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犬も歩けば異世界幻想 |▶  作者: 黒麦 雷
第一章 犬も歩けば異世界召喚
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第二十三話 とくべつなひと


「はいはい……今日は騎竜、ラプトルの乗り方を教えていくから……」


 外で声が聞えた。

 【ひと】の気配もする。

 まだねむいのに。



「うまく乗るにはまず仲良くなることからだ、こいつら意外と臆病だからな」


 【ごはんをくれる男のひと】の声が聞えた。

 【ひと】の気配がちかくなった。

 まだねむいのに。



「あ……マカナ、久しぶりだね」

 【やわらかそうな女の子】が【まかな】となかよく話をしている。


「えっと、あなたはフラワー? 仲良くしてね」

 【白金色の女の子】はもう【ふらわあ】に気にいられたようだ。


「うわぁ……すごいなこの牙は」

 なんだろう、この【白いふわふわ】……なんか気になる。


「あ、ヌィ君後ろっ」

「えっ?」


 かぷりっ

 む、【白いふわふわ】を確かめようとしたら逃げられた。


「うわぁぁっ」

 【白いふわふわ】が声をあげた。

 なんだ【ひと】だったのか。

 でもこんな【ひと】は初めてみた。



「何だこの白くてちっちゃいの」

「この仔はえっと……パレットね、こらっいたずらしちゃダメでしょ」

 む、【緑の女の子】に怒られた。

 頬っぺたをひっぱられた。

”きぃ(もう齧ろうとはしないからやめて)”



「クラリッサはラプトルの扱いがうまいんだね」

「そうなのかなぁ?こんなに近づくのは初めてだけどね?」

 んーやっぱり【白いふわふわ】が気になる。

 でも【だがぁ】の方へ行ってしまった。



 ねぇ、ちょっと。

「うわつ……またお前か」

 こっちを向いてと躰を押し付けたら【白いふわふわ】は声をあげた。


”きぃぃぃっ(ねぇ、【だがぁ】じゃなくてわたしと遊ぼうよ)”

 そう言ったのに【白いふわふわ】には通じていないみたい。



「ヌィ……どう?」

「んーもうちょっとかかりそう、平気だから先に行ってて」

 【白いふわふわ】を残して他の【ひと】は【らぷとる】たちと外へ出た。


「お前の所為で俺だけパートナーが決まらなかったらどうするんだよ」

”きぃっ(遊ぼうって言ってるのにどうしてきいてくれないのっ)”

 【白いふわふわ】から顔をそむける。



「パレットに気に入られたようだな、君のことが気になるみたいだぞ」

「ぇぇそうなの? さっきから邪魔ばかりしてきて」

 【ごはんをくれる男のひと】が【白いふわふわ】に言う。

 別に気に入ったわけじゃないよ、気になるけど。


「お前じゃ俺を乗せられないだろ?」

”きぃ……(うん……)”

 他の【らぷとる】は【ひと】をのせたり、

 他の【らぷとる】は荷物をひいたり、

 でもわたしにはちいさいからと言ってさせてくれない。いっつもそう。



「……まぁいいか、じゃぁえっと……パレット? 一緒に外に出よう」

”きぃぃぃっ!(やったぁぁっ!)”

 わたしは【白いふわふわ】といっしょに外にでた。






「はいはい……ではみんなそろそろ集まって」

 【銀色の女のひと】のまわりに集まる。


「ヌィ君の連れて来た仔はまだ小さいが……まぁ別に乗らなくても最初の講習には問題ないからいいだろう」


 その言葉を聞いて【白いふわふわ】はわたしの頭を撫でた。

 ──よろしくね。

 【白いふわふわ】の心が伝わってきた。

 わたしもはじめて他の【らぷとる】みたいに頼まれた。

 いや、他の【らぷとる】たちに頼むよりも丁寧に心で伝えてくれた。

 なんだかすごく嬉しい。



「みんな知っているとは思うが、ラプトルは手綱を付けて操る訳ではない、

 放出したマナによってこちらの意志を伝えるんだ」

 【銀色の女のひと】のマナが【まちぇっと】のあごを撫でた。

 その合図の通りに【まちぇっと】が周ると【ひとの子供たち】は声をあげた。


「ラプトルたちは訓練されているのでマナを伝えれば動いてくれる、最初は騎竜せず今みたいに周りを歩いてもらうことからはじめて」

「「「「はいっ」」」」



 【白金色の女の子】のマナが【ふらわぁ】のあごをやさしく撫でる。

 あんなに丁寧にお願いされて【ふらわぁ】もうれしいみたい。


 【茶色の女の子】はあわあわしてなかなか合図をださない。

 合図を待つ【ぐるか】もまだかなまだかなとそわそわしてる。


「ほらほら、こーやって回るんだよ」

 【やわらかそうな女の子】は自分で【まかな】の周りを回っている。


「じゃぁ、大きく皆の周りをまわって」

 Kyeeee

 【緑の女の子】はマナで合図を出さないで、キラキラしたのに頼んで伝えているみたい。

 【くりす】はキラキラから伝えられたことを聞いてくるりと周った。



「よぉし……ぇぃっ」

 【白いふわふわ】は私の前に手を出してるけど合図がまだこない。

”きぃ?(どうして合図を出さないの?)”

 わたしは首を傾げる。



「んー……ヌィ君はマナの放出がまだ上手く出来ていないんだろう……

 どれどれ私が手取り尻尾取り……教えよう……」


「wo……woooof……」

 【白いふわふわ】が【銀色の女のひと】を怖がってる。

”きぃぃっ!!(いぢめないでよ!!)”

 私は【白いふわふわ】をかばって前にでた。


 ──パレットありがとっ。

”きっ(いいよっ)”

 【白いふわふわ】がわたしの頭を撫でると心が伝わってきた。




「はいはい……じゃぁ柵に沿って一周回ろう」

 【ひとの子供たち】が【らぷとる】に乗って続いた。


「じゃぁパレット、俺たちも一緒に走ろうか」

”きぃっ(うんっ)”

 合図はなかったけど、わたしは【白いふわふわ】と一緒に並んで駆けた。



「ヌィもその仔と仲良くなれたんだね」

「最初から気に入られてたみたいだものね」

 【白金色の女の子】と【緑の女の子】に話しかけられて【白いふわふわ】が立ち止まる。


”きぃぃぃっ(ねぇ、なにしてるのっ)”

「わかったよパレット、もう少しスピードをあげようか」

 【白いふわふわ】は競争がしたいみたい。


”きっ(いいわ)”

 わたしは一気に駆けて一番前を走っていた【まちぇっと】を抜かした。


「よぉし待ってろ、すぐ追い越すぞっ」

 【白いふわふわ】も結構やるじゃない。

 それからわたしと【白いふわふわ】はいっしょにいっぱい駆けっこをした。






「今日はありがとう、また遊ぼうな」

 ──今日はありがとう、また遊ぼうな。

 【白いふわふわ】はわたしの頭を撫でながら顔を近づけてそう言った。


”きぃっ(いいわよ)”

 わたしは鼻先をちょこんと【白いふわふわ】にあてて印を付けた。

 それはわたしにも他の【らぷとる】と同じことをさせてくれたから。

 それはわたしにはじめてきちんと心を伝えてくれた【ひと】だから。


 【とくべつなひと】の印。



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