表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不死身の魔法使いと10歳の見習い魔女  作者: 花咲壱
第3章 光と影と
26/50

ガルスの炎とクロエのゲート

「うおおおおおお!!」


 大男のガルスは、雄たけびを上げると全身に力を込めて魔力を解き放った。

 ガルスの体から巻き上がる炎は、あっという間に辺り一面を火の海にしていった。


「バカみたいな魔法ね。私の家を燃やさないでもらえるかしら!」


 クロエも負けじと魔法で対抗する。

 昨日ミレノアール達に使った魔法と同様に頭の上から大量の水が降り注いだ。


 それでもガルスの炎の魔力が優って火が消えることはない。

 攻撃魔法に特化していないクロエは焦りを感じた。


「マカロン! やっておしまい!」


 ドラゴンのマカロンは尻尾を振り回して攻撃をした。


―――― ドゴーン!!


 大きな音と共にマカロンの尻尾がガルスに直撃した。


 が、ガルスはその大きな体で尻尾を受け止めると、そのままマカロンを振り回し放り投げた。


「なんて馬鹿力なの!? マカロンを放り投げるなんて!」

「アルバノン王国の魔騎団を甘く見るなよ! さあ、焼き尽くされたくなかったらミレノアールを出せ!」


 ガルスは先ほどにも増して、体から出る炎の力を強めた。

 クロエは水の魔法で大きな盾を作り、自身を守ることで精一杯だ。


(マズいわね……小屋が焼き尽くされると、私の空間魔法も無くなってしまう。その前にお兄様には逃げてもらわないと……)

「ショコラ!」


 クロエはショコラを呼ぶと耳打ちをした。



―――― 一方その頃、ミレノアールは階段を下りた先にある書庫の扉の前にいた。


「ルーシーいるか? ちょっと上で厄介なことが起こってな。開けてくれないか?」

「ヤダよ。一人にしといて!」

「そういうわけにもいかないんだ。俺の個人的なことに、これ以上お前を巻き込みたくない。出来ればルーシー一人でここから逃げてくれないか?」


―――― ガチャ


 目の前にある扉の鍵が開く音がした。

 ミレノアールはゆっくりと扉を開けると俯いたルーシーがポツンと立っている。


「ルーシー聞いてくれ。少し前にクロエの結界に何者かが侵入したらしい。おそらくだが俺を捕まえにきた奴だと思う。もしそうだとしたらここが戦場になる可能性があるんだ。クロエは俺に逃げろと言ってくれたが、そういうわけにはいかない。俺も上に戻ってクロエと共に戦う」

「じゃあ私も戦う!」

「バカ言うな。遊びじゃないんだ。それにこの戦いにお前は関係ない」

「そんなことないよ。師匠を助けるのも弟子の役目でしょ!?」

「逆だバカ。弟子に助けられる師匠なんていないぞ」


 二人がそんな会話をしていると上の方からドゴーン!という大きな音がした。

 戦いの激しさから緊張感が増していく。


「クソッ! もしかしてもう……いいか、とにかく今、上は危ない。ルーシーは奥のゲートから逃げるんだ。クロエの魔法で他の場所に繋がっているらしいからな」

「師匠もいっしょに行こうよ!」

「俺はダメだ。クロエを置いて逃げるわけにはいかない」


「ミレノアール様、ルーシー様。」


 突然ミレノアールの背後から声がした。

 それはゴブリンでクロエの使い魔でもあるショコラだった。


「クロエ様は今アルバノン王国の魔法騎士団の者と戦っております。やはりミレノアール様を探しに来た者でした。相手は一人ですが苦戦を強いられています」


「魔法騎士団!? 王国直属の『魔力を持つ血統(ウィザーズ・ブラッド)』か。厄介な敵だな。早く助けにいかないと!」


 部屋を出ようとするミレノアールの前に、ショコラが立ちふさがった。


「いえ、クロエ様はミレノアール様に一刻も早くここから逃げることを望まれています。失礼ですが、今のミレノアール様の魔力では足手纏いになるのは必至です。相手の狙いがミレノアール様である以上、ここは引くのが得策であると考えます」

「だけど、このままじゃクロエが危ないんだろ? あいつは戦闘に向いてる魔女じゃない」

「もちろんそうですが、今クロエ様とミレノアール様が兄妹であるとバレることの方が危険です。ミレノアール様とルーシー様はどうか奥のゲートからお逃げくださいませ。それがクロエ様を助ける一番の方法だと思って、どうか……」


 ショコラは強い意思でミレノアールを諭した。


「……わかった。 ……だがクロエも危なくなったらすぐに逃げるように言ってくれ」


「はい。クロエ様は空間魔法の使い手でもありますので、お一人でしたらいつでも逃げることは出来ましょう。それともう一つ、クロエ様より伝言です。『お兄様、ルーシーを守ってあげて。私は、私の師匠を信じているから、お兄様がルーシーを、私の師匠ベルコ・リンドルに会わせてあげて欲しい』とのことです」


「クロエのやつ……わかった! また別の場所で落ち合おうと伝えてくれ」


 ミレノアールはショコラにそう言うと、ルーシーを抱えて奥のゲートへと向かった。


 そのゲートの向こうにはクロエの魔法によって異空間を介し、別の場所に繋がるという。

 ミレノアールはルーシーを抱えたまま、ゆっくりとゲートを開けると出口の見えない異空間へと一歩踏み出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ