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犬も歩けば異世界幻想 |▶  作者: 黒麦 雷
第一章 犬も歩けば異世界召喚
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第二十二話 特別な魔法 2


「あらぁ、昨日はお休みだったから今日は朝から来たんですね。うんうん、とても良い心掛けですよぉ」

 今日は狩りには行かないで、わたしとヌィはギルドを訪ねた。ヌィの顔を見たユーリカがニコニコと出迎えてくれる。


「……えっと、すみませんっ、今日はソフィアに用事でっ」

「そう……そうなんですか……」

 あー……ユーリカはちょっとかわいそうになるくらいしょんぼりしちゃった。

 いつもヌィとの訓練を楽しみにしてるもの。



「ん?どうしたんだいアンジェ、私に何か用かい?」

「はい、今日はヌィが……」

「ついにデレた!?」

 わたしが声をかけた途端、ソフィアは急に大声を出してヌィに迫った。


「違いますっ」

「w……wooooof……wooof……」

 ヌィはやっぱりソフィアが苦手みたい、わ、わたしが守らないと。



「うーん、氷の魔法?私は聞いたことはないが……」

 ヌィが牛を凍らせた魔法、それはわたしの魔導書には書いてなかったし、ソフィアも知らないみたい。今日はそのことを聴きに来たんだけど。


「よし、まずは試してみようじゃないか、どれどれちょっと触らせて……」

「w……woooooof……うぅ……や、やめてぇ、うわぁ」

『来ないで!止まって止まって止まってぇ!!』

 ごめんヌィ、わたし間に合わなかった。


 その時、ひんやりとした空気が流れた。



「ん……確かにこれは魔法!?」

 あっソフィアの顔が戻った。これならヌィも平気かな……

「マナの流れが複雑でうまく放出できていない……これだと効果範囲はかなり狭いか」

 よかったぁ、ソフィアは正気に戻ったみたい。



「もう一度、そうだな……Led……氷をイメージして発動してみてくれないか?」

「う、うん、リォート?氷……アイス……」

『Led /氷/アイス』

 ぴきぴきって音がして、ヌィの手のひらに小さな氷が出来た。


「やったねっ、ヌィ!」

 今まで魔法は使えないけどずっと練習を続けてたヌィ、そのことを思うと嬉しくなってわたしはヌィに跳びついちゃった。

 褒められてうれしいからかな?ヌィは顔を赤くして恥ずかしそうにしてる。






『Grom/雷/サンダー』

 ヌィの手の平がバチバチと音をたててる。


『Udar molnii/落雷/サンダーボルト』

 バチッって音がして指と地面の間が光った。


「うわぁ……すごい……」

 びっくりした、これも魔導書には載ってない。初めて見る魔法。


「なんだい……それは……」 

「雷属性……なのかな?」

 ソフィアに言葉を教わって使った魔法だけど、やっぱりソフィアも知らないみたい。


「うぅむ……ヌィ君、これはやはり私が付きっ切りでもっと研究を」

「だめですっ」

 ヌィに迫るソフィアをさえぎる、怖がるからもうやめてあげて。

 それにヌィと一緒に居られないのはわたしイヤだもん。



 ▶▶|



「ヌィこっちこっちぃ」

 私は遅れて来たヌィの元に手を振りながら駆けつける。

 今日はレイチェルの家で焼肉パーティ。この前狩った牛のお肉がたっぷりある。


「はぃ、食べて食べて」

 とっておいた美味しそうなお肉を焼いてヌィへお皿ごと渡す。


「ありがとうアンジェ、いただきます……うまいっ!」

 ヌィが隣で美味しそうにお肉を頬張るのを見てるとなんでかうれしくなる。


「ほら、このお肉が柔らかくておいしいよ」

「これがあまりとれない貴重な部位なんです」

 わたしとレイチェルは二人がかりでヌィのお皿にどんどんお肉を盛る。

 ヌィが来てからお肉がさっきより美味しい、なにか味付けをしたのかな?



「レイチェル……」

「は、はい……」

 突然ヌィが真剣な顔でレイチェルを見つめた。


「革か肉がなくなったらまた牛を狩ろう、その為におれは強くなるっ」

「あ、はい……ふふふ」

「あはは……ヌィったら」

 レイチェルの笑顔につられてわたしも笑う。

 でも二人が見つめあってた時、なんか胸がぎゅぅってなった。どうしてだろう。




『Zamorozit'/凍結/フリーズ』

 冷たい空気が流れて、それはゆっくりと凍っていく。ヌィの魔法だ。


「わぁ……」

「不思議ですね……」

 わたしとレイチェルはその様子が面白くてじっと見つめていた。




「冷たくて……おいしいっ!」

 これはミルクシャーベットって言うみたい、一口でわたしはこのお菓子が好きになった。


「はぁ……シャリシャリと……口の中で溶けていくこの感じ……まるで新雪みたい」

 レイチェルもとても幸せそうに頬を緩ませて目をつむった。




「面白いね……でも私は甘い物は……そうだ、これで作れないかい?」

 レイチェルのお父さんが口の周りに泡を付けながら飲み物をヌィに渡した。


「んー……どうかなぁ?冷やすだけの方がいいんじゃない?」

『Ostyt'/冷却/クール』

 ガラスでできたジョッキの表面に小さな水滴がいくつも浮かび上がった、冷たそー。


「ぷはぁ……なんだこの喉越しは……」

 レイチェルのお父さんはゴクゴクと喉を鳴らして一度で飲み干した、なんだかとてもご機嫌でヌィにおかわりを頼んでる。



 わたしも魔法はたくさん覚えたけど、わたしの魔法で誰かをこんなに喜ばせられるかなぁ。

 魔法を覚えたばかりなのに、もうみんなをこんなに幸せにしてる。


 ヌィはすごいなぁ……



「どうしたのアンジェ?」

 ヌィが私の隣に戻って来た。


 今は魔法も使ってないのに、私はとても幸せな気分。



 ▶▶|


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