこいのって呼び方やめにしてよねっ」


「では賭け成立ということで。くすくす☆」



 数十分後、小さな滝と水場がリアラーナたちの前に現れた。



「…………、むう」


「ちっこいの、どうしたですか?」


「むうーっ! これあれだ、ここに水場があるって知ってたヤツだ!!」


「音がすると言ったはずですよ」


「いや、でも、だってあたしには聞こえなかったもん!!」


「私にはしっかり聞こえたですよ」


「むう、むううーっ!!」


「まあここに小さな滝があることは知っていたんですが」


「結局知ってたんじゃん! 卑怯っ」


「はいはい。卑怯でもなんでもいいですが、私の勝ちは変わりないですよ」


 というわけで、とアリアは猫のような黄金の瞳を爛々と輝かせて──そのままリアラーナと手を繋いだまま滝が落ちる水場へと飛び込んだ。


「きゃっ、なっなん、ひあっ!? 冷たっ」


「私が勝ったので一緒に水浴びしてもらうですよ。くすくす☆ なんでも言うこと聞くという話でしたしね」


「水浴びっ、まあそれはいいんだけど、アリアさんっ、服濡れ、どうするの!?」


「…………、くすくす☆」


「こいつーっ! なんも考えてなかったなーっ!!」


「まあまあ、服なんて後で乾かせばいいんですよ。ついでに洗うこともできるですしね」


「もお! この人、本当、もお!!」


「牛のつもりですか? おっぱいないくせにです???」


「も、むうううーっ!! こいつ、こいつうーっ!!」


 ばしゃばしゃと濡れてしまったものは仕方ないと(それなりに高そうな)純白ドレスのままアリアへと飛びつくリアラーナ。



 ぽふん、と。

 それはもう豊満なお胸に受け止められた。



 漆黒のビキニアーマーからこぼれている柔らかな感触が真正面から飛びついたリアラーナの顔を覆ったのだ。


 衝撃吸収抜群のお胸であった。

 リアラーナにはない、柔らかさであった。


「む、むう……」


「くすくす☆ どうしてこうも世界は不公平なんでしょうね。持つ者と持たざる者をこうも残酷に仕分けするんですから」


「むううもおーっ!! このっこんなに、おっきなお胸があるならっ! 人にねだらずとも自分のもんを揉めばいいじゃんかよお!!」


「馬鹿ですね。人のものだからこそ、魅力的なんです。人のものだからこそ、奪いたいんじゃないですか」


「意味わかんないしっ、このっ、このーっ!」


 頭を埋めたまま、リアラーナの両手が下から伸びる。すくい上げるように憎たらしいほど柔らかなお胸を鷲掴みにしたのだ。


 それはもう熱烈に。

 熱い感情をぶつけるように。


「んっ、く……。随分と情熱的じゃないですか。ですけど、私どちらかと言わずともヤるほうが好みで、ヤられるのは好きじゃないんですよね」


「だからっ、意味わかんないんだよ、柔らかお化けーっ!!」


「くすくす☆ 与えるんじゃなくて奪うのが私ですし、知らないと言うなら何もしないですけど。……理解した日が命日だと覚悟しておくことですね」


 後半の囁きはリアラーナには届いていなかったようだ。届いていたならば、『お胸なんてーっ! 駄肉の塊なんだからーっ!! でもやっぱりおっきくなりたいな、こんにゃろーっ!!』などと叫びながら、アリアの胸を揉みまくったりはしなかっただろう。



 ーーー☆ーーー



 びちゃびちゃであった。

 全身まるっとずぶ濡れなリアラーナが水場から出た──次の瞬間、何かが起きた。


「……、?」


「とりあえず乾かさないとですよね。さて、適当な木の枝でも使って火種を用意するですよ」


 涼しい、という感覚がまずあった。

 視線を下に向けると生まれたままの肢体が見えた。


 そこでようやくドレスを剥ぎ取られたのだとリアラーナは気づくことができた。


「ひっ、ひあああああ!? ないっ、服ない、なんで!?」


「そりゃあ乾かすために脱がせたからですよ」


 後方、声のしたほうに振り返ると、そこではアリアが純白のドレスを雑に絞り、そこらの木の枝に引っ掛けてから、身につけている漆黒のマントを脱ぎ、ビキニアーマーにまで手をかけ──


「待って待って待ってーっ! なんで、なんでマントだけじゃなくてアーマーまで脱ごうとしてるの!? というかアーマー小さすぎない!? もっとちゃんと守ってよ!!」


「はいはい、です」


「雑に流された!? って、だーかーらー! 脱ぐなってーっ!!」


「ですけど、濡れたままだと気持ち悪いじゃないですか。全部脱いじゃったほうが手っ取り早く乾かせるですよ」


「手っ取り早さと引き換えに女の子として大事なもの捨てちゃってるんだよーっ! ここ外、いくら道から逸れた森の中とはいえ誰かが来る可能性はゼロじゃないから!! 裸見られたらどうするんだよーっ!!」


「別に見られても減るもんじゃないですし」


「減るよ! 尊厳とかなんとか色んなものがガリガリ削られるから!!」


「はぁ」


「ぜんっぜん納得してない感じ!?」


「まあ脱いじゃったものは仕方ないですし、乾くまで待つですよ」


「脱いじゃったって、うわあ! いつのまにかアーマーまで脱いで、全部見えっ、ふああ、やばい白い大きい凄いっ、じゃなくて! なんで脱いじゃってるんだよーっ! 機能性ガン無視のちっちゃな欠陥アーマーでも最低限は隠せていたのにーっ!!」


「む。こんなにも素晴らしい装備に対して随分な言い草ですね。いいですか、このビキニアーマーは急所を守りながらも身軽に動けるよう軽量に軽量を重ねた最高の鎧なんですよ」


「削りすぎてお胸すら収まってないじゃん、ばーか!!」


 単純な暴言が飛び出す有様であった。

 ちなみに自分もすっぽんぽんであることをリアラーナが思い出したのは、すっかりドレスが乾いた後であった。

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