謎の光と謎の声
「あわわわわわわっ」
完全にドラゴンにロックオンされてしまったルーシーは腰が抜けて動けない。
「まずいぞ、ルーシー。オレ様の炎だけじゃ守りきれない」
ドラゴンはルーシーに向けて炎を噴いた。
―――― ボワワワァァァーーーーッ!
ドラゴンの噴いた炎は、ファレルの炎を押しのけ、ついにはルーシーを包み込んだ。
「うわああああ!」
「ルー……シー……」
ミレノアールは必死に立ち上がろうとするが体に力が入らない。
(ルーシーを助けないと……)
しかし次の瞬間、ミレノアールは驚くべき光景を目の当たりにした。
ルーシーの体が眩い光に包まれ、ドラゴンの炎を弾いているのだ。
その光のシールドによってルーシーには一切炎は届かない。
おかげで無傷な様子のルーシーだが、当の本人は目を閉じて無反応なところをみると、どうやら気を失っているようだ。
「これはいったい……どういうこった?」
ファレルも目の前の状況に戸惑っている。
(覚醒しているかどうかも分からない幼い少女が、無意識で魔法を使えるなんて思えない。しかしこれはどう考えても防御魔法だ)
ミレノアールはそう考えながら反撃のチャンスを狙って魔力を溜めた。
それはドラゴンの硬い皮膚をも貫くため、ありったけの魔力を剣に込めるためだった。
(チャンスは一度切りだ。一撃で確実に仕留める!)
ドラゴンは未だルーシーに向けて炎を噴いているがそろそろ息切れしそうだ。
ミレノアールはドラゴンの首の後ろに狙いを定め、剣を持つ右手に力を込めた。
(今だ!!)
ミレノアールがドラゴンに飛びかかろうとした瞬間、どこからともなく若い女の声がした。
「そこまでだ! やめろ、マカロン!」
その声が聞こえるや否や、その場一帯に真上から大量の水が降り注いだ。
―――― ザッバァ~ン ――――
まるで大きな滝のように降り注いだその大量の水は、全員をずぶ濡れにするだけでなく、辺り一面を洪水のように水浸しにした。
戦う気を削がれたミレノアールは、びしょ濡れのまま呆然と立ち尽くしている。
「なに? なに? いったい何が起こったのー?」
気を失っていたルーシーも水を浴びせられたことにより目を覚ましたが、あっけにとられているようだ。
「誰だー!? こんなことをするやつは? 炎の悪魔に水を掛けるなんてオレ様を殺す気かー!」
水を浴びせられ小さくなったファレルは怒りが収まらないようだ。
そんな中でドラゴンだけはこの状況を理解したかのように意気消沈して俯いている。
「マカロン! むやみに人間を襲うなと言っているでしょう。例えそれが結界を破った魔法使いだとしてもよ!」
その声と共に空から人が降ってきた。
そしてその人影はドラゴンの頭の上に着地した。