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不死身の魔法使いと10歳の見習い魔女  作者: 花咲壱
第2章 冒険のはじまり
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旅立ちのとき

「もう行くの? ご飯食べたら眠くなっちゃった。朝まで寝ていい?」


 ルーシーは大きなあくびをした。いつもならもうとっくに寝てる時間だ。


「ダメだ。朝までここにいたら誰が来るかわからん。ただでさえ大きな爆発が起こったばかりだからな」


「そっかぁ~、リンドル先生が探しに来たら大変だもんね。それでどうやって行くの? やっぱり飛ぶんだよね?」


「ああ、もちろんだ。俺は魔法使いだからな。ホウキで飛ぶんだ」


「ホウキ持ってるの? 見せて、見せて!」


 ルーシーはワクワクが止まらない。


「まあちょっと待て。その前に」


 ミレノアールは右手の指を パチン! と鳴らした。

 すると ポワンッ! と目の前に、『(つるぎ)』が現れた。

 ミレノアールは、その剣を鞘から抜くと夜空に掲げ、月明かりに照らした。

 その剣は刀身が青く輝き、(つば)には色とりどりの宝石が散りばめられている。


「これは俺の剣だ。俺は『魔法使い』で『剣士』だからな。旅に出るときはこれを差してないと落ち着かないんだ」


 ミレノアールは自慢げに剣を見せると鞘に納めて自分の腰に差した。


「わあ! カッコイイ! どうやって出したの?」


「魔法使いや魔女ってのはな、魔法によって自分の体の中に自分が使う道具を仕舞っておけるんだ。そしてコレが……」


 もう一度指をパチン! と鳴らすと今度はホウキが現れた。

 このホウキもまた一般的に使われているものとは違い、柄は真鍮製で先端には宝石が埋め込まれている。

 とても綺麗なこのホウキは、魔法使いや魔女が空を飛ぶためだけに作られた特注品なのだ。


「わお! ホウキだ! これで空を飛ぶんだね?」


「そうだ。俺の後ろに(またが)れ。しっかり掴まってろよ!」


 ミレノアールが先にホウキに跨がると続いてルーシーがその後ろに跨がった。


「うぐぐぐぐー!」


 ミレノアールが気合いを入れると二人はフワッと宙に浮いた。

 そしてそのまま上空へと一気に浮かび上がった。


―――― ビューーーーーーン!!!


「うわっ! 飛んだー!! すごーい!」


「ちゃんと掴まってないと落ちるぞ!」


 久しぶりの魔法で安定しないホウキは、低速のまま左右にフラフラと揺れながら進んだ。


「うわぁぁぁ! ちょっと師匠ー! まっすぐ飛んでよ!」


「しょうがねぇだろ! 魔法もホウキも、使うの久しぶりなんだから!」


「久しぶり!? 王都からここまで飛んできたんじゃないの? それに凄い魔法使いなんでしょ!?」


 ルーシーはホウキから落ちないよう必死に掴まりながら聞いた。


「わりぃ、そういや言ってなかったか? 俺、魔法使うの100年ぶりなんだわ」


「ちょっと! 100年ぶりってどーゆーこと!? 意味わかんないよー。うわー!」


 半泣き状態のルーシーをよそに、ミレノアールは久しぶりのホウキの扱いに戸惑いながらも、しばらくの間そんな飛行が続いた。


「ふぅー……やっと思い出してきたぞ。どうだルーシー、夜風が気持ちいいだろ?」


 ミレノアールがようやくホウキの扱いに慣れた頃、今度は安定した飛行に緊張が解けたルーシーがウトウトし始めた。


「お、おい! 寝るなよ! 寝たら落ちるぞ! ファレル、ルーシーを起こしてくれ!」


「ダメだ。こりゃ完全に寝てやがる」


「ったく、しょーがねーやつだな」


 ミレノアールはそう言ってまた指をパチン! と鳴らすと今度は赤いマントを出した。

 そしてそのマントを背中に羽織るとルーシーが落ちないよう自分に括り付けた。


「ほんとはこんな使い方するマントじゃないんだが、まあ疲れてるみたいだし寝かしといてやるか。……孤児院出て、子供が一人で王都に向かおうなんて、いろいろ事情もありそうだしな」


「ハハッ。ルーシーに甘いのはオレ様だけじゃないようだな、ミレよ」


 そうしてルーシーを想う一人の魔法使いは、少女を起こさぬようゆっくりと夜空を飛んだ。

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