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不死身の魔法使いと10歳の見習い魔女  作者: 花咲壱
第3章 光と影と
23/50

一枚の写真

 ミレノアールが起きると、リビングには既にクロエの姿があった。


「おはよう、お兄様。ずいぶんゆっくりなのね。もうお昼よ」


 クロエは優雅に昼食を食べながら兄を迎えた。

 時計を見ると昼の12時を過ぎていた。


「ああ、そんなに寝てたのか。なんせ100年ぶりにベッドで寝たからな。ぐっすり眠れたよ」

「何か食べるでしょ? ショコラに用意させるわ」

「おお、すまんな。ところでルーシーは?」

「ルーシーなら朝早く起きてたわよ。今は地下の書庫にいるわ。魔法に関する本が読みたいんですって」

「アハハッ。魔法に関する本か。魔女になりたくてしょうがないんだな」


 ミレノアールはルーシーのひたむきさに思わず笑みがこぼれた。


「嬉しそうね、お兄様。ただ……私の気がかりはお兄様よ。魔力が戻らないんでしょう?」


 クロエは心配そうに言った。


「ああ、思った以上にマズい。ここまで衰えているとはな……」

「まあ、お兄様の魔力が戻るまでここにいていいわよ/// 今アルバノン王国の連中に見つかったら、確実にまたあの牢獄に逆戻りよ」


 クロエは少し照れくさそうに言った。


「ありがとう、クロエ。ほんとは魔力が戻るまで、一人でどこか別の国にでも行こうかと考えていたんだけどな」

「『魔力を持つ血統(ウィザーズ・ブラッド)』が、他の国に行くには魔法協会と生まれた国の許可がいるのよ。各国の力の均衡を保つためにね。魔法協会はともかく、この国がお兄様に許可を与えるはずないでしょうに」

「そうだったな。すまん、忘れてた」

「だから、ここに居ていいって言ってるじゃない/// 私の空間魔法があれば、外からはただの小屋に見えても、中はこの通り広くて快適よ。まあ、私の魔力が無くなったりすれば異空間に放り出されるけど」

「怖いこと言うなよ。でも今はクロエに甘えさせてもらうとするよ」

「当然よ///」


 クロエは食後の紅茶を一気に飲み干した。


「それはいいとして、お兄様。今この国で起きていることを簡単に話しておくわ」

「そういえばジョヴァングも何やら意味深なことを言っていたな」

「100年前の戦争に勝ったこの国は大きく変わったわ。今では世界有数の魔法国家となったの」

「皮肉なものだな。あれほど『魔力を持つ血統(ウィザーズ・ブラッド)』を排除しようとしたこの国がか」

「ええ。あのジャバングという男、相当曲者(くせもの)よ。『魔力を持つ血統(ウィザーズ・ブラッド)』を守るために戦ったお兄様を悪者にして、自分だけが民衆のヒーローにでもなったつもりでいるわ」


 クロエは込みあげた怒りを抑えようと2杯目の紅茶に口を付けた。


「魔法協会も黙っちゃいないだろう」

「もちろんよ。100年前の戦いから遺恨は残ったまま。両者の関係は最悪。そして今また別の理由で争いが起きているのよ。10年程前からね」

「なんだって!? いったい何があったんだ?」


 ミレノアールは声を荒げた。


「それが詳しくは分からないのよ。水面下での小競り合いと言った感じかしら。魔法協会も幹部だけが知っていて、何かを隠しているみたいなの。でもどうやら魔法に関する『兵器』のようなモノの奪い合いだっていう噂を聞いたことがあるわ」

「兵器か…… 物騒な代物だな」

「そしてその争いには『スティレット家』が大きく関係しているらしいわ」

「スティレット家といや『魔力を持つ血統(ウィザーズ・ブラッド)』の名門一族じゃねーか。100年前の戦争でも完全に中立を保っていた平和主義者だろ」

「そう。それが一番不思議なのよ。だからその兵器とやらが何かわからないうちは、アルバノン王国にも魔法協会にも関わらない方がいいと思うの」

「うーん……確かにそうだな」


 二人がそんな会話をしていると ――ドドドドドドドドド―― と階段を駆け上がる音がした。

 ルーシーが地下の書庫から戻ってきたようだ。


「どうした、ルーシー? そんなに急いで」


 息を切らしたルーシーにミレノアールが尋ねた。


「こ、これ! クロエさんの机の上にあったんだけど……」


 ルーシーは、写真立てに飾られた一枚の写真を2人に見せた。

 その写真には二人の女性が記念撮影のように並んで写っている。

 1人はクロエだ。


「ああ、この人は前に話したベルコ・リン ―― 」

「リンドル先生だよ! この人、リンドル先生!」


 クロエの話を遮ってルーシーが被せるように言った。


「そうよ! この人は『ベルコ・リンドル』。私の師匠よ。ルーシーどうして知ってるの?」

「孤児院でずっといっしょだったから。私の先生だよ!」

「もしかしてルーシーの孤児院の先生って言うのが……クロエの師匠?」


 三人は予想外の繋がりにしばらく言葉を失った。

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