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不死身の魔法使いと10歳の見習い魔女  作者: 花咲壱
第2章 冒険のはじまり
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いつかの日々と馳せる思い

「で、どうする、ルーシー? 魔法学校へは行くのか?」

「うーん。どうしよー」


 ミレノアールの問いかけにルーシーは首を傾げた。


「言うとくが、魔法学校へ行っても、受からへんと思うでー。なんせわしのご主人様が、完全にルーシーはんの魔力を封印しとるさかいに」


 ジャックはあたかも自分の手柄でもあるかのように言った。


「防御魔法の件はジャックの仕業だとして、ファレルが見えたり会話出来たりするのはどういうことなんだ?」

()()()やのーて、()()()や! まあルーシーはんが悪魔を見れたりするのは、封印の隙間からこぼれた魔力のせいかもしれんな」

「何が『完全に魔力を封印してる』よ。だだ漏れしてんじゃないの」


 クロエが呆れたように言い放つ。


「ちゃうねん! 本来は完全にシャットアウトしとるはずや。せやけど昨日、今日とわしがルーシーはんを守るために防御魔法を使ったからな。一時的に封印が少しだけ弱まったっちゅーわけや」

「ふーん。(ニヤリ)……いいこと聞いた。てことはあなたが魔力を使えば使うほど封印の力も弱まるってことね」

「し、しまった! 誘導尋問や! クロエはん、今のは聞かんかったことにしてや」

「ダメよ。しっかり参考にさせてもらうわ。ふふっ」


 テーブルの上で暴れ回るジャックをよそに、クロエはしてやったりという顔をしている。


「とは言ってもよ、クロエ。ルーシーをわざと危険にさらすわけにはいかないだろう」

「そうやで! クロエはん。それはさすがに人の道理に反するっちゅー話やで!」

「あら? 私は魔女よ。人の道理が通じると思って?」


「クロエ……お前……」

「なんちゅー恐ろしい魔女や!」

「ギャー! ドSの魔女だー!」


 ミレノアール、ジャック、ルーシーはそれぞれにドン引きしている。


「……冗談よ。さすがの私でもそこまでしないわ」


(いや、あれ絶対本気だった……)と、一同は思うのであった。


「まあ、とにかく封印を解く鍵も少しは分かったし、一歩前進ってとこかしらね。私は少し疲れたから自分の部屋で休むわ。お兄様たちも適当にここを使っていいわよ。休むなら奥に空いている部屋があるし、シャワーも浴びれるわ。ショコラに言えば大抵のものは用意してくれるはずだから」


 クロエはそう言うと、持ってきた本を抱えて奥の部屋へと下がっていった。


「今後のこともあるが、ひとまず休むか。腹も減ったし。ルーシーもいろいろあって疲れたろう」

「うん。そうする。」


 二人は軽い食事をとって、それぞれ空いている部屋で休むことにした。


――――ミレノアールは部屋のベッドで横になった。


(このまま魔力が戻らなければ……あいつらと戦うことも出来ない。クソッ! どうしてあの頃の魔力が戻らないんだ)


「なあ、ファレル。どうすればあの頃のような力を取り戻せると思う?」

「んー、あの頃って100年前の戦争のときか?」

「ああ、そうだ。もう一度、あのときの魔力を取り戻したい。だが思った以上に100年という時間は長かったのかもしれない」

「ずいぶん弱気だな、ミレ。忘れたのか、かつては『最強』とうたわれた魔法使いだぞ。それにお前は『不死身』だ。時間は十分にある。焦らず修行でもすれば、そのうち戻るんじゃないのか」

「修行か……」

「ルーシーを見習ったらどうだ。とんでもない封印が自分に掛けられてると知った後も、落ち込むどころかワクワクしてやがったぜ。絶対、魔女になることを諦めないってな」

「ああ、ルーシーのあの前向きさには救われる。頼もしいやつだよ、()()のくせに」


 ミレノアールはそう言うと「ふふふ」と笑った。


―――― 隣の部屋ではルーシーもベッドに横になっていた


(オリビア元気にしてるかなー? 一人前の魔女になったら会いに行くって言ったけど、まだまだ、ずいぶん先になりそうだよ。そうだ、後で手紙を書こう)


(リンドル先生にも会いたいなー。何も言わずに出て来ちゃったけど、やっぱ怒ってるかなー? 私が生まれたときから、ずっと私を育ててくれた親代わりみたいな先生。魔法は全然見せてくれなかったけど、いつか私が魔女になったら喜んでくれるかな)


「ねえ、ジャック」

「なんや?」

「ジャックはずっと昔から私のそばにいてくれたね」

「当たり前や。喋ったり動いたり出来へんかったから大変やったで」

「ありがとう。……ずっと守っててくれて」


 ルーシーはジャックをギュッと抱きしめた。


「なんや、いきなり!? やっぱり封印のことショックだったんか?」

「ううん、そうじゃないの。もちろん封印のことは気になるけど……。魔女になるために孤児院を出て、良かったなって思うの。自分のことや魔法のことをいっぱい知ることが出来た。ジャックともお話し出来るようになったしね」

「せやな。わしは、ルーシーはんが赤ん坊の頃から見てるさかい、感慨深いもんもあるわ。しゃーない、ええこと教えたる。ここだけの話やけどな、ルーシーはんには、ものごっつい力があるんやで。そらもう─」


「………zzzzz」


「て寝とるんかい!」


 ルーシーはジャックを抱きしめたまま眠りについた。

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