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私の思うこと、感じること

青き血を持つ者達。

作者: 黒井 陽斗

こんにちは黒井です、まずタイトルの青い血、この言葉を聞いて皆さんは何を思い浮かべますか?私はXのアルバム名(年齢がバレますね)と、ある海の生き物達が脳内に浮かんできます。


一般的に言えば貴族階級の人々が持つ、高貴な血統の例えで使われるのが主たるものではないでしょうか?なろうでもファンタジーや、歴史物等で貴族を示す言葉として、青い血とかブルーブラッドなんていう単語を目にする方も多いと思います。


今日はそんな青い血について、創作に役立ちそうな部分を中心にエッセイに纏めて見ようかと思います。


まずは貴族が青い血と言われる理由について、何故そう言われるのかをご存知無い方に理由から説明をしてみましょう。


これは貴族は平民と違い、あまり日に当たらず日焼けをしないから肌が白く、そのせいで静脈が透けて見える為だったりします。


これだけの説明ですと、献血や採血などで静脈から出た血液を見たことのある方なら「いや、皮膚から透けても血は赤いから赤でしょ?」と、思われるかもしれませんね。


確かに実際の静脈血は酸素濃度が低い状態、酸素を吐き出しているので鮮やかな赤ではなく、寝かせたワインのような色を暗い赤色をしていますから、皆さんの想像する色なのです。


なのにどうして静脈は青く見えるのか語りますと、人間の色の識別方法と光の波長が関係しているからなんですよ。


我々の認識する世界の色は、物体が反射した光を眼球で受光し脳内で識別して居るのですが、光というのは波長という物があります。


皆さんは昔、理科実験でプリズムに光を当てて、色んな色の光に分けた事がありませんか?あの実験の結果って、実は今回の青い血の謎を解く鍵になる実験だったんですよ。


先程お話した様に光というのは様々な波長を持っており、それによって我々の網膜が捉える色が変わってくるんですね。


あのプリズムの実験で見た様々な色彩をもつ光が透過して、波長によって分けられたのを我々の目が色として認識した結果でして、空気がそのプリズムの代わりをするから、普段見上げる空が太陽が高いと波長の短い青い光が空で拡散して青く見え、夕焼けで波長の長い赤い光が届いて赤く焼けるように見えるんです。


こうした普段の生活で何気なく見ている世界を構成する物質によって、光は自身の持つ波長でぶつかった物質に吸収されたり反射されているんですね。


ぶつかった物質の性質によって、多くの波長の光が吸収されると我々の目に暗く見えますし、逆に多くの光の波長が反射されると白く見えるのです。


この結果、肌の色が濃いと光が全体的に吸収され波長の短い青の光も多く吸収されて見えにくくなり、逆に肌が白くなると波長の短い青の光を反射しやすくなるので、結果として静脈が目立ちやすくなるんですね。


このような光の性質と目の仕組みがあるから、肌が白い悪役貴族に対して「何が青い血だ、貴族だって赤い血を流すじゃないか!」なんて、セリフを語るシーンなどが出来るわけです。


上記は物語として、奴隷だろうと貴族だろうと同じ人間であり、人権や命の平等さを伝えるシーンであり、表現的にも人間の色彩感覚からも正しい反応だったりします。


だけど皆さん「じゃあ体内から出た血が赤色じゃない生物って居ないの?」って、疑問に思う事ってありませんか?


そんな疑問を持った方々への答と、物語上で好きな色の血液を出してもいいんじゃない?なんて思う私からのメッセージを込めて、今回は青い血(緑もいます)を紹介してみようと思います。


実は青い血を持つ生き物って、皆さんの身の回りにも居たりするんですよ?まず身近にいる生き物として、子供の頃に良く見たダンゴムシだったりします。


学校や公園など片隅で石の下なんかでよく見た彼、実は血が赤ではなく青色だったんですよ、これは少し意外な発見では無いかと思います。


次に身近で皆さんも食べたことのある生き物で言ってみましょう、皆さんもよく料理で食べる食材のタコです、彼等は色々素敵な特性を持った生き物ですが、その血も特徴的な青い色をしてるんですね。


ちなみに私は油で揚げたようなカリカリたこ焼きより、昔ながらのたこ焼きの方が好みで出汁で頂く明石焼きは非常に好みですね、他にも刺し身やたこわさで日本酒を一杯やるのも堪らないと思います。


身近な食材シリーズはタコだけではないんじゃ、まだまだ続くんじゃよ。


お次は潮干狩りのメインターゲットの一つ、味噌汁に入れたり酒蒸しで頂くと美味しいアサリ、ゲソ唐揚げやイカ飯、イカソーメンにしても旨い食卓の優等生イカちゃん、ちょっと高級だけど、あの大きな爪が美味しくてビールと良く合うロブスターだって青い血を持ってます。


実は青い血と言うのは甲殻類や軟体動物、昆虫なんかで結構当たり前な血液色でして、地球上では青の血を持つ生き物って珍しいって程ではないんですよ。


ここで名前を挙げた動物たちが持つ血液がどうして青いのか、その謎を解く鍵は実は進化の中での選択に隠されていていました。


赤の血を持つ我々が酸素を運ぶ時に使うヘモグロビンの代わりに、青い血を持つ彼等はヘモシアニンという銅から出来た物質を使っているからなんですね。


この青い血の方が実はずっと古い血液色で、軟体動物や甲殻類が進化の系統樹に顔を出した頃は緑や青い血が当たり前であり、赤い血を持つ生物はずっと後になって生まれてきたと言われています。


でも、ここでお料理をする方なら「え~、私はイカとかタコを捌いたけど血が青く無かったぞ?」なんて疑問を感じる方は居ませんか?面白い話なんですが、実はそれで正解なのです。


そして彼等の持つヘモシアニンは酸素と結合していない時は、透明(に近い)色なんだそうで、地上に上がった酸欠の彼らの血は光を透過するから、結果として我々は彼等の青い血を見ることが出来なかったのです。


これじゃ「お前の血は何色だ!」なんて台詞を主人公がイカちゃんに言っても「ち、地上では透明です」と応えるべきなのか、それとも「海では青だし、地上じゃ酸欠で透明だよ、だから早く海に帰して……」と懇願するシーンを描くべきなのか悩んでしまいますね。


これだと折角ここまで読んでくださった皆さんも「じゃあ青い血を見れる生物は居ないの?」なんて疑問が出てくると思いますし、次は地上でも実際に青い血が見られる生き物を一つ語っていきましょう。


それは生きた化石としても有名な生き物カブトガニです。


日本では天然記念物に指定されており、私は生態も含めて考えると可愛いと思うのですが、あの独特なフォルムとひっくり返した時に見える沢山の足が、まるでエイリアンの様で苦手という方がいる生物です。


彼等は医療や製薬業界では有名な生き物でして、我々のリンパ液に相当する部分が薬品などが細菌汚染されていないかを調べる試薬として非常に優秀であり、その血液を集める献血工場がアメリカにあったりします。


彼等カブトガニの持つ、素晴らしい様々な特徴や、我々が普段から預かっている恩恵、薬品製造や医療現場では欠かすことが出来ない貢献を織り交ぜて色々詳しく語りますと、実はこれだけでエッセイ一本くらいのお話になります。


ですが今回は青い血のお話なので、彼等の興味深い生態は興味があるなら別で調べていただくことにして、その黄金の価値を持つ血液のお話を少しだけ語りましょう。


ちなみにナショナルジオグラフィック辺りで、その採血や利用価値について語る映像番組があったように思いますので、興味がある方は一度探してみるのもいいかもしれませんね。


あ、でも採血方法は割とエグいので、あの見た目が好きな人も嫌いな人も見る時は少しだけ覚悟をして見て下さいね。


このカブトガニの青い血ですが、まるでファンタジーのドラゴンの血とか人魚の血の様に有用性があるので、我々の健康と医療の為に捕まえられて採血工場で心臓に針を刺され、体内の30%程の血液を採血されています。


集められた血液はその有益性から、1リットル辺り150~200万円辺りでという高額で取引されます。


こうした血に纏わる現実のお話もあるのですから、皆さんが書くファンタジー小説でも高価で有益な血を持つ生き物というのが出てきて、冒険者がそれを狙うために頑張るなんて話があっても面白いと思いませんか?


ちなみに、これだけの血を失っても彼等が命を落とす事は無いように工夫されていますし、採血後はきちんと生まれ育った海に戻しているそうですが、それでも海に帰った後には10~30%位は命を失うそうです。


元々、彼等はそこまで機敏な動きが出来る生物では無いため、30%も失血すれば酸素が行き渡らない身体は益々動きが鈍くなりますから、普段なら取れる獲物が取れなかったり、捕食者から逃れられなくなり、採血後に命を落としてしまうそうです。


こうして人間に一方的に搾取され、新薬開発や医療発展に貢献して死んでいくカブトガニは可哀想じゃないのと、クジラがどうこう言うどっかのワンコ団体に言いたくはなりますが、彼等の様な献金乞食が資金源になりそうな製薬業界に喧嘩を売るとは思えません。


この一方的な搾取の現状は当分解決しないだろうし、多くの人の命を陰ながら救ってくれている彼等への感謝を忘れぬようにしたいなと感じますね。


現代のカブトガニさんの現状を考え、ちょっと話が暗くなりましたので、今度は青い血から離れて緑の血を語ってみましょう。


緑の血はヘモバナジンという、バナジウムから出来た物質が入った血液で、こちらはホヤなんかが持っている血液だったりします。


なので、ファンタジー生物的には水棲のスライムや、軟体の触手生物などが緑色の血を流したりするのもビジュアル的にはいいんじゃない?なんて考えてしまいますね。


緑の血には更に変わった血液の爬虫類もいますよ、名前はグリンツリートカゲと言いうジャングルに住むトカゲで、日本ではミドリチトカゲなんて呼ばれているとっても綺麗なトカゲです。


私の評価も爬虫類が苦手な人でなければ、緑の光沢を持つ鱗の美しさに同意してくれるんじゃないかな?なんて思いますよ。


このミドリチトカゲの血液が緑色をしているのは、血中ビリベルジン濃度の高さの影響だと言われていています。


ビリベルジンは体内を巡って劣化したヘモグロビンを肝臓で分解した時に出る老廃物であり、仮に彼等の血中にあるような濃度であれば、人間の場合なら皮膚や白目が黄色くなる黄疸として出て生命に危険を及ぼしますので、他のヘモグロビンを血中に持つ生物は腸から排出し、体内に捨てている物質なのですが、そんな老廃物を彼等は巧みに利用しているのではないかと考えられています。


その活用方法は彼等の住む地域性に関係しており、高温多湿なジャングルに生息するマラリア原虫などの恐ろしい寄生虫から、高い血中ビリベルジン濃度によって身を守っているのではと推測されているのです。


こうしたお話を利用して、ジャングルに住むリザードマンの部族の戦士が緑色の血を流して「やるな冒険者、だが負けん!」などと、血気盛んな姿を見せるシーンを入れると、格好良くてしかもファンタジーぽくて素敵だと思いますね。


最後に一つ、驚かせるようなことを言いますと実は人間も緑色の血を流すこともあるんですよ。


十年ほど前にでしたでしょうか、ヘモグロビンに硫黄が組み込まれて発生するスルファヘモグロビン血症という、非常に珍しい状態で緑の血になった事例があったりするんですよ。


私が読んだのは、確かBBC辺りが報道した内容の日本語訳だったと記憶しています。


内容としては偏頭痛のため、多量のスマトリプタンという薬を服用していた男性が手術を受け、その時に流れた血が緑色をしていたと、手術をした医師たちが発表したそうです。


緑色の血液を流した男性は、硫黄を含む薬を飲まなくなったら通常の赤色の血液に戻ったそうですので、こうした血で環境や種族の違いに纏わる話を書いてみるのは如何でしょうか?


例えば炭鉱に住むドワーフの血は硫黄によって緑色だとか、火山に住むドラゴンは硫黄を沢山含んだ緑色の血を流すとか、環境の違いで流れる血の色が違う事を物語に取り入れるのも面白いかもしれませんよ。


今回どうして私が色々と血の色を語ったのか、それは現代の地球でこんなに血の色があるのだから、ファンタジー生物的に色んな種族が様々な色の血を流してもええんやで!という事を語りたかったのです。


我々の住む地球に、こんなに色んな血を持つ生き物がいるんですから、創作であるファンタジー生物たちの持つ血が、絵の具をぶちまけたような赤一色と言うのはやはり少し寂しい気がしたからなんです。


『血液が生命が連綿と繋いできた命の証ならば、生物や種族によってその場に合った色の血液の生物が存在する方がファンタジーらしい雰囲気を感じられ、より不思議な世界を身近に感じる事が出来るだろう。』


そんな事を私は思い、今回こうして現実世界の不思議を語ってみようと作品にしました。


こんな私のおせっかいが皆様の想像の翼に力を与え、大きく力強く空想の空を舞う一助になると良いなと思いながら、今回はこの辺りで終わろうと思います。


また別の作品で貴方にお会いすることを私は楽しみにしています、ここまで読んで下さりありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 静脈が青く見えるから「青い血」と言われているのではないか、との話は分かりました。 でも貴族なら決闘とかで血を流したり、ローマ帝国の貴族の自殺はお風呂でのリスカですから、ヨーロッパの貴族…
[良い点] 貴族と虫などの青い血について知っていたけど良く書かれていて良かった。 更に良かったのは知らなかった緑の血について書かれていたこと。 無知を知るのは良い事です。 ありがとうございます。 [気…
[良い点] とてもためになるエッセイでした。 知識が豊富で、語りも優しく、それでいて論旨がきちんとしていて大変読みやすかったです。 ぜひとも今後の創作の参考にしたい内容でした。 ゴブリンにしろリザー…
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