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ボクの異世界侵略記  作者: チカさん
第1章 幼少期編
9/93

1-08 幼児プレイ7 木工の秋冬

連続投稿継続中

 母の実家から帰ってきた翌日から俺の生活の一部に木工の時間が加わった。昨日帰ってきてから木を削りたいけどなんかないか聞くと、手伝い時の俺の包丁さばきを見て何か思ったのかもう使ってないナイフをくれた。やった、俺の文明レベルが上がった♪チャラララッチャゴホンゴホン。


 貰ったナイフは前は布を切るとき使っていたが、新しいのを手に入れてからずっと箱にしまってたものらしい。あまり強度がなさそうだから大事に使わなければ。母には出来るだけ柔らかい木を貰うことにしよう。


 まずは強度は度外視して構造と外観の模型を作ることにし、とりあえず概要をまとめてみた。

・目的はフーホーを細かくする。(対象は非乾燥)

・動力は手動で回転刃で対象を破砕する

・俺の身長でもできるようにする。オレノシンチョウハヒククハナイ。ユニバーサルデザインってやつだ

こんなところだ。いつか動力を水車とかにしてみたいが水利権の問題で厳しそうだ。俺は目立たずこっそりいろいろしたいんだ。(ぐへへ)


 ここで今日の木工?の時間は終わりだ。次は魔術の時間だ。今日は帰ってきたばかりだから他のみんなはいろいろ忙しく完全自習(放置)状態だから好きにやれる。(ぐへへ)


やっばいなーぐへへ楽しー。




 ひとまず1人遊びにいそしんだ俺は今日の魔術の題材として、貰ったばかりのナイフに関して行おうと思う。木を削るのも大変だから魔術で補助しながら行うのに越したことはない。ナイフに物体硬化か木に物体軟化を掛けれれば、いろいろ楽になるだろう。


 だがまずは、魔術を発動状態で動けるようにならないといけない。

「cma jsomrose cmimodtkkio spt」



硬化の魔術を発動しナイフに硬化の魔術を掛けてそれを動きながら維持する。


シュッ。シュッ。とりあえず振ってみた。


 魔術の発動が終わると、次は、

「cma jsomrose cmimodtkkio spt」


シュッ。シュタッ。あっ!やばい。


 魔術の発動が終わると、今の実験の考察だ。今まで行ってきた魔術を発動しながら行動することは、同じ動きを続けるだけなら何とかできるまではなった。でも違う行動を織り交ぜるだけで魔術の維持が難しくなる。もっと手持ちの魔術が増えれば違う方法が見つかるかもしれないけど、今はこれを訓練するしかない。




 数日が経ち、もうすぐ秋の伐採の日が近づいてきました。俺はあれから毎日フードプロセッサー(仮)(以下、fp(仮))の構造と工作方法を考えていた。その結果、このナイフで細かい工作は無理という事でまずは木の工作道具を作ることに決めた。強度は魔術で上げることができるならではの荒業だ。つまり、木ヅチ、木クギ、木ノミ、木カンナ、木ノコギリという具合だ。魔術様あなたのおかげで俺はやれます。


 今年も伐採が無事終わるのに越したことはありませんが、豊伐だったら丸太市が立つからぜひ今年もよろしくお願いします豊伐の神よ。後日聞いたところによると豊穣の女神トピンに祈るらしい。・・・・新しい神を創造しちゃった。(テヘッ)何て名前にしようかな?コトピン?


 そして今年も父はいない。どうやらこの時期は各地の兵も伐採時の護衛、運搬にかなりの人数を割くため、応援にあちこちに飛ばされるらしい。去年は北だったが今年は西だ。

「今年も丸太市、立つかな?」

「どうかしら、ここ10年くらいは比較的成功が多いから可能性はあるわ」

「そうなの?」

「ええそうよ。でも最近は領主様や貴族方に押さえられる木が多いらしいから市が立つほど集まるかは運次第ね」

「なんで領主様たちはそんなことしてるの?」

「町ではもうすぐ都市奪還作戦の決行が近いからって言うのが専らのうわさね。だから最近は塩も高くなったし、他の物も高くなってきてるわね」

母は家計も大変だわーっと言ってた。けっこう呑気な母だ。天然か?それにしてもあの奪還作戦か、奪還に成功すれば御の字、失敗すれば地獄、といったところか。


「作戦は成功しそうなの?」

「パパが言ってたことだけど、1つはほぼ間違いなく奪還できるって聞いてるわ」

「そうなの?」

「そうよ。実はその都市の半分はもう奪還済みなのよ」

興味深い話だな。

「奪還済みなんだ」

「半分よ半分。といってもこの都市よりだいぶ小さい都市で、2層しかない都市の第1層部分ね。広さ的には都市全体の3、4分の1って広さらしいわ」

「ぜんぜんだね」

「それはそうだけど、ここは大分調査も進んでるから何とかできる見通しができてるそうよ」

ふむふむ。1つは確実に奪還できる見通しはできてるっぽいな。


「それ以外の都市のことは聞いてない?」

「もちろん聞いたわ。交易団が王都からここまで来る途中で使っている都市はある程度調査と討伐が進んでるから、都市全体は奪還できるか分からないけれど、一部は奪還できるだろうって聞いたわ」

そういや交易団ってどうやって来てるんだと思ってはいたが、放棄された都市の一部を利用してるわけか。

「分かった。ありがと」

市が立てば運が良かったと思っておこう。




 市は立ちませんでした。今年の伐採も去年よりは少なかったらしいですが十分な豊伐で市が立っても不思議はないって話だったが、やっぱり貴族連中にかなりの量が納められたらしい。生活するだけなら伐採が大失敗しない限り大丈夫らしいが、やはり余裕を見て貯木しておきたいのが人情だ。


 木の伐採が終わるとすぐに冬に突入だ。今年は木にあまり余裕がないので子ども(俺とラック)部屋にずっといる余裕はない。各部屋に暖炉はあるが、冬の間はこの建物の1階に建物全体を温める暖炉?に常に火が入っていて各家庭に熱が送られる。もう少し温めたければ部屋の暖炉に火を入れて温度を調整する仕組みだ。この辺りのアパートメントはそういう仕組みを取っているから基本は石材かレンガ建築となっているというわけだ。

これは由々しき事態だ。日中は魔術の練習でごにょごにょよく言ってるので、それを家族に聞かれちまう。もちろん部屋の壁が薄いから普段からもぼそぼそとは聞こえてるだろうが、それでもなんて羞恥プレイだ。俺を悶え殺したいのかこの世界は!


考えた結果、俺は封印しました。魔術を?いえ、羞恥心です。しゅうちしん?温故知新の仲間ですか?




 本格的に冬になりました。毎年のことながら雪が降っています。そして残念なことながら冬の間は木工も魔術の時間も大幅に減る事態となってしまいました。俺も3歳になったという事で冬の間のお手伝いが追加されました。

 俺の目の前には母が普段糸を紡ぐときに使っている道具がある。俺に割り当てられた手伝いは糸を紡ぐことなのか?

「ボク糸を紡いだことないよ」

「もちろん分かってるわ。ウィルにはその道具を作ってもらおうと思ってるの。最近木を切っていろいろしてるようだから、ちょうどいいと思ってね」

目の前に置かれたその道具を手に取って眺めてみた。

これってあれだよな。前世のテレビで見たことがある道具に似ている。たしか・・スピンなんとかかロータリーなんとかという道具だったはずだ。母が糸を紡ぐのを見て、効率わるっとか思ってたんだよな。まあ最初の木工の題材はこれでもいいかもしれん。

「これを作ればいいの?」

「そうよ。今年はあまり木に余裕はないけど、それを作るぐらいはあるわ。春にはそれを売り出すからいくつか作ってみてね」

そういう事か。でもこれって消耗品じゃないよな、作っても売れるのか?

「これ作っても売れるの?」

「完売するかは分からないけど売れると思うわ。大体は夫に作ってもらうか、ちゃんとしたものを職人から買うしかないの。でも夫がいなかったり、初めての練習用とかだったらいけると思うの」

母のカンか。言われてみれば、縁日とかで普段は買わないようなものもつい買っちまうこととかあるよな。そう思えばいけそうな気がする。

「分かった。いくつか作ってみるよ」

「おねがいね」

というと、母は自分の仕事に戻っていった。

さて、まずは見本に忠実に作ろうか。そのあと、時間が許せば木工と魔術の練習だ。


 ちょうど良さげなサイズの木を見つけて、使っていいか母に聞いてから、


ザッ、ザッ、ザッ。


 丸太の輪切りって難しいな、木ノコギリはまだできてないし。

最近の練習の成果が出てきていて腕だけなら魔術を発動しながらけっこう細かく動かすことができるようになってきている。その結果木ヅチ、木ナイフ、木キリ、木ノミが完成している。今は木ナイフを大量生産して、使い捨て感覚で使っていろいろやってる。


 太枝の輪切り、真ん中に穴をあけ、箸ぐらいの太さの棒の端を細工してそれを穴にさーす。・・プルプル、固い。さーす。プルプル。パキッ!


数回細い棒をやっちまったが何とか1個作れた。後は回してみてバランスの調整だ。


 母が仕事してるところへ行き、

「ママ、糸の材料ちょっとくれない?」

「あら、もうできたの?」

「あと、バランスの調整とかしたいからまだできてないよ」

「そう。じゃあこれを使って」

糸になる前のワタを手に入れた。

「これ何から取れるの?」

俺が着ている服は何から作られているのかな?植物?動物?

「これは『ポフン』と呼ばれてる植物から取れるのよ」

この話から綿の類だと思われる。

「なるほど植物か。じゃあ貰っていくよ」


さて、調整開始だ。


くるくるくる~。

シュッ、シュッ




 調整前に比べて、少しはましになったが及第点には程遠い。今欲しいのはヤスリだ。早速木ヤスリを作らねば。


 そんなことを思っているうちに、ラックが帰ってきて今日の作業はお開きになった。夕食を食べて少ししたら日も沈むしね。


「どうウィル、調整は上手く行ってる?」

夕食に行く前に母が聞いてきた。

「びみょう。細部はあしたにするつもり」

「そおう。終わったらみせてね」

「わかった」

明日も気合入れて作業しないとな。




 次の日、まずはヤスリ作りです。


シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュッ。


 完成した。細い板材をナイフで切って作ったがもうヤスリは作りたくない。ヤスリ職人さん、あんたってスゲーよ。完成したヤスリは途中から集中が切れたから目が粗すぎてたぶん砥げないが最初の方は中々の目だ。早速削るか。


 結果を言うと削れませんでした。削れなくてへこむだけだった。・・・・せっかく作ったのに・・


 誰か金属のやすりを、紙やすりを僕に下さい。・・・はぁ、ない物ねだりしても仕方がない。できるだけ慎重にナイフで削るしかないか。


くーるくる、シュッ。くるくる、シュッ。



こんなもんかな。さて完成品を見せに行こうか。

「ママ、一応完成したよ。見てみて」

「じゃあ見せてもらいましょうか」

母は仕事を一旦止め、俺が製作したものを使って糸を紡いでみて検証していた。

検証中・・・しばらくおまちください。now_loading.



「うん。これなら十分売り物になるわね」

ほっ。ドキドキのローディング時間も終わった。できるだけ見本に似せて作ったつもりだけど、他の人が見たらどう評価されるか分かんなかったんだよな。

「これをいくつか作ればいいんだね」

「そうね。でも大きさはちょっとずつ変えて作ってみて」

「わかった」



さて、量産開始だ。


 今日はそのあと1つ作れた。調整は明日に回すつもりだ。


 それから数日、さらに増産し続けた結果、今現在調整済みの数は10個ほどだが、調整に思いのほか時間がかかるためもう10個ほど未調整で放置している。俺の木工技術も結構上がったが、それ以上に上がったのが魔術の腕と魔力量だ。木製工具で木を削るには魔術の補助が不可欠であり、太枝の輪切りと丸棒の製作にかなり時間を取られていた。1個作るのに何回も魔術を行使しながら作業したため、2日目の魔力残量は奴の餌食になる2、3歩手前と言ったところだった。

その次の日はいろいろ無駄な(った)行動もせずに1個目を作った通りに模倣し、調整も終えたときには魔力に余裕があった。この余裕ができた魔力を使って俺は、使用する道具の再製作ができたため、さらに効率よく作り上げることが可能となった。

 現在の俺の純木製工具シリーズはバージョンアップを果たし、並みの木如きでは木こぼれひとつしない出来となっている。そろそろ石とか金属もやれるんじゃないかと自賛している。


 さて、今日はこれぐらいしておこうと思い、木くずを集め暖炉のそばへ運搬中だ。運搬途中に部屋で作業をしていた母が、

「ねぇウィル、一体いくつできたの?5つ目までは見たけど、それ以上は全部任せたから教えてくれる?」

別に隠すことじゃないからな。

「ママに見せたのも入れて調整済みが全部で10個」

「あれからもうそんなに作ったの。私のあげたナイフでよくそんな早く作れたわね。折れてない?ちゃんと砥いで使ってる?」

貰ったナイフ、もう使ってないんだよな。無理に力入れたら折れそうだったから、最初に木のナイフを作ったきりそれで代用し続けてたからな。今じゃバージョンアップを果たしたナイフの方が絶対に貰ったナイフより使い勝手がいいし。・・さてここはどう言おうかな?

「えーと、折れてはないよ」

「そう、それならいいわ。じゃあ今作ってるのが終わったら違う物を作ってみましょうか。あれは10個もあれば十分だと思うわ」

あっれ○ー。未調整がまだ11個あるんだけど、そいつらどうしようか・・・

「分かったー。次はなにをつくればいいのー?」

「あわてないで、今のが終わってからよ。ウィルは木を加工するの上手みたいだから、次もよろしくね」

俺の頭を撫でてくれた。


 部屋に戻って俺は工具箱(故おもちゃ箱)に入った工具シリーズを改めて見て思った。やっちゃったかなー。さっきは咄嗟に隠したけど、これ改めて見ると前世で見たことあるだけでこっちではまだ見てないやつもあるんだよなー。近くに石材の職人はいるから金ヅチとノミは見た。ノミは石用と形は違うがいろいろ試しているうちに出来たで通そう。ナイフとキリも大丈夫そうだ。だが俺が作ろうと思っていたカンナとノコギリはやばい。たぶん形状が違う。石にはカンナやノコギリは使わないからさっきの言い訳も使えないし、話に聞いただけで作れるのもかなりおかしいし、ここはどうしても実物を見てこないといけない。はぁ、前世知識便利だけどなんで俺はこうもぬけてるのかな。



 これからどうするかな。工具のことをこのまま秘密にするかばらすべきか。

ばらすか。そして堂々とカンナとかノコギリとかを聞ければいけそうな気がする。fp(仮)もその延長で話を持っていけば何とかいけるだろう。


 夕食が終わり、一家(父抜き)団欒中にこの話を投下する。

「ねぇママ、これ見て。作ったの」

まずはジャブとしてナイフとキリだ。実質あのコマみたいのを作ったときに使った道具だ。

「これは?・・・ナイフとキリね。よくできてるわね。もしかしてキリも欲しいの?」

そう解釈したか

「ううん。これを使ってあれを作ったの」

「うん?でもこれ木で作ってるわよね」

「うん。でも木を削るとき硬化の魔術で補助すれば何とかなるんだ」

「そうやって作ってたの?」

「うん」

ここで母が何か考え込んでる。


「もうそんな魔術技能を覚えてるなんて、誰かに教わったの?」

「ううん」

「自分で思いついてなおかつ習得するなんて、やっぱりウィルには魔術の才能があるわね」

なんか道具から魔術の話に移ったんだが


「ウィル。私は魔学何級って言ってたか覚えてる?」

なんでここで資格試験のこと?

「たしか5級って言ってたと思う」

「そうよ。そしてウィルももうすでにその5級に足を踏み入れているわ。魔術の発動中に行動をする高等技能、魔闘技と呼ばれているものよ」

「魔闘技・・」


「そう。ウィルにこんなに才能があるなんて、早々に私の魔術をすべてを教えておいた方が良さそうね」

ふふふ。って怖いは、そんなキャラじゃねぇだろ。・・・なんか道具の話からこんな話になったけど問題はなさそうだな。


「それで聞きたいことがあるんだけど」

「んーなぁにー?」

「木を輪切りにするのナイフじゃかなり難しかったんだけどなんかそれ用の道具とない?作ろうと思ってるんだけど」

「それはノコギリね。刃がギザギザしてるのよ」

それは知ってる。もっと形の詳細を教えてくれ。

「どんな形でどうやって使うの?」

母はジェスチャーを交えいろいろ教えて貰った結果、そんなに気にすることはなかったようだ。用途別でいろいろなノコギリがあるそうで、多少変な形でも許容されそうだ。そこに、

「おいウィル、それちょっと見せてくれ」

そう言うと、ラックはひったくるようにナイフとキリを持ってった。次はラックの番か。

「・・・ふーん、たしかによくできてやがる。それにしてもお前はこういうのが得意なのか?いつも1人で木削ったり魔術とかなんかいろいろしてるようだけど」

ボッチ宣言をいただきました。

「否定はできません」

どっちに対してもな。


「へー。じゃあなんかいる物あったら頼んでいいか?」

「確約はできません」


「ふーん。まあいいや」

いいのか、ラックの話はここで何事もなく終わった。


俺の心配は今のところ杞憂のようだ。




 次の日、2個ほど調整して、未調整の残りは分解して破棄した。そして、

「ママ、残りのも調整終わったよ」

「ごくろうさま。次に何を作ってもらおうか特に考えてなかったんだけど、何か作りたい物とかない?」

おいおい、単純に作りすぎだから止められただけかよ。

「うーん、いきなり言われても。昨日言ってた魔術を教えてくれるって話は?」

「ごめんなさい。春までにいろいろしておかないといけないから冬は忙しいの、だから春まで待ってね」

「むー、・・わかったよ。でも特に作りたいものもないしどうしたらいい?」

「どうしようかしらぁ。桶とか家具はそんなに木の余裕もないし無理なのよねぇ」

木をあまり使わなくていい物か。なんかあるか?

・ミニチュア。単純に小さな家具を作りジオラマなんてどうだろうか?・・完全に趣味の世界だ

・ボタン。今の流行は知らないが、いけそうな気がする

・彫刻。デザインセンスなし流行知らずの俺には厳しい

ミニチュアと彫刻はボツだな、完全に嗜好品だ。ボタンを推そう。

「ボタンなんてどう?」

「あらいいわね、よく糸が切れて失くすし、でも作っている人それなりにいるから売り物になるかはウィルの腕次第といったところね」



 ボタンを作ることになった俺はこの都市で使われているボタンについて考えている。ボタンがついているのは外套とマントのみで、下着や他の服には基本的についていない。外套やマントについているボタンは名称は知らないが厚手のコートとかについてる紐に引っかけて止めるタイプのボタンだ。前世では年中ワイシャツかファスナー系ばかりだったからボタンといえば穴が2つか4つのタイプばかりだった俺にはあまりなじみのないボタンだ。


 早速製作開始だ。前に作った木の板を取り出し適当な大きさに割って、そしてそれも適当な長さにカットして穴を2つあけ、まずは細長いタルの形状のボタンを作った。紐が通る穴は貫通タイプにした。それをアスペクト比を変えたり、扁平にしたりしたのを5つ作ったところで、今日のボタン作りを終了した。

 さて、円柱作りはすでに結構練習したから慣れたもので、あっという間に完成。完成の報告は夕食のときにでもするとして、あとの時間はfp(仮)のために使うことにした。


その日から冬の間の生活は午前中はボタン作り、午後からはfp(仮)に当てられた。



 今年の冬も終わり雪解けの季節がやってきた。春の陽気に誘われて俺もついついうたた寝をしてしまいそうになる今日この頃だ。この都市では雪が解けから数日後に市が開かれる。

 この市は市民が冬の間に作ったものを売買する市だ。普段の日には商業許可証を持っていない人は店は出せないが、春の市が開かれる数日だけは一般市民も店を開いてもいいことになっているそうだ。


 結局俺は糸巻き棒(もう名称を思い出せないからこれに決定した)を12個、ボタンを約900個作った。そのうち約800個はワイシャツとかについているタイプのボタンだ。最初に作って母に見せに行ったときは、小さくて外れやすいからウケが良くなかったが、布端を貰って穴をあけボタンをつけて穴にボタンを通して留めたのを見ると、これはありねっと言ってあれよあれよと増産が決定した。俺がボタンを作ってる間に、母は普段ほとんど着ない服をバッサリ切ってワイシャツもどきを作った。普段大人しい母を何が突き動かせたんだか、若いパッシ○ンってやつか?

出品先はこのアパートメント(名称はなし)の住民がそれぞれ作ったものを持ち寄って共同でだした店だ。うちは母が作った刺繍と俺が作った糸巻き棒とボタンを出している。

住人達が作ったものを持ち寄った際に見たことないタイプのボタンが話題に上がったが、数人が興味を示しただけで、それ以上話題にはならなかった。ざんねん、読みは外れたか。うちが店番となる順番は2日目の午前中となったのでそれまで市で買い物だ。


さぁ初めての春市だ。




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